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Sevens Heroes〜選ばれし7人の戦士達〜  作者: 蒼月丸
第一章 運命を切り開く戦士達
5/32

スライム達にご用心

今回は始まりのクエストです!

 トラマツの案内でとある街に到着した零夜達。そこは人々が多くいて、商売も盛んで賑わっていた。しかも、和風の街並みをモチーフにしている。

 更に向こう側では湯けむりが登っていて、温泉も用意されているのだ。


「ここはホムラ。和風の街で交易も盛んなところだ。更に温泉も有名で、多くの観光客も来ている。因みに僕の故郷だよ」

「トラマツの故郷なんだ!けど、鎧が西洋なのが気になるけど……」


 ヒカリはトラマツの鎧が西洋なのが気になり、彼は自身の鎧に視線を移す。


「ああ。これは自ら頼んだからね。西洋の鎧も製造されているし」

「そうなんだ……まずはギルドを探さないとね。えーっと、ギルドは……」


 ヒカリが辺りを見回したその時、一人の赤白のバトルキャットが彼女達を見つけ、そのまま近付いてきた。


「あっ、トラマツじゃねーか!」

「お前はアカヤマ!久し振りだな!」


 アカヤマに気付いたトラマツはノースマンから飛び降り、そのまま彼に近付く。


「お前も相変わらずだな。で、ノースマンだけでなく、その四人の人達はなんだ?」

「東零夜、春川ミミ、藍原倫子、国重ヒカリだ。彼等はメディア様による選ばれし7人の者達だ!」


 トラマツは零夜達を紹介し、アカヤマは彼等を見てニヤリと笑う。


「ほう。選ばれし7人か。実はこっちもアフロディア樣が選んだ7人の内、二人を集めたんだよ」

「「なんだと!?」」


 アカヤマからの宣言にトラマツとノースマンは驚きを隠せずにいた。


「驚くのも無理はないが……なんで俺はいつの間にこいつに抱かれているんだ!?」


 アカヤマはいつの間にか倫子に背後から抱かれていて、更には彼女に自身の喉まで撫でられてしまう。


「倫子は猫好きなんだよ。お前、彼女が移動した事に気付かず、そのままやられてしまったな」

「ええ子やね……よしよし」

「止めてくれ……ああ……俺は……そんなんじゃない……助けて……くれ……フニャ〜」


 喉を撫でられたアカヤマはフニャフニャの声を出してしまい、この光景に零夜は唖然としてしまう。


「バトルキャットって、猫と変わらないところがあるのか?喉を撫でられてフニャフニャになっていたが」

「ああ……僕も倫子にやられたからね……」


 零夜の質問にトラマツがため息を付いたその時、金髪の男性とポニーテールの女性が駆け付けてきた。


「あっ、アカヤマ!凄くフニャフニャになっているじゃないか!」

「おおーっ……遅すぎるぞ……」

「どうやら猫好きにやられたみたいね……まあ、これはしょうがないけど……」

「?もしかして、アカヤマの仲間なの?」


 倫子はアカヤマの喉を撫でるのを止め、ポニーテールの女性に彼を渡す。


「はい。私の名前は黒部紬(くろべつむぎ)。この世界に来た転生者です」

「転生者……話には聞いたけど、実在していたのね……」


 紬の自己紹介にミミは真剣な表情で彼女を見る。


「ええ。元の世界ではOLでしたが、仕事からの帰り道に落ちてきた鉄骨に潰されてしまい、気が付いたらこの世界に来たのです」

「鉄骨!?かなり悲惨な目に遭いましたね……」


 紬の説明に零夜は驚きを隠せず、彼女に同情してしまう。


「生前は酷かった物です。ブラック企業で働かされて、フラフラと帰った所で鉄骨に潰されてしまいましたからね……ですが、この世界に来てから良い事だらけです!そのお陰で女子高生ぐらいに若返りました!」

「「「羨ましい……ハァ……」」」


 紬の説明を聞いた倫子達は顔を見合わせ、お互いため息をついてしまう。


「どうしたのですか?」

「色々事情があるという物だからな……まあ、気持ちは分かるが……」


 紬がキョトンとする中、零夜は唖然としながらため息をついていた倫子達の方を向いている。

 すると金髪の男性が彼に近付いてくる。


「俺の名はヒューゴ。この世界出身の剣士だ」

「ラリウス出身の剣士か!俺は東零夜。地球から来た忍者だ」


 零夜とヒューゴが握手をしたその時、彼等はすぐに直感を感じ取る。


(もしかすると……まさかな……)

(この感じ……初めてだ……)


 二人が手を離した後、ヒューゴはとある方向を指差す。


「ギルドについてはそこだ。風見鶏が目印となっている」

「おお!あれがギルドか……」


 赤い屋根の上に風見鶏が建てられていて、ギルドの文字の看板が書かれていた。その姿はまさに和風の建物其の物であり、まるで城みたいな姿となっていた。


「教えてくれてありがとな」

「気にするなよ。それにお前とは何れ戦う事になるかもな。最高峰の舞台で」

「えっ?どういう事だ?」


 ヒューゴの呟きに零夜は思わずキョトンとしてしまい、疑問に感じてしまう。


「いや、只の独り言だ。紬、クエストに行くぞ!」

「はい!アカヤマも行くわよ」

「おーう……」


 ヒューゴ達はそのままクエストの方に向かい、零夜は彼の後ろ姿を見つめる。


(ヒューゴ……もしかすると俺のライバルの存在になるかも知れないな……)


 零夜がヒューゴの後ろ姿にそう感じて拳を握りしめた直後、ミミが彼の背中に飛びつく。


「ミミ姉」

「ヒューゴの事を気にしていたのでしょ?もしかすると、彼等と戦う時が来るみたいだし、その時は全力で挑みましょう!」

「ああ……その為にも強くならないとな」

「その通り。ほら、私達もギルドに向かいましょう」

「そうだな……行くとするか!」


 零夜はミミを背負いつつ、倫子達と共にギルドの中に入った。



 ギルドの中は多くの冒険者達で賑わっていて、獣人族やエルフなど様々な種族が存在していた。

 更に内装も和風の雰囲気が漂っていて、提灯型の電気ランプなどが吊るされていた。


「ここがギルド……凄く賑やかね……」

「ああ。早速受付の方に行って登録申請しておこう」


 トラマツは倫子達を連れて、獣耳でOL姿の受付嬢のいる所へ移動する。


「あら、トラマツさん。そちらの方が選ばれし者達の四人ですか?」

「そうだ。彼女達をこのギルドで育てる為、申請登録をしようと思って来たんだ」

「分かりました。適性検査については、トラマツさんによって先程受けられた様ですね。後は名前と職業を書いてもらえれば申請完了です!」


 受付嬢の説明を受けた零夜達は、指示通りに名前と職業を用意された紙に書き込む。


「俺は忍者だったな」

「私はダンサーね」

「ウチはモデルレスラー」

「私は魔法剣士ね」


 零夜達は名前と職業を確認し終え、その紙を受付嬢に渡す。


「受け取りました」


 受付嬢は4枚の紙を水晶玉に記録し、スクリーン上の名簿リストにも自動で4人の名前が記録された。


「これで申請完了と同時に、正式にギルドの一員となりました!ようこそ、ホムラギルドへ!」


 受付嬢が笑顔で歓迎し、零夜達は一礼する。


「さて、受付も済ませた事で……早速クエストに取り掛かろう。初心者の為のクエストはこちらだ!」


 トラマツは左にあるクエストボードを指差す。そこにはスライム退治や配達のお届け、ゴブリン退治などがあった。


「色々あるんだ……」

「どれがオススメなの?」

「まずはスライム退治だ。初心者にもお勧めだが、スライムといえども油断は禁物。集団で襲い掛かるからね」

「なるほど。油断大敵で気を引き締めるという事だな」


 トラマツからの忠告に零夜は頷きながら応える。


「そうだ。では、早速受け付けておこう」


 トラマツはクエストボードからスライム退治のクエスト用紙を取り、受付嬢に渡し始める。


「スライム退治受理しました!クエストの前に装備やアイテムを準備してください!」


 受付嬢のアドバイスにトラマツは頷き、零夜達を連れてアイテムショップに移動する。


「ここがアイテムショップだ。担当はバトルキャット族のナニワだ」

「毎度!ワイはアイテムショップのナニワや!ええもん売っとるで!」


 白猫のバトルキャット族のナニワが自己紹介した後、零夜は回復薬を手に取る。


「スライムといえども油断は禁物。回復薬はいくらですか?」

「たったの100円や!」

「へ!?ラリウスって、日本の通貨なのか!?」


 ナニワの値段の説明に、零夜達は驚きを隠せずにいた。


「ああ。ラリウスでは日本通貨なのでね。他の世界では違うけど……」

「じゃあ、この百円玉でも大丈夫なのですか?」


 零夜はお財布から百円玉を取り出し、それをナニワに見せる。


「問題あらへんよ。むしろそれが正解や!」

「ありがとうございます!では、使いますので!」

「おおきに!」


 零夜が回復薬を手に入れ、これを見たミミ達も回復薬を買い始める。


「おお。嬢ちゃん達も買ってくれるんか。おおきに!」

「日本と馴染のある世界で良かったからね」

「ここに住むのも悪くないかも!」

「やろ?隣には鍛冶屋のマツノスケ、武器と防具屋のスミタロウもいるで!」

「「ウィッス!」」


 ナニワは同じバトルキャット族であり、赤い猫のマツノスケ、黒い猫のスミタロウを紹介し、彼等は返事で返す。


「素材を集めてくれたらいい武器や防具を仕上げるぜ!」

「武器と防具の販売は俺に任せとけ!新入荷したら教えるからよ!」

「ありがとう。じゃあ、クエストに行ってくるね!」

「頑張りや!」


 ナニワからの声援を受け、ヒカリ達はそのままスライム退治へと向かい出した。



 零夜達がホムラの外に出た途端、広大な平原が目の前に広がっていた。穏やかな風が吹いていて、木が所々に立っている。


「ここはアルフリード平原。始まりの場所でもあるのさ」

「凄いところ……なんか欠伸が出そう……ふあ……」


 倫子は欠伸をしてしまい、トラマツが彼女の頭をハリセンで叩く。


「痛っ!」

「昼寝しようとしている場合か!クエストに行くんだぞ!」

「そうだったね。でも、スライムは何処にいるのかな?」


 倫子が辺りを見回したその時、ノースマンが敵の匂いを察する。


「そろそろ来る筈だ!身構えろ!」


 ノースマンの合図で全員が戦闘態勢に入ったその時、スライム達が一斉に姿を現した。


「普通に出てきたけど、油断大敵!一気に攻める!」


 ヒカリは剣と盾を構え、強烈な横一閃の斬撃で数体のスライムを倒す。するとスライムは破裂して素材とお金になったのだ。


「あれ?モンスターを倒すと素材とお金になった!」


 この状況にヒカリだけでなく、ミミと倫子もキョトンとしてしまう。


「この世界ではモンスターを倒すと素材とお金になる。あまり死体は出さないからね」

「そういう事なら、思う存分やらないとね!」


 ミミも負けじと駆け出し、リングブレードを振るいながらスライムを倒していく。更に得意のダンスステップを繰り出し、逆立ちの回転蹴りで多くを倒してしまった。


「ウチも負けへんで!」


 倫子は蹴り技とビンタ、更にはパンチを駆使するだけでなく、スライムを掴んで地面に激突させて倒しまくる。


「なら、俺も!」


 零夜は手裏剣を投げて次々とスライムに命中。多くいたスライムはあっという間に少なくなった。


「残るはビッグスライム!そいつを倒したら終わりだ!」

「ビッグスライムか!どんな奴だ?」


 トラマツの合図に零夜が疑問に感じたその時、普通のスライムよりも大きいビッグスライムが姿を現す。


「普通のスライムとは大違いだな。倒しがいがありそうだ!」


 ビッグスライムはジャンプして波状攻撃を起こすが、零夜達はジャンプして回避する。


「そしてそのまま……襲撃落下!」


 零夜は高くジャンプしたまま、忍者刀を引き抜いて急降下する。そのまま忍者刀をスライムの脳天に突き刺し、見事大ダメージを負わせて破裂させた。

 スライムはそのまま素材と金貨になり、地面に落ちてしまった。


「おお!脳天への突き刺し攻撃!初めてのクエストで良い技を出したみたいだ!」


 ノースマンが零夜の行動に称賛する中、彼は忍者刀を鞘の中に納めた。


「他はどうだ?」


 零夜が辺りを見回した途端、スライム達が次々と出てきて、更には新たなビッグスライムまで出てきてしまった。


「まだ出てくるとは!」


 零夜が冷や汗を流したその時、スライムの一体がミミのオーバーオールの中に入ってきた。


「ひゃっ!?何!?」


 ミミがビクッと身体を震わせた直後、倫子、ヒカリの身体にもスライムがくっついてきた。


「ヒッ!?」


「な、何!?」


 倫子とヒカリもスライムにくっつかれてビクッと震わせた直後、大量のスライムが姿を現す。しかし、ゲスな顔をしており、色はピンクだ。


「あれは変態スライムだ!」

「変態スライム?」

「奴等は女性が好みで服の中に入ってイタズラをしまくるとんでもない奴等だ!」

「ラリウスにはこんなスライムまでいるとは……早く元を倒さないと大変な事になるぞ!」


 トラマツの説明に零夜が冷や汗を流す中、変態スライムはミミ達の服の中に入っていく。


「止めて!ああっ!」

「んやっ!」

「くすぐったいよ!」


 更に変態スライムのイタズラはエスカレートし、そのお陰でミミ達の服も乱れ始めていく。

 しかも中には下半身にも向かっていく奴もいるのだ。


「ひゃうっ!そこは嫌!」

「ひぐっ!助けて!」

「あっ、そこは……止めてェェェェェ!!」


 ミミ達の涙ながらの悲鳴が響き渡る中、零夜は真剣な表情で心眼を発動させる。


(元となるスライムは……見えた!)


 零夜はすぐに目を見開き、一匹のビッグ変態スライムに向かって駆け出していく。

 すると彼の全身から炎が纏われ、そのまま敵に向かって突撃する。


「心頭滅却!火炎車!」


 零夜の炎のタックルが見事ビッグ変態スライムに炸裂し、彼がそのまま破裂したと同時に、スライム達は次々と破裂して素材と金貨になってしまった。


「これで全部か。大丈夫か!?」


 零夜達はミミ達の元に駆け寄ると、彼女達は既に泣いていて、スライムの粘液まみれとなっていたのだ。


「うぇ〜ん!変なところ触られた〜!」

「もう嫌だ!お嫁に行けないよ〜!!!」

「うわ〜ん!異世界に来たのにこんな事になるなんて〜!」


 3人は既に大泣き状態となっていて、零夜は彼女達を抱き寄せて、そのまま頭を撫で始める。


(やれやれ……俺は年下なのに年上の女性の面倒を見るとはな……)


 零夜がため息をついた途端、トラマツとノースマンが彼等に近付く。


「大変な目に遭ったみたいだね……あのスライムは変態行為が好きだから……」

「それを早く言って欲しいぜ……それを知ったらこんな展開にはならなかったのに……」


 零夜はトラマツとノースマンに対してため息をつく中、トラマツはすぐにバッグからシートを取り出す。


「このシートは僕が開発した綺麗シート。スライムの粘液などを取る事ができるから、安心だよ」

「じゃあ、これを使えば粘液も取れるのか」


 トラマツの説明に零夜が納得したその時、ミミ達が泣き止んでトラマツからシートを奪い取る。


「もう大丈夫なのか?」

「大丈夫じゃないけど、見ないでね」


 ミミ達女性陣はスライムの粘液を取る為、そのまま茂みの中に向かってしまう。

 この様子をこの様子を見た零夜達は思わずポカンとしてしまうのも無理はなかった。


「行動力早いな……」

「見たら殺されるから大人しくした方が良いかもね」

「だな……」


 零夜達はミミ達が戻ってくるまで待機する事にし、今後どうするのか話し合い始めた。



「まったく!本当に最悪!」


 茂みの中ではミミが綺麗シートを使いながら腕の粘液を取りまくり、ヒカリと倫子も首や服の中の粘液をシートを使って取っていた。


「うう……まだ中がベトベトする……服を脱がないとね……」


 倫子はつなぎ服の前のボタンを開けて、そのまま肩紐を降ろしてシートで身体をゴシゴシと拭き始める。

 彼女の身体には粘液がまだ残っていて、シートで綺麗に拭き取られていく。


「私達もしておかないと」


 ヒカリとミミもオーバーオールの肩紐を降ろし、綺麗シートを使いながら身体をゴシゴシと汚れを拭き取る。


「よし。上半身はこのぐらいね」


 更にミミ達は靴を脱いでオーバーオールとつなぎ服を脱いでしまい、下半身の汚れも次々と綺麗シートで拭き取った。


「これで全部みたい。気持ち悪かった……」


 ミミ達はオーバーオールとつなぎ服を着直し、ギュッギュッと長さなどを調節しながら着替え終えた。


「よし、これで大丈夫やね」

「ええ……でも、今回の件は本当に最悪でした……」


 ミミは俯きながら落ちこんでしまい、この様子にヒカリと倫子は疑問に感じる。


「今回の件、スライムと思って侮っていた私達にも責任はあります。変態スライムに気付いていたら、この様な事にはならなかったのに……」


 ミミの話を聞いた倫子とヒカリは納得の表情をしてしまう。


「ミミちゃんの言う通りね。私も変態スライムにやられてしまったし、今でもその感触がまだ残っているの……皆からの期待を背負って頑張っているのに……やっぱり私達って選ばれし者達じゃないのかな……」


 ヒカリがお尻を抑えて涙目となり、ミミが彼女の頭を撫でる。


「そんな事ない。今回の失敗で挫けたら駄目。次のクエストで挽回すればいいだけだから」

「ミミ……」

「ミミちゃんの言う通り。ウチ等ならやればできるし、この悔しさをバネにして頑張るのみや」 

「倫子さん……そうですね」


 ミミと倫子に慰められたヒカリは涙を拭き、そのまま3人で円陣を組む。


「今回はやられてしまったけど、次のクエストで挽回あるのみ!明日も頑張りましょう!」

「「おう!!」」


 ヒカリの宣言に倫子とミミが応え、彼女達は零夜達の元へと戻り始めた。



「なるほど。ラリウスでのアークスレイヤーの基地については、6箇所ぐらいあるという事か」


 零夜はトラマツの説明を受けながら、ウインドウのスクリーンに映っているラリウスのマップを見ていた。

 その中の赤い点がアークスレイヤーの基地がある目印となっている。


「そうだ。奴等はこの前戦ったベクトルよりも強い奴等が多くいる。気を引き締めて戦わなければ、全滅する恐れもあるからな」

「要注意という事か……何れにしても戦わなければならないし、更にレベルを上げて行かないとな……」


 零夜が真剣な表情で推測する中、ミミ達が彼等の元に駆け寄りながら戻ってきた。


「もう大丈夫なのか?」

「うん。迷惑掛けてごめんね」

「気にするなよ。さっ、早くギルドに戻ろう」


 零夜達がギルドに戻ろうとしたその時、荷車の音が聞こえる。


「ん?なんだ?」


 零夜が音のした方を向くと、それはマンモスのようなモンスターが檻を乗せた荷車を引いていて男が荷車に乗っていた。


「行商人か?」

「いや、違う……あれは……奴隷商人だ!」

「「「奴隷商人!?」」」


 ノースマンの説明にミミ達が驚く中、モンスターが歩くのを止める。

 すると男が零夜達の方に視線を移す。


「おやおや。そちらの方はクエスト帰りですかな?」

「ええ。そうですが……」

「ウチには奴隷がたくさんいます。お勧めばかりです」

(この世界にも奴隷がいるとは……どうも俺としては複雑だぜ……奴隷制度は嫌いだからな……)


 零夜達が荷車の檻の中の奴隷を見たその時、その中に銀色の髪をした狼族の女性を見つける。

 それはボロボロの服を着ていて、手首に鎖が繋がれていた。


「トラマツ、この女性って……」

「間違いない!メンバーリストの中にいるエヴァだ!」

「「「ええっ!?この人が!?」」」


 トラマツの説明にミミ達が驚く中、エヴァが彼等をじっと見つめる。その目を見た零夜は、すぐに奴隷商人の方を向く。


「すいません。この狼族の女性をください」

「この女性ですね。丁度良かった。実は貴方方にこの女性を渡そうとしていたので、値段はタダとなります」

「へ?タダで良いのですか!?」


 奴隷商人からの説明に、零夜は思わず驚いてしまう。


「ええ。表向きは奴隷商人ですが、選ばれし戦士についてはそれぞれのチームに送る事を目的としています。料金については各神様方が事前に支払っていますので」

「そうですか。では、遠慮なく貰います」


 奴隷商人は荷車の鍵を開け、エヴァの手錠を外して彼女を荷車の外に出す。

 彼女は振り向いたと同時に、奴隷商人に一礼をした。


「毎度ありがとうございます。他に奴隷が必要ならお安くしますよ。今のは選ばれし戦士達。普通の奴隷はこちらです」


 奴隷商人は反対側の檻の方を案内し、零夜達はその中を見始める。

 そこは性格の悪さ、発狂している者、ガタガタ震えている者もいる為、中々良い物が見つからなかった。


「値段も高そうで、良い人がいないみたい」

「見ましたが、遠慮します。また機会があればお願いします」

「そうですか。では、次の機会で」


 奴隷商人が荷車に乗り、そのまま何処かへと去って行く。

 するとエヴァが零夜に視線を移し、彼に視線を合わせる。


「あなた達がメディア様の言っていた戦士達なの?私もそうだけど……」

「ええ。俺達は異世界から来ましたが……」


 するとエヴァが零夜の手を両手を突然掴む。


「なら、お願いがあるの!私の仲間達を助けて!」

「「「ええっ!?」」」


 エヴァからの突然の懇願に、零夜達は驚きを隠せずにいた。


「恐らく何かしらの事情があるに違いない。これは話を聞かないといけないかも知れないな」

「そうと決まればすぐにホムラへ戻りましょう!」


 ヒカリの提案に皆は頷き、そのままホムラへと急いで戻り始めた。


(こりゃどうやら一筋縄ではいかないな……)


 ノースマンに乗っているトラマツは頬を掻きながら、心の中でそう思うしかなかった。



 クエストから帰還してギルドに戻った零夜達は、一部始終を受付嬢に報告する。


「分かりました。まず、クエスト成功として報奨金5000円支払われます。エヴァさんに関してはいかが致しますか?」

「彼女については事情を聞いてから判断しますが、一時は俺達が面倒見ます」

「分かりました。明日、何かありましたらお願いします」


 受付嬢は一礼し、零夜達はそのままギルドを後にする。


「やれやれ。取り敢えずはクエスト完了したし、後は何処か泊まらないとな」

「そうね。ホテルさえあればいいけど……」


 零夜の提案に皆が考え込む中、トラマツが手を叩く。


「それなら僕が用意しているシェアハウスがあるよ。今後君達はこの家に住む事になるから」

「シェアハウスか。ラリウスにもその様な物があるとは驚いたが、良く知っているな」

「ラリウスには現代世界と同じ部分が複数あるからね。以前この世界に君達と同じ現代世界から来た人がいるし」

「そうなのか……どんな人なのか会いに行きたくなるな……」


 トラマツの説明に零夜は同じ現代世界の人に会いに行きたくなってしまうが、すぐに気を切り替えて前を向く。


「けど、今はエヴァの話を聞いてからだ。恐らく何か大変な事があったに違いない」

「そうね。何れにしても手遅れにならない内にどうにかしないと!アークスレイヤーも絡んでいる可能性もあるからね」


 零夜の推測にミミも同意し、ヒカリ達も頷く。


「そうだね。続きはシェアハウスで話を聞くとしよう」


 零夜達の意見にトラマツは同意し、彼等はシェアハウスの方へと向かったのだった。

5人目の仲間であるエヴァと出会いましたが、彼女からの懇願で新たな展開に突入します!

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― 新着の感想 ―
[良い点] バトルキャットも猫っぽいところあるんですね。 というか普通に円使えてるし! こういうアバウトな設定も良いですね。 文章のテンポが良いので、非常に読みやすいです。
[良い点] わあ、普通にギルドが出てきて冒険してますねえ。 久しぶりにバルクルーバーさんの冒険物語が読めてうれしいです。 [一言] 日本円が普通に使えるところで笑いました。 そういうところも好…
感想一覧
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