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卑怯な非転生者


初めは自分自身も勘違いしていた。俺はすぐれた転生者だと。いや、そう暗示をかけていたのだ。ずっとその暗示を頼って生きていたのだ。


そう、あの時までは。


『あれは異世界の超人の生まれ変わりらしい』


 山々にかこまれる北のエスラン地方、その地域じゃエファーという赤に竜の紋章をあしらった旗を掲げる冒険者ギルド緑にかこまれたなかで二匹の竜を飼い巨大な城をもつ巨大マンモスギルドで、自分の直ぐ傍で一回り年齢が下の後輩冒険者が突然に名前をあげて台頭しはじめたあのとき、やつはまだ10代だった。それまでの俺は、ただたんに自分よりレベルの低いものたちにかこまれ、名をあげ、それによってライバルと同等の評価を得るために、冒険をや狩りをつづけていた。そんな戦い方とレベルのあげ方に疑問を抱き始めたのは、やつの活躍があったからだ。


常人離れした筋力。さわやかな言動と容姿。10代に似つかわしくない落ち着いた態度と身のこなし、あの青髪の転生者。


 やつが同じギルドに配属され、俺の暮らしはかわった。俺もそれまでのように、レベルの低い敵ばかりを相手にして名を上げるだけではやつと肩をならべて生き残ることがむつかしくなり。奴と同じ仕事をするときには、やつのハイエナのようにやつの力をこっそり利用して、点数だけを稼いできた。その時にすら自分の卑怯さにはまだ気づいていなかった。いや気づいていないふりをしていたのだ。いつも俺は、腰抜けのように、自分より弱いレベルの低い敵ばかりを借りつくしては、周りに自慢をしていた。時にうそをつきながら。やつと同じ仕事をするときには、やつの切りかけた敵にとどめをさして、名を上げる、(やつは退屈なのか、自分より強い敵をよわらせてもとどめを刺さないこともあった)そんなことばかりをやってきたのだ。


 そしてライバル自身にもライバルと認められた後の数か月後、直接対決をするギルド主催の冒険者同士の決闘大会がひらかれた。これが鬼門だった。俺の人生の中で最大の。卑怯とはいえど仲間内にやつ以外の敵はいない。途中までギリギリで勝ち進んだが準々決勝で、ほとんど卑怯なだましうちやこけおどしによってかち、そして今までの自分冒険者としての名のあげ方の神髄を理解する。俺はつねに、あの転生者に、いやそれだけじゃない、ほかの冒険者が死に物狂いで戦っているのをよこからかっさらって名声だけをてにしようとしてきた。だから、準決勝、決勝ですら、言葉巧みに敵を懐柔、錯乱させることに成功した。


だが最後の敵は転生者、並大抵の知識量と、貫禄ではない。一度人生を体験して転生してきた人間なのだ。俺は転生者の直ぐ傍で、小さいころ、レベルの低い魔物を大量に勝って、あいつを驚かせることばかりしていたが、それによって同じような評価をうけていたが本来はやつと肩を並べるようなそんな人間じゃない。

『俺はすぐれている、そう思い込んでいたから、俺はこんな卑怯な手の内と戦術を自分で許容できていた』

勘違いしたからいままでたたかってこれたのに、やつの勝ち上がり方をみて、俺は、死を覚悟した。やつはほとんど再起不能なほどまでに、敵をなぎ倒していく。なくなく俺は準決勝から決勝まですすんだが、やつとの直接対決だけは、体と心が拒絶して、戦場の外で交渉を試みた。ギルドの裏手に彼をよびだし、決勝前、俺はやつにこうかたりかけた。あのひたすらおおきな城門と城と竜の見下げる中で、城壁のそと、さらに見下ろす城下町をみて、おれは恥をかいて頭をさげた。


『もうやめにしないか』

『お前が卑怯なことはすでにしっていた、だが、その卑怯さもお前の武器だ、お前はライバルだ。お前がここで真実を語っても同じことだ、その思い違いをわすれるな、卑怯なだけではここまで勝ち上がることはできない、おまえは確かにてをぬいていたが、手を抜いても勝ち残れたその知恵を誇れ、そして底抜けにある卑怯さの中の自信を忘れるな』

(だが)

俺がたちつくし、しどろもどろしているとやつはつづけた。それはいつの日か小さな10代のころ

、やつに向けて俺が放った言葉のひとつだった。欺瞞にまみれた言葉の。

『人には人の戦い方がある』


 決勝では結局ぼろ負けだった。奴にもやはり情があったようで、俺を再起不能なほどまでにうちのめすけがをさせたりはしなかった。それが余計くるしくて、俺は、いままでの卑怯な戦い方を恥じ、しかし、重要な時にだけは必ず、卑怯でありつつも、これまでよりも多少なりとも成長するようにと、あいつに近づけるようにと力を徐々に発揮するように試みた。弱りかけた敵を倒すだけではなく、敵が弱っていない場合でもにげることをせず、また戦術を立て直し、最後には多少分が悪くても、自分の実力を伸ばし、その分だけ強い相手と戦うようにと。



その後の俺は、彼の言葉の意味を理解し自分の実力を理解しながらも、無謀な争いをさけ、無難な戦いを続け、一流の冒険者として名をはせるようになった。

俺には俺の、やつにはやつの戦い方がある。あの戦いで俺はそれをしったのだ。


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