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緑の雨  作者: 二笠
深紅の人柱
35/97

034

 今日は初めての冒険者活動。略して初険。


「主」


「ん? なぁに、ブラウ」


「このカードは何をするものなのか?」


「あなたはG級冒険者ですって言う証明ね」


「Gとはどれくらいなのか?」


「下から一番目」


「・・・?」


 というわけで冒険者ギルドにやってきたのだ。ブラウをパーティに加えていざ出陣。


「いえ、A級とG級は一緒に組めませんから。何でいきなりドラゴン討伐を受けさせようとしてるんですか? ブラウさんを殺す気ですか?」


 受付のお姉さんが怖い。いつもみたいに朗らかに目が笑ってない。


「お姉さん。彼女は私に似てるでしょ? つまりそういう事ヨ」


「意味が解らないので却下です」


「カードにある通り、彼女は竜機人。龍とゴーレムのハーフ。つまり超強い。おーけー?」


「おーけー? じゃないですよ、ランク制限位ご存じでしょう! 昔から何度もここにきてるでしょうに!」


「知ってるけど、パーティを組まなければ良いんでしょ? 依頼はこうして、別々で受けて、それぞれが別の物を狩れば・・・あら不思議! アースドラゴンとウッドドラゴンを両方とも狩れます! 素晴らしい!」


「G級でドラゴン討伐なんて申請受理できるかあああああああ!!! 何言ってるんですか!」


「ひどい! 10歳にアースドラゴンと戦わせたくせに!」


「微妙にサバ呼んでんじゃないわよ! またランチ一か月おごらせるわよ!」


「子供にたかったらイケませんって世界常識を知らないんですか?」


「大人に迷惑を掛けたらいけませんって、アルトさんとブランさんに教わらなかったのかしら」


「ちっ・・・」


 両親を出すのは卑怯だぜ。後ろのブランママに睨まれる前に代替策を考えねば。


「・・・それなら、この依頼と、この依頼でお願いします。薬草採取と魔石収集なら問題ないっしょ?」


「まぁ、それなら・・・いいですよ」


 まぁ、行先はドラゴンの居る深層ですけどね。


 ◇◇


 北の大森林。


 此処は大陸中央部に拡がる巨大森林地帯だ。生えている樹木は中央に進むほど背が高くなり、かのドラゴン討伐に赴いたところなどは100メートルを超えていた。更に中心部に向かって探査用ゴーレムを飛ばしたところ、500メートルを超えるような大樹が乱立している地域も存在してた。


 その先こそが最深部の未踏破区域。あの黄色い巨人こと、王都のギルドマスター爺さんですら足を踏み入れられなかった領域。


 此処に挑まず何が冒険者か。


「という訳で前進全速!」


「アイアイサー」


 ブラウが抑揚のない声で返事をすると、私、ブラウ、ハイネさん、ブランママ、他数百体のゴーレムが乗った竜船が北へ向かって進み始めた。


「こ、これはまた、体に何か勢いのようなものが・・・あのゴーレムロケットと同じようなものかい?」


「うんんんんん・・・ユ、ユリア、私、もう限界・・・死にそう・・・」


「大丈夫よハイネさん! 気絶するだけだよ!」


「それって大丈夫とは言わな・・うっ」


 吐くなよ?

 気力制御を強制的に覚えたばかりの彼女には、10Gの加速度はまだキツイか。


「ブラウ、ちょっと速度落とそうか。ハイネさんが吐きそう」


「アイアイサー」


 ゴオオオオォォォォゥ・・・・と後方の噴射音が小さくなると、既にハイネさんは白眼を向いて気絶していた。遅かったか・・・!


「ユーリ、この辺はもう深部なのかい?」


「ん~・・・・まだ中層部だね」


 天井に張り付けておいた全体地図を確認しながら、ゴーレムの配置と見比べて視界共有で確認をしていく。あ、ドラゴン見っけ。でも小さいな。


「この速度ならあと一時間かな。さっきまでの四分の一程度の速度だし」


「わかった、ありがとう。それにしても、大森林を空からゆっくり眺める日が来るとは・・・冒険者冥利に尽きるってもんさね」


「だよね! そう言ってもらえると嬉しい!」


「ははは」


 笑い声をあげたブランと一緒に壁のガラス窓の向こうを見渡す。永遠に晴れない、薄い霧が遥か彼方まで森を覆っていた。少しずつ木々の背丈が高くなるそれは。まるで大きな緑の山のようだ。


「そういえば・・・前もチラッと見えた気がしたんだが、あの北の空に見える山は何だい? 大森林の中央には山があるのかねぇ」


 山? そう思って望遠鏡を取り出すと、はるかかなたにある物の正体が判明した。


「・・・凄い、お母さんあれ、山じゃないよ」


「ん? 山じゃなかったら何なのさ?」


 山脈のように雲を突き破って聳えるそれは、表面が見覚えのある物に酷似していた。


「あれ、多分一本の木だよ。表面を枝のような物で包まれてる。それが上に上に幾重にも重なって伸びてるんだ」


「・・・・・遠すぎて見えない筈なのに、白っぽく霞んで見える。それだけ巨大ってことか・・・上、見えないけど、あの上も大木の一部なのかな」


「うん、恐らくそうだよ。あの周りだけ霧が濃くて、ずっと上に行くほど雲が大きく、濃くなっていってる」


 望遠鏡をブランに渡すと、彼女は覗きながら長い長い溜息を吐いた。


「デカすぎて何だか分からなくなってくる・・・」


「うん・・・」


 幅は計測不能、高さも計測不能。これだけ遠くにあるのに。大陸全土の大きさから考えても、現在地から凡そ200キロ以上離れているのに、一方向にある空の全てが樹の幹でボンヤリと覆われている。


 目を覚ましたハイネさんは、着陸前にこれを見て、再び気を失った。どうやら自分がどれだけヤバいものに挑戦しようとしているかを考えたら、怖くなったらしい。


 ◇◇


 現在地点は領都ユリアより真っすぐ北に約1000キロ地点。

 ゴーレムでも調査が出来ていない区域だ。この先はドラゴン、デーモン、巨人などのオンパレードだ。10メートルちょっとのゴーレムでは心許ない。


「主砲、発射」


「アイアイ、発射」


 ドゥンと足元の巨人に向けて貫通魔石爆弾を弾頭に搭載したロケット砲を放つ。

 直後、足元に巨大なクレーターが出来て、遥か地下深くまで溶岩の大穴が出来上がった。


「うん・・・威力はまぁまぁかな。次、アースドラゴンに照準合わせ」


 手に持ったメモ付きの板とペンを走らせつつ、視界の片隅では船体上部に取り付けた砲口がグイグイ動く。


「アイアイ、インサイト」


「発射」


「アイアイ、発射」


 ビシュゥゥンと青白い閃光が通ると、静かにアースドラゴンが凍り付いた。


「水と風の混合元素魔法、冷凍砲も効果ありと・・・次、デーモンが左37度索敵後照準合わせ」


「主、見つかりませんが」


「あそこの、ほら、小さいけどいるでしょ」


「・・・・・アイアイ、インサイト」


「発射」


「アイアイ、発射」


 ギシュンと青い稲光を走らせながら、デーモンの胴体を貫いた。体長5メートルは在ろうかという巨体の胴回りもそれなりに大きいのだが、直径1メートル程度の大穴が開いている。


「土と火と風の混合元素魔法、コイル砲も効果ありと・・・まぁこんな所かしらね? ブラウはどう? 何か船の機能を使うにあたって、引っ掛かるような事は感じたかしら?」


「主、今の魔砲は連射出来ないのですか? かなり余裕があります。大量の敵が現れた場合には、連射できると有効的です」


「問題なく可能だわ。ブラウのMPなら数千発は打てるから、そうね、軽く怠さを覚え始めたら打ち止めだと思いなさい。それ以上は船の重力操作に悪影響が出るわ」


「了解しました」


 手元のチェックシートに色々とコメントを書き込んでいると、ブランとハイネがガラス窓に張り付いていた。その後ろ姿を余所に、船の後部ハッチから飛行型収納ゴーレムが降下していく。


 それから十数分もすると、解体と収納が終わったゴーレムたちが空を飛んで帰ってくる。このゴーレムたちも一部はブラウの素材が使われている。


「主、回収完了しました。3分後に全機帰投します」


「うん、それじゃあ、調査用のゴーレムを散布してもう少し北に行きましょうか」


「アイアイサー」


 うーん今日も大森林探索が捗るなぁ。


 ◇◇


 ここ数日の空中遊泳という名の森林探査計画でブラウのレベルは爆発的に上がっていた。元々レベル1だったこともあるのだが、竜船の攻撃は彼女の魔力を基に発揮しているので、全て彼女の経験値になっているらしい。


 ---------------------------------------------------

 ブラウバーン・ゴル(1歳)

 種族:竜機人

 レベル:221

 HP:4852940

 MP:9472811

 状態:通常


 スキル:竜魔法LV10、気力制御LV10、魔力制御LV10、仙気制御LV10、並列制御LV10、闘気制御LV10、無限再生、MP吸収、不滅の肉体、フリキア言語LV8


 称号:真竜人、船長

 ---------------------------------------------------


 一言で言うならドラゴンやべぇ。

 元々の所持スキルがカンストしている物ばかりな事もあってか、成長性が高すぎる。


 とは言っても、格闘戦が出来る訳でも、周囲に影響を及ぼさずに戦えるわけでもないので冒険者としてそれはどうなのだろうという点が弱点かな。

 大味な部分を際立たせているのが竜魔法で、森の中に上空から撃ってもらったところ、視界の3割が荒れ地へと変わった。一気にレベル221に上がったのはこれが原因だろう。

 本人はMPを使い尽くして気絶してしまったので、普段使いできない点も弱点だ。


 こうして上空でのテストを終えて、現在は荒れ地に着陸してキャンプを張っているところである。テント代わりに要塞を建てたので、ドラゴン程度なら耐えられる筈モグモグ。


「この巨大果実、美味しい!」


「あっま・・・」


「いけるね! これは売れるんじゃないかい?」


「主・・・ドラゴン肉の方が好き」


 見た目は女性の集まりなのに、スイーツ好きが半分だけってどういう事ヨ?

 その後は、地上を闊歩して魔物狩りや植物採取などを行い、それぞれで図鑑を埋めていった。流石に「ほぼ人跡未踏」だけあって、初めて見る植物や生物が多い。収納ゴーレムの腹の中が未開の地になっている。


「さーてそろそろ帰りましょうか」


「そうね、そろそろ一週間だし、来週にはギルドが捜索隊を出し始めるわ」


「それは不味いな。下手すると王子様が来そうだ」


「主の旦那様?」


 うん、来ると思うよ。何ならギルマスのお爺ちゃんも来ると思うよ。


「それじゃてっしゅ」


 グララララララアアアアアアアアアア!!!!


 おおぉ・・・これは・・・。


 出たか?


「え~っと・・・? ファイアドラゴン来襲~ ハイネさんとブラウは竜船に搭乗!! お母さんは風獣に乗って!」


「「「了解!」」」


 私は水精霊と土魔召喚っと。


「フルメタルボディ、アクティベート!」


 足元の荒れ地から大量の土が金属となりながら全身を覆い、周囲を青い水が支配していく。巨大剣を手に持ち、竜船の後部ハッチを開いて左手に遠距離武器を掴む。


「さぁ、ぶっ飛びなさい!!!」


 左手に掴んだ武器を腰だめに構えながら、魔力を流すと、青い閃光が天を貫いた。


 バシュゥゥゥ、バシュゥゥゥ、と連射していくコイル砲がファイアドラゴンの翼を穿つ。

 ブレスを吐こうとしていたドラゴンは、姿勢を崩して地面に頭から着地して泣き叫ぶが、その隙を逃すほどウチの母親は間抜けじゃない。


「オラアアアアアアア!」


 アースドラゴンと戦った時と同様に、遥か上空からドラゴンの背をめがけて巨大闘気剣を突き刺した。バキシュ!と嫌な音を立てながら胸に貫通した状態でドラゴンが暴れまわると、闘気を消した剣を掴んでブランが風獣に飛び移る。


 直後、竜船から冷凍光線が飛来し、ドラゴンの右半身を凍り付かせるが、数秒後に全身が赤熱化したレッドドラゴンは氷の呪縛から逃れてしまった。


「逃がすかっ!」


 100メートルの巨人は一歩が大きい。一瞬で間合いを詰めて、正道の剣技をお見舞いすると、両腕でガードされてしまう、かち合った鱗から溶岩のような火花が幾つも飛び散り、切りつける度にそれが繰り返された。


「グガァ!!」


 数多の熱線砲により赤い壁が前面を覆いつくす。ご丁寧に仙気込みだ。こりゃ逃げ場はない。そう思った瞬間に、前面に火の結界が張られた。


「今ぁ!!!」


 竜船の後部ハッチからを見るとハイネさんがドラゴンロッドを掲げていた。魔法陣と火魔法の合成結界か、やるじゃない!


 防御に回そうとしていた仙気を闘気剣に回し、元素魔法の重力操作を発動させる。付与魔法で剣に上乗せして上空に飛び上がると、ドラゴンは羽根ではなく脚力で飛び上がっていた。


「寝ときなさい!!!」


 加重仙気剣!


 ブランと同じ個所に剣を突き刺し、直ぐにその場を退避すると、ファイアドラゴンの全方向から超重力が発生して、全身を押しつぶしていく。泣き声さえも重力の中に押し込められ、折り鶴のように小さく畳まれたドラゴンは背中から地上へと落下していった。


 そして締めはこれでしょう。剣を手放して身一つとなった巨人は水魔法で天高く飛び上がり、ドラゴンの頭部に向けて一気に重力増加しながら落下していく。両足から真っすぐ落下していく先には丸くなったレッドドラゴンが墜落したところが視えた。


「ぶっ潰れろぉおおおおお!」


 ドン!!!と両足がドラゴンの頭部を砕き、地面を砕いて埋めていくと首が埋まったドラゴンは動かなくなった。私も下半身が埋まって、出られなくなった。


 ◇◇


「無事の御帰還、おめでとうございます。またドラゴンを狩ったんですか・・・採取じゃなかったんですか・・・」


「したよ採取、収納ゴーレム90台分はしたよ」


 ゴーレムのお腹を開けて見せたら、怪しい草花が沢山入っていたのでギルドのお姉さんは近づきたがらなかった。


「あの、依頼の薬草とか・・・?」


「ああ、えっと・・・あの辺かな」


 多すぎるゴーレムの収納物を全部開いて訓練場はゴーレムで溢れている。まるでゴーレムのフリーマーケットやでぇ。


「はいこれ!」


「わぁ、沢山トッテキマシタネ・・・」


 ざっと依頼数百回分だね!


「えっと・・・はい、今から数えます。後で結果をご報告しますので、ブラウさんのギルドカードをお預かりしますね。多分ランク上がりますし」


「わかった、預ける」


 ブラウが首から下げたカードを渡すと、ギルド職員総出で薬草カウントが始まった。G級100回分とF級100回分だから、E級の昇格試験も受けられそうかな。


「ユーリ、一旦薬草だけ預けて、他のゴーレムは商会に動かしなさい。此処だと邪魔だよ。あっちで選別して商業ギルドと冒険者ギルドに流すんだろう?」


「あ、うん。いこっか」


「あ、それと!」


 お姉さんに引き留められるのは何となく理由がわかる。アレだよねブラウだよね。そうだよね。


「何でブラウさん、一週間で成長してるんですか!? おかしいですよね!?」


 身長が伸びて、見た目が私より大きいって言いたいんですよね。


「・・・? 主、理由を求む」


「竜機人だからレベルが上がれば体も大人になるんじゃないの?」


 そう、ブランはレベルの上昇と共にブランと同じくらいの背丈に成長していた。来ていたナイトドレスは少しミニな感じになり、スリットからノーパンの内部が見えそうになっているし、胸が窮屈そうだ。


「だそうだ」


 声もブランママにそっくり。これじゃどっちが主なのかわからないね!


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