プロレス大会での出会い
今回から本編スタートです!
東京にある後楽園ホール。そこではプロレスの大会が行われようとしていて、多くの観客やファンがその場所へと向かっていた。
「ここで試合が行われるのね」
キャップを被ったピンクヘアでロングシャツと青系のオーバーオールを着ている女性が、隣りにいるジャケットと黒のカーゴパンツを着ている男性に声をかけた。
「ああ。俺の憧れの人である藍原倫子がシングルマッチに挑戦するからな。俺もこの瞬間を待っていたけど、相手があのボンバイだ。その時が来ると何だかハラハラしてどうにかなりそうだぜ……」
男性の名は東零夜。彼は根っからのプロレスファンだが、自身もプロレスラーになる為、毎日トレーニングを欠かさず行っている。
彼は今、憧れの人である倫子が試合に出る事を知っていて、心臓の鼓動が止まらずにいて落ち着く事さえできなかった。
「落ち着きなさいよ。その時の為に私が付いているじゃない」
「悪いな……ミミ姉。いつも側にいてくれて」
「別に貴方の為じゃないんだから」
零夜の幼馴染でプロダンサーの春川ミミが、彼の手をギュッと握って落ち着かせる。
零夜はミミに礼を言った途端、彼女はプイッと横に向きながら素直じゃない反応をしてしまった。
すると観客の一人が彼女に視線を移す。
「あれってプロダンサーの春川ミミじゃないか?」
「隣にいるのは彼氏なのか?」
観客達は一斉に零夜とミミに注目し、彼女は思わず背筋を伸ばしてドキッとしてしまう。
おまけに顔もますます赤くなっていて、今でも爆発しそうな勢いだ。
(あ、これは不味いかも……!バレてしまったら終わりよ!)
ミミは心の中でそう思いながら零夜の手を取り、そのままダッシュで駆け出して後楽園ホールの中へ向かい出す。
「ミミ姉はプロダンサーだからバレてしまうよな……それに有名人となると流石にバレたら大事になるし」
「確かにね……私としてはフリーとして活動しているけどね……チームも先月退団したし……」
「チームを退団?」
零夜はミミの突然の告白に驚きを隠せず、思わず立ち止まってしまう。
「うん。私は更にレベルアップする為にダンスの技術を上げていきたいからね。それに私は自ら決意を固めたし、後悔はしていないから!」
「そうか。それなら俺からは何も言う事は無いな。俺も筋トレや受け身を継続しておかないとな」
「あまり無理はしないでね。怪我したら困るから」
「分かってるよ……」
ミミに指摘された零夜はそっぽを向き、彼女は思わず微笑んだ。
何はともあれ彼等は無事に後楽園ホールの中に入ったのだった。
※
それから数十分後、プロレス団体『ドリームレッスルバトラーズ』の大会が始まりを告げた。
第1試合から選手達が派手に活躍しているが、レスラーの菅山弘樹が相手である黒田哲三に恐喝されて正座させられる展開もあった。
「何て言った?」
「いや、何も言ってないです」
黒田からの威圧に菅山は正座しながら否定する。
「お前、俺を馬鹿にしているだろ」
「むしろしていません」
「よし!歯を食いしばれ」
「これじゃ、いつもと変わらねー!」
「「「ハハハハハ!」」」
菅山は黒田に立たされてしまい、観客達は大爆笑。この様子にミミは唖然とした表情をしてしまう。
「ねえ、零夜。これも日常茶飯事なの?」
ミミは唖然としながら隣りにいる零夜に質問し、彼は真剣な表情をしながらリングの法に視線を移していた。
「ドリームレッスルバトラーズは文化系プロレスだ。こんな展開もあるのは日常茶飯事だからな」
「なるほどね……悪口を言い合いながらも争いもよくやるとしか言えないわ」
零夜の説明にミミが唖然とする中、黒田のハイキックが菅山の顔面に激突する。
『おーっと!今のハイキックは効いた!』
実況が叫んでいる中、黒田が菅山を抑え込む。
「1、2!」
「うわーっ!」
だが、菅山のこの試合のパートナーである谷口大輔が慌てながら駆け出し、見事黒田に飛び付いてカットする事に成功した。
「邪魔するんじゃねえよ!」
「終わっちゃうからね!」
黒田が邪魔した事に腹を立てるが、谷口が正論で反論する。すると菅山は谷口に交代してリングから降りて、黒田はパートナーである弟子の室山裕貴にタッチしてリングから降りた。
「パートナーに交代したみたいね。あれ?」
すると菅山が黒田から逃げまくり、零夜達の方に向かっていた。
「違います!これはその……もう少し大人しく話をしましょうよ」
「お前のいう事なんか誰が聞くか!」
「ちょっと!こっちに来るわよ!」
この光景にミミ達は思わず叫び、観客達は席を立って移動し始める。
「この場合は選手から離れておく事が前提だ。巻き込まれたら怪我をするからな!」
「なるほどね。私達も移動しないと!」
零夜とミミが席を立って移動したその時、菅山は彼の姿を見つけて、思わずササッと零夜の後に隠れてしまう。
「何やっているのですか!?」
「シーッ、見つかるから……」
零夜の叫びに菅山が静かにしてくれと注意するが、黒田はジーッと零夜を見つめて、すぐに菅山の行方を察知する。
「もうバレているぞ!お前が東の後ろに隠れている事は分かっている!こいつを盾にして隠れるんじゃねえ!」
「ひえっ!」
見つかってしまった菅山は全速力で逃げてしまい、黒田は彼を追いかけてしまう。
「この二人……本当に仲が悪いみたいね……零夜を盾にしていた菅山さんも悪いけど」
「ああ……これに関しては俺からも何も言えないからな……先が思いやられるぜ……」
零夜とミミはこの追いかけっこの展開に唖然とするしかなく、すぐに席に戻り始めた。
この試合の結末は谷口が室山を竜巻旋風脚で倒し、見事スリーカウント。菅山組が勝利したが、菅山が黒田を馬鹿にした為、彼等の追いかけっこが再び始まりを告げられたのも無理なかった……
※
第2試合も終わりを告げられ、いよいよ第3試合である倫子の試合が始まろうとしていた。
「そろそろね……」
「ああ。この時を待っていたぜ!」
零夜が興奮する中、倫子の入場曲が響き渡り始める。すると青コーナーの入場口からガウンを纏った彼女が姿を現した。
「零夜は彼女に憧れてプロレスラーを目指しているけど、仕事帰りにプロレス道場に通っているの?」
「ああ。ドリームレッスルバトラーズの道場に通っているし、誰よりも早くデビューする為に頑張っているからな。その為にも人一倍努力するのみだ」
「まあ、零夜ならそう言うと思ったわ。諦めの悪さは天下一品だからね」
零夜の熱心な回答にミミが苦笑いする中、倫子がロープを跨いでリングインをしてコーナーへ登り始める。
『青コーナー、京国のジャンヌ・ダルク!藍原倫子!」
倫子が観客からの歓声に応え、すぐにコーナーから降りて自身のコーナーへと移動してガウンを脱ぐ。そのコスチュームは白いオールインワンで、赤のネクタイリボンが付けられていた。
(頑張れ、倫子さん!)
零夜は心の中で倫子に声援を送る中、対戦相手の入場が始まろうとしていた。
※
「ここに3人の戦士達がいるのか?」
その頃、後楽園ホールの外では、ノースマンが自身の背中に乗っているトラマツに質問していた。彼等は既にワープゲートを利用してこの世界に来ていたのだ。
「ああ。レーダーによればこの後楽園ホールにいるみたいだ。メディア様が言っていた奴等がいるのは間違いない」
「なるほど。その前に敵がいないか確認しないと……」
ノースマンが辺りを見回したその時、後楽園ホールから歓声が聞こえる。
「今、試合が行われているが……メインになっているのか?」
「いや、倫子の試合である事は確かだ……よし!すぐに向かうぞ!」
トラマツはワープゲートを起動し、ノースマンと共に迷わず飛び込んだ。
※
後楽園ホール内では倫子とボンバイ末松のシングルマッチが白熱していて、倫子のハイキックが見事ボンバイに炸裂する。
「今のは効いたわね」
ミミが今の攻撃に推測したその時、ボンバイは突如息を荒げてしまう。
「このパターン……まずい事になりそうだ……」
零夜がこの光景を見て冷や汗を流した途端、ボンバイが倫子を挑発する。
「カモン!カモン!」
「はっ!」
倫子がボンバイの胸にハイキックをしたその時、彼がいきなり興奮してしまい、コスチュームを脱いでTバック姿となってしまった。
「なんで脱いだの!?おかしいでしょ!」
ミミは赤面しながら顔を抑えてツッコミを入れるが、零夜は冷静にリング上を見つめている。
「彼は変態集団「マキシマム」のメンバーだからな……特にボンバイは興奮すると脱ぐ癖があるし、とんでもない変態と言われているからな……」
「変態集団!?ざけんじゃないわよ!こんなユニットがいたら殴りたくなるわ!」
「けど、観客達は好評だけど……」
怒り狂うミミに零夜が他の観客達の方を指差すと、歓声を上げながら応援していた。
「嘘でしょ!?」
この光景にミミが驚く中、倫子は冷や汗を流しながら怯え始める。
(まさかこんな状況になるなんて……逃げたくなりそうだけど、やるしかない……)
倫子がすぐに戦闘態勢に入ったその時、この光景を見た一人の男がマイクを手に取り始める。
「おいおい!何やっているんだ!これは流石にまずいだろ!」
GMの松本博が思いっ切り叫んだと同時に、席から移動してリング上に上がり、ポカンとしているボンバイに近付く。
「Why?」
「生中継だぞ!そんな事していいと思うのか!?しかも、女性相手にその様な事をしていいと思っているのか?」
するとセコンドのダンディ飯原がリングに上がり、ボンバイの隣に移動して松本に抗議する。
「良いじゃねえか。お客さん喜んでいるだろ」
「喜んでいるとしても、教育上良くないから!お前らみたいな奴等がいるから、うちの団体は馬鹿ばっかりと噂されるんだ!」
(確かに納得するわね……)
松本の叫びにミミが納得する中、ダンディが彼の肩を叩く。
「邪魔をするならこっちだって考えがあるぞ」
「何をするつもりだ!?止めろ!」
ダンディは松本の頭を掴み、その合図と同時にボンバイは屈んでおしりを松本に向ける。
「カモン!」
「オーライ!」
ダンディはそのままボンバイのお尻にそのまま松本の頭を埋めさせた。
「うわっ!?これはキツい……」
「大丈夫かな……」
すると倫子が動き出し、ダンディの側頭部をハイキックで蹴り飛ばす。その衝撃でダンディは仰向けに倒れてしまった。
「Oh,ダンディ!」
ボンバイが叫んだその時、倫子がボンバイのお尻を蹴り飛ばし、そのまま彼をミドルキックで側頭部に当てる。
するとボンバイはダウンしてしまい、倫子がフォールを取る。
「1、2、3!」
スリーカウントが決まり、倫子が見事勝利。その直後に歓声が響き渡った。
「只今の試合、10分23秒!勝者、藍原倫子!」
勝利コールが告げられ、レフェリーが藍原の左手を上げる。
「一時はどうなるかと思ったけど、勝って良かった……」
「ええ。けど……どうするの、この有り様?変態達を含めて3人倒れているわよ……」
リング上ではボンバイ、ダンディ、松本が倒れていてこの有り様にミミは唖然としていた。まあ、この様な有り様を見れば誰だって唖然とするのも無理ないだろう。
「あっ、若手達が駆け付けて3人を運び始めたぞ」
零夜が指差す方を見ると、若手レスラーや練習生達が駆け付けてきた。
そのまま倒れている3人を運び始め、それぞれの場所に移動した。
「やれやれ。取り敢えずは無事に終われて良かった……ん?」
ミミが安堵のため息をついたその時、リング上に突如丸い形をしたワープゲートが姿を現す。
「何だ!?」
「ワープゲート!?」
「どういう事!?」
突然の事態に皆が驚く中、ワープゲートこ中からトラマツとノースマンが出てきた。
「狼と猫!?」
「ど、どういう事なの!?」
トラマツとノースマンの姿を見た皆が再び驚いてざわつく中、トラマツはマイクを手に取る。
「皆さん、試合の邪魔をしてすみません。少しお時間宜しいでしょうか?」
「別に構わないけど……」
トラマツからのお願いにリング上にいる倫子は承諾する。
「ありがとうございます。僕の名前はトラマツ。こいつはノースマンと言います」
「こいつとは何だ、こいつとは!」
「「「ワハハハハ!!」」」
二人の漫才風の自己紹介に思わず観客席から笑い声が聞こえる。
「失礼しました。実は僕等、異世界であるゴッドエデンから来ましたが、とある勢力によってこの世界を含めた全ての世界に危機が迫っています」
トラマツの説明の途中、スクリーンに画面が映り、アークスレイヤーの皇帝であるザルバッグが姿を現す。
その姿は白髪で若い男性の姿だが、カリスマ性があってオーラを放たれていた。
『この世界の皆様、ご機嫌よう。私がアークスレイヤーの皇帝ザルバッグだ』
「この人は宿敵アークスレイヤーの皇帝、ザルバッグ。多くの世界を簡単に陥れる実力を持っている……つまり、全世界の敵なのです!」
(こいつがザルバッグ……見た目だけでなく、背中から最強のオーラを放っている。手強そうだな……)
ザルバッグの姿を見た零夜は、思わず心の中で息を呑んでしまった。
『なお、これはこの世界全てに配信されているので、よく聞いておく様に』
「電波ジャックか!何が目的だ!?」
『簡潔に言えばこの世界を我々アークスレイヤーが支配する事だ。既に他の世界は陥落している』
すると映像が切り替わり、破壊された街、多くの死人、アークスレイヤーの旗が映されていた。
「なんて有り様だ……」
「嘘でしょ!?」
「これ、全てアークスレイヤーがやったのか!?」
「ええ。奴等がマジでやりました!抵抗した者は次々とやられてしまい、男性は処刑、女性は奴隷として扱われています」
観客達の驚きの声にトラマツが真剣に答える。その内容を聞いた観客達は恐怖で怯えてしまい、零夜は冷や汗を流していた。
『どんな国が相手でも、我々の強さには敵うまい。だが……選ばれし7人となれば別だがな……まあ、猶予については1年間を与えるとしよう。それまでお前達がどう動くかだな……』
映像が切られたと同時に会場が不安でざわつく中、トラマツは観客達の方へ視線を移す。
「ザルバッグが言った通り、対抗できるのは選ばれし7人。彼等こそ切り札になるという事で……僕等は彼等を探しにこの世界に来ました!」
「しかも、この後楽園ホール内に3人います!」
「3人も!?その人達って一体……」
ミミが疑問に感じる中、トラマツはそのメンバーの名前を読み上げ始める。
「まずは一人目、東零夜」
「俺!?」
トラマツに名前を呼ばれた零夜は驚きを隠せず、観客達は一斉に歓声を上げる。
「零夜、凄いじゃない!あなたが選ばれるなんて」
「まさか俺が選ばれるとは驚いたが、なんでなのだろうか……?」
ミミが零夜の肩を掴んで褒めるが、彼が何故自分が選ばれたのか疑問に感じる中、トラマツは次のメンバーを読み上げ始める。
「春川ミミ」
「嘘!?私も!?」
ミミも選ばれた事により、彼女も驚きを隠せずに辺りをキョロキョロと見回してしまう。
「そして、藍原倫子!以上3名です!」
「私も!?」
倫子も選ばれてしまった事に口に両手を当てながら驚いてしまい、この光景に観客席から歓声が上がる。
「頑張れよ、藍原ー!」
「ミミちゃんも頑張れー!」
「ついでに零夜も頑張れよー!」
「おい、俺はついでか!」
零夜が観客達の声援にツッコむ中、彼とミミは席を立ち、リングの中に入り始める。
「では、意気込みを!」
「選ばれたからにはやるしかないけど、必ず奴等を倒してみせます!」
「私のダンスパワーで皆に元気を与えるわ!」
「私もファンの皆やこの世界の皆の為にも、必ず勝ちに向かいます!」
3人の宣言に歓声が響き渡り、零夜達は一礼してリングから降りた。
※
「ったく、いきなり出てくるとは驚いたぜ……それにしても、今の話は本当なのか?」
大会終了後、控室では零夜がトラマツ達にため息をつきながら質問し、ミミと倫子は苦笑いをするしかなかった。
「事実だよ。それに奴等が君達の世界を狙っているのは本当。それに対抗するには7人の力が必要なんだ」
「それで私達が選ばれたのね」
トラマツの話に倫子は納得するが、何故か彼女は彼を抱いている。
「なんで僕を抱くの?」
「倫子さんは猫好きだからな……」
「それなら問題ないけど……」
「それで良いのかよ……」
零夜の説明にトラマツは頬を掻いて苦笑いするが、ノースマンは唖然とした表情をしてしまう。
「でも、発表されたの私達だけとなっているけど……他にはいるの?」
ミミが気になった事をトラマツに質問し、彼は勿論コクリと頷く。
「いるよ。この世界にあと一人。あと僕等の世界であるラリウスに3人いる。ラリウスに行く前にその一人を探さないと!」
「そうね。で、その人の名前は?」
「この人さ」
トラマツはメンバーの一人が載っている写真を零夜達に見せ、その姿にミミは驚きの表情をする。
「この人って……歌のお姉さんの国重ヒカリさんじゃない!」
すると零夜もヒカリについてある事を思い出す。
「そう言えば、ミミ姉はかつての番組でヒカリさんと共演した事があったな……その時は俺は付き人となっていたけど、なんで彼女をスカウトに?」
「それは彼女も君達と同じく隠された力があるからだよ」
「「「隠された力?」」」
3人が疑問に感じる中、零夜がすぐにある事を思い出す。
「そう言えば昨日の夜……俺、夢の中で女神様と出会っていた……確かその人は緑の髪をしていて……俺には忍者の力があり、攻め込む敵を倒す力を持っていると……」
「それこそメディア様だ。メディア様は人の隠された能力を見通す事ができるし、頼りがいのある女神様だよ」
零夜が見た夢の話にノースマンが説明し、ミミと倫子も昨日見た夢を思い出す。
「そう言えば私も同じ夢を見た……確か様々な能力を使うモデルレスラーだって」
「私も二人と同じ夢を見たけど……選ばれたのは偶然じゃないという事ね」
「その通り。君達が選ばれたのは、夢の中にメディア様に出会えたのが証拠だ。おそらくヒカリもこの夢を見ていたに違いない」
ノースマンが倫子とミミにも説明し、話を聞いた零夜はすぐに立ち上がる。
「やるからにはその責務を果たすだけだが、アークスレイヤーの好き勝手にはさせない!戦う覚悟は何時でもできている!」
零夜の燃えるような炎の決意に、ミミと倫子はお互い頷き合う。
「選ばれたからにはやるしかないわ!」
「ウチも覚悟はできている!」
「それなら、善は急げ!適性ガンで皆の戦闘姿に変えてあげるよ!」
トラマツは懐から銃の様な物を取り出し、零夜達に狙いを定めて光線を当てる。
「「「うわっ(キャッ)!!」」」
するとボワンと爆発が起き、煙の中から忍者の姿をした零夜と、オーバーオールのダンス服であるミミ、青いデニムの袖無しつなぎ服の倫子がいた。
「俺は忍者か!悪くないな!」
「このデニムのつなぎ服、いいかも!」
零夜は忍者の姿にガッツポーズを取っていて、倫子はデニムのつなぎ服の姿にポケットに手を突っ込みながら感心しているが、ミミは不満な顔をしていた。
「どうした?」
「これ、いつもの服じゃない!そりゃ、私はいつもオーバーオールを着ているから分かるけど、なんで戦う時にこんな恰好なの?」
(ああーっ……ミミ姉はいつもこの格好だったからな……動きやすいし……)
ミミはいつもオーバーオールを着ている服装である為、その姿を見た零夜は心からそう思い、彼女に責められているトラマツは苦笑いをする。
「いや、君はこの方が似合うと思って……それに、動きやすくていつも気に入っているじゃないか」
「それはそうだけど……」
トラマツの説明にミミがムゥと感じる中、零夜が間に入って彼女を落ち着かせる。
「まあまあ。それよりもこの事をヒカリさんにも伝えておこうぜ。敵がいつ攻めてくるのか分からないからな」
「そうね。手遅れになる前に急がないと!私からヒカリさんに連絡しとくね」
零夜の推測にミミは落ち着きながら頷き、すぐにヒカリに連絡し始める。
「やれやれ。皆にも伝えたけど、私が選ばれた事に驚きを隠せずにいたわ。こうなると公演は当分欠席となるし、ファンの皆にも迷惑が掛かるかも知れないけどね」
「俺もですよ。会社にも伝えないといけませんし……」
「零夜君も苦労しているのね。よしよし」
「俺は子供じゃないですが……」
倫子は零夜の頭を右手でよしよしと撫でまくり、彼は頬を赤く染めながら、反論する。
「この様子だと恥ずかしがっているみたいだな」
「あのな……」
零夜はピクピク顔を引きつらせながらトラマツを睨みつけ、ノースマンは唖然とするしかなかった。
※
その夕方、零夜達は待ち合わせの場所である新宿通りに来ていて、皆は私服姿で来ていた。倫子の私服はロングシャツにジーンズというラフスタイルでへそ出しが特徴となっている。
「そろそろ来るはずだけど……」
ミミが右手首に付けている腕時計を見たその時、ストレートヘアにお団子ヘアを付けていて、赤いTシャツと青系のオーバーオールを着ている女性がトボトボと落ち込みながら歩いているのを見かける。
「あっ!ヒカリさんだ!けど、落ち込んでいる様な……」
ミミはヒカリがいつもと違う様子に気付き、彼女の元にすぐに駆け寄る。
「どうしたのですか?いつもと違いますが……」
「ミミちゃん……うう……うわーん!!」
ヒカリは突然涙を流しながらミミを抱き締め、突然の展開に零夜達も彼女達の元に駆けつける。
「ヒカリさん、何かあったのですか!?」
「実はね……私……歌のお姉さんを……クビになったの……」
「「「ええっ!!??」」」
ヒカリからの涙ながらの告白に、零夜達は驚きを隠せなかった。
「なんでクビになったのですか!?あれ程人気なのに……」
「何か事情があるかも知れないわね。ともかく彼女の家で話を聞きましょう。ここじゃ目立ってしまうし」
「そうですね。場所を変えましょう!」
倫子の提案にミミ達も頷き、零夜達はヒカリを連れて彼女の家へと向かい出した。
※
「なるほど……あれがメディアが選んだ四人の戦士達か……」
一方、この光景を高層ビルの屋上から、フードを被った男がこっそりと見ていた。
「一先ずは様子見と行こう。我々アークスレイヤーの脅威となる存在なら、全力で始末するのみだ。例え誰が相手であろうとも……容赦はしない!」
男はそう叫んだ後、その場で魔法陣を展開してその場から姿を消したのだった。
零夜、ミミ、倫子が戦う事を決意しましたが、ヒカリが歌のお姉さんをクビになってしまう事態が!
何があったのかは次回で明らかに!




