因縁の再会
今回で第二章はクライマックスです!
「申し上げます!クロモリ支部も破壊され、ヒューラーが死亡する事態に!倒したのはメディアとリリィの選ばれし戦士達です!」
アークスレイヤーの本部では、兵士からの報告にザルバッグは怒りで顔を強張らせていた。
「メディアによる選ばれし戦士達だけでなく、リリィまでも反抗するとはな……他の所はどうなっている?」
「ラリウスでは既にアクルー支部もヒューゴ達に討伐、クロラスタル支部も勇者レンタローによってやられてし、ラリウスにある支部は全滅となりました!この件に関しては征服を辞退するしかありません!」
「もう良い!下がれ!」
ザルバッグは椅子の肘掛けを叩きながら兵士を下がらせ、一人になった彼は大きなため息をつく。
「まさかラリウスで手強い奴等がいるとは予想外だった……こうなるとラリウスに関しては最終手段を用いるしか無いのだろうか……」
ザルバッグがうむむと考えていたその時、一人の男が彼の前に姿を現す。それは紫色の髪をしていて、銀色のスーツと黒いサングラスを着用していた。
「お前は神室。何しに来た?」
神室と呼ばれた男はザルバッグの質問に笑みを浮かべる。
「ラリウスの侵略が失敗に終わり、ピンチになっていると聞きました。支部が次々と破壊されている以上、俺がラリウスの征服に向かいます」
「なるほど……だが、神室は7騎士の一人である以上、お前の出番はまだ先となる。それにここでお前が倒されたら、7騎士は大混乱になってアークスレイヤーはピンチになる。反逆者の選ばれし7人が決まるまでは大人しくしておいてくれないか?」
神室の説明にザルバッグは納得するが、今後の心配を考えながら彼に説得をする。
「なーに。俺はここで倒れませんよ。それに……ラリウスに関しては俺じゃなくて俺の部下に向かわせます。俺はただ挨拶をするだけですから。この顔に傷を負わせた奴をね!」
神室がサングラスを取りながら恨みの表情をみそる。その顔面には右側の額から頬までの長さとなっている傷跡が残っていた。
「挨拶だけなら良い。くれぐれも怪我と戦いは起こすなよ?」
「分かってますって」
神室は後ろを向いてその場から立ち去り、再び一人になったザルバッグはウインドウを開いて現在の戦況を確認する。
「他の世界でも苦戦している所があるが、奴等程は強くない。私の野望を成し遂げるまでは死ぬ訳には行かないからな……」
ザルバッグは天井を見上げながら自身の野望を達成する決意を固め、その拳は強く握られていた。
※
エルフの森では零夜達と瑠璃香達が、エムールにヒュルセルクを倒した事を報告していた。
「そうか。これで我等の居場所は大丈夫となるな。礼を言うぞ」
「いえいえ。大した事ないですよ!」
「そうそう。皆の力で倒したからね」
エムールの礼に零夜は苦笑いし、アミリスも同意する。
「けど、これでラリウスに関しては大丈夫かな?」
「どういう事?」
「帰り道にアンから聞いた報告ではヒューゴや勇者のレンタローが2つの支部を破壊したし、ラリウスにあるアークスレイヤー支部はこれで全部無くなったからね」
睦美は自身が感じた疑問を説明するが、エムールは首を横に振る。
「いいや。まだ倒すべき敵が一人残っている」
「倒すべき敵?」
「そいつの名は……」
エムールが言い切ろうとしたその時だった。
「俺の部下であるパラースだ!」
「その声……もしや!」
突然の声に零夜がすぐに気付いた直後、神室が彼の前に姿を現した。しかもサングラスは外している。
「神室……まさかお前が来るとはな……」
「ああ……久しぶりだな、東……忘れはしないぜ!この傷を!」
神室は額の傷を指差しながら叫び、倫子達は零夜に視線を移す。
「何があったのか教えてくれへん?」
「ええ。あれは小学生の頃でした……当時の俺は苛められっ子だった……」
零夜はそのまま当時の頃を、この場にいる全員に語り始めた。
※
俺は学校に来る度に毎日の様に机に落書きをされていて、いつも消していた。
「またこんなイタズラを……」
俺が落書きを消した途端、神室と取り巻き二人が駆け寄ってきた。
「東。今日もまた落書きを消していたな。何もできないお前が俺達に抵抗しても無駄なんだよ」
「その割にはいつもテストで0点取っているじゃないか」
「口答えするな!」
「がはっ!」
俺はあいつ等に口答えや反論した途端、殴られてしまい、酷い時には急所への蹴りなどの暴行もあった。けど、それでも俺は何度でも立ち上がり、虐めに耐え続けていた。
※
そんな日々が続いたある日、ミミ姉が俺にある提案をしてくれた。
「格闘技?」
「うん。それを習えば神室達にも勝てるし、あいつ等は集団で行動しているからそれほど強くないからね」
「だったら受けるよ。もう虐められるのは終わらせたいしな」
ミミ姉からの提案に俺は勿論受ける事を選び、全ての格闘技を学ぶ極道場へと入門。そこは地獄の訓練だったが、諦めずに見事乗り越える事ができた。
※
それから数日後、放課後の学校で俺は神室達と相対する。
「ほう。俺達を倒す為に戦いを学んだか。だが、勝てるのか?」
「やってみなければ分からないぜ」
「お前等、やれ!」
取り巻きの二人が俺に襲い掛かるが、素早く回避したと同時に一人の頬を殴り飛ばし、奴は吹っ飛んで地面に激突して倒れた。
「もう一発!」
更に左ストレートでもう一人も吹っ飛ばしてノックアウトし、残るは神室となった。
「こ、こいつ!」
神室が襲い掛かったと同時に、俺は手刀で奴の顔面を切り裂く。
「ぐおっ!」
「終わりだ!」
そのまま強烈な左アッパーで顎を打ち捉えて殴り飛ばし、最後は右フックで奴の頬を捉え、拳で地面に叩きつけた。
「これに凝りて虐めは止めなよ」
俺は奴等にそう言い放ち、その場から立ち去った。
※
「その翌日に奴等の姿はなく、転校していた事が判明。そして神室は高校生の頃に事故で死んでしまったが……まさかここで転生していたとはな……」
零夜が話を終えたと同時に、神室を鋭い眼差しで睨みつける。
「あの二人は俺と共に転生したが、途中で山賊に殺されてしまった。ピンチになった時にザルバッグ様と出会い、山賊達を殺して助けてくれた」
「彼がいるからこそ、今のアンタがいる訳ね……どおりでそうなると思ったわ」
神室の説明にミミは納得しつつ、零夜と同じく鋭い眼差しを向ける。
「今すぐでも東と戦いたいが、ザルバッグ様の命令で戦う事はできない。こうなると……東達には反逆者の代表を決めるトーナメントで優勝してもらわないとな」
神室が零夜達に告げたその時、瑠璃香が彼に接近したと同時に、デコピンで弾き飛ばす。
「がっ!?」
「「「!?」」」
瑠璃香のデコピンで弾き飛ばされた神室は地面に仰向けで激突してしまい、この光景に誰もが驚きを隠せずにいた。
「零夜君達だけじゃないわ。私達も反逆者の一人だからね。それに、優勝するのは私達も同じ気持ちなの。勝手に優勝させないでくれるかしら?」
瑠璃香の鋭い睨みだけでなく、彼女の背後には鬼の形相をした鎧武者の幻影が映し出されていた。
「うぐ……世界的団体の女子王者に言われちゃ、言い返せないぜ……」
デコピンを受けた神室はヨロヨロと立ち上がり、額を抑えながら零夜達の方を向く。
「まあいいや……トーナメント後にまた会おうぜ……絶対に……死ぬなよ……」
神室はその場から転移して姿を消し、零夜は瑠璃香の方を向く。
「ありがとうございます。神室を追っ払ってくれて」
「気にしないで。けど、まさか彼との間にこんな因縁があったなんて……」
「奴とは必ず因縁をつけなければなりませんし、諦めない理由も一つ増えましたからね。ここで立ち止まる理由には行かないですから」
零夜は背伸びしながら決意を固め、瑠璃香は彼の肩に手を置く。
「私達も負ける理由にはいかないし、アークスレイヤーを倒すのは同じ気持ち。戦うのはトーナメント決勝でね」
「ええ!その時は宜しくお願いします!」
零夜は瑠璃香に笑顔で返した直後、倫子が突然手を挙げる。
「どうしたのですか?」
「いや、トーナメントなんやけど、どの様な試合形式で戦うのか分からへんよ。もしかしてプロレスなのかな?」
「プロレス?」
倫子の疑問にソニア達は疑問に感じる。
「私達の世界の格闘技よ。多彩な技を繰り出して戦うからね」
「それならやってみたいです!」
「アタイもやってみるか!」
瑠璃香の説明にエミリー達は参加する決意を固める中、エヴァがある事に気付いて手を叩く。
「それなら皆のコスチュームも用意しないと駄目かもね」
「それなら裁縫は私に任せて!」
エヴァの提案にエリザが裁縫道具を持ちながら笑顔で応えたその時、トラマツが手を叩く。
「その事だけどさ。プロレスについてはトーナメントでの試合に入るけど、もう一つの試合があるんだよね」
「どんな内容なの?」
「7対7で戦うバトルオブスレイヤーだ」
「「「バトルオブスレイヤー?」」」
トラマツの説明にミミ達が首を傾げる中、アンがウインドウを開いて説明を始める。
「森林、草原、火山などの用意されたフィールド内で戦う試合なの。戦士達はそれぞれの能力や武器などを使って戦い、相手陣地のフラッグを取るか全滅させれば試合終了。やられてしまった戦士は敗者ゾーンへと強制転移させられるから、命の危険性が無いわ」
「そうなのね。死んだらどうしようかと……」
アンの説明にミミは安堵のため息をつき、ヒカリ達も同様に安堵していた。
「アークスレイヤーでも行われているけど、向こうではルールが一つだけ違うの」
「そのルールって?」
「敗者チームは容赦なく罰を受けるという事よ」
「「「罰!?」」」
アンからの説明にミミ達は一斉に驚きを隠せなかった。
「罰にも様々な種類があるが、男性はその場で殺され、女性は奴隷として扱われる。メイドや家事担当、更には風俗までも……」
「そこまでは言わなくていいわ。こうなった以上は奴等を殺す覚悟だから……」
ミミはリングブレードを光らせながら怒りの炎を燃やし、倫子達も目を光らせる。
その様子を見た零夜達は、素早くその場から離れてしまう。
「あ、これはアークスレイヤーも終わるのは近いかも……」
「怒らせてはいけない奴等がいるからな……」
「確かに。けど、奴等を甘く見ては駄目だからね。何を仕掛けてくるのか分からないし」
「そうじゃ。恐らくパラースも何かを仕掛けてくるに違いない。勇者を倒そうとしたりする事もあり得るからのう」
エムールの話を聞いた零夜は、突然胸に手を抑えてしまう。
「どうした?」
「何か嫌な予感がします……もしかすると……ラリウスの勇者が殺されそうな……」
零夜の不安な予感を聞いたエヴァは、後から彼を抱き締める。
「エヴァ?」
「大丈夫。彼等は私達ラリウスの最後の希望として言われているわ。特に勇者レンタローは転生でここに来たけど、最後まで諦めない覚悟を胸にどんな困難も乗り越えてきたの」
エヴァの説明にアミリス達もうんうんと頷く。
「ええ。レンタローだけじゃなく、怪力僧侶のモルク、ビショップのクロエ、聖騎士のアルム、ハンターのクラウス、錬金剣士のユンリン、そして格闘家のゴルドラスの7人で構成されているの」
「そのチーム名はホープガイアと呼ばれているし、担当神はオーディンとなっている」
「ホープガイア……もしかすると、トーナメントでは必ず出場するし、手強いライバルとして降臨するかもな……」
アミリスとソニアの説明に零夜は考える中、すぐに前の方を向く。
「ここで悩んでも始まらない!彼奴等に追い付く為にも鍛錬あるのみだ!」
「零夜の言う通りね。けど、まずは戦いの疲れを癒やしてからにしましょう。ヒュルセルクとの戦いの後に寝ていたじゃない」
「そ、そうだったな……」
零夜の宣言にミミ達も頷くが、彼女からの指摘に彼は赤面してしまう。
「じゃあ、今日はゆっくりするか……風呂でも入りたいし」
「それなら桜が見れる温泉が近くにあるわ。今から案内するわね」
「本当!?楽しみにしているわ!」
アミリスはヒカリ達を連れて温泉へと向かい、その様子をエムール、トラマツ、ノースマン、アンの四人が見ていた。
「もしかすると彼等ならこの世界……いや、全ての世界を救う事ができるじゃろう。特に零夜という青年はまだ見ぬ力を持っておる」
「えっ!?零夜が!?」
エムールの推測にトラマツ達は驚きを隠せずにいた。
「うむ。彼は忍者としては少しずつ成長しているが、その才能を開花するには様々な経験が必須となる。もしかすると……レンタローを超える大物になるかも知れんぞ」
エムールの説明を聞いたトラマツとノースマンは、ミミ達と共に温泉に向かう零夜の方に視線を移す。
(東零夜……もしかすると俺達は、物凄い奴を手に入れたかもな)
(あいつこそがアークスレイヤーを倒す真の勇者なら、ミミ達と共に徹底的に強くさせないとな!)
トラマツとノースマンは零夜達を強くする決意を固め、お互い頷き合う。
(零夜が真の勇者か……こちらも負けてないわね!)
アンも零夜達に負けずに瑠璃香達を強くさせようと決意を固め、彼女達の元へと向かったのだった。
※
その頃、とある平原では赤い髪をした青年が、夕日を見ながら黄昏れていた。
「基地が破壊され、残りは俺だけ……」
青年がポツリと独り言を言ったその直後、神室が背後から彼の元に近付く。
「パラース。ラリウスで残ったのはお前一人となったな……」
「神室様。全くその通りです」
神室の声に気付いたパラースは、すぐに片膝をついて神室に敬意を示す。
「これからどうするつもりだ?」
「今から奴を倒しに向かいます。ラリウスに大打撃を与える為にも……」
「勇者一行か……だが、ラリウスでは最強と言われている存在だぞ。勝てるのか?」
パラースの行動に神室は大丈夫なのかと疑問に感じ、彼にその事を質問する。
「心配無用です。必ず成功してみせます」
「そうか。なら、無理はするなよ!」
「はっ!」
パラースは駆け出したと同時に空を飛び、そのままレンタロー一味を倒しに向かい出した。
「さて、この結末はどうなるかだな……」
神室はポツリと呟いたと同時に、その場から背を向けて去って行った。
※
それから翌日、零夜達はエルフの森からそれぞれの帰路に向かう事になった。
「アミリス。選ばれし戦士として、最後まで諦めずに戦うんじゃぞ。お前はわし等エルフの誇りじゃからな」
「ええ。必ず!」
エムールからのエールにアミリスは笑顔で応える。
「私達はスパークルへ戻るわ。倫子達はどうするの?」
「私達はホムラに戻るわ。また会える日を楽しみにしているから!」
「ええ!私もよ!」
瑠璃華達は魔法陣を展開し、そのままスパークルへと転移して姿を消した。
「じゃあ、俺達も」
零夜の合図にアミリス達も頷き、彼等も魔法陣を展開してホムラへと転移した。
(アミリス、ブレイブペガサスの戦士達よ、アークスレイヤーの野望を終わらせる事を信じておるぞ!)
エムールは心の中で零夜達にエールを送った途端、穏やかな風がエルフの森に吹き始めたのだった。
零夜と神室。二人の因縁の戦いは先となり、零夜にはまだ見ぬ力があると判明されました!
次回から新章が始まります!ご期待ください!




