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緑の雨  作者: 二笠
深紅の人柱
65/97

064

 コーラーファルト領を出発する際にユベアラちゃんも同行する事になった。どうやら彼女もあの戦いに参加していたらしい。今では立派な風魔法使いか。


 どうして私に同行しているのかと言うと、元国王の護衛の一人だそうだ。今日は元国王を竜船に乗せて私と共に公国、王国へのツアーを敢行している所だ。ユベアラちゃんはそのまま王国に滞在するつもりらしいが、目立たちませんかね?


「素晴らしいものだな。こうして大空を悠々と泳ぐ日が来ようとは」


「そうですね議長」


 元国王、いや名前で呼んであげよう。カマル議長は竜船の大きな窓から流れる雲を見下ろして感動していた。隣に立つユベアラちゃんは少し緊張している。仮にも元国王だからしょうがないね。魔導議会の議長となったカマルは私の洗脳のお陰で真面な性格になっている。多分、本人も自覚が無い。そういう風に闇魔法を仕掛けたからね。


 ユベアラちゃんはこの短期間で風魔法と水魔法のレベルを4つも上げ、魔力制御も一端の魔法使い並みになった。やはり長いこと生きていると体に馴染みやすいのかもしれない。私は例外として。


 レベルが上がった事が一番大きいだろうな。


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 ユベアラ(89歳)

 種族:エルフ

 レベル:32

 HP:251

 MP:905

 状態:通常


 スキル:杖術LV1、光魔法LV2、風魔法LV5、水魔法LV5、魔力制御LV4

 称号:ー

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 弟子が立派になって嬉しいやら寂しいやら。これくらいなら一般兵と言えるくらいに活躍できるだろう。そもそも三属性も使えること自体が珍しいからね。普通はレオンのように一つ二つの属性が使えれば良い方だ。ブランママのように魔法を使えない人の方が圧倒的多数なのだし、褒められて然るべきだろう。


 彼女が強くなったように、戦争を超えて強くなった者は多い。ブラウ達もそうだ。


 ---------------------------------------------------

 ブラウバーン・ゴル(5歳)

 種族:竜機人

 レベル:331

 HP:6220099

 MP:13106592

 状態:通常


 スキル:竜魔法LV10、気力制御LV10、魔力制御LV10、仙気制御LV10、並列制御LV10、闘気制御LV10、無限再生、MP吸収、不滅の肉体、フリキア言語LV8


 称号:真竜人、船長

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 シャルルゴール・メネ(4歳)

 種族:竜機人

 レベル:253

 HP:4018871

 MP:8100004

 状態:通常


 スキル:竜魔法LV10、気力制御LV10、魔力制御LV10、仙気制御LV10、並列制御LV10、闘気制御LV10、無限再生、MP吸収、不滅の肉体、フリキア言語LV6


 称号:真竜人

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 ドリュアシージ・エレ(3歳)

 種族:竜機人

 レベル:219

 HP:5019167

 MP:10348610

 状態:通常


 スキル:竜魔法LV10、気力制御LV10、魔力制御LV10、仙気制御LV10、並列制御LV10、闘気制御LV10、無限再生、MP吸収、不滅の肉体、フリキア言語LV6


 称号:真竜人

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 ディーネット・ネマ(0歳)

 種族:竜機人

 レベル:59

 HP:9011

 MP:140101

 状態:通常


 スキル:竜魔法LV10、気力制御LV10、魔力制御LV10、仙気制御LV10、並列制御LV10、闘気制御LV10、無限再生、MP吸収、不滅の肉体、フリキア言語LV5


 称号:真竜人

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 相変わらずドラゴンってヤツは凄まじい。シージが爆発的に伸びているのはドラゴンとして生きて来た長さによるものだろう。ブラウ同様に数千年は生きていると聞いたから、年月を取り戻すようにレベルの上昇に伴い能力も追従して強くなっている。


 ディーネは魔物の群れに竜魔法を使ったらしい。足りない魔力はブラウから奪ったとか聞いた。取り敢えず尻を百回叩いておいた。


 他者から魔力を奪うのは特に難しい事じゃない。魔力制御がLV10に育っていれば誰でも出来る。ただ、相手に触れていなければならないという制約が付くのだけれど、水龍だった頃のディーネは触れていない周囲の小さい水龍から奪っていた。これは水を経由して奪う事が出来る環境利用魔法だという。伊達に水龍として生まれた訳じゃないという事か。周囲の水を自分の肉体のように使えるらしい。


「コーラーファルト卿は置いてきて良かったの?」


 私がカマル議長を監視しながら隣に座るレオンに聞く。


「国外の事にまで口を出したら、他の貴族にやっかみを受けるんだそうだ。議長に任せると宣言していたな」


「貴族って言うのは何処の国も変わらないのね」


「防衛本能だろうね」


「権力と名声の防衛か。無くなったら家が傾くと考えたら怖がりにもなるわね」


「その通り」


 給仕の女性がワゴンを押しながら通路を歩く。竜船は幅も広いのでワゴンの台数も多くてすれ違いつつも人が通れるくらいだ。進められるがままにエルフの女性から飲み物を受け取った。フルーティな白ワインだった。チーズが欲しい。


 暫くレオンと談笑しつつ上空二万メートルの空中遊覧を楽しむと、公国との境にある山が見えてくる。雲を突き破って天に聳えるテーブルマウンテンだ。あまりに高すぎて頂上には草木が生えていない。おまけに何故か水が溢れていて、地上までエンジェルフォールのような滝が落水している。


「あの滝は地上に影響が無いのか?」


「大丈夫。高すぎて地上に着く前に霧になって消えてしまうわ」


「なるほど、それは見ものだな」


 此処から見ると地上では無く雲に滝が注がれる景色が見えるだけだ。地上の様子は解らないけれど、あの水量でも地上に落着するまでには霧散するだろう。


 私の説明を皆が聞いていたのか、竜船の片側の窓に寄って覗き込んでいた。頂上付近に回遊龍でも居たのか、白い光線が着弾した。


「わっ、何々?」


 ユベアラちゃんが窓に張り付く。ほっぺが冷えた窓にくっついてガラス窓が少しだけ曇った。光線を追ってゴーレムが飛び立ち、また竜船に戻ってくる。回遊龍は服飾の良い素材になる。柔らかい皮革に、僅かに生えた体毛は細くて透明で目立たない為、糸の素材として優秀だ。


「先生!今のは何ですか?」


 ユベアラちゃんは未だに私を先生と呼ぶ。今も卒業記念に送った杖を使ってくれているようだ。


「竜船の砲撃で回遊龍でも倒したんじゃないかしら。倒した獲物はゴーレムが飛んで行って回収したみたいね」


「はぁ・・・一つ一つが凄い船なんですね」


 魔導具だらけの内装、ドラゴンの魔力を基にした武装、搭載兵装、垂直離着陸高速航行、水密性と内部空気換気と酸素ボンベ代わりの空気精製魔法陣等々、単独で海底と宇宙にも行ける船だ。凄いどころじゃない。転移機能でも取り付けたら外宇宙も飛べそうだ。


「そうねぇ」


 自分からそれを自慢するような事はしないが、改良は随時行っていきたいと思っている。外の大陸にも行きたいし、その為には、手始めにこの大陸を平穏にしたいね。


「しかし宜しいのですか?」


 私を殺害しようとした元国王で現議長のアマロ君(二百歳オーバー)が質問してくる。カマル君だったか? まぁいいや。


「武装を見せた事?」


「ええ。この船には議会の人間も多く乗っていますし、情報は洩れるかと思いますが」


 何を言っているのやら。


「漏れた所で問題になるような作りになっていないから大丈夫よ」


「は、はぁ」


 実際、この船は私のような仙気使いかブラウ達竜機人じゃないと動かせない。なにより、全ての竜船は彼らに繋がっている。動かせば直ぐに気付くし、遠隔操作が出来ないわけじゃない。妨害も容易い。


 仮に私とブラウ達が連絡不通になっていても対抗手段は船事態に盛り込んである。魔神が奪いに来ない限り、竜船をどうこう出来るレベルの人間は居ない。乗っ取られそうなら最悪の場合、竜核を転移させて自壊させればいいからね。


 私が何とでもしてみろという態度を取っていると、それを恐ろしく思ったのかそれ以上は誰も聞いてこなかった。



 ◇◇



 それから数時間もすると公国の首都フランバルダルに到着した。この街は一度レオン達と反乱軍が攻め落としたけれど、今現在も中心都市として政治経済の中央に位置する。


 事前に通信魔導具で伝えた通り、首都の領主館にある大きな庭に着陸した。出迎えには反乱軍を率いていた公爵とその配下だ。レオンとは顔見知りらしい。


「お初にお目に掛かります。公国の代表を仰せつかっています、ブランシェ公爵家当主のレオニードと申します。聖女様とお会いできる日を楽しみにしておりました」


「初めまして、レオニードさん。ユリアネージュ=バエス=エステラードと申します。先の戦争では夫のレオンがお世話になりました。デーモンの使途達を打ち倒すことに協力いただいたと伺っております。その節は有難う御座いました」


 デーモンの使途。遺跡から現れたデーモン達を使役していた魔導師たちはこのように呼ばれ、民衆に伝えられている。彼ら反乱軍はデーモンの支配を打ち破るべく現れたレオンたちに協力した、という事になっている。実際には馬鹿をやっている公爵を倒して権力を手に入れたかっただけなんだけど。


「それも我が故郷に安寧を齎す為であればこそです。フリューゲル殿下には国家の危機を知らせて頂いただけでなく、多くの民を救っていただきましたからな。感謝すべきは我々の方ですぞ」


 危機を知らせた、ねぇ。既に知っていた上で、勝ち馬に乗っただけだろうに。


「それはまぁ・・・詳しい事は中で話しませんか?」


 警戒度を僅かに上げて公国全土に散らばったゴーレムとの連携を深めるために、体内魔力の濃度を上げていく。微かな変化に気付く者は居ない。レオンも魔力制御レベルが低いせいか、私の声色が少し変化した事に目線を送っただけだ。


「それではご案内いたします」


「お世話になりますね」


 本日の装いは仕事用のドレスだ。ホワイトドレスをベースにグレーとブラックの生地をグラデーションが出来るように見せる服に、黒生地に金線で花模様が描かれている。白生地に描かれた透明で淡く青い繊維が、公国に降り注ぐ日光を受けて輝く。


 周囲の目線を集めつつ首都領主館に入っていくと、警備の兵が多く目立つ。理由をさり気なく聞いてみよう。


「なにかありました?」


「このような日に間違いがあっては困りますからな。デーモンの使途達の残党の襲撃を警戒して、警備を厚めにしております」


「なるほど。彼らもデーモンを使役して居なければ只の魔導師。見分けもつかない相手ならば警戒もしますね」


「仰る通りです」


 一応、対策はある。レベルの高い者に鑑定用魔導具を持たせて入館者を確認すれば良い。しかし相手はデーモンを使役している人間だ。大森林で狩りが出来る人間と、そうで無い人間では例え使役していようともレベルの上がり方は使役者の方が速い。使役者が遠方に居ようと経験値は加算されるからね。私が良い例だ。


 そうなるとレベル差で鑑定できない場合が多い。恐らく鑑定不能だと判明した瞬間に鑑定者は殺されるだろうな。そのまま内部に侵入し皆殺し。ありそう。


 すれ違う人間を一人一人ステータス閲覧して確認していく。誰も彼もレベル100は超えていない。やはりデーモンには勝てないだろうな。相手も人間なのだから、私達が本日未明に来ることは情報として掴んでいるかもしれない。


 情報は洩れる。これは絶対だ。漏れない情報なんて無いと思った方が良い。人が頭の中から口に出した情報は、それが人の耳に入った都度、漏れる可能性が高まっていく。更に言うならば、この魔法世界では口にしなくても漏れる。闇魔法があるからね。頭の中を覗かれたら終わりだ。


 そうして応接室に案内されるまで二人の潜入者が発見できた。メイドと使用人が一人ずつ。どちらも状態が変身となっていたし、そもそも人間じゃないし、スキル欄に暗黒魔法LV2と3があった。あれって魔王と闇騎士が使ってた魔法っぽいな。


 私が黙っているのが気になったのか、レオンが左手の甲を握って来た。


「ん。大丈夫。デーモンが二匹入り込んでたから、どうやって使役者までたどり着こうかと思ってただけ」


「なんだって?」


「廊下に居た若い赤髪メイドが一人。老人の白髪男性使用人が一人。どちらも長い事働いてるような雰囲気だったから、レオン達が制圧した時もずっと居たのかもね」


「早く捕まえなくては!」


「まぁ、待って。戦争のときに襲ってこなかった意味を知りたい。あれってもしかして、反乱軍側の使役してるデーモンかもしれないでしょ」


 言われてみれば、と一言呟いてレオンが椅子から持ち上げた腰を落ち着けた。どうやって隠していたか? ありきたりで確実な方法は、もう何年も変身しっぱなしだったという方法。これならば普通の鑑定魔導具では分からない。状態:普通(変身)だからね。あとは所持スキルの「隠蔽」で暗黒魔法などの疑われやすいものを隠してしまえば良い。


 私も「隠蔽」欲しいな。レベル差で視られる心配が無いから無駄になるかもだけど。


 などと話していると、老使用人とメイドの二人がお茶を入れにやってきた。デーモンの二人だ。


「ねぇ」


「はい、如何致しましたか?」


「私からバラすつもりは無いんだけど、どうしてあなたたち二人はここにずっと居るの?主人が居るような感じには見えないんだけど」


「はて、意味が解りかねますが・・・」


 老使用人、いや執事だろな。老執事が首を傾げて答える。メイドは少し動きが硬くなった。


「あぁ、別に何かしようって訳じゃないからお茶を溢さないようにして頂戴。デーモンロード如きにどうこうされる私達じゃないし」


 メイドの持つお湯の入ったポットの取っ手に罅が入った。


「この間ね、偶然だけど魔王を殺したのよ。デーモンロードが72体も出てきて面白かったわね。あなた達は彼と関係があったのかしら?」


「それを私達にお話しして、どうされる御積もりですかな」


 老執事の眼が少しだけ厳しくなる。


「別に何も。だって気になるじゃない。人の群れに変身したデーモンが居るなんて。人間観察が趣味なの?」


「「・・・」」


「あなた達の趣味に立ち入るつもりは無いけれど、私の眼は魔導国に居ようと王国に居ようと届かないなんて思わない事ね。妙な真似をするつもりなら、それ相応の覚悟を持ちなさい」


 隣に座るレオンは既に闘気を纏って戦闘態勢だ。老執事は動かないが、赤髪メイドは熱湯の入ったポットをテーブルに置いて少しだけ腰を落としている。魔法より格闘術の方が得意なのかな?


「ふぅ~・・・・・参りました。たしかに、私達はそのような者です。しかし、我らのようなものは特に珍しくありません。人に紛れ、人の体から出る僅かな魔力を求めて、人の輪の中で生活をする。そういう者も居るというだけです。ただし、剣を向けられれば相応に答えましょう。あくまで人の身でね」


 フッとどこから出したのか、黒い鞘に入った黒い柄のレイピアを二人が手にしていた。私は温められたカップから湯を蒸発させ、煮出し終わった紅茶を二つのカップに注いだ。


「別に何もしないわよ。何なら息子の専属メイドと執事になって貰いたい位だけど、此処から離れたくないんでしょ?」


「ほっほっほ、有難いお誘いですが、まぁ、難しいでしょうな。この館から出るには、それこそエステラード王国から国王陛下の命令でも無ければ、貴族達が守秘義務を心配して放さないでしょうからな。動きたくとも動けない柵。これも人の生活でしょう」


 メイドも頷いている。


「ふーん。じゃあ、王権代理として私が命令したら付いてきてくれるのかしら」


「ユリア!?」


 レオンが何言ってんだ?という顔を向けて来る。


「だって、レオン。この人たち寿命ないのよ? どうせあの子も仙人にするつもりだし、丁度良いじゃない。永く生きている間に傍付きがコロコロ変わったら、あの子もやり辛いでしょ。いずれ国王になるんだろうし。それも超長期間」


 身近に味方が多い方が良いでしょ、と続けるとレオンの顔が落ち着いて来た。


「いや、まぁ、そうかもしれないが、しかしデーモンだぞ?」


「今話したら普通に良い人じゃない。流石に契約はさせてもらうけど」


 少しだけ全力で竜気を纏うと、二人が部屋の隅に飛び退いた。


「なっ!? なんと・・・!!!」


「これは・・・!」


 二人の行動を無視してテーブルの上に魔法紙を取り出し、長年私の魔力を沁み込ませたインクを腕輪から取り出す。そのインクに竜気を込めると少しだけ揮発していったが、それも風魔法で集めてインク瓶に戻していった。


 ペン先が黄金で造られたステンレス万年筆を取り出し、ペンの端を引っ張ると、インクを入れられる空洞に少しずつ注いでいく。半分くらい満たしてペンを基の形に戻す。


 下敷きの上に乗せた魔法紙を二枚用意し、私の名前、契約内容、そして・・・。


「二人の名前って何かしら?」


「お待ちください、私達はまだ契約を結ぶとは」


 老執事が人間っぽく狼狽する。


「だーいじょうぶよ、ちょっと魔力を吸収する相手が変わるだけだって、それに長いこと生きてるんなら少しくらい生活環境を変えた方が刺激が合って良いでしょ。傍付きになる相手も暇な人間じゃないんだから退屈しないわよ」


「こ、この方、色々とトンデモないわね」


 メイドさんは演技が未だ下手だなぁ。なり切ってないよ!


「さ!教えないなら自分で書いて!連名でも良いわよ!」


 下敷きごとテーブルの反対側に置いて、ペンを老執事に渡した。内容を読み込む二人を余所にレオンの視線を感じながら紅茶を飲む。うまっ。爽やかで味が濃厚。後味も無い。これは食後とかじゃなくて、小休止に紅茶だけ飲む場合に良いわね。


「良いのか?」


 レオンが聞いて来る。


「良いんじゃない? あの子には後を継ぐときに教えれば大丈夫でしょ」


 へーきへーき、と軽く返しつつ笑みを向けると旦那は納得してくれた。理解ある家族!すばらしいな!


「本当にこれだけの優遇をされて宜しいのですか?」


「これって、そのへんの伯爵より待遇が良いわね・・・」


「雇うのは王国じゃなくて私だし、お金もそこから出て来るんだから問題ないわよ。私から二人を王国に貸し出すって形にするから、嫌なら私の傍付きになれば良いじゃない」


「いえ、その時は静かな屋敷でどなたかに仕えさせていただきます」


「私もそう願います」


 何か二人そろって私の傍付きを嫌がられた。何でだ。


「まぁ、その時は応相談で。それで?どうするの?」


 二人が横目でコンタクトを取り合い、同時に頷いた。


「お受けしたく存じます」


「私も同じくお受けいたします」


「そう。じゃあ私からあの領主さんには断りを入れさせてもらうから、サインだけお願いね」


 老執事が返事をして魔法紙に名を書いていくと、彼の魔力が魔法紙に染み込んでいく。同じようにメイドが名を書き込んで魔法紙に魔力が染み込む。そして二人の胸に竜気の篭もった魔力が刻印となって象られた。


 これは契約の魔法陣を裏に書いた、魔法契約書だ。様々な条件で縛る事も出来るが、彼らが気にしていたのは給金では無くその条件の少なさだろう。まるでデーモンを縛るための要素は無く、ただの人間の執事とメイドを雇うための条件しか書かれていない。


 もし彼らが働き先で暴れようものなら王国を好き勝手に弄繰り回せる。それだけの自由を与えると書いてあるのだ。先ほどのような言葉も出てくるのも頷ける。でもね、甘いよ。


 私が書いた条件は一つだけ。人が幸せに感じるように行動する事。それだけだ。それを破った場合の罰則はただ一つ。私の造った訓練用の魔法空間への永久追放。それも竜気や元素魔法が飛び交う、地獄のような空間だ。


 正直なところ魔王や闇騎士は其処に放り込めば圧勝できたのだが、私はそれをしなかった。情報を聞きたかったし、なにより勝つだけの戦いをしたくない。あれほどの相手など早々出敢え無い。母親から受け継いだ血は、そんな所でも戦闘狂ぶりを主張してくる。


「ふむ・・・」


 二人が書き込んだ契約書を確認し、腕輪に仕舞った。彼らの胸の辺りには私の竜気の刻印がずっと残る。竜気らしく、龍の顔を前面から見た形を模した飾りだ。胸の開いた服や水着を着ると、青い刺青が視えてしまうだろうが気にしないで欲しい。


 そう説明すると二人が胸を開けて確認していた。いや、メイドさん胸大きいわ。メイド服は作業服だからか、見た目ゆったりしているんだけども、肌を見せられたら大きさにびっくりですよ。そっとレオンの眼を手で隠して話を続ける。


「魔法の発動に影響は?」


「ありませんな」


「御座いません」


「よろしい。それじゃ、二人はこのまま仕事を続けなさい。領主に話をつけて此処を出るときに同行してもらうわ」


 二人が深くお辞儀をして部屋を出ていった。


「いや~、いい人材が手に入って良かったね!!」


「・・・そうだな。人材・・・?魔材?うん、人材だな」


「魔人も人ヨ」


「そうだな」


 理解ある夫で良かった良かった。


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