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緑の雨  作者: 二笠
深紅の人柱
28/97

027

 翌日、フラフラのモンドさんを連れて馬車を取りに行き、商業ギルドでお金を卸して、そのまま聖金貨で馬車を買い、ついでに馬車の横にお手製のユリアブランマークを付けてもらった。治具無しで金属加工できるのが、土魔法の良いところ。


 後は馬車に毛布やら食糧やらの荷物を詰め込み、定食屋で昨夜の二人を冷かしながらご飯を食べた。


「いったぁ・・・また、たん瘤が・・・」


「うっさい。公衆の面前であんな話するなって、いつも言ってるでしょ」


「ははは・・・」


 後は宿に一泊して明日の朝に出発するだけなのだが、止まっている高級宿(5階建て)に銀色の美しい馬車が止まっていた。うわアレ王家の紋章じゃん。回れ右したい。


「今から別の宿に・・・」


「連泊でとってるんだから、そのまま泊まるわよ。あんたに会いに来たわけじゃないかもしれないでしょ」


「まだお昼過ぎだし・・・」


「ダメよ」


 ケチんぼめぇ! 金貨十枚くらい良いじゃん! 半分諦めの境地でロビーに入ると、予想通りというか何というか、十人くらいの騎士が居た。その中央には王子殿下がいらっしゃる。戻ろ・・・? ねぇ、今から戻ろう?


「おお! ユリアネージュ! 待ちくたびれたぞ!」


「こんにちは殿下。どなたかとお待ち合わせでしょうか?」


「お主を待っていたのだ。魔物の氾濫を食い止めたという武勇を是非とも聞きたくてな! 昼食はまだか? 席を取ってある。行こう!」


 ちょっと、強引すぎませんこと!? グイグイ来て両手をがっしり掴まれてるんですけど! 顔が近い! イケメンだけど、ちょっとこういうのは引く!


「あ、あの、もうお昼は食べてしまいましたので」


「ん? そうか? なら部屋で茶を飲みながら話でもどうだ?」


「へ、部屋ですか?」


 取ってるけど! 確かに取ってるけど!? 受付の男性二人と女性二人を見ると、四人そろってウンウンと頷いていた。受付、教えるなあああ! 個人情報保護して!


「さぁ、行こう! おい、案内を頼む!」


 無言で礼をしながらカギを預かるベルボーイ。そして腕を引かれて入っていく502号室。パーティの仲間は503号室へと消えていった。


「ん? あの二人は良いのか?」


「ええと、あのお二人は夫婦ですので、別室でとっています」


「なるほど、気を利かせたのだな。心配りが出来る女というのはイイ女だと言うからな。そなたも優しい心を持っているのだろう」


 ひぇええええ、イケメンがそう言うこと言わないで、照れる! 恋に落ちるわけじゃないけど、顔が赤くなる! ふぅぅぅぅ。落ち着けユリアネージュ! この王子様は破壊力がヤバいぞ! 強敵過ぎる!


「あ、ありがとうございます」


「さぁ、そなたの部屋だ座ってくれ」


 ささっと椅子の後ろに立ち、引いてくれる。マジ紳士。さり気ないやさしさは田舎にはないテクニックです。なぜか学校で会った、あのシスコンブラコン兄姉の兄の顔が出てきた。あんな残念なのと比べてたまるか! 大体もう卒業しただろ! いい加減にしろ!


「し、失礼します」


 ひ、膝の裏に当たらない。お上手! この王子様、椅子上手! いや、床上手みたいに言ったけど違うから! ってそうじゃない。


「あ、あの紅茶を」


 ふと立ち上がろうとしたら、従者らしき若い男性にポットを奪われた。早い。行動の先を読む。先読みの達人。レベルもたけぇ! 13歳でレベル22っておかしいでしょ! 私が言うなって話だけど!


「お淹れします。そちらにお茶請けが入っていると思いますので、お取りいただけますか?」


 騎士さんの一人が頷いて、台所の棚から菓子を取って来た。この部屋って、定期的に焼き菓子が補給されるのよね。量は少ないけど。


 騎士たちは入り口、窓、寝室との扉付近などに位置取り、王子殿下の後ろにも二人が配置している。鉄壁の防御すぎる。レベルも50代後半ばかりと高いのねぇ・・・。


「・・・それで、お話というのは?」


「あの魔導士認定試験を見てから、そなたの事を色々と調べてな。A級商会員に、特A級冒険者、魔物の氾濫を抑え、あそこの領主を遷都させるなど、思い切った事をやる手腕に興味が出たのだ。なに、徴用しようというのではない、是非とも話を聞きたくてな。それに・・・」


 それに?


「それに、そなたは美しい。個人的にもそなたに興味がある」


 うぉっと、どストレートに来たよ。


「お気持ちは大変うれしいのですが、身分があまりに違いますので、その、お心だけ頂戴いたします」


「いや、特A級ともなればそなたは法衣とは言え、侯爵だ。身分的には何も問題はない。私は割と真剣にそなたとのことを考えているぞ」


 割とね・・・そういうところは正直に言ってしまうあたり年相応な感じがする。


「ふふ、では、私が成人しても将来を約束する方が居なければ、殿下をやきもきさせてしまうかもしれませんね」


「ははは! そうだな、父上は幼過ぎると言っていたが、私も君もあと5年もすれば大人だ。子を成せる年齢だ。幾人も父上が連れて来る者よりも、そなたの正直さは心が安らぐよ。最初から妙な柵を抱えた者ばかりで、少々ウンザリしていたからな」


「私はその点、自由奔放であると?」


「そうだな、でなければこれまでの行動は全て嘘だった事になる」


「ふふふふ、そうですね。きっと母に似たのでしょう。剣姫ブランネージュですからね」


 村を飛び出す点では私の方が記録更新したけど。


「ああ、ギルドマスターの弟子だと言ったな。あった事は無いが、さぞ勇敢な人なのだろう?」


「剣に厳しくも、子育ては優しいお母さんですね。私を鍛えているときは良く叱りますが、子育ての中で怒られた記憶は無いんですよね・・・どうしてでしょうね」


「聞いている話とは全くの別人なのだな。もっと豪放磊落な御人かと思ったが?」


「冒険者ギルドや騎士様達の間では戦闘狂と言われているそうです。私も村のギルドでは殲滅者呼ばわりされていますから、そう言ったところもよく似ています」


「ははははは! 殲滅者か! いや、すまん、それはさぞ恐れらているのではないか?」


「最初は受付の女性に悲鳴を上げられてしまいました。今は一緒に昼食を取ったりする仲ですよ」


 最初に冒険者ギルドに入って名前を伝えたら、ズザザザザーって蜘蛛の子を散らすように周囲から人が離れたからね。あれは結構傷つく。


「それは良かった。教会で教師をやっているというのも本当なのか?」


 そんな事まで調べてんのかい!


「ええ、今は学校を建ててお役御免ですが。年下の子たちも、年上の人たちも、休み時間はゴーレムに乗って一緒に遊んだりしていました」


「そう、それだ。氾濫の時にゴーレムで戦ったと聞いたが、それはどうなのだ?」


 あ~、これってどこまで話すべきなんだろう? 端的に言って一大戦力なんだよね。見てない人間にそのまま伝えると、叛意アリとか受け取られそうな気がする。


「少しだけですよ。付近に並べて一緒に戦ったくらいです」


「なるほど・・・試験で見せた魔法も凄まじかったからな、そなたが戦場で飛び回っている姿はさぞ美しかろう」


 だからそういう事をシレっと言うのは、照れるからやめてもらいあいんぬですにゅぅ。


「・・・そ、そんなに飛び回ったら、危険ですので、後ろでゴーレムを操っているだけですし」


「おや、一緒に戦ったのだろう?」


 うぐぅ。そこを突っ込まないでいただきたい。


「大勢を相手をするときは一つの傷が致命打になりかねませんので、極力前には出ない物ですから・・・」


「ふむ・・・そういうものか?」


 後ろの騎士に少しだけ振り返って聞いているが、ここはきっと騎士さんがフォローしてくれるはず。


「重装備をしている者はその限りではありませんが、彼女のように身軽な装備の者は、後方から攻撃するのが戦の常です」


「なるほど。確かにユリアが重装備をしている姿は想像できんな」


 ふぃ~・・・なんだか尋問じみてきたなぁ。早く終わってほしい。


「それはそうと、そなたの魔法の師は母親と言っておったが、かの御仁は純粋な剣士ではなかったのか?」


「正確には、魔法教書を譲っていただいた方が居りましたので、そこから体得したものですね。最近になってやっと上級魔法の存在を知りましたが・・・基本魔法とさして違いの無いものでしたので、殆ど使った事は無いですね・・・」


 これから使う機会があるのは、余程の強敵に会ったときか、大軍を相手にするときだろうか。森の中なら、風一択だなぁ。火は一瞬で灰にしないと使いづらいし、水と土は足場を悪くする。風の魔法使いとか呼ばれるようになるのかしら。


「そうか。それだけ強くて、まだまだ成長の余地があるというのは素晴らしいものだな。ますます惚れてしまいそうだ」


 にっこりと微笑みで返すだけにしておこう。今何かしゃべるとボロが出そう。


「そういえば、最近、そなたの商会から頻繁にガラスという物を購入している。鉄より硬く、窓の素材にうってつけだとな。このホテルにも早速使われているが、これはどういう物なのだ? 城の錬金術師たちも、製法が解らずに頭を悩ませているよ」


「一応部外秘ですので、欠片もお伝えする事は出来ません。商売のタネですからね」


「なるほど、素材や工程は話せなくとも、どれくらい掛かるのか位は明かせよう?」


「そうですねぇ・・・寝て起きたら完成していますね」


 まぁ、これくらいは。


「なるほど、翌日には出来るのであれば、相当量が販売できるな」


「ガラスも、布も、紙も、文明を成長させる者には必要不可欠であると考えていますからね。陛下の仰る領地拡大も第一だと考えておりますが、同じくらい、今の生活をよりよくしていく技術が発展していくことは、大切な事だと考えています。その結果、争いが産まれてしまっても、多くの人は幸せでしょうから」


「そなたは大局を見据える目を持っておるな」


「そのような大げさな話ではございません。女として内側を幸せにしたいと考えているだけです。そう考えると、母と同じですね。お母さんの笑顔は幸せの素ですから」


 コクっと紅茶を飲むと、喉が潤う。ママンにも飲ませてあげたいくらい美味いなコレ。茶葉は見た事があるけれど、淹れ方が上手いのかな。従者の人、それっぽいスキル持ってるんじゃ・・・持ってるわ。奉仕スキルLV6持ってるわ。


「そなたは・・・魅力にあふれておるの」


「え?」


 紅茶から顔を上げつつ上目使いに王子様を見上げた。


「い、いや、何でもない」


「?」


 何か言ったか? 首を傾げると、王子様の顔が赤くなっていた。んん? 至って普通の事を言ったつもりだったんだが、何か変なこと言ったかな。


「ああ、うむ・・・今度、また王都には何時頃くるのだ? 是非、また会いたい」


「次は・・・今のところ予定がありませんので・・・人を雇いに、商会の用事で来るかもしれませんが・・・時期は未定ですね」


 モンドさん次第かなぁ。あの人の手に負えなかったら、弟さんとかも呼んで、人海戦術で仕事をしてもらうしかないもんね。今後も違う品目を造っていくつもりだし。仕事は増える一方だろう。私が森に入るようになるまでには、誰かに任せたいなぁ。


「どうだろう? 私の方で人材を送る事も可能だが」


 え? いや、それは不味くね? 王子が一商会に加担するってのはチョット、シャレにならない妬み・僻みを受けるよ?

 そう思っていたら、従者の方が釘を刺してくれた。


「殿下、王太子になられる方が一つの商会に手を差し伸べるような事があっては、我先にとユリアネージュ様以外の方が群がってきます。それにユリアブラン商会にとっても、かなり良くない事態になりうるかと存じます」


「む・・・そうか、そうだな。あ、いや、すまぬ。考えが足りなかった、ユリア、今のは聞かなかった事にしてくれ」


 しかしそうか、人材か・・・とまだ諦めていない御様子。思わず苦笑いをしてしまいますが、あなたの横で従者さんが溜息を付いていますよ。


「なんだ、別に構わぬではないか。考えるだけならば問題あるまい?」


「殿下がそのようなそぶりを見せる事が問題なのです。此処を出てからはお止め下さい。誰も幸せになりませんし、何より・・・」


「なんだ? ハッキリ申せ」


 従者さんが私に目線を送った。言えと? いやいや、私は遠慮します。こういうのはあなたが諫める事です。


「ユリアネージュ様に嫌われますよ?」


「ぬっ!ぐぅ・・・わかったぁ・・・しかし、では別の何かをだな!」


「殿下」


「分かった! 分かったから! もう、申さぬ!」


 ああ、この二人は本当に仲が良いなー。兄弟を見てるみたいだ。ウチのシルバとモルトも仲良く育って欲しいなぁ。


 一人でほっこりしていると、私は微笑んでいたのか、私の顔を見た王子様は真っ赤になって顔を逸らした。うっわ、可愛い。反則だろそれ。


 こうして、日が暮れる前まで会話を楽しんでいたが、外聞もあるという事で王子様一行は城に帰っていった。うん、これもう遅いよね。宿の自室に王子様が惚れている女の子と一緒におしゃべり。王子様は成人済み。アウトだな。


「ふぅ・・・帰りは背中に気を付けよう」


 我ながら物騒だなと思いつつ、一人、夕暮れを楽しんでいた。


 ◇◇


 露骨な王子様に王都の北門で見送られ、北央騎士団の治めるフィビレリアへと旅立った。

 護衛も何もつけていないが、Aと特Aが居るので特に問題は無い。カップサイズの話でもない。


「のんびりぃ~」


 ダラーっと貴族仕様の巨大馬車のソファでグッタリと横になり、反対側に座るモンド夫婦を眺めた。帰りの道筋について相談する為、地図を二人で持って肩を寄せ合っている。


「これが、そうね、こっちの町はね・・・ふふ」


「ああ・・・ここは僕も行った事があるよ」


 イチャイチャしております。私の独り言にも無反応なくらいにイチャイチャしております。仕方がないので風獣でも出して遊ぶか。小さくな~れ、小さくな~れ。


 ポンッとお腹の上に出した風獣は、キュウンと小さく鳴いて、私の顎をペロペロと舐めだした。あぁ~モフモフ。かわいいのう。ふうちゃんはくぁいいのう。


 等とのんびりしていると、いつの間にか夕方になり、野営の支度をして、私の造ったホームセットに3人でお泊りする。御者は居ない。馬も居ないからね。


「あのゴーレム馬。便利ね。御者も要らないし」


「だしょ~? 馬が必要なら、街で買えばいいからね。私が乗らない時はそうすると良いよ」


「これは、運送革命になるな・・・」


 いや、あんまり遠方には使えないぞ。御者代わりに土魔法使いが必要だし。


「高レベルの土魔法使いが居れば、実現可能かもね」


「あ、そうか」


 オマケにハイネさんの話によると、普通のゴーレムはこれだけ長時間続かないらしい。私のように創造時の魔力だけ消費して、あとは周囲の魔力を取り込むようなやり方は、相当の魔力制御能力が必要だと教えてくれた。多分、魔力の色を見れる事と深い関係があるだろう。


「そういう人って育てようと思ったら、育てられるのかな?」


「無理ね、本人の才能によるところが大きすぎるもの」


「私は?」


「あんたは天才が過ぎる。全属性の魔法を極めて、仙気を操れるような練度の制御能力なんて、常人には不可能なのよ」


 つまりゴーレムも難しいと。世知辛い世の中だぜ!


「うーん・・・操作させるだけなら可能だよね?」


「まぁ・・・可能ね。予め決められた事しかさせないなら、という条件付きだけど」


 それならもう出来てるな。うん、やってみよう。

 手元のテーブルから小型の馬を作り出し、進め、待て、特定ルートだけを進めをインプットして・・・。


「何作ってるのそれ?」


「今言ってた条件付きゴーレム」


「は?・・・・はぁ!?」


 おし、出来た。


「はい、ハイネさん動かしてみて」


「いや、え、はぁ!?」


 手乗り馬を手渡して、テーブルの上をトコトコと進ませる。戻る。止まる。周回する。おぉ~。良いじゃん? 出来るじゃん!


「どう?」


「どう?ってあんた・・・おかしいんじゃない?」


 え!? 普通に動いたじゃん。


「え~・・・ちゃんと動いたのに。どこか変だった?」


「変なのはユリアだよ」


「なんでよ!」


 異議ありだよ!


「普通はそんなパパッと作れないのよ! 色々と試行錯誤して魔法陣に落とし込んで、ゴーレムに刻んでやっと一つの命令を聴くようになるの! どうして手元で少し弄っただけで実現できてんのよ!」


 言われてみれば、そんなやり方はした事ないな。


「魔法陣て要らなくない? 土魔法を精製した時に、予め埋め込んでおけばいいじゃない。ダメなの?」


「土魔法を精製という未知のワードが出てきたわね」


 あれ・・・。そういえば何時からか、ゴーレムに魔法陣を刻まなくなったな。ゴーレムを作る時にそういう魔法陣を内包すれば良いと気付いた。出来上がったのは魔法陣が刻まれていなくても命令通りに自律稼働するゴーレムだった。それが土魔法を精製する方法だ。


「元素魔法はハイネさんも使えるでしょ? あれで上手いことやるの」


「いや、んん? 間をすっ飛ばし過ぎて意味が解らないわ」


 オッカシーナー? 何で伝わらないんだろう。世間一般的な事じゃないのかな。


「もしかして、元素魔法って、良く分かってない分野だったりするの?」


「全く。なんか属性魔法が強化されるな~位の認識だと思うわよ」


 ほう・・・ほほう・・・! これってロストテクノロジーなのか。恐らく過去の文明にはあったんじゃないか? 出ないと私がスキル頼りで此処まで簡易的に使える訳がない。という事は私の知識に在って、この時代の人には無い何かが原因かな。


「イメージの問題だと思うなぁ・・・この子だと、体の中に仕組みがあって、声に反応してその仕組みが動くイメージをしてるの。そのイメージをすると、元素魔法で強化された土魔法が反応する」


「そういうイメージ・・・というか最早順序が逆じゃない。私は魔法の力で原因を探っていたけど、ユリアの場合は原因を想像出来るから、勝手に魔法がやりくりしている感じね。なら、その原因となる仕組みの内容を教えてもらわないと、私は同じことが出来ないって事になるわ」


 そういう事だね。という事は私の持つ知識の中に答えがある。多分、集積回路とかそういう物の想像力なんだろう。電気で動く機械仕掛けのロボットなんて、この時代には無いものね・・・。


「これを伝えるのは難解だなぁ・・・機械の脳みそをイメージしてるから」


「・・・無理、寝る」


「おやすみぃ」


 ギブアップはえーな。

 私も風獣と水精霊だして寝よ。


「魔物が来たら退治しちゃって。人が来たら起こして」


 頷く二人を見送り、セーフハウスでゆっくり寝た。オリハルコン敷布団最高です。ウォーターベッドみたいにフヨフヨしてヒンヤリして気持ちがいい。


 そろそろ私も寝ようか・・・な・・・。


 ◇◇


 翌朝、周辺は魔物が数匹転がって、何故か盗賊と思しき者の遺体も転がっていた。


「魔物にやられたのかな?」


 こくりと頷く二人を撫でて、周辺警戒を続けさせた。


「なんか分かった?」


「ん~・・・怪しいのは誰かが盗賊を使って襲わせたってところかな。魔物が襲ってきたタイミングに紛れて一緒にやっちゃおうとしたら、その魔物が自分たち目掛けてやって来て襲撃失敗。魔物はあの子たちが処理。そんなところ?」


「僕らは誰かに狙われてるのかい?」


 まぁ、一つしか無いよね。王子様が祟ったなぁ。いや、生きてるけど。たぶん。


「王子様に惚れられちゃった」


「おぅ・・・」


「なるほど・・・」


 他家から婚約の話を持っていった娘の父親貴族がやらかしたかな?

 暗殺者じゃないだけマシかな。

 これも鍛錬と思って頑張って見ますかね。


「んじゃ、遺体は損壊し過ぎて良く分からないので放置。このまま予定通り進みまーす」


「はいはい」


「不安だなぁ」


「こういうのは来るもの拒まずの姿勢の方が楽よ」


「そうそう、全部倒しちゃえばいいのよ」


「はは・・・ウチの女性陣は強烈だな」


「それほどでもない」


 筆頭はブランママだけどね。

 道の近くに作ったセーフハウスはそのままに、北へ向けてゴーレム馬車は進む。監視用の飛行ゴーレムを八方向に飛ばし、馬車の中からフライアウェイ。


 鷲のような鳥型のゴーレムが私たちの周り10キロほどを監視しながら飛行している。視界は魔力で繋がっているので体は動かせないけど、有事には一度に一体だけ視界を共有できる。


「後は放置して進みましょう」


「なんでもありね」


「そうだな」


 そうでもない。常につながりを保つタイプのゴーレムは微弱な魔力消費が常に続く。微弱・弱・中・強・最大と魔力量を上げれば上げるだけ、精密な感覚を共有できる。視界を共有するときだけ出力を上げる感じだね。


「繋がりさえ残ってれば使うべき時に魔力を使うだけよ。減った先から魔力が回復するから問題ナシナシ」


「うわぁ・・・ユリアの魔力量って幾つ?」


「お爺さんの教会で測った時は2万超えてた」


「ははっ・・・桁が違ったわ」


「500を超えたとか言ってる魔術師級の仲間を思い出したよ。本当に桁違いの強さだね」


「それほどでもある」


 寝てても経験値が入るからね。朝起きたらレベルアップしてたとかよくある事なんだよね。最近はそうでもないけど。


「でも、まだまだ強くなるには、狩場を変えないとダメかな・・・ドラゴンでも狩らせるかな・・・?」


 あの森に居るかどうか知らないけど。


「北の大森林にはアースドラゴンが居るとか、ウッドドラゴンが居るとか聞いたことがあるよ。倒せたって事例はあんまり聞かないけど」


 あんまりって事は倒した前例があるんだね。


「う~ん・・・複数種類居るのは怖いなぁ。縄張り争いに巻き込まれると、乱戦になって死にそう。ゴーレムも耐えられないかもしれない」


 実際、ドラゴンが仙気を使わない保証なんて何処にも無いんだよね。森の中では私のコピーが殺人マシーンとなって大量に襲ってくる、とか・・・それくらいの覚悟はしておいた方が良い。


「冒険者になって最初の冒険が最終目的地ってどうなんだろう?」


「普通はあり得ないね。大抵は森や洞窟、古代遺跡の迷宮や何かで鍛えるものだよ」


 何? 迷宮って。


「ワッツ ラビリンス? 迷宮ってなにさ?」


「古代遺跡の機能の一つに、魔獣を際限なく作り出すっていうものがあってね。一定量まで達すると、魔獣同士で共食いを起こすから、滅多な事じゃ溢れないんだけど・・・迷宮が溢れる時は魔獣同士が強くなって互いに殺せなくなった時だ」


 そうなったときは地獄だよ。とハイネは続けた。最終的にはその遺跡の機能を止めないといけないんだけれど、物によっては地下数十層とか、何百キロも地下に潜る必要があったりと、決死行になる場合が多いらしい。


「騎士団も歴史上何度も全滅している。狩場として利用して、遺跡の対処を諦めた場所なんて腐るほどあるんだよ。もし、一斉に溢れだしたら・・・この大陸は対処できないだろうって言われてる」


「みんながみんな、ギルマスみたいに化け物じゃないもんね」


 鎧の巨人は一体で十分だし。


「ユリアが百人くらい居たら、恐らく・・・そう言った遺跡を滅ぼせるんだろうけどねぇ。そんなの無理だろ? だから実現不可能な決死行なのさ」


 困ってるわけじゃないから対処はしない(出来ない)という話なんだろうけれど、発見してしまった以上は常に不安が付きまとうよね。それが10年に一つは見つかっているというのだから、滅亡待ったなしじゃないのかなぁ。


「・・・何気に人類って危機的状況?」


「いまさらでしょ」


「そっか~、怖いね~」


 ああ~・・・と貴族仕様馬車のソファに横になり、ミニ風獣に顎をペロペロされながら私は寝る事にした。


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