訓練の先に見えた物
今回で訓練回は終わりとなります。
零夜達とヒューゴ達の戦いは6対4で零夜達がリード。現在はヒューゴ達の陣地内で激しい戦いが繰り広げていた。
「くっ!」
零夜はヒューゴの攻撃を紙一重で回避し、地面に着地して間合いを取る。
「ナイトストライク!」
すかさずヒューゴが剣を構えて駆け出し、零夜に襲い掛かる。
「はっ!」
零夜も跳躍して回避し、手裏剣を構えて次々と投げ飛ばした。
「今のところは両軍互角。その均衡は何時になったら終わるのか?」
ラビリンが熱心に実況をする中、トラマツはこの状況を見て真剣に考える。
「ヒューゴの強さは零夜と互角だが、これはどうやら一筋縄ではいかないみたいだな……」
「ああ……カギとなるのは連携だ。上手く成功すれば良いが……」
トラマツとノースマンが冷や汗を流す中、ユンリンが銀を鎖に変えてそのまま倫子を捕まえようとする。
「させへん!」
しかし、倫子は左手から炎の球を生成して投げ飛ばし、見事鎖を溶かしてしまった。
「鎖が!」
ユンリンは鎖が溶けてしまった事に驚いたその時、倫子が駆け出してハイキックを彼女の頭に見舞う。
「う……」
ユンリンがよろけた直後、倫子がユンリンを前かがみにさせて左腕を取り、肩からまたぐように右脚を絡ませ固定、さらに右腕もコブラツイストの要領で固める。
「この技は……!」
零夜がこの状態を見てすぐに察した直後、倫子が右手で天を指差す。
「いきます!」
倫子が高らかに宣言した直後、そこから右腕を相手の股下にまわして自分ごと前方に大きく空中回転、ユンリンを地面に叩きつけそのままフォールした。
『1、2、3!』
ラビリンがカウントを数え、そのままフォール勝ち。ユンリンは敗者ゾーンへと転移させられた。
『ユンリン、倫子のケツアルコアトルによって失格!これで6対3だ!』
「プロレスラーを舐めたらアカンで」
倫子が手を叩きながら宣言した直後、エヴァも負けじと紬の魔法攻撃を回避し、彼女の身体にスピアータックルを炸裂させる。
「がっ!」
紬が弾き飛ばされた直後、すかさずエヴァが紬の腕を前で交差させて後ろからその両手を掴みながら股の間に頭を入れ、肩車をする。
「あの技は……ジャパニーズ・オーシャン・サイクロン・スープレックス!」
「「「ええっ!?」」」
ラビリンの叫びにトラマツ達が驚いた直後、エヴァはそのまま後ろに倒れてブリッジをし、フォールに入る。
『1、2、3!』
スリーカウントが再び決まり、そのままフォール勝ち。紬も敗者ゾーンへと転移された。
「なんだ今の技は!?こんな技は見た事無いぞ!」
予想外の展開にヒューゴが驚く中、零夜はすかさずハイキックで彼の顔面に蹴りを入れる。
「が……」
ヒューゴがよろけて武器を落としてしまったその時、零夜は彼の足首を掴んでそのまま回転し始める。
「ジャイアントスイング!」
「うわああああ!」
強烈な回転でヒューゴは目を回してしまい、そのまま投げ飛ばされて地面へと激突する。
「よし!ここで……」
零夜が止めを刺そうとしたその時、ヒューゴはそのまま敗者ゾーンへと転移させられてしまう。
『ヒューゴ失格!キャプテンである彼がやられてしまった為、試合終了です!』
「「「へ!?」」」
ラビリンのアナウンスが響き渡り、その場にいた零夜達はポカンとしてしまう。
「どういう事?」
『言い忘れましたが、キャプテンが倒されたと同時に試合終了となり、倒されたチームは負けとなりますので』
「それを早く言ってくれよ……」
ラビリンの説明に零夜がため息をつく中、倫子が彼の肩を叩く。
「まあまあ。勝ったんだから気にしないの」
「そうね。本当は皆で勝ちたかったけど」
「そうだな……今回の戦いで色んな事を学んだからな。次もどう活かすか考えないと」
零夜の真剣な表情に倫子達も頷き、彼等は元の場所へと転移した。
※
「今回活躍無かった……」
「私だって活躍したいのに……」
「守りばかり……」
練習試合が終わりを告げて元の場所である修練場に戻ったが、活躍できなかったミミ、ヒカリ、アミリスは不貞腐れていた。
「ごめん……活躍させなくて……」
「アタイもユンリンにやられてから自らの力不足を感じたよ。もっと頑張らないとな」
この光景に零夜は謝罪していて、ソニアは力不足を痛感して意気込みを入れていた。
「それにしても驚いたよ。まさか俺をぐるぐる回して投げ飛ばすなんて……」
「まあ、プロレスという格闘技を学んでいるからな」
「プロレス?」
零夜の説明にヒューゴは首を傾げてしまう。
「俺達の世界の格闘技だ。受け身によってダメージを軽減できるのが特徴で、様々な技を繰り出す事ができる。魔力も無いから簡単に出せるけど」
零夜の説明を聞いた蓮太郎は、すぐに彼に近づく。
「それだ!なんでそれに気付かなかったんだろう!」
「蓮太郎!」
「聞いていたのか!」
人魂状態の蓮太郎の叫びに、零夜とヒューゴは彼の方を向く。因みにヒューゴ達はクロエから話は聞いている為、普通に接しているのだ。
「パラースのオールキャンセルは、魔力を全て空にして、能力を封じてしまう恐ろしい技。けど、魔力を使わない攻撃をすれば即解除できる効果を持つのです!」
「じゃあ、プロレスがカギとなるのか!もしかすると勝てる可能性があり得るな」
零夜は拳を握ってチャンスを感じるが、蓮太郎は不安な表情をする。
「けど、パラースは闇のレクイエムという爆発技を持っています。それを防ぐ事ができれば……」
蓮太郎が考えたその時、ヒカリが手を挙げる。
「私のミラーシールドなら、オールキャンセルを放った時に弾き返す事ができるわ!いくらパラースでも魔力を封じられたら、闇のレクイエムは出せないからね」
「なるほど。けど、相手はそれを無効化するスキルやアイテムを持っている可能性があります。奴はどんな手を使っても勝ちに行きますし」
ヒカリの提案に蓮太郎は納得するが、まだ不安な表情をしてしまう。
「となると、ここは私のホークアイがカギとなるわね。私は相手のアイテムや能力を一瞬で看破できるわ」
「盗むのならアタイと零夜に任せな!忍者、アサシン、盗賊は道具や技を盗むのは得意の内だ」
「おお!それなら心強い!」
アミリスとソニアの説明に、蓮太郎は喜びの表情をする。
「後は相手が不正をしてないかだ。その事については俺達で暴いてみせるよ」
「ヒューゴさん、何から何まですみません」
「気にするな。困っている人を放っておける理由にはいかないからな」
ヒューゴの笑顔に蓮太郎も釣られて笑顔になったその時、彼はある事を提案する。
「でしたらお願いがあります。クロエとユンリンについてですが、ヒューゴさん達に託そうと思っています。彼女達の事をお願いできますか?」
「えっ?俺が?」
蓮太郎からの頼みにヒューゴが思わずキョトンとしてしまう。
「ええ。生き残れたのは彼女達のみ。俺は死んでしまいましたし、天国に行くのも時間の問題。だからこそ、彼女達を放って置く理由にもいきません。そこで、ヒューゴさんにお願いしようと考えたのです」
「なるほど。蓮太郎が死んだとなると、クロエとユンリンはどうなってしまうか分からない。この事については放って置く理由にも行かないな」
蓮太郎の説明にヒューゴは納得し、クロエとユンリンの方を向く。
「クロエ、ユンリン。蓮太郎がいなくなった以上、俺がお前達を守り通す。彼の意思を継いでこのラリウスを守る為にも」
「ヒューゴさん、宜しくお願いします!」
「こちらこそ!」
ヒューゴの決意にクロエとユンリンが一礼した直後、アカヤマが彼女達をじっと見る。
「アカヤマ?」
「最後の二人が不明だったが……昨日、君達を調べた事で明らかになった。クロエとユンリンもアフロディア様の選ばれし戦士達だという事を!」
「「「ええっ!?」」」
アカヤマの説明にヒューゴ達は勿論、零夜達も驚きを隠せなかった。
「じゃあ、俺達のチームも揃ったという事か!」
「ああ!ヒューゴ、紬、バルク、フリード、ガンテツ、クロエ、ユンリン。これでアフロディア様のチームが揃ったぞ!」
アカヤマの宣言にヒューゴ達は喜び合う。
「やったっす!これでエヴァさん達に追い付いたっす!」
「まさかこのタイミングで人数が揃うとはな」
「そうじゃな。おいもこん事をどれだけ待ち望んじょった事か。最高に嬉しかでごわす!」
ガンテツがガハハと笑っていたその時、紬が手を挙げる。
「後はチーム名ですが、どうします?」
「決まっている。シャイニングナイツ。光の騎士団。俺達はこの方がピッタリだからな」
「悪うなかち思うでごわす。さあ、訓練ん続きじゃ!」
ガンテツの叫びと同時に、零夜達は気を引き締めて準備体操を始める。
「ヒューゴ達もメンバーが揃った以上、俺達も負けられない!」
「そうね。私達だってこの世界の命運を託された以上、負ける理由にはいかないわ!」
「その通り!さっ、2本目行きましょう!」
アミリスの合図に全員が頷き、バトルオブスレイヤーの2本目に取り掛かり始めた。
※
訓練を終えた零夜達は、マツノスケの鍛冶屋で蓮太郎の形見の武器を見せる。
「なるほど。村雨とグラムね。それじゃ、やってみますか!」
マツノスケが武器を壺の中に入れた途端、壺の中が光り輝き始める。
「壺から光が!」
「合成成功の合図だ」
すると壺から一本の忍者刀が飛び出し、マツノスケがキャッチして零夜に渡す。
「村雨改。村雨の武器の性能は勿論、グラムの能力も追加されている。更にサービスとして相手の魔力を全て奪う能力も追加した!」
「ありがとな。サービスまでしてくれて」
「気にするな!パラースとの戦いにはこの能力が効果的だからな!必ず奴を倒してくれよ!」
「任せてくれ!」
マツノスケからのエールに零夜はガッツポーズで応える。
「訓練は明日も続くし、クエストもしっかりこなしておかないとね」
「ええ。レベルアップして私達も強くならないといけないし、今のままでは絶対に勝てないからね」
「何が何でも絶対に勝たないと!」
ミミ達もパラースを倒す事に気合を入れていて、この光景に零夜も頷く。
「取り敢えず今日は家に戻ってゆっくりしよう。明日も忙しくなるぞ!」
「「「おう!」」」
零夜達はギルドを後にし、明日の訓練に備える為、自分達の家へと戻り始めた。
※
その頃……とあるエリアでは神室とパラースが二人で話をしていた。
「メンバーについてはある程度揃っているのか?」
「ええ。勿論揃っています。以前と同じメンバーですが、いい戦士達を沢山揃えていますので」
「ほう。では、呼んで来てくれ」
「了解。出て来い皆!」
パラースの合図と同時に、6人の戦士達が姿を現す。彼等は実力派揃いで最強クラスだ。
「紹介しましょう。槍使いのヘルガー」
「ウス!」
青い短髪のヘルガーは神室に対して潔く一礼する。
「ビショップのアンリ」
「宜しくお願いします」
魔法使いのアンリは、丁寧に一礼する。
「アサシンのトン、チン、カン。三つ子で連携が得意」
「「「宜しくお願いしやす」」」
三つ子は後ろを向いて、神室に対して屁をこいた。
「馬鹿野郎!何してくれてんだ!」
神室は怒ってダイナマイトを用意し、指先から炎を出す。
「そ、そのお仕置きは!」
パラースが慌てて止めようとしたが、既に遅し。炎によってオナラが引火し、その場で大爆発を起こしたのだ。
「「「ぎゃああああああ!!」」」
この場にいる全員が爆発に巻き込まれて黒焦げとなり、三つ子に関しては尻部分の服が破れて仰向けに倒れていた。
「オナラって……引火して爆発する物なのか?」
「知りませんよ。あと一人は……」
パラースが辺りを見回した直後、一人の女性が降り立つ。それは黒いボブヘアで和服を着ていた。
「誰だお前は?」
「私は国重カンナと申しやす。この戦い、ウチも参戦してもらいまひょか」
「可笑しいな……確かもう一人の部下はアリウスだった筈だが……まあいいや。アリウスに何かあったのか?」
神室の質問にパラースは俯いてしまう。
「昨日、突然の事故に巻き込まれて亡くなったと聞きました。ですが、その穴を埋める為にカンナが入ったのです」
「なるほど。よく見ると頼りになりそうだな」
「ええ。因みに俺よりも強いですから……」
パラースは説明した後に退屈座りで落ち込んでしまい、三つ子が起き上がって彼の方に視線を移す。
「お前はリーダー失格だな」
「「全くだ」」
「余計な事を言うなバカヤロー!」
トンの指摘にチンとカンも同意し、パラースは怒りの表情で叫び返す。
「本当に大丈夫なのか?」
「分かりません。けど、パラースはんに関しては少し利用させてもらいまひょか。倒したい奴がおってはるさかい。ククク……」
(こ、怖いな……もしかすると……何かが起ころうとしている……的中しなければいいが……)
カンナの黒い笑みに神室は後退りしてしまい、その様子に彼は不安な表情をするしかなかった。
次回はいよいよ決戦です!




