表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
緑の雨  作者: 二笠
深紅の人柱
43/97

041

 身重となった私を心配して、商会の用事のついでにブランママが時々顔を出してくれる。とは言っても王城の最奥部に一般人が早々入れる訳もなく、普通は面会謝絶状態なのだが、こういった場合には一部特権階級だけが許される。


「法衣侯爵だもんね、お母さん」


「ふふん、ついでにあの筋肉爺を叩きのめしてきたからね。積年の恨みってやつを晴らせたよ」


 ブランママは大森林の最奥部で狩りを続けている内に、あっという間に黄金闘士級の戦力になってしまった。師匠であるギルマスお爺ちゃんを黄金の闘気鎧で叩きのめして、王都冒険者ギルドの大勢の前で力の証明を成し遂げた。


「そろそろギルマスも年なんだから、労わらないとダメじゃない?」


「良いの。あの爺は戦場で死ぬまでは戦い続けるとか言ってるくらいだから、甚振るくらいで訓練に丁度良いのさ」


 などと王城の奥の院というところで、しかも王妃と姫殿下の前で宣う母はやはり戦闘狂かもしれない。いや、あの師匠にしてこの弟子ありと言ったところか。


「まぁ、お陰で此処に顔を出せるようになったんだし、感謝していますよ“お母様”」


「う~ん・・・普通の呼び方で頼むわ・・・」


「あはは! そうだね。お母さんはお母さんだね」


 自分の二の腕を抱えて掌で摩るブランママはお母様呼びが大嫌いだ。間違ってもお茶会には呼ぶなと厳命されているけれど、特A級冒険者の特権は法衣侯爵なので・・・いずれは貴族の前に姿を出す必要もあるだろう。此処に来る以上はドレス姿は絶対ですけどね。


 特A級の法衣侯爵は広い権限を持ち、男爵家以下の貴族への命令権、国家運営への口出しなど、中々にエグイ権力を持つ。一緒について来たマインズオール男爵はブランママの下に着く形で王城には入れても、この場に来ることは許されていない。


 それくらいの力があるのも、特A級が現状で3名しか居ないという現実が理由なのかもしれない。全員身内だけれど、当然身辺調査や性格の良し悪しは調べられている。私の場合は仮登録だったので、後日に調べられていたらしいが・・・。今の私の冒険者としての扱いってどうなってるんだろう? 謎だ。


「剣姫ブランネージュのファンとして私も嬉しいわ。ブラン様の演劇は何度も見に行きましたからね!」


「アナスタシア様もご覧になったのですか?」


「もう何度も見ているわ。友の故郷を救うために身を削りながらアイスドレイクと戦う剣姫ブラン! 大切な友の墓前を泣き濡らし、その報告に行くシーンも、師であるギルドマスターにドレイク討伐へ行くための許しを得る為に決闘するシーンも、幼馴染と再会して愛を語らうシーンも全部覚えていますわ」


 うわぁああああああ・・・・・。


 チラリと横を見ると、我関セズという顔で黙々とスコーンを頬張るブランママが遠くを見ていた。まるで、別世界の誰かの話じゃね? という顔だ。


「そんな憧れの方と親族になれるなんて感激ですわ~!」


 抱き着いて来たアナスタシアをブランママは胸に抱いてナデナデしている。あんなに愛情を感じない、無表情で恐ろし気なナデナデはブランママ史上でも初かもしれない。


「・・・そういえばユリアさん。そろそろお腹を蹴ってくる時期では無くて?」


 居た堪れなくなった王妃様がパスを出してきた。有難うございます。


「先々週からトントンするようになってきましたね。指先でこちらもトントンしてあげると、お話しするみたいにトントンしてくれるようになりました」


「まぁ・・・珍しい。それは賢い子になるかもしれないわね?」


「そうですね、元気で聡明な子に育って欲しいものです」


「あなたのように?」


「私はどちらかと言うと元気で家族バカで思い込みが激しいタイプですから。自分が出来ると考えた事に力を尽くしてきただけですよ」


 じゃなきゃ、苦行のような制御訓練を4歳から続けていたりはしない。


「今も魔法の訓練だけは続けてるんだろう?」


「うん。剣を振り回したりはしてないから安心して。ちょっと部屋の中に大量の水精霊が湧いたりするだけだよ・・・」


 そしてメイドが恐怖で気絶しました。


「・・・まぁ、迷惑かけないようにしなさい」


「は~い」


 王妃様にクスクスと笑われてしまった。恥ずかしい。


「あなた達は本当に仲がいいわね」


「お母様と姫殿下も、私が思っていた貴族像と違って大変仲が良い様に見えますが・・・」


 マインズオール男爵家のジュリアンヌさんは母子仲はチョットよろしくない。娘を研究者にしてしまった事を受け入れ難いらしい。


「そうねぇ。アナスタシアは優秀な子だけれど、突っ走る所があるから・・・学園でもついて行けない子が居て、友達が少なかったのよねぇ・・・そこだけが心配なの」


「お、お母様!」


 解る。凄くワカル。典型的な我が道を行くタイプで、目的を達成するまで引かない人なのよね。だけど、それ以外は案外緩くて、そこが天然な感じで可愛い。にしても、大多数の貴族の前で話す王妃様とは別物だな。こんなに素顔を見せてくれるようになるとは思ってなかった。


「アナスタシア様は天然可愛い系女子ですので・・・」


「わかるわ~、あたしも竜船に乗ってる時の姫様は可愛いと思ってた!」


 だよね! 流石私のブランママ。解ってらっしゃる。


「そ、そ、そうでしたかしら? あの時は世界樹の素晴らしさに我を忘れていたかもしれませんが、わたくしも、その・・・」


 おうおう、顔が真っ赤でいらっしゃる。そういうところが可愛いんですぜ、げへへ。


「さて! そろそろユリアさんはお休みなさいな。今は可愛いアナスタシアを弄るよりも体を大切にする時ですよ」


「お気遣いありがとうございます。アナスタシア様の可愛いお姿を目に焼き付けましたので大変満足いたしました。お言葉に甘えてお休みさせていただきます」


 え、あの、ユリアさん? と狼狽えるアナ姫を眺めつつ部屋を後にしようとした。


「ああ、そうだ。見てるから知ってるかもしれないが、ハイネが妊娠したから、冒険者活動は私もしばらくお休みだ。商会の方はこれを見ておいてくれ」


「うん、有難うお母さん。ハイネさんには妊娠おめでとうって伝えておいて」


「ああ、ゆっくり休みなさい」


「うん」


 ゴーレム越しに故郷の様子と商会の様子も見ているのは、ブランママもモンドさんも知っている。ミニゴーレムの筆談で指示を出したりしているので、あんまり久しぶりって感じもしないんだよなぁ。


「君も元気に生まれたまえ。そうしたらママが皆に紹介してあげるからね」


 大きく張ったお腹に指先でトントトンと合図を送ると、足でトントンと返してきた。生まれてくるのが待ち遠しい。


 そうして幸せに浸りながら、目を閉じてベッドで眠るように視界を共有すると、父親予定のレオンが自動車の中で尻を痛そうに撫でていた。


 ◇◇


 筆談で自動車のシートに茣蓙ゴザのような麻の座布団のような物を敷くよう、従者ノールに伝えた。魔法都市に到着してから購入してもらったが、探すのに若干時間が掛かったようだった。全員が喜んでいたので、尻の痛みは相当だったようだ。


「それにしても、治安が悪いな・・・」


 ガサゴソと敷物の位置を直しながらレオンが呟く。


「無法者が増えましたからね。今では住人達も魔術師ギルドに逆らえない状況のようです。外部から盗賊が街に入り込み、占拠している地区もあるようですから」


「西央騎士団も共謀しているだろうからな。そんな場所があっても、騎士団が協力しないのならば誰も摘発に動こうとはすまい」


 大型の自動車が領主の館に入ると、後方の門扉はすぐに閉じられた。少しでも開放していると、外部から強盗団が乗り込んできそうな雰囲気である。


「領都の兵は何をしているのでしょうな」


 聖騎士の一人が疑問に思うが、そいつらはもう生き残っていやせんぜ。


「皆殺しにされたらしい。今は体面を保つために、領主が生き永らえているだけだ」


「なんという事を・・・」


 よくそんな街に入る気になるなと言われるかもしれないけれど、この街全体の戦力より、この五人の方が遥かに強いので特に問題はない。多分レオン一人で勝てる。


 そして、その領主もこういう状況だ・・・。


「私の妻も・・・息子たちも・・・皆、殺されました。辛うじて魔法学院に通っている娘だけが生き残り・・・今は、生き残った側近に守らせている状況です・・・外部との連絡も取れず、魔法学院も魔術師ギルドには何も言えず、洗脳すらされているという話も・・・うぅっ」


 当然ながら、この街に居た貴族家も、大店の商会の家族も、綺麗サッパリ攫われて略奪されているか、皆殺しの憂き目に会っている。今頃はギルド長が高笑いをしているところだろう。


「冒険者ギルドはどうなったのだ?」


 戦時の治安部隊と言って良い冒険者ギルドは、魔物の氾濫時に戦線に立つことを義務付けられている。彼らが正常に機能して入れば強盗・野盗の類を追い出せたかもしれない。


「支部長から職員、果ては主だった冒険者たちでさえ洗脳されています。他の地方から逃れてきた魔術師たちが野盗を引き連れて占領し、冒険者達に闇魔法を使用したそうです」


 それは既に冒険者ギルドではなく、魔術師ギルドの下部組織じゃないか。


「・・・まずは冒険者ギルド、次に学園を開放する。そうすれば野盗たちが前面に出て襲い掛かってくるだろう。ユーリ」


 今の私は黒い鎧騎士ユーリ。呼ばれて顔を向けると、真剣な目で領主館を任せると指示を受けた。


「夕方までには終わらせる。3時間で終わらなかったらノールを此処に戻らせる。それまで守ってくれ」


 こくりと頷くと従者ノールも納得したようだ。同様に頷いてくれた。そうだね夕方までに終わらせないと、私が夕食で離れてしまうからね。そうなると両陛下と姫殿下に「ゴーレムでも操っているのですか?」とバレてしまう。この作戦行動自体が内緒なので、あまり無理は出来ないのだ。


「では行くぞ」


 歩きながら聖騎士たちに指示をするレオンが、従者ノールを引き連れて冒険者ギルドに向かっていった。まぁ・・・問題になりようが無いくらい強いので、私は上空のゴーレムで監視でもしているとしよう。


 ◇◇


 約束通りに3時間で帰って来たレオンは血に塗れていた。上空から見ていたから解るのだけれど、随分と多くの野盗が襲い掛かってきていたので、その返り血だろう。


「ご苦労だった。もう休んでいてくれ」


 私の肩に手をあててポンポンすると、領主館にあてがわれた部屋のレオンの寝室へと連れていかれた。そろそろ夕食の時間だな。


「ふぅ」


 ベッドで目を開き、部屋の中を見渡す。大量のトカゲや精霊っぽいのや人形がひしめき、テーブルの上で輪になって踊っていたりする。メイドも慣れてしまったのか、彼らを気にせずに目を覚ました私の為に水をコップに入れている。


「おはようございます。お夕食前にお水をどうぞ」


「うん、ありがとう」


 貰ったコップを傾けつつ、飲む動作をしながら中身を快癒の水に作り替える。光もせず魔力のモヤモヤも動かないよう制御しているので、仮に彼女が悪さをしても私が毒死したりはしない。


「・・・ふぅ・・・少し歩きましょうか」


「はい。お手をこちらに」


 遠慮なく支えてもらい、足元の賑やかな連中を消していく。テーブルの上の人形が手を振っているのは私の無意識の操作だから、そうしているだけだ。最初は意思があるのかと思った。精霊のような存在かと思ったのだけれど違ったらしい。


 ケープを羽織った姿で王城の中を歩き、食堂で陛下たちと食事を共にする。開発の状況や、新しい演劇の話に、私が編んでいる子供服の話をする。どうやら私のシンデレラストーリーを描いた演劇が出来上がったらしい。勘弁してもらいたい。


「私もお母さんのように語られるんですか・・・」


「剣姫ブランの娘という事も相まって、平民たちにも大人気ですよ。私も早速見に行きまして、幼少の頃のユリアさんが可愛らしかったです」


 姫殿下は既に鑑賞済みらしい。


「私の小さい頃・・・4歳から家事をして子育てをしていただけなのですが」


「そうなんです、小さいサリーを背負ったユリアさんの子役が可愛くて可愛くて・・・!」


 恍惚としているアナ姫を見て、私は少し自重しようと心に誓った。本人的には悶絶物だわこれ。姫殿下は天然だから素でやっているんだろうけれど、この間の意趣返しのような気がしてならない。横で笑っている王妃様はそれに気付いているようだ。


「サリーの時は大変でしたね・・・お父さんに懐かないし、お母さんは夜泣きが酷くて寝不足で毎日私に謝ってたし」


「そう言った苦労は私はありませんでしたね・・・乳母が居るだけで、夜は眠れていましたから」


 貴族はそうだろう。寝不足で本業がおろそかになりましたでは、領地経営に影響が出る。それは夫と寝る妻も同様だろうし、産んですぐ子作りに入る人も居るだろうからね。

 それはそうと乳母って私の子にも用意されるのだろうか。


「・・・・・・・・私は極力、自分でお乳をあげたいのですが」


「構いませんよ。ですが、付けない訳にはいきません。ユリアさんが仕事をしているとき、寝ているときは乳母に任せるようにしなさい。それが条件です」


「はい、ありがとうございます」


 やった。優しいお母様で良かった。

 なりません! 私の言う通りにしなさい! とかだったらストレスで家出していたかもしれない。


「子供の名前は考えてあるのですか?」


「はい。男ならアルセウス。女ならフラノール。どちらも高き明星の名前です。この国を照らす人になってほしい。そう言う願いが込めてあります。」


 この世界にも一応、星座?のような物がある。夜空に輝くひときわ明るい星だ。


「アルセウスか、フラノール・・・良い名前だ」


 陛下も気に入ってくれたようだ。お母さまとアナ姫もウンウンと頷いてくれた。良かった良かった。微妙な反応されたり、変わった名前ね? とかだったら考え直さないといけなかったところだ。


 まぁ、アルセウス一択なのですが。男ってわかってるし。治療院の人や、鑑定士の人でも胎児の性別は解らないので、私の真実の瞳が特別なようだ。最近この眼もまた進化したし、色々と試したいのだけれど、そんな暇はないなぁ。


「子供が生まれたらお披露目式をする予定だ。今から二か月後から三か月後となるか?」


「お披露目パーティですか?」


「そうだ。未来の王太子かもしれんからな。レオンの後を継ぐ子だったら盛大にやらねばならん。既に準備が始まっておるよ」


「まぁ、あなたったら、まだ世継ぎかどうかも決まっていないのですよ?」


 いいえ確実に世継ぎです。しかも既にスキルが生えてるスーパー世継ぎです。


「皆も心待ちにしておる。期待しているという事だ」


「あらあら・・・ふふふ」


「きっと男の子ですよ・・・大丈夫です。ご期待ください」


 真剣な目でそう言うと、陛下が一瞬驚いて頷いた。

 欲を言えば普通の子でも良いんだけど、そうは行かないよなぁ・・・。


 お腹を見て摩りながら、その中を進化した真実の目で覗く。


 ---------------------------------------------------

 アルセウス=バエス=エステラード(0歳)

 種族:素人

 レベル:1(0%)

 HP:3

 MP:2

 状態:胎児


 スキル:気力制御LV1(12%)、魔力制御LV1(6%)、並列制御LV1(4%)、気配察知LV1(12%)、翻訳、フリキア言語LV1(32%)


 称号:超界者(世界を超える魂は力を受け継ぎ続ける)

 ---------------------------------------------------


 転生者かぁ・・・。

 真面に育ってくれよ息子よ。



 ◇◇



 魔法都市は解放され、魔術師ギルドの面々は西央騎士団の元へと逃げ去っていった。あっさりと放棄した事に嫌な予感がするが、今は人々が救われた事を素直に祝おう。


 虐げられた人々はその数を減らし、元々10万人は居たとされる住民は3万人を切っていたらしい。ある者は街を離れ、ある者は殺害され、ある者は洗脳されて他の街に潜入した。


 洗脳された者達も、術者が死んだことで一斉に正気を取り戻した事だろう。同時に自分がやらされた罪の意識で苦しむ者が街にあふれたのも事実だが。


「洗脳で受けた凌辱や罪の意識で心を閉ざす者が多く、街の機能は停止するほかないかと・・・特に女性の被害が酷く、若い女は殆どが洗脳されて同意の上で多数と交わったと言います。現実を受け入れられず、狂いだす者や、自害したものが既に大勢出てきています」


 従者ノールの報告が室内に重く響き渡る。


 洗脳を受けていた間の記憶は消えない。当然ながら、その間の行動は自分の意思とは関係が無く、むしろ唾棄すべき内容が多い。耐えられない者は死を選ぶか、心を壊して放心したり、精神が耐えられずに昏睡する者も居た。


「ユーリの作り出した快癒の水で大多数は救われている。あれは精神汚染にも効くが、実体験を忘れさせるような事は無理だ・・・残念だが、街に外部からの救援を呼ぶまで都市機能は回復しないだろうな」


 レオンのいう通り、このまま放置して去るのは心苦しい。それならば・・・。


「ん? なんだユーリ」


 後ろから肩を叩いて、部屋の隅でこっそりと筆談する。


「可能なのか?」


 こくりと頷くと、レオンに少し笑顔が戻った。


「是非やってくれ」


 そうして許可を貰った直後、黒い鎧騎士から大量の魔力が広がっていく。その魔力は闇魔法へと姿を変え、町全体に広がっていく。使った魔法は闇魔法の「平衡支配」。これは悲哀や憤怒といった心の情動を抑え、それらによって肉体に影響を齎す効果を最小限にする魔法だ。闇だから悪影響を与える魔法ばかりじゃないって事だ。場合によっては人に安心感を与える闇だってある。


 怒りで身体機能を強化し、狂戦士となるようなスキルもあるし、悲哀の感情を与えて行動疎外を仕掛けるスキルもある。そう言った効果を解除するには、この魔法が一番効く。


「なんだか・・・怒りに満ちていた精神が穏やかになっていくな・・・・・・」


 レオンが魔術師ギルドの行いで怒りに溢れていたのは解っていた。そう言った感情も、当然ながら鎮められていく。


「私も、家族を殺された恨みの念が、和らいだように思えます・・・こんな・・・しかし、私は家族を、家族の・・・」


 領主様も今だけは悲しみと怒りの念が抑えられたが、無理矢理抑えられたことで、恨みの念が薄れた自分に怒り、混乱していた。しかし、今はこれでいい。生きていくためには一時的にでも、今の自分を押さえて頑張ってもらいたい。


 そうして広まった平衡支配は街の機能を取り戻すに至る。しばらくはこの闇魔法の結界を解かない方が良いだろう。再び戻ってくる時も、彼らの心の傷は残ったままだろうから。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ