062
首都マギカギヌスの空に自称陛下の姿が映し出され、演説が行われている。1000年に一度の災厄が訪れ、魔物の大軍がこの首都を目指していると。
「だが、我々には聖女ユリアが居る! 万の魔物を滅ぼし、ドラゴンを打ち倒す聖女が居れば恐れる事は何もない! 同胞たちよ、杖を取れ。朋友たちよ、槍を取れ。敵は南からやってくる。聖女と共に大いなる災いを打ち払おうぞ!」
交代で私が映し出されて紹介し、戦列を整えるダンエル達が映し出されて紹介されると、首都に住まう民は諸手を上げて声を上げた。聖戦を始めよ、聖女と共にあれと。
「更にこの窮地において、はるか南の王国から我らを救うために、戦士たちが参った。竜の船に乗り、大空から我らに力を貸す彼らに、その勇気と友愛の心を讃えたい。戦士たちよ竜船に乗るが良い。そして決戦の地へ共に向かおうぞ!」
魔導映像に映さなくとも解るほど大きな竜船が空を舞い、ダンエル達の元へと降り立つ。既に収納結界化した格納庫へと数万の兵が乗り込んでいく。狩人、冒険者、傭兵、魔導士、治癒士、あらゆる戦力が自称陛下の勅命により集結し、南へ向かう船へ乗り込んでいく。
先頭に立つ私が風獣の背に乗り空へ駆けあがると、追うように竜船も浮かび上がった。空を見上げて歓声を上げる国民たちに見送られ、私達は南部戦線に向かう。
私は飛び立つ竜船を後ろに見ながら、中に乗る自称陛下を見て一人ほくそ笑んでいた。
(扇動役ご苦労様)
当たり前だが、塔の邪魔な機能は既に解除された、という事にした。魔王なんて始めから居なかった。そうだな?
「ふっ・・・」
ソロモンの口癖が少し移った気がして可笑しかった。嬉しいのか何なのか良く分からない。魔物は南部で右往左往し、元素魔法と治癒魔法を解き放ったことで、私は縦横無尽に戦える。刺された腹も呪いごと穴を開けて治した。
自分の胴体に大穴が空いた姿は、流石に焦ったね! 少しだけ直せるか不安だったよ。
自称陛下クンは闇魔法で洗脳し、彼だけをあの空間から解放しているので、このまま英雄を擁立した王として踊ってもらおう。私を殺そうとした贖罪はそれで果たしてもらう。仙気で放った闇魔法なので、仙気使いの闇魔法師以外には解けないけどね。
緑色の燐光を放ちながら緑色の獣に跨る白銀の女を見て、船の中の彼らはどう思っている事だろうか。この光景は今も首都上空に巨大スクリーンのように映し出されているので、魔導国の民衆には戦場の様子も私の姿も公開されている。
(ブラウ達も久しいわね。シャルル、シージ、元気だった?)
(主がご壮健で何よりです。ここ数か月は念が届かず、落ち着きませんでした)
(主!シャルルも元気じゃなかった。主が元気で良かったです)
(我らよりも主が怪我も無く、無事だったのが喜ばしい事。何より新たな同胞も見つけた様子。この嵐が過ぎた後で紹介いただきたいものです)
相変わらずのようだけど、心配させてしまったようだ。王国から向かってきて公国を通過した辺りで念が届いたらしいので、丁度あの魔王を倒したタイミングと被る。竜機人同士の念話自体が元素魔法だった可能性もあるな。
(終わったら紹介するわ。だから早いとこ片付けちゃいましょう)
念話で話し合っていると、彼女たちもテンションが上がっていくのを声色で感じる。再開を喜び合える仲間が居るというのは良い事だ。
◇◇
戦いは順調だ。魔王ソロモンを倒した事で、魔物たちは向かう先が何処なのかを掴めなくなったが、その殆どが北へ向かおうとしているのは変わらない。数は少し減っても数千万匹はいるだろう。
「地上部隊には前線を押さえる役に集中してもらい、足止めされた魔物を上空のユリアネージュ殿と三機の竜船で一気に消し飛ばす。・・・本当にこの作戦で問題ありませんかな?」
ダンエルが不安気に語る場所は、つい先日、世話になったコーラーファルト城の作戦室だ。今、この部屋にはダンエルと私だけではなく、王国から来た南央騎士団を率いるレオンも居る。ブランママやハゲ爺は領都ユリアで戦時待機中だ。ハイネさんも通信で張り切ってたな。
「コーラーファルト閣下、前線には私も参加しますが、足止めは一瞬で終わります。それだけの攻撃力が上空から撃ちおろされる事になります。私達の役目はその邪魔にならないようにすることが主目的となる事をお忘れなきように」
レオンがダンエルに言った通り、意気軒高と敵陣に飛び込まれると困る。ディストーショナルレインの餌食にするつもりは無いが、竜船の拡散砲撃や連射コイル砲を食らったら目も当てられない事になる。この世から消えるつもりですか?と言いたい。
「それほどまでの力があの竜船に?」
「私が不在の間に随分と彼女たちも鍛えていたようで・・・」
チラリとテーブルの隅に座る竜機人三姉妹を見やる。いや、今は四姉妹か。新しい子も出来たし。
「主、ここに来る前に大森林の掃除をしてきた」
「シャルルも頑張った!」
「主の母君の為にもなりますからね。私もブラウには劣りますが、そこそこの範囲で戦ってまいりました」
ブラウ、シャルル、シージの言葉を聞いてレオンを見ると、遠い目をしていた。どうやらブランママたちの仕事を奪ってきたらしい。あらら・・・。
「あるじっ、私もやりたい!」
「えっと・・・ディーネはまだ竜船を動かせないでしょ?」
「むぅぅ~!」
この子供っぽいのは私が首チョンパしてあげた巨大水龍の外道ドラゴンの成れの果てだ。まだレベル1だから戦わせられない上に、初期ブラウと違ってやたらと弱い・・・。
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ディーネット・ネマ(0歳)
種族:竜機人
レベル:1
HP:1691
MP:10042
状態:通常
スキル:竜魔法LV10、気力制御LV10、魔力制御LV10、仙気制御LV10、並列制御LV10、闘気制御LV10、無限再生、MP吸収、不滅の肉体、フリキア言語LV4
称号:真竜人
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むぅむぅ騒ぐディーネをフォレストドラゴンの竜機人であるシージに任せ、ブラウに聞いてみた。
「ねぇ、ブラウ。ディーネってなんであんなに弱いのかな?」
「主、恐らくですが地上だからではないですか?」
「・・・エラ呼吸してないよ?」
ディーネを観察して言う。
「主、水の魔力が足りない影響かと思いますが・・・」
「あ、そういう事か。なるほどね。あと、そういえばあの子、少し外道なところがあるから気を付けてね」
「主。水龍は皆、そのような気質ですので仕方ない事です。存じています」
あれって個体の性格じゃなくて、種族特性か!!! 周囲の仲間の魔力を気絶するまで奪って戦って、そいつらを巻き込む様な外道だから、戦法としてどうなの!?って思ってたんだけどなぁ。若干のカルチャーショックだわ。
「ま、ディーネはブラウかシージと一緒に行動するようにしなさい」
属性的にもシャルル(火竜)と一緒はマズいだろう。現に彼女たちは元の属性の魔力を周囲に棚引かせているしな。
「わかったぁ!」
シージの腕の中でディーネが叫ぶ。何か不安だ。首輪でも付けとくかな?
◇◇
コーラーファルト城は迫る戦争の準備で慌ただしい。私も魔物の軍勢の監視があるから、司令部であるこの城から離れられない。作戦が始まったら直ぐに飛んで行くけれど。
そんな城の中をレオンと共に廊下を歩いていると、前方から見覚えのある根暗が現れた。
「お前!俺と勝負しろ!俺が勝ったらユリア先生は俺が貰ぶごっ!?」
おお、速い。レオンが懐に飛び込んでボディーブローを一発。根暗君は台詞の途中で気を失って顔面から倒れ込んだ。痛そう。
「何だこれは?」
流石ギルマスの弟子。有無を言わさずに殴り倒した。王太子としてはどうかと思うけど。
「元弟子よ。それより行きましょう、時間無いわよ」
「ああ」
廊下の曲がり角でユベアラちゃんと遭遇したので挨拶しつつ、負傷者の対応をお願いしておいた。事情は話すまでも無く理解してくれた。やっぱりいい子だな。
作戦開始前にやることは沢山ある。私たちが前線に立つと言っても、名目上の主戦力はエルフ族とドラグ族だし、彼らには目立ってもらわないと困る。その為には、衆目にさらされる場所には王国の兵士を置かないという仕込みが必要だ。
王国の兵士には裏方に徹してもらい、目にするのは魔導国の兵士たちだけだ。この作戦の肝は魔導国が自力で魔物の氾濫を押し止めたという実績作りと、それを手伝ってもらったという王国への借金を作ってもらう事であり、その代表格が竜船と聖女。王国兵士たちには申し訳ないが出番は無いのである。あるとすれば、裏方で積極的に魔導国の人と戦場での絆を深めてもらう事か。
レオンと話しながら廊下を歩いていると司令部へと着いた。
「この街への予想到達時刻は?」
「あと3時間20分というところでしょうか。先頭は相変わらず大きな魔物が多いですね。最初のひと当てはエルフの魔法に期待しましょうか」
チラリとダンエルを見ながら返すと、静かに頷いていた。彼もこの状況は解っている。彼だけはこれが王国のパフォーマンス部隊である事を理解している。他のエルフ族とドラグ族は迫る遠方の土煙に戦々恐々としている。
「最初は強く当たって、あとは流れで、だな?」
「そうね。魔物の最前線はデミドレイクを始めとした大物、続いてゴブリンなどの小物勢、その後ろにドラゴン等の本番ってところかしら」
隣に座るレオンに顔を向けながら、何て事は無いという風に返した。彼ももうドラゴンごときで動揺はしない。レベル200越えは伊達じゃない。
「本当に倒せるのですか?ドラゴンですよ・・・?」
司令部に詰めるダンエルの部下たちが不安と恐怖に満ちた顔で問いかけてくる。見た所で落ち着いているように装っては居るが、ダンエルも心中穏やかでは無いだろう。彼らの歴史上でも、聖者ソロモン以外でドラゴン狩りを成したものなどいない。最も、そのソロモンは・・・いや、やめよう。
「少なくとも私とレオンは真っ向からドラゴンと殴り合えますよ。水龍も倒したではないですか。問題ありません」
私の言葉を聞いて彼らは互いの顔を見合わせる。少しだけ不安は和らいだようだ。外道水龍を倒しておいてよかったな。
その後は静かな時間が訪れた。後は待つだけ。司令部以外は騒がしく、人の動きが激しい。いざ戦いを迎えようと構えていても、人事を尽くそうともこういう時間はもどかしいものだ。
◇◇
「時間ね」
風獣に乗って上空を走る私の横を、竜船が三つ並んで飛んでいる。地上には魔物の大軍がコーラーファルトの領都へ押し寄せてきていた。魔物は魔力を求めて集まる習性がある。街に滞在するエルフとドラグの人々の持つ魔力は、その数も相まって膨大な物だろう。魔物にとってはご馳走が並んでいるように見えているのかもしれない。
街を背に立ち並ぶのは魔導国の兵士たち。重装歩兵を前面に並べ、すぐ後ろの列に魔導師隊が構えている。彼らの前にデミドレイクやアースワーム等の先発が辿り着く直前、巨大な壁が街と彼らを隠すかのように地面から生えてきた。上空から見てもまるで長城のように立派なものだ。流石エルフ。そして後ろからはドラグ族以外に引けないと言われる程の巨大な弓が何万発も発射された。
一本の矢が素人の腕程の太さもある。まるで攻城バリスタだ。
「壮観」
私たちはそれを見下ろす形で飛び越えて進む。あれらの相手は魔導国兵士に任せていい。本懐はその後ろに続く雑兵と、更に後ろで大きな土煙を上げているドラゴン・巨人・デーモン達だ。
大森林というのも不思議なもので、深層に行くと同じ面子しか居ないらしい。どいつもこいつも五メートル越えの体ばかりで、ドラゴンに至っては千メートル級がチラホラと見かけるほどだ。しぶとい連中ばかりで困るね。
「それじゃ、やりますかぁ!ブラウ!シャルル!シージ!一斉砲撃!!!」
私も魔力を集めて解放された元素魔法を天から降らせる。周囲を大量の飛行ゴーレムが埋め尽くし、私の魔力を吸い取って砲台と化す。雑兵を彼らに任せ、全身から緑の燐光を溢れさせると、詠唱を開始した。
「世の清明を照らし、業の罪科を照らす。終わりなき者共に終焉と安らぎを与え、天へと導け。我が名はユリアネージュ=バエス=エステラード。聖名の元に大いなるキリシアの裁きを与えよ。―――ディストーショナルレイン」
緑の燐光が天高く広がり、雲を突き破り地上へと広がっていく。まるで雨のように細かな光の粒が天から降り注ぎ、魔物たちの肉体を消滅させて塵へと変えていく。上空に居る私には彼らの悲鳴は聞こえない。ただただ地上に緑の染みが広がっていくだけだった。
◇◇
空から青い閃光、赤い閃光が降り注ぎ、遥か彼方に居るドラゴンたちが倒れていく。極めつけは緑の雨が降り注ぐと前線から見える魔物たちまでもが姿を消していった。
「奇跡か・・・これが、聖女の御力か・・・」
隣で指揮を執るコーラーファルト卿が声を震わせながら呟いている。私の妻は聖女などと呼ばれているが、その実、彼女は彼女のしたいように人を助けているだけに過ぎない。国勢だのなんだと今回も言い訳をしていたが、殺意を向けた魔導国の人間にも幸せになって欲しいだけだ。余り哲学的な事は好きじゃないみたいだしな。
「コーラーファルト卿。まずは緒戦を終わらせましょう」
「うむ。そうさせてもらおう。フリューゲル殿下、奥方殿の協力に深く感謝する」
「礼を言うのは勝ってからですよ」
私が薄く笑うと、妻の言うダンディなエルフも薄く笑った。我々の王国兵は前線の兵たちの補給や後送が主な仕事だ。南央兵も大森林で鍛えはしてきたが、この戦場は本来我らのモノでは無いからな。
そう考えて、戦線の終息を予感していた。
だが、ダンディ司令官が前線に目を戻した瞬間だった。遥か彼方の地平線が爆ぜた。余りにも遠いため、地平線の彼方の爆発が白くぼやけて見える。大森林の方角、薄く霧が掛かった彼方で土が天へと広がり、その土が竜船を飲み込んでいく。当然ながら妻もその辺りに居る筈だ。
「殿下っ!?」
「大事ない!! 信じろっ!」
そうは言ったが大地に降り注ぐ土砂から目が離せない。前線とは余りに離れているが、上空に打ち上げられた噴煙は余りにも天高く登り過ぎて降りてくる気配が無い。そのままこの国を覆いつくしてしまいそうなほどに、黒い雲となって広がりつつある。そして幾許かの時が過ぎると、僅かに衝撃波が到達した。
「ユリア・・・何が起きている・・・」
呟いても妻から答えは返ってこない。今は地を這うように迫る黒い煙の対策を優先しなければ。暫くそうして地を覆う黒い煙の様子を見ていると、不意に空に向かって緑の光が伸びていき、それはまるで大樹の幹のように伸びた後、落葉の如く数多の光源が地上へ降り注いでいった。
「ユリア・・・」
私はただ、それを見続けていた。
◇◇
時は少し戻る。
周囲を漆黒の霧が覆いつくし、私とブラウ達の行く手を阻む。やれやれ、魔神が何かしたのだろうか。アイツの様子は位置が高すぎて感知できない。ゴーレムネットワークでも拾えないので、既にゴーレムを破壊されたか、何かに干渉されているのか。
となると、アイツの気配を感じない以上、これは別の誰かの仕業か。
「魔王はもう居ない、だけど黒い霧から感じる魔力はソロモンに似ている・・・誰だ?」
暗黒魔法とでも言うべき霧だ。使い手の系統は予想できるが、姿を現さない。魔気合一スキルなどで周囲を探っても、感知できる範囲に居ないのか不明だ。
そのまま地面が爆ぜた中心あたりに降りると、ご丁寧にそいつは待っていてくれた。魔王ソロモンと言い、コイツと言い、どっしり構え過ぎては無いかな?
「ニ、ガサヌ」
酷い匂いだ。目の前から発する腐臭が霧に薄く隠れるそいつを腐肉纏う者だと伝えてくれる。
「聖餐ヲ、前ニシテ、逃ガシハ、セヌ」
黒い霧を風魔法で遠ざけると、魔力的な抵抗感を感じながらも姿を見る事が出来た。
「聖騎士?」
血錆で黒くなった鎧は所々が白っぽく輝き、その肉体は黒い腐肉がガスを発している。鎧の形は私が知っている聖騎士のそれと酷似していた。王城で見たエルフの神殿騎士の鎧にも酷似している。
「死ヲ捧ゲヨ」
騎士が自分の腹に手を入れると、そこから黒い剣がズルリと引き出されていく。引き出されると共に刀身に血と肉が継ぎ足されて、ひん曲がった曲刀のように見えなくもない。
「我ガ神トヒトツニナルガイイ」
「随分と見覚えのある剣を見せてくれるじゃない・・・」
つい先日、腹に刺された剣ですがね。ソロモンの双剣は刺突用の直剣だったな。今度は剣舞でも見せてくれるのだろうか。厄介な事だ。
オリハル&カルコスの合金剣を手元に作り出して仙気と緑の燐光を纏う。その私を見て騎士は一歩引いた。
「聖者ソロモンに何をした」
「クカカッ」
グチャリと口が開いて笑うと臭気を発するガスがゆらりと零れた。
「導イテヤッタダケノ事。死ヲ捧ゲルニ相応シキ神ニナ」
やはり魔神か。だが、魔導国で起きていた裏側の事は、コイツが全ての元凶だろう。神だのなんだのと・・・。
「まったく、キリシアもメギアも碌な事をしない」
「キリシア。邪神キリシア。ソノヨウナ存在ナド、我ラニハ不要!」
メギアを知らない? 反応すらしないのか。いや、あれはキリシア達が呼称しているに過ぎないのかもしれないな。
「もう黙りなさいよ。死人は死人らしくしなさい」
「カッ」
一気に闇騎士に近付くと、大口をあけて液体を飛ばしてきた。悠々と躱して闇騎士の胴体を上下に切り飛ばす。振り返ると当然のように上半身が肘をついて起き上がっていた。
「ディストーション」
暗黒魔力が体を覆う前に上半身を消し去った。下半身は飛び上がって私の頭上から落ちて来るが、背中に倒れて空間魔法で開けた穴に収まると、落ちて来た闇騎士の足が私の居た場所に突き刺さった。
「ディストーション」
上半身同様に光に飲み込まれると、闇騎士の体は消えていく。しかし、周囲の暗黒魔力は消え去るどころか増加していく一方だった。
「はぁ・・・エルフも、ソロモンも、魔神の手先も、イラつくわね。そんなに他人を不幸にして自分を優先させたいわけ? 恨みだか本能だか知らないけど、そんなモノの相手をさせられる方は堪ったもんじゃないのよ!!!」
ゴゥッ!!と仙気が周囲に広がっていく。青い竜輝光が周囲を覆いつくして更に緑の燐光が天へと昇っていく。急激に減っていくHPとMP。だが、それ以上に死んでいった魔物達の残滓とでも言うべきものが魔力となって私に注がれていった。
念のためステータスを見ると、レベルの上昇が止まらない。今この時も上がり続けている。
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ユリアネージュ(16歳:不変)
種族:仙人
レベル:522
HP:1631042
MP:39568102
状態:亜神化
スキル:剣術LV10、縮地LV7、格闘術LV10、仙体術LV6、火魔法LV10、水魔法LV10、風魔法LV10,土魔法LV10、光魔法LV10、闇魔法LV10、元素魔法LV10、空間魔法LV7、刻印魔法LV10、封印魔法LV10、付与魔法LV10、錬金術LV7、回復魔法LV10、治癒魔法LV10、神癒魔法LV8、気力制御LV10、魔力制御LV10、仙気制御LV10、竜気制御LV3、並列制御LV10、闘気制御LV10、気配察知LV10、高速反応LV10、魔気合一LV5、HP高速回復LV8、MP高速回復LV10、真実の瞳、フリキア言語LV9
称号:仙人、聖女、ワールドルーラー、竜機人の創造者、神技の体現者、神樹の守り人
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止め処ない力の奔流が大河のように大森林から私の中へ注ぎ込まれていく。前線があった戦場の方からも止め処ない魔力が流れ込んでくる。私を中心にして緑色の光が立ち上り、一定の高さに達すると、それは地上へと降り注いでいく。
黒い霧も、それを成す暗黒の魔力も、ソロモンと戦った時とは違って端から消え去っていった。続いて大森林から溢れる魔物達も、続々と体を崩して塵へと変わっていく。数百万、数千万の魔物が緑の光に飲まれて消えていった。
「少しはソロモンを見習うと良いわ」
私の足元に残ったのは一本の白いコードだけ。




