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菊池祭り

菊池の逆鱗に触れた肝試し

作者: コロン

いつも有難うございます。


よろしくお願いします。





「きーくち!ねぇ、今夜みんなで肝試しに行くんだけど、菊池も行くよね?」


 桐山リカがそう言って俺の行く手を阻むように前に立った。桐山のほかに3人の取り巻きも一緒だ。

 俺は無視して桐山達を避けて通る。

「無視すんなよ!」

 桐山がまた俺の前に立つ。


「はあ?なんでお前らとつるまないといけないの?意味わかんねぇ」


 桐山はわざわざ俺を探し、追いかけてきては「陰キャ」だとか「底辺」だとか何かといちゃもんをつけてくるような奴だった。

 俺はコイツの事が大嫌いだった。


 コイツから漂うのは悪臭だ。


「安田さんも誘ったよ。安田さん行くって」


「へぇ…」

 俺は教室の隅にいる安田さんに視線を移す。


 俺と桐山と安田さんはクラス替えでも何故か離れる事がなく、高校の三年間を共に過ごした。

 俺は男だからまだいい。

 大人しい安田さんは、桐山に言い返すことも出来ずにいた。

 そして言い返したら言い返したで、桐山は更にめんどくさい事を言い出すのだろう。


 安田さんは青い顔で俯き、震えていた。

「安田さん、行きたいの?」

 俺が安田さんのそばに行き、そう問いかけると安田さんは顔を上げた。


「私…!」「安田さん!一緒に行きたいよねぇっ!?」

 安田さんが答える前に桐山が圧を掛けた。

「……うん…」弱々しく答えた安田さんはまた俯いてしまった。


「ほら、安田さんも行くって!菊池も行くでしょう?」

 ニヤニヤと下衆い笑みをコチラに向けて桐山が言った。


「お前がそんなに言うなら行ってやる。だから…絶対後悔すんなよ?」


「あはは!何それ!厨二病の菊池君かっこいい〜!じゃあ今夜〜」

 そう言って桐山と取り巻きの3人は去って行った。


「安田さん。大丈夫だから。心配しないで」

「でも!……うん…そうだね………ありがとう……」


 俺の言う事なんて慰めにもならなかったのか、安田さんは暗い顔のままだった。



 。。。




 普段から親は家にいないから。と、溜まり場になっている桐山の家に集まった俺たちは、時計が0時になった頃に家を出た。


 金曜の夜中。人通りの少ない道で、キャアキャア騒ぎながら前を歩く桐山達の後ろを歩く俺と安田さん。


「安田さん。これあげる」

 俺は何も書いていない小さな紙切れを一枚、安田さんに渡す。

「これ何?」

「お守り」

「これが?」

「うん。特別な術がかかってんの。だから大丈夫だから」


 こんな紙切れが何の役に立つのだろう。そう思っているのが見て取れた。それでも安田さんはお礼を言ってくれた。

「……うん。ありがとう」

「絶対に無くさないでね」

「わかった」

 そう言うと安田さんはスカートのポケットにそれを仕舞った。


「それと…これから俺はアイツ等にえげつない仕返しをするんだけど…引かないでね」

 安田さんが怖がらないよう、俺は笑ってそう言った。


「仕返し?」

「うん。アイツ等…この先、生かしておいてもしょうがないっしょ?」

「え?」

「菊池ー!安田さんー!早く来てよ!先に入ってもらいたいんだけど!」

 イラついた口調で桐山が俺たちを呼びつけた。


「今行く」安田さん、俺から離れないようにね。

 アイツ等に聞こえないように安田さんに伝える。


「うぇーい!」

 俺は桐山達のノリに合わせてハイタッチの構えをした。

 桐山は「バカみたい!」と笑いながらハイタッチした。

 他の奴らも俺とハイタッチした。



 これで術は完了した。



 俺と安田さんが先頭で廃屋を回る。

 朽ちた畳、玄関に落ちた人形、敷きっぱなしの布団…

 

 最初は興味深々だった桐山も、散らかっただけの他人の家にすぐに飽きたようだった。

「あーあ!つまんない!安田さんもっと怖がってよ!意味ないじゃん!」


 何事も無いまま1時間程で肝試しは終了した。


。。。



 月曜日、桐山は学校に来なかった。

 桐山だけじゃなく、ほかの奴らも休んだ。



 一週間経っても来ないアイツ等に、さまざまな憶測が飛び交う。


 そして…


 肝試しから一ヶ月。奴らは死んだ。


 桐山はマンションの屋上から飛び降りたし、他の2人は道路に飛び出して車に跳ねられて即死。あとは線路に飛び降りて電車に跳ねられてた。






 廊下を歩く俺に、安田さんが声を掛けてきた。

「菊池君!…あの…これ…」


 震える安田さんの手のひらには、あの日渡した紙切れが乗っていた。

 俺はその紙切れを見る。

「あー…それもうただの紙切れだから。捨てちゃっていいよ」

「そうなの?」

「うん」


 安田さんの周りに重い空気が流れる。聞きたいことがあるのだろう。

「アイツ等の事?」

「えっ?…う……うん…」


「俺、あいつ等に言ったじゃん「絶対後悔すんなよ」って。アイツ等俺や安田さんを執拗に追いかけてさ、俺もいい加減頭に来てたんだよね。だからあの日「鬼ごっこ」に招待してあげたんだわ。だから…」




 アイツ等、何かから逃げてたでしょ?







挿絵(By みてみん)

業者の「菊池さん」の高校時代。

かなりとんがっていました。



拙い文章、最後までお読みくださりありがとうございました。


誤字脱字ありましたらお知らせください。

よろしくお願いします。




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本作の菊池さんは、決して怒らせてはならないタイプだったようですね。 特殊な術も心得ているようですし、桐山さん達が真っ当な態度で接して信頼関係を築いていれば有事の際の心強い味方になってくれる可能性もあっ…
[一言] 一番怖い思いをしているのって、安田さんじゃなかろうか? 
[良い点] 「鬼ごっこ」に招待。 死んだ3人、どのような鬼に憑かれたのでしょうかね。 それにしても、この菊池。 正体は何なのでしょう? 直接手を下さず、自死や事故死に見せかける方法が見事だと思いました…
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