駆け抜けろ、スカーレットヴァルキリー!
今回は瑠璃香達の話です!
アメリカのオーランドにあるトレーニングジムでは、瑠璃香達が懸命に筋トレを行っていた。
「はっ、はっ!」
エミリーはランニングマシンを最大速度で走っていて、一つも息を乱れずに頑張っている。
「エミリーはスピードとスタミナがあるから大丈夫みたいね」
この様子を瑠璃香がうんうんと頷いていて、ローザが彼女の元に駆け寄る。
「ローザ、モニカ達は?」
「モニカはベンチプレスで200kgを軽々と持ち上げていたわ。ドワーフ族はパワーが強いからね」
「噂には聞いていたけど、ドワーフって力持ちだったのね……」
ローザの説明に瑠璃香は唖然とするしかなく、彼女は更に説明を続ける。
「エリザについては空中技を披露できるし、ユナスは柔術を既にマスターしている。彼女達がプロデビューするのも、時間の問題かもね」
「なるほど……このチームでプロレスデビューしたら、面白いかも」
ローザの説明に瑠璃香が納得する中、睦美が駆け付けてきた。
「睦美、どうしたの?」
「皆!次の興行であるフィラデルフィアのワールドバトルリングだけど、スカーレットヴァルキリーズの紹介で私達全員が試合に出るみたい!」
「「「ええっ!?」」」
睦美からの突然の報告に、エミリー達は驚きを隠せなかった。
「まだデビューしてないのになんで!?」
「いくらなんでもおかしいですよ!それにアメリカプロレスはショービジネス。私達が馬鹿な事をしたら目茶苦茶な展開で大混乱となりますよ!」
「上からの命令には逆らえないし、決まった事だからね」
「そんな!プロレスのルールは分かってるけど、なんだか不安になってきた……」
「私なんか誤って人を殺してしまうかも……」
ローザからの説明にモニカ達はため息をついてしまい、睦美と瑠璃香はこの様子に顔を見合わせる。
「なんか大変な事になってしまったみたいね……」
「うん……下手をしたら人を殺してしまいそうだし、暴走したらクビになるのは確定かもね……」
睦美と瑠璃香はどうすれば良いのか考える中、ローザがすぐにアイデアを思いつく。
「ここは私に任せて!こう見えても私は司令塔の役割を持つから。指示通りに動けば無事に騒動を起こさなくて済むわ」
「ローザさんが指示を出してくれるのですか?私達としては有り難いですが、下手したら大変な事になりそうで怖いかも……」
エミリーが俯きながらファンの表情となってしまい、瑠璃香が彼女の肩を掴む。
「大丈夫。もしもの時には私がいるから。だから、大丈夫!」
「……はい!」
瑠璃香の笑顔にエミリーも笑顔で返し、この様子に睦美達も笑顔になる。
「試合まであと5日あるし、プロレスでの連携も次々と進まないと」
「そうね。後はこの場面でどう動けば良いのかも考えておかないとね。ここの場面でお客さんをどう盛り上げるかが大事だから」
「なるほど。勉強だらけですが、やってやりましょう!」
「その意気よ!さっ、練習再開!」
瑠璃香の合図と同時に皆が練習を再開し、5日後に向けて強くなり始めた。
※
そして5日後、ワールドバトルリングのフィラデルフィア興行が始まりを告げられた。基本的には男性の試合が多く、観客達も盛り上がっている。
「うひゃー……凄い人気……」
バックステージからこの光景を見ていたエリザは、あまりの人気に息を思わず飲んでしまう。
「アメリカのプロレスリングってこんなにも人気があるのね……」
「うん……試合に出るとなるとなんか緊張するな……」
ユナスとモニカも緊張でドキドキ感が止まらず、不安な表情になっている中、ローザが彼女達に近付く。
「大丈夫?不安みたいだけど……」
「ローザ。やっぱり私としても不安だけど……エミリーは?」
ユナスがエミリーの方を向くと、彼女はスクワットを終えて準備完了していた。
「よし!バッチリです!」
「もう緊張は大丈夫なの?」
「ええ!皆がいれば大丈夫です!」
エミリーはエリザの質問に笑顔で答え、瑠璃香、睦美も姿を現す。
「その様子だと準備できているみたいね。次の試合となるけど、円陣を組みましょう!」
瑠璃香達は一斉に円陣を組み、彼女は息を大きく吸い込む。
「この大会は私達の新たなスタート!やるからには勝ちに行くわよ!」
「「「おう!」」」
円陣を終えた瑠璃香達が入場口に視線を移したその時、彼女の入場曲が流れ始める。
「行かないと!」
瑠璃香は入場口から姿を現し、観客達の声援に応える。そのまま歩きながらリングへと入り、すぐにマイクを受け取る。
「皆!今日は大切なお知らせが2つあるの!」
瑠璃香からのお知らせに観客達は突然ざわつき始める。
「まず、私は……今日限りでこのワールドバトルリングから退団します!」
「「「ええっ!?」」」
瑠璃香からの宣言に観客達だけでなく、バックステージにいるエミリー達も驚きを隠せなかった。
「瑠璃香さん、本気ですか!?」
「ええ。彼女、3日前に決断をしたの。今後はあなた達と共に行動をするし、私と睦美も退団を決意したからね」
「私達の為にそこまで……」
エミリーが罪悪感を感じる中、瑠璃香のマイクは続く。
「そして、私は……新たな仲間と共に日本に戻り、新たな戦いを切り開きます!皆、出ておいで!」
「では、行きましょう!」
エミリーを筆頭に全員が頷き、入場口から次々と姿を現した。
「おーっと!瑠璃香の合図で様々な仲間が駆けつけてきた。ローザや睦美だけじゃない!、猫の獣人、ダークエルフ、ドワーフ、吸血鬼!やはり異世界に行ったのは事実だったー!」
エミリー達の姿に観客や実況は驚きを隠せず、逆に彼女達は苦笑いしてしまう。
「うわ……悪い事しちゃいましたかね?」
「いや、悪くないからね」
エミリーが罪悪感を感じる中、ローザが悪くないとフォローする。
そのままエミリー達はリングへと上がり、一列に並ぶ。
「実は私と睦美も退団するの。じゃあ、新たな仲間を紹介するわね」
「まずは、ブルーキャット族のエミリー!」
「宜しくお願いします!」
エミリーは礼儀正しく一礼し、観客席から拍手が起こる。
「ダークエルフのユナス!」
ユナスはウイングで投げキッスをし、観客席からヒューヒュー声が響き渡る。
「吸血鬼のエリザ!」
「ハーイ!」
エリザは笑顔で一礼し、観客席から歓声が響く。
「そして、ドワーフのモニカ!」
「宜しく!」
ドワーフは笑顔で挨拶し、再び歓声が響き渡る。
「私達7人揃ってスカーレットヴァルキリー!今後は日本に活動拠点を移して戦いますので、離れても応援宜しくお願いします!」
瑠璃香達が一礼して歓声が響き渡ったその時、別の入場曲が聞こえた。
「この音楽は……あっ!フローラ・ストームだ!」
するとフローラが入場口から走りながら姿を現し、リングに上がって瑠璃香を蹴り飛ばす。
「ちょっと待った!王者のまま退団するなんて何考えているのよ!」
「フローラ!?なんでここに!?」
「あなた達が異世界に行ってからどれだけ迷惑をかけたと思っているのよ!」
フローラの叫びに歓声が聞こえる中、彼女は瑠璃香に視線を移す。
「あなたが新たなスタートの為に日本へ戻るというのは、良い事だわ」
「う、うん……」
「しかし!私としてはあなたと決着を着けるまで終わらせたくない!私率いるこちらの選抜7人と戦わせてもらうわ!7対7のタッグマッチで!」
フローラが宣言したその時、6人の選手達が次々と入場口から入ってきて、そのままリングへと入ってきた。
「そのまま戦うのですか?」
「そう言う事。メンバーはアイラ・ローウェン、マダム・ライラ、シャーリー・ハート、アレクサ・ベルグマン、エリカ・モンテルラン、リア・レイカー、そして私で行くわ!」
フローラの宣言と同時に、先陣はエリカとエリザが出る事に。そのままゴングが鳴り響き、エリザが先手の蹴りをエリカに喰らわせる。
「よし!先手を取った!」
すかさずエリザがエリカの背後から腰を掴み、離してからの反り投げでダメージを与える。
「あれはホイップ式スープレックス!よく覚えたわね」
エリザの技に瑠璃香が感心する中、彼女はコーナーに移動してエリカが起き上がるのを待つ。
「見えた!」
エリカが起き上がった直後にエリザが駆け出し、左膝蹴りを叩き込んだ。
「ブラッドストライク!」
「がふっ!」
強烈な膝蹴りが炸裂し、すぐにエリザがフォールの態勢に入る。
「1、2!」
「うあっ!」
しかし、エリカは返してしまい、エリザは彼女をコーナーポストにぶつけようとする。
「させない!」
しかし、エリカの蹴りでエリザは尻餅をついてしまい、すぐに両者はコーナーに戻って瑠璃香とフローラにタッチした。
「今日こそ終わらせる!」
「こっちもよ!」
瑠璃香とフローラの取っ組み合いが行われ、場外でもアイラ達がエミリー達に襲い掛かってくる。
「やはりこうなるわね!」
「戦うしかありません!」
エミリー達もすぐにアイラ達に立ち向かい、場外乱闘が行われた。
「これは激しい場外乱闘!下手したらヤバいことになるぞ!」
「あーっと!アイラが椅子を持ってモニカに襲い掛かる!」
アイラが椅子を振りかぶってモニカに攻撃しようとするが、なんと片手で止められてしまった。
「今度はこっちの番!」
「ガラハッ!」
するとモニカの強烈な張り手がアイラに炸裂し、その衝撃で飛ばされて後ろにいるアレクサに激突する。
「決まった!この展開は読めなかったが、ドンピシャでアイラとアレクサをダウンさせた!」
「エミリー!」
「はい!」
エミリーは素早く客席前の仕切りの上に登り、ジャンプしてからのセントーンで見事追い打ち攻撃をかける事に成功する。
「セントーン!なら、こっちも!」
すかさずユナスはリアの腕を掴み、そのまま腕ひしぎ十字固めでダメージを与える。
「ああーっ!」
「エリザ!」
「よっしゃ!」
エリザはすかさずジャンプキックでエリカの顔面を捉え、そのままボディスラムで床に彼女の身体を打ち付ける。
「瑠璃香!こっちは私達に任せて!」
「あなたはフローラに集中して!」
「分かったわ!」
エリザとユナスの掛け声に瑠璃香は頷き、回転しながらのビンタ攻撃でフローラにダメージを与える。
「まだまだ!」
瑠璃香は左腕でフローラの頭を抱え、ブレーンバスターの要領で垂直に担ぎ上げる。そのままフローラを自らの前方の方に抱え、自ら開脚し尻もちをつくようにマットに落下した。
「決まった!ファルコンアロー!」
「ガハッ!」
フローラは瑠璃香の脚の間に背中から叩きつけられ、フォールを取られてしまう。
「1、2!」
「あーっ!」
しかし、フローラは維持で返し、エミリーがリングに上って彼女を立ち上がらせる。
「エミリー!
「ここは私がやります!あの技で終わらせますので!」
「何するの!?」
エミリーの行動に瑠璃香が疑問に感じる中、彼女はフローラの腕を前で交差させて後ろからその両手を掴みながら股の間に頭を入れ、肩車をする。
「あの技は……もしや!?」
「ええ!ジャパニーズ・オーシャン・サイクロン・スープレックス!」
エミリーはそのまま後ろに倒れてブリッジをし、フォールに入る。
「1、2、3!』
スリーカウントが決まり、この勝負は瑠璃香達の勝ちとなった。
「決まったー!エミリーがフローラを倒した!デビュー戦での大金星炸裂!新たなヒーローの誕生だー!」
エミリーの勇姿に大歓声が起こり、彼女は一礼しながら応える。
「まさかエミリーがジャパニーズ・オーシャン・サイクロン・スープレックスを決めるなんてね。もしかすると良いレスラーになれるかも」
瑠璃香はエミリーに期待を寄せつつ、倒れているフローラの方を向く。
「フローラ……これで勝負は私の勝ちね」
「うう……正直予想外だけど……勝ち逃げするなんて許さないんだから……」
フローラは涙を流しながら天井を見上げ、すぐに立ち上がって瑠璃香の方を向く。
「私はこの団体に残るけど、あなたとの戦いは終わっていない!必ず……日本に来るから!」
「その時は……返り討ちにしないとね!」
瑠璃香とフローラはがっちり握手を交わし、歓声が響き渡る。
「ライバル対決はまだまだ続きそうですね」
「ええ。私達も精一杯負けずに頑張らないとね」
「そうそう。明日から引っ越しもあるから手伝ってね!行き先は既に決まっているから!」
「「「マジですか……」」」
エミリー達はこの様子を見て微笑んでいたが、睦美からの依頼にヘナヘナと座り込んでしまった。
※
それから翌日、エミリー達はワープゲートを使って荷物を次々と転送させる事に成功し、引っ越しは僅か数時間で終わらせる事ができた。
「お疲れ様!後はアメリカから日本へ向かうのみね」
「日本には零夜達がいるけど、彼等も課題が始まるまでトレーニングを欠かさずやっているかもね」
「私達もここで止まる理由にはいかないからね。皆、新たな場所である日本でも頑張りましょう!」
「「「おう(はい)!」」」
瑠璃香の掛け声に皆は一斉に応え、彼女達はそのまま日本へと向かい始めたのだった。
瑠璃香達はワールドバトルリングを退団し、日本へと帰国。ここから新たな物語が始まりを告げられます!




