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緑の雨  作者: 二笠
深紅の人柱
70/97

068

「おや?」


 丁度、立食式の夕食会が始まったばかりで、隣に居たレオンと対面しているカントリー子爵夫妻が私の声に疑問の表情を向けた。


「ユリア様、何か問題がありますか?」


 丁度、トンネル工事の話をしていて、南部の端っこにあるカントリー子爵領内に建造予定である大陸横断駅と、南北直通地下鉄の駅を別に作るか同一にするかという話を聞いていたところだった。ノールさんの説明に何か問題はない。問題は無いけど、今の私に起きた事は大問題かもしれない。


「ああ、いえ、工事の話では無く、こっちの話です。うーん・・・ダメね。繋がらないわ」


「何かあったのか?」


「?」


 隣に立つレオンの疑問と、意味不明だという顔のカントリー子爵婦人では少し表情が違う。彼女の場合は何言ってんだコイツ風味が少し混ざる。レオンの場合は、こういう事を言った嫁は何か問題を抱え込んだ時だと真剣で事態を察した顔をする。


「うん。古代遺跡の調査に同行したゴーレムが急に接続できなくなった。マッズイわねぇ。実家に近い場所なんだけど、今はお母さんもこっちに居るわ」


 パーティの最中だというのに雑な言葉になってるけどしょうがない。子爵婦人も驚いた顔をしている。男二人は深刻そうな顔になった。


「その遺跡は氾濫の危険でもあるのですか?」


「不明。可能性は高いかもって言う感じね。防備を固めつつ調査用ゴーレムを追加で送るわ。決戦用も必要かも」


 決戦用とはブラウ達の素材で作り出したワンオフゴーレムである。パワードスーツになっており、例えばブラウが自分の素材で作ったゴーレムに乗り込んだ場合、ブラウの竜気と共鳴して一時的に小型のドラゴンとなって戦える。小型と言っても3メートルから20メートルにサイズが可変する。普段はそれぞれの竜船に積み込んである。


 しかもスーツはオレイカルコスを基本としているので、生態的な変化も可能になっている。パワードスーツから大型機動兵器ドラゴンへの変態も許容しているヤベェゴーレムだ。尚、一般人がワンオフパワードスーツゴーレムを着込むと、魔力消費量が多すぎて命に係わるので、あの4姉妹か私じゃないと乗り込めない。故にゴーレムでの自律行動が最も汎用的な使い方になる。遠隔汎用で使っても凄い勢いで魔力が吸われていくけどね!


 何で今頃になって作ったのかと言うと、空間魔法の魔法陣を多用して送り込む形で運用する想定だったので、私の空間魔法レベルが上がるのを待っていただけという背景がある。


「あぁ、あれか」


 レオンは知っている。何故なら城内の近衛騎士団訓練場で試験機動を手伝ってもらったから。因みに祖父親父息子と目がキラキラしていた。レオンが乗った場合、数分でダウンしたけど。


「なんですか、また恐ろしげなものを作ったんですか」


 ノールさんは私をマッドサイエンティストかなにかと思ってるのかね? 一応、周囲への影響もある程度は考えて作ってるんですよ? 考え無しみたいに言わないで頂きたい!


「普通ですー、至って真面なゴーレムですー」


「あはは・・・」


 ノール嫁の乾いた笑いから察するに、ノール嫁にどんな話が伝わっているかは想像が付く。きっと好き勝手言ってるに決まってる! ゴーレムに人の血が使われてるとか!


 あれ?でもドラゴンの血は使ってるな。魔力の導線として毛細血管を作ってあるので、これまでのゴーレムとは一線を画すからな。そう考えると割とマッド・・・。


「マッドじゃない!」


「そうは言ってないだろう」


 レオンにノールさんを庇われた。納得いかない。それより現地確認だ。急がねば。如何にA級冒険者のハイネさんと言えど、魔王クラスが相手だと死ぬかもしれない。


 世界樹に突入した時の事を思い出した。腕を無くした母と腹を食い破られた夫。屈強なギルマスも強力な闘気を貫通して足を無くしていた。ハイネさんも同じ目に合ってやしないかと、心なしか鼓動が速くなってきた。


「それはともかく・・・」


 急いでブラウ達に連絡して領都ユリアに居る面子で緊急発進してもらった。メンバーはシャルルとブラウだ。シージはディーネ専属教育係となったので、あの二人からは放した。


 あの外道やっぱ危ないわ。人のモノを盗むわ、人の食事を横から掠めるわ、人の魔力を奪うわで盗賊かと突っ込みたくなってくる。思わずシーフと呼びそうになった。暫くは人間的な常識を教育してやらないと使い処が無い。シージで教育できないなら少し考えないとな。


「ん。ブラウとシャルルが向かった。夜だから仕事終わりで丁度良かった」


「まぁ、ブラウなら何とかなるか」


「そうね。ディーネには絶対に任せられないわね」


「うむ」


 カントリー夫妻にも竜機人四姉妹の事は伝えてある。ブラウには会ったことあるし、シャルルもだったか? ディーネの事も竜機人だと認識してもらえる。


「色々と御苦労されていそうですね」


 ノールさんがサラリという。


「龍の時から外道だった子が居るからね。魔導国の気質なのかと疑ったくらいだわ」


 不満げにしているとアナ姫が旦那を連れてやって来た。王国西開発に関わっている商人たちが来ていたのだが、挨拶は一通り終わったらしい。西部開発は既にアナ姫に任せる事になっている。お陰で私は仕事量が少しだけ減った。


「お姉様は何で怒ってらっしゃるの?」


「ディーネの素行不良に頭を悩ませているそうだ」


 アナ姫は私がこっちに戻ってからは、私の事をお姉様と呼ぶようになった。呼ばれるたびに背中がゾワゾワするのでまだ慣れない。これ、慣れる時が来るのか?


「眷属なのに素行不良って、問題児なのねぇ」


 アナ姫が軽く言う。


「使い魔とは違うんですよ」


 所謂、召喚獣はこの世界ならではのもので、私の前世知識の通りに呼び出した魔法使いに従属する。だけどブラウ達と召喚獣は違う。明確な主従じゃなくて、ただの養子の娘みたいなものだから、何となく契約で縛ったりとかはしたくないし、していない。


「それで、何故あの子たちの話に?事件ですか?」


 こういうところは鋭いアナ姫。永い事貴族社会で生きてきただけある。でも目が爛々として何かに期待しているのが丸わかりである。こんなんで西部の商人たちと渡り合えるのだろうか。


「古代遺跡で遠隔操縦していたゴーレムが繋がらなくなってしまいまして、捜索にブラウ達を向かわせたわけです。ハイネさんが先行調査に潜っているので心配なんですよね」


 また一つ溜息を吐くと、現地にパワードスーツを着込んだブラウとシャルルが現れた。そのまま緑色の結界の一部と合体させたゴーレム式開閉扉を操作し、二機の巨体を入れてあげた。どう見ても小型の二足歩行ドラゴンだよなぁ。威圧感凄いわ。


 足裏のタイヤで石造りのタイルを擦って進む二機を眺めつつ、手元の白ワインを躍らせる。ゴーレムとの接続は切れたからブラウ達も念話が切れるかもしれない。考え始めてワイングラスの淵を下顎の唇に付けた。良い匂い。


 こっちに戻ってから、一度あの念話の性質を調べたのだが、やっぱり元素魔法と同質の魔力を使った通信だった。恐らく主従関係が構築されると、勝手に魔法的な繋がりが出来るのだと思う。それが元素魔法の魔力に酷似していた。


「つまり古代遺跡は元素魔法で構築されている・・・?」


「そうなのか?」


 独り言をうっかり喋ってしまうと、少し気恥しい気持ちに頬を赤らめつつレオンに返事をした。


「魔力で動いているから、魔力で作られた遺跡なんだろうって事は解ってるんだけどね。どんなふうに元素魔法を使って作られたかは知らないのよ」


 世界樹に関する事ならキリシアの残した資料で把握しているんだけどなぁ。ついでに残しておいてくれよと思わなくもない。


「では、どうしてそう思われたのですか?」


 質問してきたノールさんに眼を向けて答えた。


「遺跡内部は元素魔法に似た魔力が漂ってて、元素魔法を使ったゴーレムは内部に入ると操作出来なくなるのよ。ゴーレムが通信に使う魔力と周囲に漂う魔力は似通っている。そうするとお互いの魔力が邪魔をする。つまり魔力の混合が起こる訳ね。でも今回のは基礎魔法と空間魔法で作ったゴーレムだったから問題ないと思ったんだけどなぁ」


 変だよねぇ、と言いつつワインを飲む。うむ、美味しい。妊娠していない内に飲んどくべきだな。


 そもそも黒い霧を発する魔力が出ていたって事は、神癒魔法と打ち消し合う魔力もあったという事か? そうなると空間魔法も打ち消し合うかもしれない。でもなぁ、魔王ソロモンは意識しないと空間魔法を消せていなかった。つまりあの黒い霧はそこまで気にする類のものじゃないと思っていたんだ。


 暗黒魔法の相対魔法は空間魔法か否か。これはイエスだった。エンバーとコールに協力してもらい、実験済みである。暗黒魔法も転移等を可能としている為、二人は影や暗闇さえあれば、そこから転移できるという。それ良いな、便利と思って羨んだけど、二人が言うには空間魔法の方が使い勝手が上と言われた。隣の芝生だったか。


 つまりは空間魔法と黒い霧に関係のある暗黒魔法は互いに邪魔をしてしまう。それを知っていて尚、改良型ゴーレムが黒い霧に影響を受けるか否かを実験できていなかった。ぶっつけ本番だったから期待しつつ不安だったのだけれど、「まぁハイネさんなら一人でも大丈夫だよね」という謎の信頼感があって判断を誤った。


「とにかく今は待つしかないだろう」


「そうだね」


 レオンの言うとおり待つか。エンバーとコールに着替えだけ持ってきておいてもらおう。直ぐに転移してもパーティドレスじゃ、戦い辛い。


 ◇◇


 主より「ハイネ女史の救援に向かって欲しい」と念話を貰ってから、直ぐに格納庫に急ぎました。シャルルと二人で「ぱわーどすーつ」というゴーレムに乗り込み、体が固定されます。その後、ゴーレムに魔力を注ぐと自由に動けるどころか、恐ろしく楽に体を動かせるようになりました。動作試験通りです。


「ブラウ~!これどうやって閉じれば良いのぉ~」


 スーツを動かしてシャルルの背中側に移動しますと、細かい指先の動作でシャルルのスーツを起動できるように動かしていきます。シャルルの体が収まり、頭と背中の扉が閉じると甲高い声が響きました。この子は相変わらず背が小さいのです。同じくらいだったサリーはもう大人になってしまいました。あと200年は背丈が変わらないでしょう。


「ありがとう、ブラウ!」


「どういたしまして。急ぎますよ。主が遺跡との接続が切れたと連絡があってから2分経ってます」


「うん!ハイネを助けないとね!」


「そうです。着いてきてください」


「はーい」


 格納庫から出て、空に向かって飛び上がりますと、背面の翼膜が広がって風を捉えることが出来ました。この翼膜事態に推進器が付いていますので、一瞬にして高度を上げられます。後ろを見るとシャルルも確りついてきています。この子は元々空中戦が得意なだけあって空中機動のセンスが良いのです。私達四人の中では一番パワードスーツの扱いが上手でした。乗り込むときに手間取っていましたが、単純に小難しい魔導具の扱いが苦手だからですね。


 30秒ほど移動すると眼下に目的地が見えます。緑色に光るドームがそうなのでしょう。


(ブラウ、着いたわね。ゲートを開くからそのまま突入して頂戴)


(主、了解しました)


 お聞きした通りに地面から伸びている鈍い色をした金属扉が開き、そこだけ緑の燐光を放つ結界が無い状態である事が見て取れます。これなら突入できるでしょう。後ろを見てシャルルにも伝えなければなりません。


「シャルル、突入します。私の真後ろを飛んでください」


「はーい!」


 全長3メートルもあるスーツの大きさでも余裕で潜れるほどに扉は大きいものでした。そのまま空中を飛びながら古代遺跡の入り口を潜り、主から頂いた内部地図の通りに入り口広場に入っていきます。両足が地面を擦りつける音が響きます。ここからは地上を走って進みましょう。


「シャルル、滑っていきますよ」


「シュシュシュー!っていくね!」


「そうです」


 ぱわーどすーつの足の裏にタイヤが現れて回転を始めます。姿勢を低く保つと、そのまま遺跡の奥に向かって進んでいきました。


 ◇◇


 遺跡内部に入って既に3時間。さっきから、あの子のゴーレムの動きが緩慢な事を考えると、操作出来なくなったと思って良い。それにこの空間。元素魔法が一切使えなくなっている。熱線砲も発動できないし、火龍も呼び出せない。苦手な他属性の元素魔法は発動式すら頭の中に描けない。明らかに何かから妨害されている。


 周囲は古代遺跡の室内で、地面にはナニカが朽ちたような砂の山と金属らしきものの瓦礫。入口はさっきから閉じられて開けられない。調査員はオレイカルコス製の合金とか言っていたから破壊は不可能。食料は二週間分。基礎魔法は使えるから生活は出来るけれど、精神的に耐えられるかは別ね。


「ハイネリア隊長」


「何かしら」


 調査員の男性護衛が一人近付いて来る。彼らは信頼しているけれど調査員は今日が初顔合わせな人が多い。女が私だけっていうのは少し貞操の危機を感じるわね。多少は気力を扱えると周囲は知っているけれど、今連れてきている隊員は闘気使いの精鋭だ。余り付き合いのない連中なのも不安要素の一つ。


「やはり扉の開放は難しいようです。闘気剣で切断も現実的ではありません。ギルマスのような強力な力があれば別ですが」


 口惜しそうに彼は言う。あんな化け物が何人も居てたまるもんですか。参考にならない情報を頭から切り捨てて、再び出入り口があった場所を見た。扉は隙間もない程に壁と同化している。恐ろしく精巧な建築技術だ。まるで隠し扉が技術として普遍的な世界だとでもいうかのように美しい模様が刻まれている。それが壁一面に広がり、壁に扉が同化していた。


「元素魔法が使えない以上、空間魔法や仙気が無いと突破は無理そうね。技術的に扉の開放方法を解明できないなら他の手段を探すしか無いわ。空気は問題無いようだけれど」


 上を見上げると小さな換気口のようなところから風の動きを感じた。天井はあまり高くない。3メートル程度だ。大人二人が肩車すれば余裕で届きそうな高さである。


「・・・・・・あれ、外に通じているのかしら?」


 傍の護衛が私の目線を追って上を見上げた。渋い顔をしている。


「分かりませんが、あそこから何か連絡できる手段が?」


「風の魔法で外部の誰かに伝えるのが現実的でしょうね。もしくは、小型のゴーレムを作って潜り込ませるか」


「作れるので?」


 チラリと横に佇む女性型ゴーレムを見た。


「無理に決まってるでしょ。どっかの王太子妃と一緒にしないで」


「はぁ」


 あの子のゴーレムは普通じゃない。


 ゴーレムというのは通常、形を作って組み上げ、その人形に魔法陣を刻み込む。その魔法陣も一つ一つが大きく、背中一面に描くような物が大半だ。


 対して、あの子が作ったゴーレムは全くの別物だった。一度、宮廷魔導士長も立ち会って目の前でゴーレムを作ってもらい、それを解体して構造を調べさせてもらった事がある。


 驚くべき事にあの子の魔法陣はゴーレムの腕の中や頭の中、胴体内部一面、足の中などに立体的に魔法陣が描かれていた。いや、描いているのではなく「現れていた」と言った方が良い見た目だった。


 あの子がゴーレムの人形体を作ると同時に行っているのは、金属人形ならその金属を作り出すとき、既に部品の中で魔力が込められて魔法陣のような魔紋の羅列と、それらを繋げる複雑な模様が出来上がっているのだ。


 頭の中から指先までギッシリと書かれたその模様は魔法陣などと言う枠を超えて、魔刻紋と名称を新たに決める事となった。あの子は制御盤だと言っていたけれど、魔刻紋のどの部分が動作に必要なのか、私と魔導士長は理解できなかった。


 ブラウの竜船をアルセウスと一緒に改造した事がある。あの子の長男ならば、同じような才能を持っているかと思ったのだが、彼も理解できなかった。


「あの子は天才の中でも更に天才なのよ。私も、宮廷魔導士長も、アルセウス殿下も理解できない物を作る。仮に大魔導士リリーヴェールだろうと解明できないだろうとレオン殿下も仰ってたわ」


「そこまで、です?」


「そこまで、よ」


 へぇ~、と護衛の男は言うが、今後あの子の造ったものを解明していく事が、この世界の発展に繋がると思われる。どう考えても古代文明を超えた技術だと思うものが多すぎる。


 空間魔法を使った連絡手段。精巧過ぎるゴーレム。地下の穿孔路計画もそう。あんなもの、どの古代文明にだって情報が無い。どうやって考え付いたのかしら。


 聖女の魔法を改変したのだって同じだわ。教えてもらったけれど、何をどう発想すれば、直径百メートルを超える大魔法の魔法陣を半分以下の要領に抑え込めたのか。しかも、伝承と比べて明らかに強化、いえ狂化された魔法になっていた。


 ゴーレム技術、魔法改変技術、法に関する知識、どれを取っても村娘の発想じゃない。あの子が何処かから来た何かに取り憑かれて、幼少期にユリアネージュ以外の何かに変貌したとしか思えない。


 本人は否定しているようだけれど、陛下顔負けのカリスマも持ち合わせている。城内に一体何人のユリア教信奉者が居ると思ってるのか。聖女の噂が広まってから、爆発的に数を増やしている事を知っているのかしら。


「困った事ね・・・」


「だなぁ、流石に一週間も音沙汰が無ければ、聖女サマも助けに来てくれるだろ?」


 いや、それよりもっと早く来るかもしれないと思い、壁際に立つゴーレムを見た。


「もう気付いてると思うわよ。あの子、ゴーレムを遠隔操作できるから。あの動きが可笑しくなったゴーレムの異変に気付いてるでしょうし」


「なんっつーか、何でもありだな。あの聖女サマは」


 護衛の男はそう言って壁際に座って休み始めた。私はそれを見て小さく呟く。


「本当にね」


 取り敢えず三日以内には助けて欲しいわね。お風呂に入りたいわ。そう願った時だった、閉じた扉がギリギリと音を立てて変形していくのを目の当たりにしたのは。


 ◇◇


 遺跡内部に入るとアンデッドが道を塞いでいました。主に貰った情報の通りにマップを見つつ進んで行くと、地上で生息していたと思われる魔物の骨や腐肉で構成された、四つ足の大きなアンデッドが道を塞いで邪魔をしてきます。


「ブラウ~、こっちで合ってるの?」


 そんな腐肉如きに止められる程、こちらも戦力は低くありません。掌底で前足の付け根を持ち上げるように叩き上げると、後ろ足で立ち上がったアンデッドが後方に倒れ込みそうになります。そこにシャルルの着たスーツの口から火砲が飛び、アンデッドの腹部に大きな穴を開けつつ吹き飛ばしていきます。


「ええ、途中までの道筋は、主が操っていたゴーレムから情報連携を受けています。目の前のミスカル液晶画面に表示されていませんか?」


 天井に張り付いたのは蜘蛛のアンデッドでしょうかね。指先の繊毛も無い、骨の指でどうやって張り付いているのやら。シャルルと一緒にスーツ背部にある羽根で切り刻みつつ奥へと進みます。


「えーっと、どれ~?」


 丁字路に差し掛かると、奥に見える左右の道から同時に蛇のゾンビが襲い掛かってきましたが、距離があるにも関わらず自殺行為ですね。シャルルと一緒にスーツの口から火砲を撃つと、前方の丁字路が灼熱に染まりアンデッドの群れは消え去りました。


「画面右下の小さい丸ですよ」


 右折してゴーレムの情報通りに地下へ続く螺旋階段フロアに到着しました。中央が吹き抜けになっていますが、底が視えません。どうやらここを下がりつつ、壁際の扉を一つ一つ調べていったようですね。


「あっ、これだぁ!何か模様みたいで良く分かんないや」


 一応、扉の一つ一つに主から貰っている探索用トンボゴーレムを放ちましょうか。これはスーツに内蔵された機能で、元素魔法を使って主が作ったのと同じトンボを造れる機能を使って製造しています。元手が私の魔力なので、今は私の言う事を聞くようになりますが、私と主は主従関係なので、結局は主も私の造ったトンボを操作できるという大変便利なゴーレムです。やはり主は素晴らしい知恵をお持ちですね。


「青いのが私達、赤いのがアンデッドです。主から教わった通りですよ」


 細かい探索をトンボに任せて、ハイネリアが居るであろう扉までシャルルと共に下っていきます。その私達に向かって階下からアンデッドが押し寄せてきますが、物の数ではありません。シャルルが吹き抜けに飛び上がって空中援護しつつ、私が螺旋階段上で相手をします。


「そうだね!黄色はえっと、仲間か分かんないけど人間な誰か!」


 このスーツには剣や槍と言った武器はありません。何故ならこのスーツ自体が武器だからです。使用者の魔力と竜気で覆われたボディが、その辺を歩く魔物に負ける事は無いでしょう。主が何を想定してこのような兵装を用意したのかは分かりませんが、少なくともデーモンロードや巨人の大軍であろうと、全く負ける気はしませんね。


「そうです。シャルルはイイ子ですね」


 脇から火砲の援護を貰いつつアンデッドたちを駆逐すると、目的の扉が見つかりましたがトンボが中に入れないようです。現時点で私たちは主と連絡が可能な点から、あの扉の向こう側だけが念話などを妨害されていると考えて良さそうです。


「えっへへ~」


「さぁ、入りますよ」


「はーい」


 ゴゥッ!と背面噴射と共にシャルルが螺旋階段に飛び込んできて、そのまま扉にローリングソバットを叩き込みました。予想通りの強度で表面が少し凹んだだけです。


「まぁ、良いでしょう。あとはゆっくりとこじ開けます。間違っても奥の部屋と思われる場所に、扉を蹴り飛ばさないようにしてくださいね」


「はーい!」


 こういうところはディーネと違って、シャルルは良い子だ。元々、ファイアドラゴンは直情的で素直なところがあります。話し合いの余地がある種族で、水龍と違って理屈で説き伏せる事が出来るのです。本来、私達アースドラゴンは争いを好みません。


 シージのようなフォレストドラゴンのように自然に根を張り、自然から魔力を受けて成長する種族だからです。まぁ、その分長生きしやすく、そして強くなりやすいのですが。


「シャルル反対の扉を持ってください。亀裂から手を入れて左右両方に引っ張ります」


 逆にシャルルやディーネのような、または風龍や銀龍のような狂暴な種族であるほど、寿命は短く、戦闘狂になりやすいのです。戦わない種族のドラゴン程、長生きして強くなりやすい。しかしながら、ドラゴンとしては荒れ狂う銀龍のような姿が本能に従った正しい形なのでしょうね。


「ブラウ、いくよー、いっせーのぉ!」


 金龍は穏やかだと聞きますが対面した事が無いのでわかりません。数万年に一体だけ産まれると聞いた事がありますが、正気を失う前の事など、もはや千年以上前の事です。それに今の私は竜機人。主のブラウです。シャルルも同じような事を言っていました。もう自分はファイアドラゴンではないけれど、血を引いている事は忘れない程度の認識でしょう。


「もっとゆっくりです!」


「うん~!」


 ギリギリと扉がひん曲がりつつ音を響かせます。隙間の奥からは数人の声が幾つか。ハイネリアの声もしましたし、ここで間違いないようですね。竜気を纏って扉を手前に引っ張ると、拉げたそれが勢いあまって螺旋階段の吹き抜けに落ちて行ってしまいました。


「わひゃっ!」


「シャルル、問題ありませんか」


「だいじょうぶ~」


 ひっくり返って吹き抜けに落ちそうになっているシャルルを起こすと、ハイネリアが出てきました。


「その声って、ブラウとシャルルかしら? 何そのゴーレムは」


「主が言うには、ぱわーどすーつという兵装だそうです。私達四姉妹用のわんおふだと言っていましたが良く分かりません。恐らく、それぞれ元の体の素材を使っている事から、専用の兵装だと言いたかったのだと思います」


 私が説明している遠くから主のゴーレムが歩いてきました。どうやら接続が戻ったらしく、火文字で「今、会話できるように繋げる」と描かれています。ハイネリアが準備中のゴーレムを見て安堵の溜息を吐いています。


「ふぅ・・・戻ったみたいね。正直、あと数日は閉じ込められたままかと思ってたわ」


 よくこの扉を壊せたわね?、とハイネリアが扉が付いていた場所に行くと、主のゴーレムから嬉しい声が響きます。


「あー、あー、ブラウ聞こえる?」


「主、問題無く聞こえています。これからどうしますか? まだ吹き抜けの下が不明な儘です。恐らく吹きあがってくる黒い霧の元凶が居ると思われます」


 主を模したゴーレムが考えるそぶりをして腕を組みました。やはり主の傍は心地いい。早く本人にお会いしたいけれど、今は任務に集中しよう。



 ◇◇



 最悪の事態になっていなかった事に内心でホッと一息ついた。ハイネさん、そのパワードスーツはあなたじゃ動かせません。ブラウに降りろと催促しないでください。


 王城の王家居住区内にある中庭で紅茶を楽しみつつ待っていたのだが、月夜も見飽きたのでそろそろ寝ようかとも思っていた。ブラウに任せて休む事も大切です。


 中庭のテーブルにオレカル液晶画面を出しつつ、ゴーレムの視界と繋げた映像を映し出してある。物珍しそうに陛下を始めとして私の後ろから覗き込んでいる家族は、一旦無視しよう。紅茶のカップを置いてコールがそれにお替りを注いでくれた。


 飲み過ぎて寝てる間にトイレに行きたくなりそうだ。この世界のトイレは何処にでもある訳じゃないから、王城内でも結構歩く。私達の部屋はすぐそばに造ってあるけど。ああでもエルフのトイレは素晴らしかったな。出したモノが大型魔導具と繋がった便器で、あっという間に外に輩出して肥料に作り替えられる・・・って、今はそんなのどうでも良いんだよ!


「んんっ、ハイネさん聞こえる? いったん戻る? 内部状況は確認できたんだし、ゴーレムを配置して引き上げた方が良い様に思うけど」


 現地でパワードスーツを撫でまわしてるハイネさんがこっちを振り返った。


「これどうなって、いや、そうね。消耗も激しいからいったん戻るわ。アンタはどうするの」


「このゴーレムを穴の中に飛び込ませてみようかと思ってる」


 豊満な胸をした私そっくりのゴーレムの大胸筋を叩かせた。ドムンと凄い音がした。流石、オリハル&オレカル合金製のボディだぜ、弾力性も半端じゃねえや!


「やめなさい。何が起きるか分かったもんじゃないわ」


 左手で頭を抱えたハイネさんが首を振りつつ否定してくる。でも、黒い霧が穴の下からモクモクと増えてきてるんだよねぇ。これ、明日の朝には爆発してきませんかね?


「ねぇ、ハイネさん。下見て、朝まで持ちそうにないよ」


「ん?」


 言われて気付いたのか、ブラウとシャルルも引き連れて螺旋階段から下を覗き込んだ。私の後ろでアナ姫が軽い悲鳴を上げている。妊婦は早く寝なさい。


「あれ、絶対何か出てくると思うんだよね。手に負えなくなる前に消しちゃわない?」


「結局アンタに任せる事になるんだけど、良いの?」


「他に居ないし、片付けないと落ち着いて寝られないでしょ」


 ハイネさんが再び穴を覗き込んで呻る。試しにディストーションの光球を作って、真っ黒な穴に撃ちこんでみた。


「えいっ」


「ちょっと!」


「まぁまぁ、ほら。底の方が見えたよ」


「・・・」


 現地で揃って穴の底を見ている面子を眺める。こんなに大勢で一か所に集まって大丈夫だろうか? 螺旋階段の足場が壊れて落下なんて事にならないよね? 古代遺跡だし、材質はカンナ石とかいう知らない石材だけど大丈夫だよね?


 みんなと一緒に穴を眺めると、緑色の光が一部を照らしていた。その周囲には蠢くアンデッドが蟲毒の様に蠢いている。ハッキリ言ってキモイ。モザイクが欲しいわ。私の後ろで数人が「うっ」と、呻いた。だから止めとけと・・・。


「ハイネさん、穴底の壁を見て」


 直径30メートルはあろうかという吹き抜けの壁を黒いものが闇色に染め上げていく。


「げっ、霧が上がってきてる?」


「そうじゃなくてさ、水嵩が増えるみたいにアンデッドが増えてない? 何アレ? まるで召喚してるというか、黒い霧が作り出してるように見えるんだけど、ああいうの知ってる?」


「知らないわね。闇魔導師ならしってるのかもしれないけど」


 本体の私が振り返ってエンバーとコールに目線をやる。二人は首を振っていた。アンデッドは管轄外らしい。ただ、召喚をする手段は暗黒魔法にもあると言っていた事がある。となれば、あれは何処かから、そして誰かが呼び出しているという事だ。


「私が知っている知識の範囲内だと、暗黒魔法でどこかから召喚しているとしか見えないわね。しかも全てアンデッドという事は、作り出している何かが居る、もしくは魔導具的な物が在るという事になる。それって、放置してるのは危険じゃない? もう私達が侵入してきた時点で、本腰を入れて召喚し始めていたようだし」


「恐らくユーリの予想で当たってるわね。黒い霧が作っているというより、壁際から生えているような、そう、召喚されていると言った方がシックリくるわ」


 そう言うとハイネさんは護衛隊員たちに目配せした。退却だな。


「下まで降りるわ。ここで止めておかないと街が危険に晒される。それに切り札の聖女様も一緒だし」


「えぇっ!? 帰りましょうよ!」


 護衛隊員の一人が叫ぶ。アレを見て降りたいとは思わないよね。


「隊を半分に分けて調査員たちを上に送りなさい。今なら、この子のゴーレム達が守ってくれるわ」


 ゴーレムに振り返ったハイネさんは「そうよね?」と言う。勝手な事を言うんだからもう。元からそのつもりでしたけどね!


「もう、さっきから作ってるから良いけど、護衛のひとは全員上に戻って。半分じゃなくて全員ね、ここからは足手まといになるから。ブラウ、ハイネさんを護衛して。シャルル私の後方で援護射撃を任せるわ。ハイネさん、この子を少し改造するから少し待ってね。本格的な戦闘を想定してないのよね」


 すごすごと上に向かっていく調査員たちと護衛たち。ハイネさんが彼らを見送って何かを言づけている姿を見つつ、複数の索敵用ゴーレムと同期して人形を使っていく。


 元々、ただの散歩用のゴーレムと同じ機能しか無かったのだから、少し手を加えただけでは私の全力の一割も出せない。動く一般人と同レベルだ。それをオレカルとオリハルの合金で全身を作り直していく。


「うわぁ・・・まるでスライムが全身を覆ってるみたいで、凄い絵面ね」


「そういうの言わないでよ!」


 まったくこの先生は! それなりに集中しなきゃいけないというのに、こっちの集中を乱してくるんだから。


 流動が治まったゴーレムの腕から装備を取り出す。私の装備品の予備の予備の予備だ。ブラウの軽鎧は全部で五セット作ってある。ブランママと共用だったのだが、仙気を受けて私のは変化してしまったので、今は同じ体形だろうと共用できなくなってしまった。私の仙気がブランママを拒否するらしい。意味が解らなかったけど、装備した時に闘気を出せなくなるという弊害が出た。呪いかな?


「出来たよ。行こうか」


「まんまユーリじゃん」


 見た目も顔の表情すらも私とリンクしている。レモンクッキーを食べるとゴーレムの口も動く。そしてハイネさんにバレる。


「だから、真面目に戦おうってときにおやつ食べて操作しないでよ!」


「ごめんごめん」


「ったく」


 でも食べるのは止めない。



 ◇◇



 暫くその場から降りていくと途中の扉からアンデッドが出てきたりしたが、特に問題無く撃退して降りていく。ハイネさんは口元を袖で抑えているが、私はゴーレムなんで悪臭に耐えずに済んでいます。


「マスクとか作る?」


「材料も無いのに?」


 甘い。ハイネさん甘いよ。


 手元で金属繊維を使ったフィルターを作り、仕込んだ魔法陣で口の横にある膨らみに水を入れて、匂いの元を浄化する仕込みをしたマスクを作ってあげた。


「ハイこれ。定期的に魔力を込めてね。じゃないと臭いのが消えないから」


「・・・アリガト」


 何で不満そうなんだ? 渋々付けたハイネさんはその効果に感動していた。本体の後ろではお父様たちが頻りに感心していた。何でだ? 振り返って聞いてみる。


「もしかして、ああいったマスクって一般的じゃ無いものなんですか?」


「うむ。初めて見たな。量産できるのか?」


「はぁ、簡単ですので、商会で出しましょうか?」


「頼む」


「後で手回ししておきます」


 お母様が一番喜んでいた。そう言えば元冒険者だったな。結婚前は五侯爵のアーバント家だったと聞いているから、遺跡潜りなんてしなくてもいい生活だった筈なのに。多分、お父様が無理矢理、遺跡に連れて行ったんだろうな。


 視界をゴーレムに戻して階下に進んで行くと、足元が黒い霧に覆われ始めた。これ以上はイケない。ハイネさんもブラウ達もどうなるか分からない。


「ブラウ達は下がってて」


「主」


「一気にやっちゃうから」


 そう言うと、本体とゴーレムの体から同時に仙気が舞い上がり、それらが神癒魔法の魔力と混ざり合って竜気となっていく。空色の光が周囲を照らして、現地のゴーレムの右手を暗い穴に向けて翳した。


「・・・案外、簡単になったわね」


 これまでは無詠唱では使えなかった聖女の改変魔法が、詠唱無しで使える。ゴーレムを通して理解した。もう詠唱のサポートは要らない。竜気も闇騎士と戦った時より巧く使えている。相変わらず異常な成長速度だと自嘲しながら、暗黒の穴に向けて竜輝光を放った。


 遺跡の最も深いと思われるところに光が突き刺さり、周囲に広がっていく。黒い霧は晴れて散り散りとなり、光を浴びたアンデッドは塵へと還っていく。僅か数秒で起きたその出来事に王城で見ている家族も、現地のブラウ達も釘付けになっていた。


 光が散ると再び黒い霧が集まってくる。


「終わらないわね。霧を消しながら周囲を調べるわよ」


 ハイネさんがそう言うとブラウの背中から出て降りて行った。ちょっと!護衛対象!待ちなさいって!魔導士特有の好奇心をこういう時に出さないで!


「お任せ!」


 飛び降りて地面から湧いてくる霧を消し続ける作業を開始した。よく見ると地面では無く、一つの扉から漏れ出しているように見えた。


「ハイネさんアレ!」


「結界を張るわ!扉を破壊して頂戴!」


 ハイネさんは破壊の衝撃波で黒い霧が溢れだしても良い様に結界を張るらしい。


「了解。ブラウとシャルルはハイネさんから離れないようにして」


「主、お気をつけて」


「はーい!」


 ブラウの言葉とシャルルの元気のいい返事に片手で答えると、一息に集めた竜気で攻撃の準備をする。溢れだす黒い霧ごと奥に押し込めるように形を整えていると、ハイネさんの準備が先に整ったようだ。


「良いわよ!」


「了解。ハイネさんは動かないようにね!」


 十分に離れた場所に移動して貰い、地面から赤く光る結界に片腕を入れる。竜気とぶつかり合ってバチバチ鳴っているが、ゴーレムの腕に怪我は無い。


「やるよ!発射!」


 固めた竜気を扉型に放つと壁を消し去り、霧を消し去り、その奥へと延々と飛び去って行った。進んでも大丈夫そうだ。


「突入!結界解除!」


「待ちなさいって!ああ、もう!」


 自力で結界を解除して走っていくと、テーブルの上の画面も通路の奥へ変遷していく。随分と奥まったところに入ると、広いフロアに出た。また拷問室じゃないよな?と疑いつつも周囲を観察する。


 ぼんやりと魔力灯が足元を照らし、その白い光が夜間病院のような雰囲気を思わせた。随分と高い天井の魔力灯は今さっき点灯したのか、それとも長年付きっぱなしなのかは分からない。


 床には幾つかの機材のような魔導具が所狭しと置かれ、円形の部屋の中央にはだだっ広い空間があった。その中央だけは地面に螺旋模様が描かれている。これって、地面が開いて何かがせり上がってくるタイプの模様じゃないかしら? もしかしてミサイルサイロかしら? と少しワクワクしながら見ていた。


「問題は!?」


「無いよ」


 振り返って答えるとブラウの頭に跨って運ばれてきたハイネさんは、何だか子供みたいに見えた。だがその顔がいきなり豹変し、驚きに満ちている。後ろの部屋の奥か?


 振り返ってもう一度部屋の中央に眼を向けると、黒い繭のような物が置いてあった。今さっき置かれた物ではなく、地面に幾つもの乾いた粘糸が張り付いているのを見る限り、相当前に置かれた物のようだ。


「さっきまでは無かったのに」


「私もいきなり見えるようになったわ」


「隠されていた?」


「かもね」


 警戒を、と言いつつハイネさんが腕輪からドラゴンロッドを取り出して地面に降り立つ。周囲の魔力を取り込み使い手の魔法を数倍の威力にして、ほぼ使い手の魔力を消費せずに魔法を発動できるというチートアイテムだ。


 私の斜め後ろにシャルルが、ハイネさんの横にブラウが配置する。私もゴーレムの体内に造ったマジックバッグから左手にブラウの竜杖を取り出した。何となく、これを使わないとヤバい気がしたのだ。


 それを見てブラウが構えを変えた。危険度を上げたらしい。シャルルは何だか鼻息が荒い。私も得体のしれない圧迫感をゴーレム越しに感じていた。ハイネさんはこれを直接浴びている。大丈夫だろうか。


 土魔さんを呼び出してハイネさんの近くに配置させた。風獣と水精霊を呼び出して、防御姿勢を取らせる。その時だった、黒い繭から虫の足のようなものが出ているのが見えた。私達から見えない位置、後ろ側から出てきたのだろう。一気に八本も出てきて広がったソレは、地面について力を入れるとズルリと本体を取り出した。


「・・・アラクネ?」


 前傾姿勢になって顔面から地面に倒れ込むその腹部には、大量の黒い何かが蠢いていた。虫、いや蜘蛛の子か。次々と体から蜘蛛の子が地面に散らばっていく。


「ゴーレム!」


 右足を地面に強く踏み込み、魔力が竜輝光を纏って周囲に拡がると、空色の気を纏った大量の小型ゴーレムが地面から溢れだした。


 アラクネは動かず、自分を取り囲むように湧いたゴーレムを黙って見渡している。そして人間の上半身である両手で拍手をし始めた。


「素晴らしい。人の身でこれ程の。しかも竜の気を纏うものが三人も。その賢者は君たちの主かな? だとしたら、この素晴らしい三体のゴーレムと、即席で作り出した小物の力を賞賛したいところだ」


 随分と流暢に喋るその女性型の魔物が、まるで年配の男のような低く渋い声で喋り始めた。見た目との違いに、このアラクネ自体が操られているかのような違和感がある。


「そちらもソレを操っているように見えるけど、お互いに人形同士で丁度良いんじゃない?」


 王城の中庭で私が言う。


「ん? ・・・そうか、君はその賢者の操るゴーレムでは無いな。異なる魔力。しかもドラゴンは、ドラゴンであって人でもある、のか? 中々面白い面々だな。研究のし甲斐がある」


「研究ですって?」


 威圧感に潰されまいと耐えているハイネさんが、辛うじて声を出せたらしい。だが苦しそうだ。引かせるか?


「ああ、私の巣に君たちが現れて、新たな研究材料を持ってきてくれた。違うのかね? 

 もう長い事、地下で研究を続けているが、防犯対策が動いたのを察知して、この人形に繋いだんだが・・・そしたら、目の前には研究材料がこんなに転がっていた!」


 嬉しい事じゃないか!と野太い声のアラクネが上半身だけで踊る。随分と自分勝手な考え方をするらしい。これは遠慮なく言った方が良さそうだな。


「アンタの所の設備がアンデッドを作り過ぎて地上に漏れてるのよね。迷惑だから別の場所で研究してくれないかしら」


「それは断る。あれらは大事な実験体だ。むしろそれらが消えている事に関して、君たちに問い詰めたいね。―――アレらをどうした?」


 アラクネが踊るのを止めて低く構えると威圧感が増した。こちらも負けじと竜輝光を放って低く構える。


「邪魔だったから、ちょっと通りますよって言ったら消えちゃったわ。ごめんなさいね」


「いあいあいあ、そういうのは困るんだ。すごーく、困るんだ。エサが多いから、この場所を使っているのに、折角集めたのがパーじゃないか。どうしてくれる?」


 そうだ、と言葉を続けたアラクネは両手を握りしめてまた開いた。まるでヒトデの裏側のような掌を私たちに見せた。


「君たちに素材になって貰いたい。賠償請求はそれで良いだろう?」


「お断りします」


 笑顔満面でそう答えると、アラクネも笑顔になった。人類皆笑顔で平和ハッピーで居ようぜ。でも相手は魔物なんだよね。


「だーめだね、上質な素材ばかりだ。全部置いていけ!」


 飛び上がったアラクネが上空から子蜘蛛をばら撒きつつ、高い天井に張り付いた。同時に壁に向かって幾つもの糸を張り巡らせ始めている。


「シャルル!糸を全て焼き切って! ブラウはハイネさんの護衛をしつつ子蜘蛛の掃除! ハイネさんは二人の援護!」


「「「了解!」」」


 ったく、寝る前に運動させないで欲しいわ。


「そこから動かない方が良いわよ」


 現地のゴーレムが天井のアラクネを指さして動きを止める。そして笑顔で首を傾げたアラクネの首が落ちた。随分と驚いた顔になった。


「ほら、だから言ったのに」


 慌てて落ちていく自分の首に、粘糸を付けて天井に拾い上げるアラクネ。それを脇に抱えると首の顔が怒りに満ちていた。百面相だな。


「何をした!?」


「喋ってていいの? 戦況はどんどん変化しているんだけど」


 現地のゴーレムがまた一つ、優雅に天井を指さすと、今度はアラクネが首を抱えている左腕が肩から落ちた。


「今のは動いていない筈だっ!」


 動態感知トラップに引っかかるまいと想定していたのだろうか。身を固めていたアラクネの左腕が切断された事に異議を唱えられてしまった。


「あら、ゲームだとでも? ルール違反しちゃったかしら」


 クスクスと笑う私を見て、アナ姫の婚約者が青い顔になっている。逆にアナ姫は楽しそうだ。お母様も楽しそうだけど、お父様とレオンは困惑顔だ。そして悪魔の二人はいつの間にか遠くに避難していた。すまん、竜気を浴びると善くないんだっけ。


 そうこうしている内にもう一度ゴーレムが指さすと、次はアラクネの足が複数本千切れ飛んだ。次、次、次と指し示す場所からアラクネの体を解体していく。バラバラになっていくアラクネは自分の張った糸を頼りにして空中に逃げ込んだ。


「いつまでプラプラと遊んでいるつもりかしら。さっさと行動しないと、操っているあなたまでたどり着いてしまうわよ」


「何なのだお前は!?一体何者だ!」


 胴体と頭だけで空中にブラブラと揺れるアラクネの残骸が猛る。


「そういうあなたは、何処のどなた様かしら。人の故郷に迷惑をかけるような研究者なんてお呼びじゃないのだけど、悪さをしたのだから反省させないと気が済まないわね」


「質問にっ」


 空中の粘糸がシャルルやハイネさんの砲撃を受けて千切れる。千切れた糸が支えているモノを手放してアラクネの頭が地面に勢いよく落下した。地面に着弾と同時にアラクネの東部は砕け散り、胴体が続いて落ちて来る。


「まだ居るわね。警戒を解かないように!」


「はーい!」


 ブラウとハイネさんは子蜘蛛の処理と守備で忙しいらしく、目線と合図だけで答えた。数秒後、子蜘蛛の一匹からドス黒い魔力が漂ってくる。リモコン先を変更したらしい。それにしても芸がない。メギアの犬はどいつもこいつも暗黒魔力一辺倒なのか?


 子蜘蛛が幾つも集まりだして体を重ねていく。黒い霧に飲み込まれた子蜘蛛は黒い液体に変貌していき、やがて液体はスライムの様に粘性を伴って大きくなっていく。シャルルの砲撃も、ブラウの斬撃もハイネさんの熱線砲も通じていない。いずれもスライムのような体を通過するか、黒い霧に吸収されて消失してしまった。


「・・・まったく、会話も出来ない下等な連中が、私の邪魔をするとはな。捉えて研究素材にでもしてやろうかと思ったが、今は仕事が先だ。そのまま朽ちていけ」


 再び現れたアラクネは全身が黒く、赤い瞳が漆黒の頭部に浮かび上がるのみ。両の手を天に掲げると、黒い霧がアラクネの周囲を竜巻の様に覆い出した。


「私の傍に集合!」


 ハイネさんの近くに私のゴーレムが近寄り、ブラウとシャルルを呼び寄せる。


「何あれは!」


 ハイネさんが杖を構えて魔力を集中させる。地面には急速に火の元素結界魔法陣が描かれつつあった。丁度良い、融合させよう。


「ハイネさん!そのまま発動させて!」


「主!」


 近くに居たシャルルの後でブラウが合流してくる。四人が一か所に集まったのを確認すると同時に、ハイネさんの結界魔法陣の外に私の魔法陣を書き足していった。


「こ、これは!?」


 ハイネさんが竜杖の先を地面に付けて魔法陣に魔力を送り込みながら、私と魔法陣を交互に見つめて叫んだ。私がやっているコレは、人前で見せた事はない。余りにも普通じゃないから目立っちゃうし。


「そのまま!!」


「・・・わかった!」


 私の言葉にハイネさんが魔法陣に集中しだした。助かる。元の魔法陣が不安定だと困る。失敗も成功も試した結果を見た事がないからね!


 私の持つブラウの杖の先を、ハイネさんが一瞬で描いた魔法陣に触れさせる。竜気を纏った空色の魔力が、赤い魔法陣の外側に拡がっていった。


「地を這う命の洞、神明の胎動、天衣の陰り、五つの命脈を繋ぎ、地の底の光に縊り留めよ。グレイプニルブレイズ!」


 私たちが居る場所は魔法陣の中心地点。その場所から放射線状に天井壁床と全方位に向けて赤い鎖が飛び交う。その数は数万数億に至り、周囲の物体を破壊しながら突き進んでいった。


 目的のモノを見つけた数多の鎖は赤い鎖の周りに空色の魔力を漂わせながら、一気にアラクネと子蜘蛛を捕らえていく。私の魔力と繋がったソレは、一度捕えれば相手の体に精神支配と魔力的な繋がりを私の方へと上書きしてしまう。


 つまり、あのアラクネを操っている相手の魔力を導線として、相手の所まで私の魔力が届き、その精神を支配してしまう。そういう凶悪な縛鎖魔法だ。


「何アレ・・・意味不明なくらい凶悪な魔法ね」


「元の魔法陣が優秀でしたから、楽~に発動出来ました。そして・・・見ツケタ」


 獣の様な笑みを浮かべる私を見て、ハイネさんが魔力を杖に込めつつ呆れた顔をしている。ハイネさんの相手をするよりも先に、やる事をやらねば。


 ◇◇


 本体である私の腕が空中に延び、その腕が空間の亀裂に入り込んで何かを弄る。近くで見ていた家族が仰け反って離れていく。


「うわあああああああああ!? 止めろ! 何をしている!? 止めろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」


 画面の向こうのアラクネから悲鳴が聞こえてくる。相手の本体からしたら意味不明だろう。縛鎖魔法で相手の居所を探り出し、空間魔法で対象の肉体を手掴みでキャッチされているのだから。


 まるで生肉の塊、いやミンチ肉かと思しきそれを引っ掴み、竜気で包んで王城の中庭に引っ張り出した。即座に土魔で器を作り、内部をゴーレムの素材で埋め尽くしていく。


「さぁ、お料理の時間だよ土魔さん」


 サラダボウルに何かの肉塊とゴーレム素材が落ちて一塊になる。近くに子供達が居なくて良かった。こんなもん教育に悪いわ。今度はそのゴーレム素材を変化させつつ、土魔さんには肉塊の逃げ場を無くして貰った。周囲を竜気で覆ったままなので魔法も使えないし、例え仙気だろうと暗黒魔力だろうと対抗不能だ。全て消し去る。


「おごごごご」


「あら、その見た目で喋れるの。エグイわね貴方」


 見た目は脳みそ丸出し、心臓を始めとした各部が丸出し。骨と皮と筋肉が無いだけで、血管や神経はそのままなのに、よく狂ってしまわない物だ。何よりこの作業中にショック死していない事が驚きである。


 ウフフフフフフと笑いながら私は両手を空中に泳がせる。まるで指揮者のような動きでゴーレムが形を変え、次第にそれが幾つかのパーツへと変わっていった。作り慣れた人形のパーツだ。


 竜輝をふんだんに込めたパーツに肉塊が治められていく。恐らく臓器ごとに異なるであろう部分をパーツ一つ一つに別個に入れて、間の血管や神経をケーブルで繋げ、辛うじて神癒魔法で生きられるように「加工」すれば出来上がりだ。


 数分で形となった人形はうつ伏せのまま、ゆっくりと手足を動かした。生まれたばかりの赤子の様に、一つ一つ動作を確かめている。


「生まれ変わった気分はどうかしら? 実験がお好きなんでしょう? 今度は自分の体を研究して見ると良いんじゃない」


 プルプルと震える、素人にして5歳くらいの大きさの人形が呻き出した。


「ふぅぅぅ、ぉぉ、ぉぉぉ・・・あぁぁぁぁぁ、ふっぅぅぅ」


「一応喋れると思うんだけど、どう? 人形の素材になった気分は」


 震える子供人形が魔法を使えない事に不思議に思いつつ、私に向けて手を何度も動かしている。だが、なにも発動しない。出来る訳がない。


「あなたの魔力細胞は既に失われた。どうやったかは内緒ね。大人しく会話をしてみたらどうかしら?」


 踵を中庭の地面に叩きつけると、蹲っていた何者かが強制的に地面から生えた椅子に座らされる。さながら拷問椅子だ。私も同様に椅子を出して座ると、人形がこちらを見た。


「お前は、何だ」


 何だと言われても。


「さぁ、私も知りたいわね」


 本音トークで返すと苛立った声を上げてきた。表情は能面だから感情が解り辛い。


「私はどうなった? なんなのだこれは?」


「聞きたい?」


「教えろ! 私に何をした!?」


 周囲にはレオンを始めとして執事頭などが護衛兵を連れて集まってきている。


「あなたの内臓を回収して人形に押し込んであげたの」


 その言葉に、周囲の兵士も、目の前の人形も驚いたような声を上げた。


「その際、貴方は一生魔法を使えなくしてあげたわ。だって危険思想の持ち主だし。それに地上に害ある存在を放っておくと思う?」


 精神支配をした際にコイツの正体は把握してある。しかし、全てを覗き込んだわけじゃない。まだまだ、探らせてもらうとしよう。


「私は守り人だぞ! そんな事をしてタダで済むとでも思っているのか!!」


 椅子から降りた私は一歩一歩をゆっくりと歩み出した。真っ赤な血に塗れた右手を人形の頭に置く。


「そうなの。じゃあ教えて欲しいわね。お偉い守り人様の身に、一体何があったのかを」


「ぐっ、くっ、あっ、あぁ、いぃ、ぎぃ、いひぃ!」


 真実の眼でこの者の正体は知れている。幸いなことに、私のレベルが500を超えた時点で、リリーヴェールのような世界樹の守り人は格下になったらしい。レベルが彼らよりも高くなったことでステータスを閲覧できるようになった。


 闇魔法で守り人の頭の中を覗いていくと、様々な事が見えてくる。だが、一番重要な世界樹に関わる部分だけが靄に掛かったように見えない。防壁のような物だろうか、微かに抵抗感を感じる。やめておこう。


 人形とはいえ臓器を持つ守り人は、人形の目から血を垂らして気絶してしまった。


「ユリア。これは一体?」


「彼は大魔女リリーヴェールの同僚のような者らしいわ。東の守り人、ガルバルシア=イギストモーン。今でいう魔導技師のような技術を持っているわね。世界樹から貰った力で自らを魔導具の一部に変えて、その中に内臓だけを保管させ生き永らえて来た。この内臓も、殆ど全てがナマモノとは言えなくなってるわね。人口魔導臓器とでもいうべきかしら」


「人口魔導臓器・・・」


 レオンが見下ろす5歳児の人形はとても小さく、そして力なく椅子に体を任せていた。小さいのも当然だ。筋肉も骨も無い。治めるべき臓器をパーツに入れると、全て小児サイズに収まるのだから。でも、魔力があったから生き永らえていたと考えると、このまま直ぐに死ぬだろう。


「どうする?いや、このままだとこのガルバルシアという者はどうなる」


「放っておくと死ぬわね。守り人がどんな役割なのか知らないけれど、私が知っている通りの事から予測される事態が起きたら、この大陸の東側で大量絶滅が起きるかもしれないわね」


 守り人はメギアからその地域を守って来たと考えるとそうなる。外の世界樹から生まれたメギアや、この大陸で育っているメギアから指定地域を守る。ただ、そうなると度々繰り返されてきた文明の滅亡に何もしなかったのはなぜかという事と、どうして暗黒魔力を扱えるのかという事になる。こいつはメギア側に寝返ったのかな。


 そうなれば東の地域(評議国)にメギアが狩りに行くかもしれない。そう考えると、私の頭の中には「再び対峙するときが来たんじゃないのか?」と聞いて来る私が現れる。だが私はそれを頭の中から振り払った。キリシアの想定通りならメギアは放っておいても死ぬ。だが守り人が死んだせいで、メギアは東の地へ降り立つことが出来るようになったとしたら?


「放置は出来ない」


「そうね」


 仮に守り人の自業自得で、守り人の一人が消えたとしても、放置は出来ない。しかもそれが起きた場合、エステラードとして、大陸統一をし易くなるかもしれない


「いやな事を考えてしまうわね」


「メギアが東の地を襲った時に、評議国を・・・という事か?」


「ええ」


 属国、いやもう取り込んでも殆ど人が居ないかもしれない。それでも大陸統一には手っ取り早い一手になる。東の地は荒れるでしょうね。


 その後、古代遺跡から無事な機材などを回収したハイネさんを連れて、ブラウ達も地下深くから脱出した。黒い霧も、アンデッドの軍勢も、もう何一つ現れなかった。


 ◇◇


 大魔女リリーヴェールは行方が分からなくなっている。大きな変化が現れる前に接触しておきたいところだけれど、探索用のゴーレムネットにも引っかかっていない。


 あの後、直ぐに東の守り人は死んだ。やはり魔力を失った、いや魔力を制御できなくなった体では身体に障害が発生するらしい。魔導具に依って魔力的な延命措置を施していたが、それが途絶えた事が最も大きいのだろう。縛鎖魔法で突き止めた現地に赴き、回収した人口魔導臓器の延命装置からそれが判明した。恐らくそれ以外にも何か・・・。


 まぁ、いいわ。


 私が思っている以上に速い展開で守り人が侵攻してきた。あの古代遺跡は元から東の守り人が利用していたのだろう。研究施設として使っていたものを、地上にアンデッドを送る為に利用していたと考えるのが自然か。アラクネは防衛装置として利用していたようだが、あんな魔物は大森林の何処でも見た事が無い。東の守り人が作り出した合成魔獣キメラだろうか。


 何にせよ、これから他の守り人が私達を狙っていると考えた方がいい。あの魔導国を狙った魔物の氾濫を阻止した事に、メギアは大分腹を立てていたのかもしれない。そんな事を気にするほど人間的な奴には見えなかったけれど・・・。そして今回の守り人の喪失。次はどうなるだろうか。


「少しだけ、楽しみかしらね」


 寝室のベッドで横になりつつ、スヤスヤと眠るレオンとフランを見て呟いた。


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