046
翌朝、何だか黒い鎧になりたくなかったので城の中庭に居た。ここなら魔力制御の鍛錬もして良い事になっているので、何かの腹いせに全力で行うと、怒りの光精霊のような鬼面の小人が大量に湧き出てきた。ゴブリンの妖精かな?
お陰で庭師の人に「眩しいんで抑えてくださいませんか・・・」と言われ、遊びに来ていたブラウ達ドラゴン三姉妹には心配されてしまった。ゴメンナサイ、無意識でイライラが止まらなかったようです。
そのまま空間魔法LV2の成果とばかりに、作った小人を一つの空間結界に閉じ込め、内部を確認すると数万体の光源がキラキラと輝いて綺麗だった。手のひらに圧縮した結界内は、光精霊が中に入ると同じサイズの小人でも、外から見ると砂粒のような大きさだ。
両手に掲げた結界は数多の光源が星のように輝いて、日中の明るさでもダイヤのようにキラキラとしている。ブラウ達やモンドさんも感動しているし、通りすがった姫殿下も目を輝かせていた。うん・・・綺麗だわ。これを覚えられた点だけは緑婆に感謝しよう。教わった覚えはないので礼は言わないけどね。
「ふぅ・・・ストレス解消にはなったわね」
「主、何かあったのですか。魔力の迸りが普段より激しかったです。制御も甘いようでしたし、何か自棄になっていませんか」
う・・・ブラウさん容赦ないっすね。もう少しお姉さんに優しくしても良いのよ。
「ちょっと合わない人と出会ってしまって、その人とのやり取りでストレスを感じてしまったのよ。どうしても・・・許せなくてね」
ウフフフと静かに笑う私を見て、シャルルがゆっくりと離れていった。シージはその辺、大人なので、不気味に思っても行動には出さないのだ。身長もブラウと同じくらいだからね。
そのシージだけど、ブラウと違って頭の角が大きい。フォレストドラゴンだからだろうか? 後頭部から背中に垂れるように二本の茶色い角が生えている。しかも触るとフニフニして柔らかい。髪が束ねられたようなものかな? シージに聞くと「枝です」と言われた。なんだ枝かぁ。・・・枝なの?
ふと手元の水が入ったグラスを眺めていると、背中から大人なシージに抱きしめられた。おおぅ・・・私がモデルなせいで重量感タップリなもので包まれる。背中から発される声は、私がモデルだとは思えない程に透き通っており、まるで森の中で聞く風の囁きのようだ。
「疲れた時は誰かに寄りかかっていいんですよ。だから今は私に背中を預けてください」
耳が幸せ・・・後頭部も幸せ・・・ああ、背もたれに体重を預けると、そのままシージさんの胸に埋まる。まるでブランパイに包まれているようだ・・・。
「・・・ありがとう、シージ。なんだか落ち着いたわ。ううん、癒されたかしら」
「元気になりました?」
「うん。元気いっぱいになった」
「ならよかったです。どういたしまして」
「ふふ」
後付けて言われた「どういたしまして」は最も遅く教えた筈なのに、ブラウよりも心のこもった感じがして、何だか嬉しくなった。
これだけフワフワした気持ちになれたのは、彼女がフォレストドラゴンとして何千年も生きてきたせいだろうか。森の癒しのようなものを、彼女の魔力から感じ取れた。
まるで、森林の中に・・・ん?
ふと見ると周囲の庭が、随分と高い木で囲まれている。
「ねぇ、シージ。どうして庭の木が急成長してるの?」
「私の魔力を吸った木は、みんな元気になります」
「どうして花が咲き終わって種が落ちてるの?」
「私の魔力を吸った花は素早く次の命が出来上がります」
それは庭師さん泣いちゃうかもしれないなあ。後で謝っておこう。
折角なのでお庭で朝食を採りつつ、モンドさんとも久しぶりに面と向かって会話をした。
いつも寝室にいる私なので、お客さんが来ても、こうして庭に長時間居たりしないからしょうがないね。レアキャラってやつよ。
「随分、お腹も大きくなりましたし、先に会長が出産しそうですね」
「ハイネさんはあと何ヶ月でしたっけ?」
「予定ではあと4ヶ月ですね。次も女の子が良いと娘の頭を撫でながら言っていましたよ。絶対に会長の息子さんと結婚させるって息巻いていました」
モンドさんが少し遠い目でそんな事を言い出した。
「あ・・・・そうなの。それは初耳だわ」
鍛えて来るんだろうなぁ・・・。シルバ達が鍛えてるの見てるからなぁ・・・。既に長女に魔力制御が生えてたし、本気だなそりゃ。
「弟たちがその気なら構いませんけど、多分あの子たちシスコンですよ。それでいいならどうぞ」
「それはまぁ、ともかくとして・・・まず間違いなく騎士になれるでしょうし、娘も宮廷魔導士にすると息巻いていましたので、幼馴染同士で上手くいくんじゃないですかね・・・息子は普通に育って欲しいですが」
最後の言葉は本音だな。間違いない。
「出来ればモンドさん一派で商会を支えて欲しいんですよね・・・いつまでも私が引っ張れないと思うので。可能であれば、息子さんにも魔法を覚えてもらいたいですね」
「あぁ! 確かにそうですね。私くらいの年になると、新たに覚える確率も下がるといいますし、時間もないですし、息子に期待しましょうかね」
「そうなんですか? 年齢と共に新しいスキルを覚えにくくなったり、成長しなくなったりします?」
それだとブランママは何者だって話になるんですが。天才ですかそうですか。
「一般的にはそう言われています。ですので、女性は一旦家庭に入ってしまうと、冒険者の場合は復帰し辛くなりますので、引退する方が殆どですね。そういった実力で左右される仕事の方は、その傾向が強いと聞きます」
騎士とか宮廷魔導士とか、そういう仕事か。たしかにそうかもしれないなぁ・・・もう上を目指せないのならば、いっそのこと・・・と考える人は多そうだ。
「なるほどねぇ・・・私も今のうちに新しいこと始めようかな」
「良いと思いますよ。会長はジッとして居る事が少ないですから、今のうちにしか出来ない事もあるでしょうし」
「むぅ。私だってジッとしてる事はありますよ。ジッとしてないとゴーレムなんて作れませんからね」
「あれは、何よりも体を酷使する仕事だと思うんですが・・・」
何か言われた気がするけど、私は気にせずハムエッグをミルクで流し込んだ。うまぁい。
◇◇
夕方に黒い鎧騎士ユーリに接続すると、情報の聞き出しは一通り終わっていたようだ。
緑婆の力が弱いのは子供の状態まで若返っているからで、絵画のような大人に戻れば自然と以前のような魔力になると言っていたらしい。それでも私よりは魔力量が低いらしく、相変わらず化け物呼ばわりされていた。
この屋敷に居る限り、とても緩やかに若返りが進行していくのでそろそろ屋敷を出たいらしい。迷路が広くなったり狭くなったりするのは、そう言った彼女のサイクルに影響されているとか。
昨日はレオン達もこの屋敷に泊まっていたけれど、放っておくと子供になっていくらしい。緑婆だけの話かと思ったら建物内部なら誰でも可能なのか。随分と大きな逆玉手箱だ。
緑婆が居る間は迷路が広がり、居ない間は迷路が狭まる。緑婆の魔力を吸って迷路の状態が変化するようだ。
部屋の隅っこでそんな話を聞いていると、緑婆が恐る恐る近付いてきた。
「あの・・・怖がって・・・ご、ごめんなさい」
震えながら杖を支えに頭を下げた彼女は、やっぱり顔に恐怖の色を張り付けていた。うん・・・努力の結果だろうし、正直に受け取ろう。何を言われようと拒否するほど嫌いじゃないし。
ゴーレムの幻影を本来の自分に変えて、兜を取る。長い銀髪が幻影で垂れて黒い鎧を彩ると、私の顔を見てリリーヴェールが目を見張った。
「・・・私の方こそごめんなさい。これは幻影だけど、素顔と同じ顔で謝罪させてもらうわ。私の魔力について話がしたかったら、私が生きている間にこの国の王都に来なさい。歓迎するから」
「は・・・ぇ・・・ぁ・・・・ふぁ・・・・ぃれい・・・・・・」
キラキラと目を輝かせてリリーが何かを呟いていた。聞いてるのかな? まあいいか。
再び兜をかぶりつつ幻影を消すと、「あぁっ」とか言いつつ手を伸ばしてきた。途中で恐怖が勝ったのか、鎧に触れる前に手を引いていた。まだ慣れないみたいだ。
うーん・・・まごまごして、両手を胸の前で合わせる姿は可愛いけど・・・リリーは伝説の大魔女で年上なのよね・・・なんか子ども扱いできない。
そんな彼女のもとを去り、私達は彼女の空間魔法で迷路の入り口、自動車を土で覆った場所に戻された。後ろを見ると、開いた出入り口に歓声が上がっている。私達を見て警戒もされている。
「落ちついてくれ。私達は迷路のトラップで此処に戻されただけだ。出入り口も復活したようだし、皆で出ようじゃないか」
レオンの言葉で納得したのか、周囲の者達がそれぞれ広がった迷路の外へと歩きだしていった。はぁ・・・。随分と妙な出会いになったものだ。ま、お陰で空間魔法は成長できたから良いかな。
土のドームの中に入って自動車を出し、そのドームを地面に返して出発した。尚、腕輪の中に閉じ込められていた文官の人や臨時護衛の人は、渡した食糧で辛うじて生き永らえている。トイレを我慢していたので、臨時トイレを作って、そのトイレは使用後に地下に埋めた。無臭! 素晴らしい!
周辺の商人たちと色々とモノを売り買いし、彼らに有難がられつつ出発する。この迷路はもうすぐ縮小するんだろうなぁ。
「そういえば、なんで拡張した時に私たちの周囲を取り囲むようになったんだ」
「その事も聞いたのですが、彼女の無意識のうちに行われた事らしく、ご本人にも分からないそうです。恐らく、ユーリ様に反応したのだろうという事でした」
どゆこと?
「・・・? 何故、あんなに怖がっていたユーリに反応するんだ?」
「防衛本能ではないでしょうか。入口を塞ぎ、本来は出口のない迷路に出口を用意して誘い込む事で、屋敷に通し、あの空間回廊で封殺する・・・といった計画を、無意識のうちに思い立ったのかと」
あー・・・ありえそう。敵わないと知るや、閉じ込める方向で直感的に行動した訳ね。とすると、この迷路自体もリリーの感情や理念も色々と反映されてそうね。
「無意識の迷路か。そんなものを作り出せる時点で、彼女も立派な化け物の類だと思うがな・・・。まぁ、我々もそれに片足を突っ込んでいるとは思うが」
「そうですね。殿下もドラゴンを単独撃破しておりますし、十分人外かと思います」
「まぁ、そう言うな。それでも届かぬ相手がまだまだ居る。それが知れただけでも、此処に来た意味はあったよ」
「ユリア様も新しい魔法を覚えられたようですしね」
「あれは・・・成長した、と言えば良いのか?」
手元に空間結界を作りながら頷く。
「うむ・・・それは、マジックバッグのようにモノを媒体とせずに、似たような空間を作り出せるような物だろうか?」
というより、拡げたり狭めたりと、自由にできる空間かな。そう筆談で答えると、レオンが唸ってしまった。
「・・・・・ユリアが一人いるだけで、竜船すら持ち運べるようになったという事か。ちと想像すらできないが、言った通りならそういうことだな」
「お一人で戦争できそうですね」
頷くしかなかった。人間相手の戦争とかする気ないけどね? やっても魔物の氾濫を相手にするくらいですよ。
試しに作り出した空間へ、次々と土人形を送り込んでみると、不思議と何万体でも入れられる事が出来た。一体10センチ程度が数万体・・・Gみたいだな。集団恐怖症とかの人が見たら気絶しそうだ。
手元の空間を眺めながら、そんな事を考えつつ、西へ向かう自動車の中で黒い鎧を揺らしていた。
◇◇
そこからは数日間、小さい街に寄りつつも真っすぐ最西端の街ゴーダゴールへと向かった。その町は世界樹の根に沿った形で造られていて、且つては鉱山街として西の産業を支えていたらしい。今となっては、その名残も消えてしまい、辛うじて周囲に点在する古代遺跡迷宮に挑戦する冒険者たちの宿場町となっている。
そんな街に到着したのがリリーの大迷路を出発して数日後だ。10メートル程の大き目の壁が外周を覆う街中は、湖の街と違って閉塞感が漂っており、なんだか殺伐としている。
「ここも洗脳されているのだろうか・・・」
レオンの呟きに肯定の意を文字表示すると、そのまま街の中心地である公園へ向かった。中心には鉱山夫達の銅像が建てられており、数人の鉱山夫の中央には貴族らしい服を着た男が居る。どうやら最初にこの街を切り拓いた貴族と、その配下の工夫達のようだ。
周辺の公園には虚ろな目をした者、仕事休みなのかベンチで項垂れている者、ただ本を読んでいる者などが数名いる程度だ。これだけ真っ黒なワゴン車が来ても誰も目を向けない。何でもない日常のように見えて凄く殺風景に感じる。
「・・・・・・・・はぁ。やってくれ」
頷くと共に発動する。平衡支配と闇魔法の洗脳無効化を齎す結界だ。俄かに呻きだした人間が周囲で倒れ始め、フラフラと立ったままと頭を抱えて遠くを見る者など、これまでよりはマシな状況に見える。
今回もゴディスのような強者は居ない。野盗も少なく、冒険者ギルドには魔術師も居ない。ただ洗脳していただけで、以前のように婦女暴行が横行して居たり、精神的に受け付けられないような行動を取らせたりはしていないようだった。
そしてそれは領主にも及んでいる。
「うぅ・・・・・この度は・・・救援に来ていただき・・・ありがとうございます・・・うっぐぅ・・・」
「もう休め。我々は事実を伝えに来たに過ぎん。このままこの地を去り、元凶を捕らえに行く。今後、街の状況も元に戻るだろう。今暫くは結界で守る故、そなたも安心して街の復旧を目指してほしい」
「殿下・・・有難うございます・・・有難うございます」
涙を流して感謝を伝える領主としては、現状を理解しても洗脳支配には逆らえなかった悔しさから来ているものだろうか。今後はこの街の復興に尽力してもらいたい。
そのまま領主館で一泊し、往路とは別ルートで王都へ戻る。まだ救えていない街を救うために。
◇◇
王都を出発してから一か月後、レオンが魔術師ギルド総帥と西央騎士団の騎士団長を連れて王都に帰って来た。騎士によって背中から抑えられつつ、震えて玉座の前に跪く二人は、その白髪を振るわせて陛下の問いかけに答えている。
「南方から王都へ運ぶ荷を奪う盗賊についてだが、お前たちは彼らをどう思う? 生活に苦しむ民の、やむを得ぬ行動の結果か? それとも、享楽に耽る為のならず者の集団か? それとも、護衛を除いて見逃されている事から、戦場を求める戦闘狂の凶行か? それとも・・・国内反乱分子の計画的な犯行か」
「わ・・・我々、西央騎士団は南部防衛に関わる際には命令書に則った行動のみを許されておりますので、南部での事件については・・・」
いやぁ、逃げ延びた運転手たちは元冒険者だから、彼らの目には王国騎士団剣術がしっかりと映っておりましたとも。その後の逃亡ルートも、私のゴーレムでしっかり西央騎士団に合流しているのを確認済みですぜ。
陛下が「魔術師ギルドはどうだ?」と問いかけると、老爺の顎には脂汗がネットリと溜まっていた。私の結界内で闇魔法を扱えない事に焦っているのかもしれない。
「私も、魔法都市にて日々研究に耽る者でありますれば、南部の盗賊沙汰には寝耳に水の話にて御座います・・・」
かえって潔いくらいの白の切り方だなぁ。おっと、国王陛下の額に血管が浮き出てきたぞ! ゴーレム越しに見ているけれど、ここまで鬼の形相をした陛下は初めて視界に入れるわ。
レオンに目配せをした陛下は、聖騎士に証拠品を持たせて前に立たせる。両手に持った黒檀のトレイ上には、西央騎士団長と魔術師ギルド長で交わした契約書が乗っていた。
「素直に話せば減刑も考えたのだがな、貴様らの心の内には下種の企てしか無いようだ。盗品の受け渡しについて書かれた魔法契約書だ。西央騎士団は金を、魔術師ギルドは希少素材とゴーレムを、それぞれ欲していたのであろう」
その手段が自らの国家に強盗って、ちょっと頭の中を覗いてみたい気もするけれど、彼らとしては交渉よりも確実で、一番楽な方法だと思ったんだろう。
「陛下!! そのように捏造された証拠など、魔術師ギルドの陰謀です! 我々、西央騎士団は西の山脈からの脅威を防ぐべく、日々邁進しており、国家への忠誠を誓った身です! 国家事業の開発を妨害するような事など言語道断であります! 何卒、再調査の上、厳正なる判断を上奏いたします!」
「黙れ下郎! 西央騎士団に荷が運ばれ、それが魔術師ギルドに搬入されている事を確認している。当然、証拠の裏帳簿もここにある」
黒檀のトレイの上には複数の書類が乗っており、他にも様々な証拠品が確保されている。最早言い逃れは出来ない。その西の山脈からの脅威に実際に脅かされていたんですけれど、あなた達は何をしていたんですかと言いたい。
「余は貴様が洗脳されている可能性を考えていたが、こちらの鑑定士によって貴様の精神が支配されていない事も把握しておる。そこの闇魔導士共々、罪を償うのだな」
俯いた二人が歯を噛みしめる音が聞こえてくる。魔術師ギルド長は唇を噛み千切ったのか、顎に血が伝って生々しい。
「西央騎士団は団長と関係者を投獄の上、爵位をはく奪。魔術師ギルドは関わったもの全てを処刑し、ギルドを国の運営にて行い、以降は研究機関として扱う事とする。以上だ、連れていけ」
「あっ!? んぬぁ! 我々が新たなる魔導の極致を拓く機会を奪うと言うのか愚王め! 深淵なる知識を持たん貴様らに任せてたまるかっ! この国は、この世界は、最上なる魔法で繁栄していく唯一の機会を逃すのだぞ! 痛っ、おのれえええええ!」
「・・・」
レオンが部下に指示を出し、ギルド長は喚きつつ引きずられていく。西央騎士団長は真っ直ぐに玉座の間の扉を見据えて静かに歩いていた。対比的な姿だが、彼らの思いはどちらも繁栄と栄光の二つ。開拓されつくした西方領地は、北部と違って大森林のような魔物氾濫が少ない。南部と違って海から現れる魔物に手を焼くことも少ない。
行き詰り停滞した地域に住まう彼らの考え付いた先が、王国の主導権を握って王族に台頭する事だった。その為に必要な金と技術が南部に転がっているなら奪ってやろうと、停滞して淀んだ西部の世情を脱却するべく、焦りのあまりに誤った選択を取ったのだろう。
「それでは陛下。我々は西部と東部の魔術師ギルドに赴き、容疑者の確保に向かいます」
「まぁ待て、レオンよ」
「既に動いている」と陛下がレオンに言い、竜の重鎧を着た夫は跪いたまま苦笑いをした。そして私の黒い鎧を着たゴーレムを見て笑みを深める。
「言ってくれれば・・・」
「静かに進めたかったのでな。そなたはもう休め。働き過ぎな嫁を労ってくるとよい」
「はっ!」
嬉しそうに返事をしたレオンは、そのまま部下の聖騎士たちと黒い鎧騎士を連れて謁見の間を後にした。それに今のセリフは完全に知られていますね。
私の黒い鎧の騎士ユーリの行動は国王陛下にバレた。その後、王妃様と姫殿下にもしみじみと叱られたのは言うまでもない。




