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緑の雨  作者: 二笠
深紅の人柱
34/97

033

 カンッ、カンッと我が家の裏庭で木剣同士がぶつかり合う。私が特定方向に構え、サリーがそこに打ち込む。切り、払い、返し、突きと中々容赦がない。

 剣術LV2になった妹は、メキメキと才能を開花しつつある。学校の授業は苦手らしく、机に座ってジッとして居られないそうだ。


「ふやっ! んっ!」


 可愛らしい掛け声を聞きつつ、両手で持った剣を振り回す・・・いや振り回されているのを見つつ、片手で次々と受け流す。軌道を逸らされたサリーの剣は打ち下ろすと地面に叩きつけられ、切り上げると剣の勢いでサリーの顎が上がるほど後方に流される。


「もっと、剣を振った後の事を考えなさい。鋭く、小さく、剣の重さを利用しなさい」


「ん~! やっ!」


 ダメだ可愛いが過ぎる。顔は真面目に取り繕っているが、内心ではニヤニヤが止まらないでござる!


 そんな私たちのすぐ横では、6歳になったシルバにブランママが剣を教えている。数回ごとに姿勢を直される弟が笑顔になるのが良い。とてもイイ。もしかしたら、ママに構ってほしくて剣の型を崩している可能性もある。


 チラチラとシルバの方を見ていると、サリーが不機嫌そうな顔になって来た。


「~~~! ちゃんと相手してよ!」


「今のサリーならよそ見してでも稽古できるし~♪」


「むっかっつっく!!!」


 ふん!と突っ込んできたサリーの足に剣を絡め、一回転。背中から柔らかい芝生に着地したサリーは、ゲホゲホと咳き込みながら起き上がった。


「剣を構えたら冷静を心掛けなさい。怒ったら判断力が鈍るわよ~」


「・・・・・・・ふぅうううううう」


 そんなに睨まなくても・・・。


「サリー、頑張れ~、落ち着いて~」


 応援の声が裏口付近から聞こえてくる。ハイネさんだ。

 彼女は完全に育休状態で、息子と、下二人の弟たちに囲まれている。囲んでいるのは寝そべった風獣の横っ腹ですが。モフモフしながら眠っている弟たちは、さながら天使のようである。否、天使そのものである。


「隙ありっ!」


 モフモフ天使を凝視していると真横からサリーが突っ込んできた。降りかかる剣を躱しながら彼女の肩に手を置いて、軸足に剣をセット。後は押すだけで綺麗に背中から倒れる。


「うにゅ!」


 体を捩じって回転させながら受け身を取ったサリーは、追撃の打ち下ろしを剣で防ぎながら立ち上がった。斜めに剣を逸らして受け流しながら、懐に飛び込んでくるが、私はゆるりと突進を躱して剣を握る腕を取る。そのまま背後に回って、犯人確保! 天使確保!


「いたいいたいいたい!」


「おっと」


 そのまま背中に手を回して極めてしまった。快癒の水をバシャッと。


「さり気なく元素魔法を使わないで欲しいわ・・・」


「ハイネさんも覚えれば良いのに」


 胡乱気な目でコメントするハイネさんは、火属性魔法を上げ切っているが元素魔法は生えていない。なぜなら火魔法以外の適性が低いから、必要と思われる4属性が揃っていないのが原因だと思われる。


「条件厳しすぎなのよね」


 そう言いながら水・土・風の基礎魔法変形体が彼女の周囲を飛び交っている。諦めてはいないらしい。


「順調に上達してるように見えますよ」


「ありがと」


 さて、サリーは・・・ブランママに抱き着いて背中に隠れながら私を睨んでいる。そんなサリーも可愛い~。


「ママ、お姉ちゃんが酷い!」


「あんたね・・・訓練で痛い目を見ておかないと、実戦で大怪我するよ?」


「だって! ケガさせないって言ったのに!」


 会話になってない。


「お姉ちゃんも小さい頃はママに骨を折られたりしたよ?」


「えっ・・・」


 私の暴露に気まずそうな顔をするブランママと、信じられないと言った顔でママから離れるサリー。そうだよ~、大好きなママは訓練中、ガチの戦闘狂だよ~。


「ッスー・・・ユーリそろそろ私らの訓練もやろうか」


「はーい」


 誤魔化したな。ま、いいけど。

 と言っても、サリーとやってるような剣術訓練など今更なので、最近は専ら闘気鍛錬と約束組手の予定打ち位である。これが難しいんですけどね。


「・・・踊ってるようにしか見えない」


「サリーにはアレは早いでしょ」


 妹と魔法の師匠が言ってるアレというのが、私達がやっている、闘気全開状態を維持したままの「物凄くゆっくりとした」手合わせである。


 予め定めた通りに打つのだが、相手の技量が上回っていると、剣だろうが拳だろうが必ず当たる。来ると解っていても当たる。一つ一つの動作に無駄が無ければ、最短距離でこちらの無駄な動作をしている間に攻撃がヒットするというカラクリだ。


 先の先だろうが、後の後だろうが、当たるもんは当たる。それが予定打ちだ。前世だと約束稽古とか言われてたものに分類するのだろうか。


「なんか二人から黄色いのが見える!」


「あれが闘気だね。ブランのがちょっと上かな・・・」


 私もブランママも闘気鎧を纏えるようになったので、気力制御を持っていないサリーでも見る事が出来る。黄金の巨人、いやギルマス爺のように凄まじい闘気を持っていれば、赤子でも見えるレベルの闘気になる。


 それを維持しつつ、ブランの拳と剣を掻い潜り、一撃を入れようと、ゆったりとした流れの中で試行錯誤を繰り返す。当然、対応は遅れ、全てが寸止めで入る。


「ったぁーーーー! もう無理ー!」


「ははは! この辺にしといてやろう」


 レベル的に私の方が闘気量は多いけど、制御の甘い私の方が先に力尽きた。完敗です。

 大体闘気レベルが一つ上がると、消耗量が半減すると言って良い。ママンはLV9,私はLV8。消耗するHPの差を考えても、私の方が先にバテるという寸法だ。


 チラリとママンのステータスを見る。


 ---------------------------------------------------

 ブランネージュ(27歳)

 種族:素人

 レベル:132

 HP:15021

 MP:3480

 状態:通常


 スキル:剣術LV10、闘気剣術LV8、格闘術LV9、弓術LV1、投擲術LV10、運搬術LV5、瞬歩LV10、縮地LV4、気配察知LV9、罠感知LV3、魔力制御LV6、気力制御LV10、闘気制御LV9、フリキア言語LV6

 称号:剣姫、特A級冒険者、閃剣士、ドラゴンスレイヤー

 ---------------------------------------------------


 まぁ、普通じゃないよね。冒険者としては最上位クラスだと考えていい筈。

 対して私はというと。


 ---------------------------------------------------

 ユリアネージュ(12歳)

 種族:素人

 レベル:169

 HP:18201

 MP:41366

 状態:通常


 スキル:剣術LV10、瞬歩LV8、格闘術LV7、火魔法LV10、水魔法LV10、風魔法LV10,土魔法LV10、光魔法LV10、闇魔法LV10、元素魔法LV7、刻印魔法LV8、付与魔法LV9、気力制御LV10、魔力制御LV10、仙気制御LV3、並列制御LV10、闘気制御LV8、気配察知LV10、高速反応LV3、HP自動回復LV3、MP高速回復LV1、真実の瞳、フリキア言語LV8


 称号:仙剣士、魔仙導士、大商人、特A級冒険者、A級商会員、王子様の恋人、竜機人の創造者

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 HPはママンとあまり変わらず、MPの伸びが著しい。あとブラウの事があってから称号が増えた。彼女が私を創造主と言っていたのは、これが原因かもしれない。


 汗だくになった私をママンに起こしてもらい、そのままサリーとシルバを連れてお風呂タイム。最近、シルバは性に目覚めてきたのか、私の裸が視界に入ると目を逸らす。

 控えめに言ってセクシュァ~ルだからね、仕方ないね。


 我が家の子供たちは私を含めて小顔が多い。私もサリーも他の同い年の子と比べて顔が小さく手足が長い。シルバ達もあと数年したら、同じようになるだろうか。イケメンぶりに期待しておくとしよう。


「にしても、また伸びたねぇ。育ちざかりは早いね」


 すでにブランの胸に顔を埋める事無く抱き着けるようになった私。一年前は正面から抱き着くと窒息しそうになったものだ。今は首元に顔を埋められるようになった。


「もうちょっとしたらお母さんに追いつくかな~」


「わたしも伸びたよ!」


 8歳のサリーも絶賛成長中である。私の時と同じくらいだろうか?湯船に入ったままサリーを抱きしめると、おっぱいに顔が埋まった。おお・・・これがブランママの見ていた世界か!素晴らしい!


「ん~~~~!!!!」


「ごめんごめん」


 ペチペチと腕を叩くサリーを開放するとブランママの方に逃げられてしまった。残念。代わりにシルバを下さい。


「シルバおいで~」


「・・・うん」


 恥ずかしそうに私に背を向けてブランの足の間から移動してくる長男。可愛すぎる。

 背中から抱きしめて胸の間に後頭部を埋めてあげると、肩の力が抜けたようだ。頭なでなで。


「おかあさん」


「なーに」


「サリーとシルバが可愛すぎる」


「しってる」


「ん~・・・可愛い~」


 抱きしめてギュっとしてあげるとビクッとして驚いたようだ。あんまりやると本気で反応させてしまうかもしれない。そろそろ勃つかもしれないしね!


「ユーリは成人の儀はどうするの」


「ん? 普通に他のみんなと、この街の教会でやるよ」


「・・・この間、領主様が言っていたけれど、来るかもしれないらしいよ」


「誰が~?」


 お湯の中で腕を撫でて擦り傷があったところを癒す。快癒の水を温めているので、小さいけがは風呂上りには完全回復するのだ。


「王太子殿下だよ」


「なんでっ!?」


 バシャっとブランママの方に体ごと振り返ると、当然だろ?と言われた。


「今でも手紙のやり取りをしてるんだから、向こうは完全にその気だろうし・・・成人の儀が終わったら王都に連れていくつもりなんじゃないか?」


「それは困る・・・」


 マジで勘弁してください。まだ色々と人生に悔いが残っているんです! せめて、せめてやり残した事を遂げさせてください! 王都の貴族社会なんて闇じゃないですか! 墓場じゃないですか! 急に王太子殿下が墓守に思えてきたじゃないですか!


「なら、いい加減ハッキリしなさい。振るなら振る、受け入れるなら受け入れる。別にあんたが王妃になっても、私は否定しないよ」


「・・・冒険者王妃ってアリですか」


「無いんじゃないかな・・・」


「だよねぇぇ」


 パシャリと水音だけが響いたのであった。


 ◇◇


「ごめんなさい。やっぱり私は夢を捨てきれません。殿下のお気持ちには答えられません」


「そうか・・・だが、既に真竜を倒したのだろう? それで夢は叶った事にはならないのか? やはり世界の中心を目指す事じゃないと、夢はかなわないのか?」


 成人の儀に参加したのは街の男女14名。最初からいた子供たちだけだと幼馴染が3名。

 みんな立派に成長したものだ。


 神様に教義に基づき生きていくことを誓う成人の儀を終え、領主様のお屋敷の庭でパーティをやっていると、彼が現れた。昨年、立太子の儀を終えた王太子殿下である。2年前とは違って、身長がブランママより高く、鍛え上げられた体はアルトパパ並みに大きい。


「冒険者をやるお妃など以ての外でしょう、大勢の方にご迷惑をお掛けする事を考えると殿下の隣に立つ身としては申し訳なく思いますし、私の夢は大森林の踏破による文明破壊の真理を究明する事、そして、みんなの幸せな生活です。そのような野望を持つ私では殿下のお傍に居る資格は無いでしょう。申し訳ございませんが、お気持ちに答える訳には参りません」


「・・・それならば、私が即位するまで君の好きにさせよう。それと私も同行しよう」


「申し訳・・・え?」


 何言ってんだ、この王子様。同行する? マジで? 世界の果てだよ?


「だから私と結婚して欲しい」


「・・・・・あれ、これは・・・えーっと・・・」


 断る理由が無くなった? いやいやいや! 将来の国王陛下の命を預かるような物でしょ! ダメだよ絶対!


 そう思って従者の人を見ると、微動だにしていなかった。え? なに? 同意済み? どういうこと? なんで? 周囲の騎士も? え?


「・・・・・危険ですよ? 死ぬかもしれませんよ?」


「既に陛下を含めて家族の了承、部下たちの同意は得られている。私も、この二年で鍛えに鍛えた。今の私は冒険者ギルド総長と、北央騎士団魔法師団長の弟子だ!」


 うっわマジだこの人、ステータスがとんでもない事になってる。


 ---------------------------------------------------

 フリューゲル=レオンハルド=バエス=エステラード(19歳)

 種族:素人

 レベル:98

 HP:7633

 MP:5011

 状態:通常


 スキル:剣術LV8、歩法LV6、格闘術LV2、弓術LV2、槍術LV1、戦馬術LV2、風魔法LV6,光魔法LV2、気力制御LV4、魔力制御LV2、闘気制御LV1、精神耐性LV1、話術LV2、意思統制LV1、指揮術LV3、カリスマLV6、フリキア言語LV9


 称号:王太子、魔闘剣士

 ---------------------------------------------------


 レベルの割にHPとMPが少ないのは、スキルレベルが低いせいかな。あとは知らないスキルが沢山・・・。


 後ろに控えている従者ノールと騎士3名もレベルが80を突破している。騎士三名は聖騎士に転職済みだ。回復魔法を使える教会の騎士だ。4人の鎧は鍛錬の為か傷が多い。幾度も補修された跡がある。


「彼らは・・・聖騎士ですか? 以前にお会いした時は普通の護衛の方でしたが」


「「「修行してまいりました!」」」


「私が教会に入らせて回復魔法と聖剣術を会得させてきた。そなたと同行するためにな」


「私も殿下の修行に付き合わされました・・・」


 ごめん従者さん! というかココまでされたら断れないじゃんか! これ、断ったら完全に私が悪役じゃん!!


「ん~~~~~・・・・・・・あの、本当に良いんですね? 真竜どころではない相手が居るかもしれないんですよ?」


 私の問いかけに従者さんが先に答えた。


「正直なところ行きたくないですが・・・私は殿下と共にあると、幼少の砌に誓ったものですから、殿下が行くところが私の行くところです。後ろの三名も私と同様、幼き頃より殿下に誓いを立てている人間です。どうかお構いなく、殿下と共に同道いたします所存です」


 ガシャリと従者さんの下半身の鎧が音を立て、王太子殿下の後ろに跪いた。


「見ての通り、部下も私を守ろうと同行する予定だ。私の気持ちは先程と変わらぬ。どうか、受け入れてくれるならば、この手を取ってくれまいか?」


 スッと差し出されたその手は、痛々しいほどに豆と傷跡が付いていた。ブランの傷と同じかそれ以上の数が刻まれている。あぁ、もう駄目だ! これ以上、この人に無理はさせられないし、させたくない! こんないい男を放っておけるか!


 当然、その手を掴んだ。


「謹んでお受けさせていただきます。・・・生涯、放さないでくださいね?」


「無論だ」


 あぁ・・・ダメだ、落ちたわ。


 ◇◇


 その後、レオンは王都へと一度帰還して、国王陛下への婚約報告と、領都ユリアに長期滞在するための準備を始めるらしく、側近たちと王都へ帰っていった。

 私も一緒に戻るかと聞いたけど、そのまま結婚式を挙げてしまいそうだから、まずは報告して、来年以降に式の準備と私の目的(大森林アタック)の準備を行うからと、同行は拒否された。


「ふ~ん・・・多分ですけれど、ユリア様が他の婚約者候補に狙われないようにするためだと思いますわ」


「あ、そういう・・・それは考えが足りませんでした」


 そう教えてくれたのは領主様の娘で錬金術師のジュリアンヌさん(17)だ。

 今日は付与魔法を上げ切ったら生えた、錬金術について教わりに来ている。


「それでは、錬金術の基礎知識については、既に私よりお詳しいようですので、省略とさせて頂きます。今日は魔力を込める際の注意点などをお教えいたしましょう」


「よろしくお願いします!」


 錬金術の知識というのはなんというか、科学だ。浸透圧がどうのこうのとか、中学生レベルの基礎知識程度なら私でも分かる。ナンタラ理論がどうのこうのとか、量子って何? 料理と違うの?というレベルまで行くと意味が解らなくなるので、スキルにお任せで良いっしょ。


 ポコポコと小さく沸騰するビーカーから溶液を取り出し、複数のハーブと混合させ、HP回復ポーションを作り出す。液体、軟膏、湿布型と様々だ。


「毒に関しても抽出方法は変わりませんが、換気にお気を付けくださいね。あと、物によっては密封されたガラスの中で全ての錬成を行う必要がありますので、ガラス越しに魔力を使う際は、魔力を透過させるように意識を集中してください」


「わかりました!」


 両手のモヤモヤが黒い溶液の中に吸い込まれ、紫色に反応する。う~ん、グロい。ネトネトした溶液は魔力が加わると、青黒い色に変化した。


「これが三悪の烙印と呼ばれる混合毒ですわ。一時的ですけれど、麻痺、意識混濁、視覚不良の即時効果が期待できますし、獲物に毒が残らないので冒険者や狩人に人気です。少々値は張りますが、これを使用する相手ならそこそこの強敵ですし、儲けは十分出るからと人気商品ですわね」


 すんげぇ名前の毒が出てきた。


「へ、へぇ。睡眠毒とかも作れます? ドラゴンに効くような」


「え~っと・・・恐らく特A級の素材と、それを使うレシピが無いと無理ですわね。ある種の伝説級の毒薬とか、そう言ったレベルの範疇になると思います」


「そうですか・・・中々暴れまわられると大変ですから、在れば助かったのですが。古代遺跡とかで見つからないですかねぇ」


「あったら世紀の大発見ですわね」


 そりゃそうか。魔王とか知らないかな。


「ところで、王太子殿下とはその後如何ですか? もう・・・されました?」


「ス、ストレートに聞きますね」


「だってだって気になりますもの!」


 腕を畳んで胸の前でこぶしを握った彼女は、年齢以上に幼く見えた。背が低いし。というか、17歳だもんね、恋の話とかしたいよね。私もしたい。主に自分以外のを。


「まだキスもしてませんし、その、帰りがけにぎゅ~ってされたくらいで・・・3か月後には戻ると仰ってましたけど」


「まぁ~・・・はぁ・・・ここから王都まで馬車で1か月以上かかるのでしょう? 殿下もそうしてでも早く戻ってこられたいという事かしら?」


 いや、実はゴーレム馬車を流通させ始めたので、実際には2週間くらいで帰れます。あと、フィビレリアまでの道をゴーレムに整備させたので、更に早いと思います。


「へぇ~・・・そんな事になってたのは知りませんでしたわ。ゴーレムが土魔法を使うのですか?」


 錬金術で作った薬草茶とクッキーを摘まみつつ、鍋の水を沸騰させているが、アレは煮出し切るまでもう少しかかりそうだ。


「なるべく平たんな道をローラー・・・円柱状の金属を転がして、それが特定の土魔法を常時発動しているような物ですね。土魔法師が居ないと発動しませんが、道の整備には役立つかと思って、そう言った製品も販売しているのです。周辺の村の復興にも使用しているんです」


 結構、荒らされたからねぇ。道の整備、土地の均し、ゴミの再利用と用途はそれなりにある。使うと土と金属が混合された、柔らかいアスファルトになるからね。形状記憶が掛かってる金属だから壊れないし、再整備も数十年に一回で済む。魔法って便利だ。


「ユリアさんの貢献度合いは、この国に無くてはならない物になっているのですね・・・私、前より尊敬してしまいます!」


「のわっ」


 隣の席だったけど、掴まれた両手がジュリパイに挟まれている! 押し付けてグリグリされている! そして顔が近い!


「あぁ、ユリア様・・・お美しい上に立派で、可憐で、素晴らしい精神をお持ちで・・・どうして私は男性に生まれなかったのかと、悔やんでも悔やみきれませんわ」


「あ、え? え?」


「もし、よろしければ、今晩は泊って行って下さらない? 一晩語り合いませんこと?」


 おおぅ!? やばい、何か知らないけど貞操の危機を感じる!


「えっと! 今夜はハイネさんの御一家と約束があって、下の子たちと魔法の訓練の予定が・・・」


「では明日は如何ですか? 明後日は? いつでも構いませんわ!」


「ああ、えっと、領主様に叱られてしまいますので、そういったことは・・・あぁ! 奥様もご一緒しましょう! 奥様の恋愛話もお聞きしたいですし!」


「・・・ん~、そうですわね」


 落胆してるううう。テンションの下がり具合が凄いなおい!


「そうそう、みんなでお話ししたほうが盛り上がりますし、コイバナってそういうものだと思いますし・・・あ、出来たみたいですよ」


「あら・・・火を止めましょうか」


 ふぃ~・・・まさかそっち方面か。ちょっと同性は勘弁してほしい。


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