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Sevens Heroes〜選ばれし7人の戦士達〜  作者: 蒼月丸
第一章 運命を切り開く戦士達
6/32

白狼の女性、エヴァ

今回はエヴァの活躍がメインですが、新たな展開も起こります!

 零夜達はトラマツが用意したシェアハウスに入り、リビングでエヴァからの話を聞いていた。


「なるほど。アークスレイヤーによる襲撃で、住んでいる村人達の多くが殺されてしまった。それによってエヴァは奴隷にされたという事なのか」


 零夜は納得の表情で確認し、エヴァはコクリと頷く。


「うん……他の皆はどうなっているのか心配だけど、アークスレイヤーの連中によって皆が殺されてしまった……何もできなかった事にとても悔しいし……力もない私が許せない……」


 エヴァの目からポロポロと涙がこぼれ落ち、零夜が彼女の手を取る。


「大丈夫。俺達が付いている。こちらも未熟な部分もあるけど、共に強くなって必ずアークスレイヤーを倒そう!彼奴等の好き勝手にさせない為にも!」

「零夜……」


 零夜の熱心な激励と同時に、ミミ、倫子、ヒカリもエヴァに近寄る。


「零夜は仲間思いだからね。話を聞いた以上、私達も共に戦うわ!」

「一人が無理なら皆で力を合わせる。ウチ等も協力するで!」

「憎きアークスレイヤーを倒す為にも、共に頑張りましょう!」

「皆……ありがとう……」


 エヴァは嬉しさのあまり涙を流し、ヒカリが優しく彼女の頭を撫でる。


「まずはエヴァの服をどうにかしないとね。零夜、トラマツ、ノースマンは向こうで待ってくれるかな?」

「分かった。今から移動する」


 零夜、トラマツ、ノースマンがリビングから出た後、ヒカリ達は用意されているタンスから服を取り出す。


「エヴァは身体が筋肉質で胸もでかいし、短めの白いチューブトップが似合うわ」


 ヒカリはエヴァの服を脱がせ、短めの白いチューブトップに着替えさせる。


「後はジーンズね。ワイドレッグがとても似合うわ」


 ミミはフラップポケット付きで青系のワイドレッグジーンズを用意し、エヴァにそのまま履かせる。

 エヴァはジーンズのボタンを締めて、ポケットに手を入れながらキツくないか確認する。


「後はサスペンダー。これで完璧ね」


 そして倫子がエヴァのジーンズにサスペンダーを付けさせ、これで彼女の衣装が完成した。


「どう?」

「……」


 エヴァは用意してくれた新たな衣装に言葉が出ず、サスペンダーを引っ張りながら感触を確かめていた。


「なんか……嬉しさのあまり言葉が出ないし、こんな服を着たの初めて……」

「そうなんだ。でも、この方が似合うと思うからね」

「そうかな……」


 倫子に褒められたエヴァが照れ臭くなる中、ヒカリが扉の方に視線を移す。


「もういいよ!」


 ヒカリの合図と同時に零夜達がリビングに入り、エヴァの姿に驚きを隠せずにいた。


「おお!この方がとても似合うな!カジュアルさが目立っているし」

「悪くない組み合わせだね。動きやすさはバッチリだよ」

「ジーンズとサスペンダー。良い物だな!」


 零夜達もエヴァの衣装を褒めまくり、彼女はニコッと笑顔を見せる。


「取り敢えずは衣装問題も解決したし、後はエヴァが強くなって彼女の仲間を助けないとね」

「ええ。恐らくアークスレイヤーはエヴァ達の仲間の生き残りを狙ってくる筈です。何故シルバーウルフ族を狙うのか気になりますが……」


 零夜がアークスレイヤーの行動に気になる中、エヴァがある事を思い出す。


「恐らくアークスレイヤーは私達が反乱を起こす事を警戒していて、この様な事をしたと思うわ」

「どういう事?」


 エヴァからの説明に対し、ミミ達は首を傾げる。


「私達シルバーウルフ族は戦闘能力が高く、多くの戦いで功績を残していた。それに正義感がとても強く、悪を許さぬ不屈の心を持っているの」

「じゃあ、アークスレイヤーが襲撃をしたのも……」

「そう。アークスレイヤーにとっては征服の野望を妨げる存在としか言えないし、襲撃したのもその為だと思う」


 エヴァの話を聞いたトラマツ達は真剣な表情で納得し、彼はすぐに考え始める。


「となると……恐らくアークスレイヤーはエヴァの故郷に再び襲撃してくる可能性もあり得るな」

「更に俺達はエヴァを匿っているとなると、アークスレイヤーも黙ってはいられないな」

「ともかく今は休んで、明日から急いでレベルアップしよう!アークスレイヤーとの戦いに備える為にも!」


 トラマツの推測にノースマンも同意し、トラマツからの説明に零夜達は一斉に頷いた。



 同時刻、シルバーウルフの村の近くに黒を基調とした建物が建てられていた。それこそアークスレイヤーのアジトである。

 その中にある支部長室では、二人の男が話をしていた。


「べムール様。先程、部下からの報告によると、エヴァは零夜達によって引き取られ、彼等と共に行動する事になりました」

「そうか。なら、部下達を派遣して奴等を始末するとしよう。明後日、我々はシルバーウルフの村に襲い掛かり、奴等を根絶やしにする」

「なるほど。考えましたな……」


 べムールからの提案に部下の一人である男は納得の表情をする。


「それに選ばれし戦士達を倒せばわしの地位も上がるだろう。やるからには……容赦なく倒しに行くぞ!」

「はっ!」


 べムールからの宣言に、男は一礼しながら応えて部下達に連絡をし始めた。



 それから翌朝、零夜が着替えてリビングに入るといい匂いがしてきた。


「ん?この匂い……ビーフシチューか?」


 零夜が匂いのした方に向かうと、エプロン姿のエヴァがキッチンで料理をしていて、ビーフシチューを煮込んでいた。


「あ、おはよう!」

「エヴァ、料理得意なのか!?」

「ええ。小さい頃から教えられていたからね。ビーフシチューだけでなく、パンやサラダ、ウィンナーに目玉焼き、更にはフルーツやジャムも用意しているわ!」


 エヴァが指差す方を見ると、多くの料理が並んでいてこの光景に零夜が驚きを隠せずにいた。


「凄い……俺、お皿並べておくよ」


 零夜はすぐに食器を用意し、その直後にミミ達が入ってくる。


「凄い!これ、エヴァが作ったの?」

「ええ。助けてもらったお礼に何かできる事をしようと思って。さっ、どんどん食べてね」


 全員が席に座り、そのまま食べ始める。


「美味しい!ビーフシチューのまろやかなとろみがイケる!」

「サラダも美味しい!」

「パンも手作りなの?」

「ええ。特にロシアパンがお勧めよ」


 ヒカリの質問にエヴァが微笑む中、トラマツと零夜はビーフシチューの美味しさに舌鼓をうっていた。


「見事としか言えない……流石だ……」

「こんな美味しいビーフシチューは初めてだ……」

「大した事じゃないけどね」


 二人の感銘に苦笑いをする中、ノースマンは黙々と肉を食べていた。


(俺は狼だからしょうがないかもな……)


 ノースマンは心の中で自身の状況にため息を付きながらも、食事を続けた。



 朝食が終わった後、ギルドに着いた零夜達は、エヴァのギルド登録を進めておく。


「はい!エヴァさんはモンクですね。頑張ってください!」

「ええ!」


 受付嬢の一礼にエヴァが笑顔で応えた直後、トラマツがクエスト受注したと同時に、エヴァの武器がスミタロウから手渡された。


「エヴァはパワーとスピードがあるからクロー付ガントレットがお勧めだ。クローについてはお前の意思で出したり引っ込めたりする事ができる。持ち前の力と速さでどんどん敵を倒してくれ!」

「ええ!ありがたく使わせてもらうわ」


 エヴァはクロー付ガントレットを装着し、自らの意思でガントレットからクローを出す。


「この武器、気に入ったわ!しかも、クローの爪も鋭いし」

「よし!そのままクエストに向かうよ。今回はウサギ型モンスターのツノラビ、鳥型モンスターのファルコス、更には大型モンスターのウッドゴーレムだ。場所はクリムの森だから案内するね」

「分かったわ。さっ、今日も頑張らないと!」

「頑張れよ!」


 ミミは背伸びをしながら気合を入れ、スミタロウの声援を背に彼女達はクリムの森へと向かい出した。



 クリムの森に着いた零夜達は、ノースマンを筆頭に歩いていた。そこは自然豊かな場所で、小鳥のさえずりも聞こえていた。


「空気も良いし、風も穏やか。良いところね」

「うん。ここは自然豊かな所で湖もあるわ。けど、所々にモンスターが沢山いるから気を付けて」


 エヴァが皆に忠告をしたその時、ツノラビとファルコスが一斉に襲い掛かってきた。


「言った傍から襲い掛かるとはな!始めるとするか!」


 零夜は高くジャンプし、苦無を投げ飛ばして次々とツノラビとファルコスに当てて倒してしまう。

 すると倒されたツノラビとフォルコスは素材と金貨に変わってしまった。


「凄い!流石は忍者!」

「こう見えても俺は忍者レスラーを目指していますので!」


 エヴァの驚きの声に零夜はウィンクしながら返す。


「私も負けられない!」


 ミミも駆け出したと同時に、リングブレードを構えてリズムよく次々とツノラビを倒してしまう。


「援護は任せて!ファイアーボール!」


 ヒカリは魔術でファイアーボールを発射し、ファルコスに当てて次々と倒してしまう。すると、ファルコスは素材と金貨ではなく、何故か鳥の丸焼きと金貨になってしまった。


「なんで鳥の丸焼き!?」


 予想外の事態にヒカリは驚きを隠せずにいて、目をパチクリさせてしまう。


「この世界では鳥系モンスターに炎攻撃を当てて倒すと、確実に鳥の丸焼きになってしまうんだよね……まあ、美味しそうだけど」

「それを早く言ってよ!」


 トラマツの説明にヒカリがツッコむ中、エヴァが鳥の丸焼きを回収する。


「この鳥の丸焼き、何かに使えるわ。アレンジレシピは任せて!」

「う、うん。お願いね……」


 ヒカリが苦笑いしながらエヴァに頼む中、倫子は炎の蹴り技でツノラビを倒しまくる。

 するとツノラビは素材のウサギの肉と毛皮、金貨に変化していたのだ。


「ウサギの肉……食べれるの?」


 倫子はウサギの肉を見て冷や汗を流しながら疑問に思い、エヴァに見せてもらう。


「大丈夫。食べられるわ」

「なら、ええけど……ん?」


 するとズシンズシンと音が響き渡り、全員がその音の方を振り向くと、そこには茶色と緑の身体をしていたゴーレムが姿を現したのだ。


「木で合成されたウッドゴーレムだ!これが今回の討伐対象だよ」

「よし!一気に倒せばこっちの物!スラッシュブレード!」


 ミミが駆け出してリングブレードで切り裂いてウッドゴーレムにダメージを与える。しかし、彼は反撃の強烈パンチで彼女の腹に激痛を与えた。


「うグッ!?」


 腹を殴られたミミは勢いよく飛ばされ、エヴァがジャンプして彼女をキャッチする。


「ミミ、大丈夫?」

「今のは効いたけどね……なんとか動けるわ」

「ウッドゴーレムはパンチの威力がとても強い!炎か氷、風なら効果は抜群だが」

「なら、私が魔術を仕掛けるわ!」


 ヒカリが呪文を唱えようとする中、ウッドゴーレムは彼女に襲い掛かってくる。


「そうはさせない!はっ!」


 エヴァはミミを地面に降ろして駆け出したと同時に、強烈なタックルでウッドゴーレムを弾き飛ばす。


「凄いタックル!ウッドゴーレムが弾かれるなんて……」


 この光景にミミが驚く中、更にエヴァはウッドゴーレムを両手で持ち上げようとする。


「ちょっと!?まさか持ち上げるつもりなの!?」

「無理やから!止めとき!」


 ミミと倫子が予想外の行動に慌てる中、エヴァはウッドゴーレムを両手で軽々と持ち上げてしまった。しかも、ウッドゴーレムの体重は200kg。


「「「ええーっ!!??」」」

(あのウッドゴーレムを軽々と!?200kgあるのに、簡単に持てるのか!?)

「せーの!」


 この光景に皆が驚く中、エヴァは更にウッドゴーレムを空高く投げ飛ばす。


「すぐにファイアーボールを!」

「おっと!ファイアーボール!」


 ヒカリは上空にファイアーボールを解き放ち、見事ウッドゴーレムに直撃。ウッドゴーレムはそのまま素材と金貨となって空から降ってきた。


「よっと!」


 それを倫子がキャッチし、見事クエスト完了となった。


「まさかエヴァさんがウッドゴーレムを持ち上げるとは驚きました……」


 零夜は冷や汗を流しながらエヴァに声を掛け、彼女は微笑み返す。


「うん。こう見えても小さい頃に一人でログハウスを作ったし、大きい岩も軽々背負えて走ったからね」

「いや、どう考えても異常過ぎるわ!しかも、小さい頃からそうだったの!?」


 エヴァの説明にミミがツッコミを入れる中、トラマツが彼女の肩を叩きながら落ち着かせ始める。


「落ち着きなよ。エヴァの怪力はリストを見て知っていたけど、モンスターを投げ飛ばす怪力はなかなかいないじゃないか。普通に考えてみればいいメンバーに恵まれて良かったと思うよ」

「そうね……でも、ウッドゴーレムを投げ飛ばしたのはスカッとしたわ。ありがとう!」


 ミミがエヴァにお礼を言い、彼女も笑顔で返す。


「どう致しまして。今からクエスト報告の帰りに夕食の食材を狩りに行くけど、何かいる?」


 エヴァが皆に夕食の食材の狩りを使用と提案した途端、倫子がすぐに手を挙げる。


「私、魚食べたい!」

「確かこの森の中には魚が沢山いる滝がある。釣り竿も用意しているし、折角だから行ってみよう!」


 トラマツはすぐに皆を連れて、目的の場所となる滝へと向かい出そうとしたその時、いきなり一人の女性が姿を現す。

 その姿は中華服を着ていて、カンフースタイル。お団子ヘアとなっていた。


「何者だ?」

「私の名前はマンリー。べムール様からの命令であなたを倒しに来たわ!」

「マンリーか!相手が女性であろうとも、容赦はしない!」


 零夜達が戦闘態勢に入る中、マンリーは上の服を突然脱ぎ始め、おへそを見せる。


「何をするつもりだ?」

「エヴァに対抗してへそ出しで挑むの?」

「違うわ!へそから何か出そうとしているみたい!」

「えっ?」


 倫子の推測にヒカリが疑問に感じたその時、マンリーのへそから蜘蛛の糸が出てきた。


「蜘蛛の糸……縛られたら大変な事になるわ!」


 エヴァの合図で皆が逃げようとするが、ミミ、ヒカリが蜘蛛の糸に捕まってしまい、逆さの宙吊りになってしまう。


「二人が捕まったか!」

「しかも、ヒカリに関しては胸を強く縛られているぞ!」


 トラマツが指差す方を見ると、なんとヒカリは蜘蛛の糸で胸、腰の部分を強く縛られている。


「ん……く……」


 縛られてしまったヒカリは苦しそうに声を上げてしまい、この光景に零夜達はそっぽを向いてしまう。


「なんで向こうを向くの?」

「いや、見てはいけない物を見るのは良くないから……」


 エヴァが気になって零夜に質問するが、彼は赤面しながら応えていた。


「さあ、次はあなた達も捕まえるわ!」


 するとマンリーの背中から蜘蛛の足が生えてしまい、頭には触覚も生え始めた。


「蜘蛛と人間を組み合わせた合成獣か!」

「正確に言えば蜘蛛人間だけどね。覚悟しなさい!」


 マンリーは蜘蛛の糸を次々と出して零夜達に襲い掛かるが、彼は回避したと同時に、手裏剣を縛られているミミ達に投げ飛ばす。


「何処に投げているのかしら?」

「よく見るのはアンタの方だよ!」


 零夜が指差す方を見ると、なんと手裏剣は蜘蛛の糸を次々と切り裂き、見事ミミとヒカリは蜘蛛の糸から解放された。


「助かったわ!」

「ありがとう、零夜君!」


 ミミとヒカリは零夜にお礼を言い、手裏剣は彼の手元に戻った。


「俺の手裏剣は万能なのでね!」

「良くもやってくれたわね。アンタから倒してあげるわ!」


 マンリーは怒りで零夜に狙いを定め、おへそから蜘蛛の糸を放出する。


「させるか!忍法火炎の術!」


 零夜は口から火を吹いて、蜘蛛の糸を次々と燃やしてしまう。


「蜘蛛の糸が!」

「今よ!」


 マンリーが驚いたその時、エヴァが駆け出して強烈タックルで彼女を突き飛ばす。


「ガッ……」


 突き飛ばされたマンリーは地面を転がってしまい、倒れてしまう。


「零夜、私のクローに炎を!」

「おう!」


 エヴァが自らの意思でクローを出し、零夜がそれに炎を吹き始める。

 するとクローに炎が纏われ、フレイムクローへと変化した。


「これで終わらせるわ!」


 エヴァは起き上がろうとするマンリーに向かって駆け出し、クローを光らせて襲い掛かる。


「フレイムクロー乱れ咲き!」


 炎のクローの乱れひっかきが炸裂し、マンリーの身体を次々と切り裂き、最後は彼女の首を切り裂いた。

 するとマンリーの傷口から血飛沫を上げられ、彼女は倒れてしまう。


「そんな……この私が……」


 マンリーは倒れて消滅し、蜘蛛の糸と金貨になってしまった。


「凄い!マンリーをあっという間に倒すなんて……」


 エヴァがマンリーを倒した事に、ミミ達は驚きの表情をしていた。


「ここで立ち止まる訳にはいかないからね。それに零夜の炎があったからこそ、勝つ事ができたわ。ありがとう!」

「どう致しまして。さっ、フリューゲルの滝へと向かうとするか!」


 零夜の合図に全員が頷き、その場から一斉に移動し始めた。



「マンリーがやられただと!?」


 アークスレイヤーのアジトでは、部下の報告でマンリーがやられた事にべムールは驚きを隠せずにいた。


「はい!どうやらエヴァによってやられました!しかも、零夜のサポートもあったみたいです!」

「そうか……恐らく奴等はわしのアジトに襲い掛かって来るかも知れないな……」


 べムールは推測した後に、すぐに椅子から立ち上がる。


「部下達に伝えろ!奴等は必ずこのアジトに襲い掛かる!奴等を倒し次第村の方に侵略行為を行うぞ!」

「はっ!」


 べムールの宣言に部下は一礼し、自らの仲間に伝え始めた。



「着いた!ここがクリムの森の滝であるフリューゲル滝だ」


 トラマツ達はフリューゲル滝に到着し、辺りを見回す。そこは綺麗な川が流れていて、滝壺の所には多くの魚が泳いでいた。


「川の水は美味しいと聞くけど、こうなると浄水器が必要となるわね」

「ええ。それなら綺麗な水にする魔術が必要となるけど、上手くできるかな?」


 ヒカリはコップに水をすくい、そのまま浄水魔術を掛ける。


「さて……」


 ヒカリはそのまま水を一口飲み、その状態を感じ取る。


「上手く浄水できているわ!大丈夫よ!」

「本当ですか!?なら、多く汲みましょう!」


 ミミがお水を汲もうとしたその時、何処からかヨロヨロと狼の獣人が歩いてきた。


「ん?あなた、バルク!」

「おお……エヴァさん……腹減って力が出ません……」


 バルクと呼ばれた男性は両膝を地面に着いてしまい、エヴァは先程手に入れた鳥の丸焼きを彼に渡す。


「ありがとうございます!」


 バルクはガツガツと一心不乱に鳥の丸焼きを食べまくり、その様子を見たヒカリはコップに入っているお水を渡す。


「はい!」

「すみません」


 バルクはお水を飲んで落ち着き、エヴァの方に視線を移す。


「初めての方もいるらしいっすね。俺はバルク。エヴァさんの後輩で格闘家をしています」

「格闘家……エヴァと同じね」

「ええ。俺はギルドの方へとある依頼をしに向かっていたっす。けど、腹が減って今の状態になってしまいまして……」

「依頼?何かあったのか?」


 バルクの説明に零夜は疑問に感じ、ミミ達も同様に感じる。


「実は……明日、俺達の住む村に……アークスレイヤーの奴等が再び襲い掛かってくるっす!!」

「「「!?」」」


 バルクからの衝撃の説明に、エヴァだけでなくその場にいる全員が驚きを隠せずにいた。


「嘘でしょ!?彼奴等がまた!?」

「明日だなんて急すぎるぞ!」

「どうやら奴等は俺達を完全に根絶やししようとしているっす。そこでギルドの方へ向かって依頼をしようと……」


 バルクの話を聞いた零夜は、彼の肩を叩く。


「その依頼、引き受けてやるぜ。アークスレイヤーと聞いた以上、黙ってはいられないからな!」

「本当っすか!?」

「それにエヴァの故郷が酷い目に遭うと聞いた以上、放ってはおけない。やるからには奴等を倒す覚悟で挑むのみだ!」


 零夜は拳を打ち鳴らして気合を入れ、ミミ達も頷く。


「私達も協力するわ!」

「話を聞いた以上、エヴァちゃんの故郷がピンチなら黙ってはいられない!」

「エヴァはもう、私達の大切な仲間なんだから!」


 ミミ達も協力する事を決意し、エヴァの目から涙が溢れる。


「皆、ありがとう……私の為にそこまで……」

「僕等も放ってはいけないからね。この任務は緊急任務だ。今日はクエスト完了報告をしてからギルドに依頼して、明日はアークスレイヤーのアジトに突撃しよう」

「その方が村に対する襲撃を未然に防ぐし、アークスレイヤーのアジトも減らして一石二鳥だ」


 トラマツとノースマンの説明に零夜達は納得する。


「アジトについては俺が案内するっす!ボスの名はべムール!残虐非道で鞭を使って攻撃するけど、闇の魔術も使うのでかなり手強いっす!」

「闇となると光がカギか……幸い光の魔法は覚えているけど、油断は禁物ね」


 更にバルクもアジトの案内を引き受ける事とボスについて説明し、ヒカリは真剣な表情で考えていた。


「何れにしても、アークスレイヤーとの戦いは避けられないみたい。零夜君は覚悟できとるん?」

「勿論ですよ。誰が相手であろうとも、俺は一歩も引きませんから!」


 倫子は零夜に質問し、彼はガッツポーズで答えて彼女もコクリと頷く。


「なら決定ね。あっ、帰る前に魚が釣っとかないと」


 倫子は釣り竿を持って釣りに向い、その光景に零夜達はずっこけてしまった。


「まだ覚えていたのですか……仕方が無いですね……」

「俺も手伝うっす。こう見えても釣りの天才なので」

「ありがとね」


 零夜達も倫子の手伝いに向かい、この日はアカカツオ、黄金魚、デカタイ、ボムフグ、サシミマグロ、錦鯉が連れたのだった。

いよいよ次回はアジトに突入!果たして上手くいくのかに注目です!


続きは明日投稿ですのでお楽しみに!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 男性陣だけでなく、 女性陣も気遣いできる人が多いですね。 後、服装やコスチュームにも拘りを感じます。
[良い点] ウッドゴーレムとの戦闘シーン最高でした(^^) やっぱりバルクルーバーさんの書くバトル最高です。 もっとバトルみたいですね。 エヴァもいいキャラでよかったです。
感想一覧
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