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緑の雨  作者: 二笠
深紅の人柱
26/97

025

 なんっで、この街は肉料理ばっかりなんでしょうねぇ・・・。

 街を歩いても肉、宿のご飯も朝から肉、定食屋に入っても全て肉。


「果物残しておけばよかった」


「それはやめてくれよ? 日持ちしない物を鞄に入れたままとか大変な事になるからな」


「わかってますし」


「・・・」


 本当か?って顔で覗くの止めてもらえます?

 これでも分別は付く方です!


 朝食の肉がヘビー過ぎたので、逃げるように街を出て王都へと南進した。王都はサッパリしたものが食べたいな。魚介サッパリマリネとかいいね。ユリア町で食べる魚は森で取れる川魚ばっかりだから、海の魚って食べた事ないんだよね。


「ユリア町って川魚の養殖をしていなかったか?」


「ああ、はい。私が作りました」


「何でも作れるんだな」


「だって魚食べたいじゃないですか」


「あの街の発展の方向性はユリアの好みで左右されるわけだ」


 当たり前です。生産者としては最優先で考えるべき事です。


「食糧事情に関しては妥協したくないですね。妊娠したお母さんを森に狩に出させるくらいには妥協したくないです」


「お前は母親を心配して手伝ってるのかと思ったがどうやら思い違いだったみたいだな」


 それじゃ私が只の鬼畜みたいじゃないですか。森で大イノシシを一刀両断するくらい、うちのお母さんにとっては欠伸しながら出来る範囲だから問題ないんですよ。依って私は鬼畜ではない! 証明終了!


「私は鬼畜ではない!」


「そんな話はしていない」


 あるぇ・・・? まぁいいか、王都も割と近いらしく、幾つかの村を眼下に見ると、直ぐに視界にとらえる事が出来た。


「大きいですね」


「そりゃこの国最大の都だからな。物も人も一番大きく多い」


 少し高度を下げたら風獣の足が付きそうなところまで王城の最上階が伸びている。100メートル以上はあるんじゃないのかアレ。

 城壁も30メートルくらいあるし、3重の外壁も一枚一枚が20メートル近くある。


「町がバウムクーヘンみたい」


「私にはドーナツに思えるな。外に行けば行くほど人口が増える。中心に行けば行くほど、どうしようもない奴が増える」


 もう少し子供の表現を素直に受け取って頂けると幸いです。楽しそうな気分が、一気に吹き飛んで胃に重いものが入ってきました。


「・・・降りましょうか」


「ああ」


 ハイネリアさんは恋とか、そういったものとは無縁な気がする。アレだな、外見に惚れる人を旦那さんにしたほうが良いな、うん。


 今回は門の近くではなく離れたところに降りる。何故なら並ばなければならないから。風獣を消して並ぶと、旅商人や冒険者の人に前後を挟まれた。


 色々と旅の話を聞いたり、A級冒険者ぁぁぁえええええ!? となったり、水魔法で飲み水を提供したりして暇をつぶす。


「次、身分証を提示してくれ」


「A級冒険者のハイネリアです。こっちはA級商会員のユリア。」


「おねがいしまーす」


「・・・いったん確認する。此処で待て」


 スタスタと冷静に待機所に入っていった門兵さんはレベル55とこれまでで最高レベルだった。B級冒険者並みなんですけど!?


「凄い強いねあの人。冷静だし」


「ああ、王都の門番なんてやってると、A級やB級は普通に会う事になるだろうし、その中には勘違いした馬鹿も少なからず居る。それに対応出来なきゃ、入管管理なんて出来ないだろうよ」


 それは制圧を含めてって話ですよね。あのサスマタみたいな槍を見れば解ります。

 装備もこれまでで一番いいものを使ってるし。全身ミスリル装備て何、精鋭兵じゃん。


「確認した、ようこそ王都へ。ゆっくりしていってくれ」


「あ、ありがとうございます」


「どうも」


 最後の笑顔は卑怯だわ!しかも結構カッコいい。あれだな、出来る男は違うなぁ。ひとつ前の勘違い野郎とは雲泥の差だな!


「ハイネさん」


「なんだ」


「ああいう人はどう?」


「どう、とは?」


「恋愛対象として」


「・・・? 何でそうなるんだ」


「・・・・・何でもないです」


 コイツゼンゼンワカッテネーナ! もっとアンテナ張れよ! 目の前のいい男を逃すなよ! ああいうのは地位が無くても幸せな家庭を得られる掘り出し物ってやつで


「ところで、先にギルドに行くのか?」


「掘り出し・・・え?」


「何だ掘り出しって・・・先に冒険者ギルドでギルマスに合うのか?」


 そう言えばそうだった。ママンの善意を無為にするところだった。


「行きます。ついでにお母さんとの関係性を問いただします」


「いや、ただの子弟関係だと思うが・・・?」


「実は違うかもしれないじゃないですか! 祖父と孫なのか、師弟なのかハッキリしてください!」


「どっちも本当だと言ってるだろうが!」


「本当ですか? 実は弟子と思われていないという可能性も・・・」


「火球で吹っ飛ばすぞ貴様!」


 いうや否やハイネさんの全身が魔力で覆われ始めて右手に集中していく!


「うわっ!止めてください!町中ですよ!」


「うっさい!さっさとギルドに行け!そしてギルマスにぶっ飛ばされて来い馬鹿弟子が!」


 理不尽極まりないよ! 実は孫バカが過ぎて弟子と思われてないんじゃないかと思ってたけど、案外図星だったのかも! ていうか地雷踏んだ!


 かなり全力で大通りを爆走していると、ハイネさんに掴まりかけながらギルドの扉を開けた。それはもう全力で開け放った。


 バァァン!!!


「たのもーーー!」


「おいバカ!」


 ゴッと脳天を殴られて緊急停止された。痛いぃ・・・。

 暫く蹲ってから静々と受付カウンターに向かうと、背伸びをする必要が無いくらい背が伸びたので、受付に顎を載せて手紙を置いた。


「お母さんからギルマスに手紙です。お母さんは剣姫ブランネージュです。それと伝言です。んっんんー・・・・『さっさと読まねえと、あたしの娘が目を抉りだすぞ! 解ったらキッチリ読んでから返事をしろクソ師匠!』・・・だそうです」


 あ、私は娘のユリアネージュです。と付け加えて一歩後退しお辞儀をすると。その横にハイネさんが来てもう一発殴られた。


「いったぁ・・・?」


「普通に挨拶しろ普通に!・・・A級ハイネリアだ。ギルマスに会いたい」


 数秒固まっていた受付嬢が再起動し、A級の証であるミスリルのギルドカードを確認し、手紙を持って奥に退散していった。戻ってくるかな・・・。


 代わりの受付嬢が後ろでお待ちください、と声を掛けられると同時に首根っこを摑まえられて椅子に座らされる。別に悪い事はしていないと思うんです。ちょっと正確性を求めて伝言を伝えただけなのです!


「お前が剣姫の娘なのを忘れてた」


「どういう意味ですか」


「その傍若無人な性格がそっくりだと言っているんだ」


 グリグリと上から押さえつけるなあああ! 仙気で対抗すんぞこらぁ!


「ぐぬぬぬぬぬ」


「くぬぬぬぬ」


 そのまま5分ほどじゃれ合っていると、ガタイの良いお爺さんが現れた。レベルたっか。なに94って。私より高いじゃん。


「おい、ハイネリア。その娘っ子は、ブランの娘か」


「ああ、剣姫の娘だよ。おっそろしく強いバケモンだ」


「あぁ? なんだそりゃ」


「仙気を使える」


 おい、勝手にばらすとかどうなの、師弟とは言えそう言うのは良くないと思うの!

 しかも何かお爺さんが戦闘態勢になってんじゃん、体は動いてないけどいきなり闘気放ってますけど!? このお爺さんも何なの。


「この人がギルドマスター?」


「・・・おう、嬢ちゃんがユリアネージュか? 仙気使いってのは本当か?」


「うん・・・・・ほら」


 青い光を全身に放ち始めると、一気に周囲の冒険者が騒がしくなった。ザワザワするなよ! 一応、見た事がある人が多いらしい。


 再度、持っていた手紙の内容を見ると、ギルマスは私の目線まで腰を落としてくれた。


「おれぁ、此処のギルマスをやってる、ドルトムントだ。嬢ちゃんの母親から宜しく頼まれてる。で、どうする? 試験を受けるのか?」


 はぁ?


「・・・? えーと、魔導士認定試験は受けに行きます。他に何かあるんですか?」


「んん???」


 再び手紙を見るお爺さん。そして何度か私の顔を見て、手紙を見てを繰り返している。コレは何だ? ママンは何を言ったのかな?


「冒険者選定試験を可能なら受けさせろクソ師匠と書いてある」


 スッと渡された手紙を読むと、ハイネさんも一緒になって読み込む。

 うん、凄まじく乱暴な内容でそのような事が書いてありますね。

 同じく読み込んだハイネリアさんは、噴き出すのを我慢してプルプルしている。


「・・・一応、受けてみます」


「良いだろう、訓練場に行くぞ」


「はい」


 そろそろ笑いを抑えてもらえませんかね先生!


「はー、いや、だって、ギルマスにあの調子で手紙を書ける奴なんて、早々居ないぞ? あんなの笑うしかないだろ。書き出しが親愛なるハゲへ、だぞ。もうそこで無理だ。プッ、アッハハハハ、親愛なる、ハハハ、ハゲへ! アハハハハハ!」


「うるせいぞハイネリア! 黙っててめえも付いてこい!」


「了解!おやっさん!・・・プッ・・・クハハハ!」


「てめぇぇぇぇ・・・」


「ああ、いや、ほら、もう諦めたんだし良いだろ? 生えない物は生えないんだって」


「それを笑うのとは話が別だ馬鹿ガキが!」


「だって面白いんだもん」


 珍しくハイネリアさんが子供らしいことを言っている。いや、おやっさんと言っている辺り、実の父親以上に信頼関係があるのかな?


「っせぇ! 訓練場だ! さっさとこい!」


「はいはい」


 そして声がデカい。このお爺ちゃん声がデカすぎるよ。絶対パワータイプだよ。闘気制御LV10とかあるし。絶対、人外だよ。


 ◇◇


 訓練場の中心に立ってギルマスと向かいあい、何故かハイネさんが紅白旗を持っている。何それ審判役?

 訓練場は何かのイベントでも使われるのか、観客席が四方に設定されており、西側の壁にしか出入り口が無い。

 四辺の頂点には何やらクリスタルが置かれて、内在している魔力量がヤバい事が解る。読み取るとあれは、結界石だった。レア(A級)もんですね。

 地下と繋がっている上にオリハルコンと何かの合金製らしく、硬度もヤバいので壊すことも持ち去る事も出来ないと・・・なるほど。


「で、今説明した通り、あの的を壊せ。問題なけりゃ次は模擬戦闘で俺と戦ってもらう」


 的に青い火球を撃ちこむと的の中心に小さな穴が開いた。次いで穴から焔が広がって的は赤熱しながら溶けて崩れた。


「でー・・・っと、この結界の効果は?」


「死んでも復活する」


 ああ、やっぱり。説明文にそう書いてあったよ。


「勝利条件は?」


「相手を降参させるか、相手が死ぬかだな。降参は相手のボディーか地面を三回掌で叩くか、口頭で伝えろ。死んでも死んでなくても、終わったら傷は全て元通りだ・・・痛いけどな」


「わかりました」


 こりゃ訓練というか実戦じゃないか。ママンもここで散々殺し合ったのかもしれない。ああ、だから戦闘狂とか言われてたのかもしれない。何人にトラウマを植えこんだのやら。


「クッハハ・・・やっぱ嬢ちゃんもブランの娘だな」


「?」


「顔がよ、さっきから笑ってんぜ」


「ん?」


 ふと自分の頬に手を当てる。うわ、本当だ。自覚が無かった。


「あはは・・・お母さんと訓練してる時もそうだったのかもしれません。今気づきました」


「そうかい。まぁ、楽しんでいけや」


 それが合図であるかのように、ジワリとギルマスの闘気が硬質化していった。まるで鎧のように、目に見える形で姿を変えていく。


「これは・・・凄いですね」


 私も仙気を身に纏い、土魔法でアダマンタイトソードを作り出す。ただただ硬いだけの剣だ。


「だろう、そっちも凄いじゃないか。二代前の北央騎士団長以来だぜ、そいつを見たのは」


「その人に教えてもらいました」


「そりゃヤベえな」


「でしょう」


 互いにニヤリと笑うと、それを合図に踏み込み、一足飛びで懐に飛び込む。

 直前で丸太のようなフックがスマッシュ気味に打ち出されるが、私はその手首を取ってコマのように体を滑らせる。


 腕が戻される前に、手首の関節を外そうとすると闘気が形状を変えて腕が巨大な手甲を纏ったようになる。掴んだ手が強制的に外されて、まるで巨人と相対しているようだ。


「っつぇあ!」


 振り払われ、眼前に迫った手甲に剣を叩きこむ。反作用で体を放すと、金属音ではなく爆発音が鳴り響いた。それと共に体が離れ、5メートルほど後方に飛び退ける。


 着地と同時に真正面の巨人が姿勢を低くして突っ込んでくる。その体にはいつの間にか、巨大で黄色く輝く全身鎧が身に着けられていた。


「闘気鎧ってんだ! 覚えときな!」


 物理は高防御。では魔法なら?


「ほっ」


 熱線砲を剣を持っていない左手で発射すると、クロスアームブロックでガードされて炎が弾け飛ぶ。うっそだろ、何だこのバケモン。


「はっ」


 大激震で結界内の全ての地面を爆発的に隆起させて飛び上がる。


「とぉっ」


 同時に上空から空爆弾を叩きつけるが、ギルマスが蹴り上げた足で拡散される。ギルマスの周囲だけ地面が同心円状に吹き飛んでいく。


「やっ」


 金属精製で盛り上がった地面を全て針の山に変えると、巨人の周囲に更に分厚い鎧が出来上がった。それで防ぎきれるのか?


「もっと!」


 大海嘯で結界内を大瀑布に変え、激流を引き起こし、風獣を召喚して飛び乗る。激流を無視して突っ込んでくる黄金巨人から逃れつつ強化準備開始。


「さらにっ」


 火龍と水精霊を呼び出し、準備完了。


「付与魔法・憑依!」


 水精霊を自分に、火龍を一時的にアダマンタイトソードに宿すと、風獣から飛び降りて水中に飛び込む。大瀑布は巨大な水球に姿を変え、黄金巨人をその内側の水流で閉じ込める。濁流に混ぜ込んだ無数の金属槍と水を操作しつつ、上下逆さになっている巨人に切りつける。


 接触の瞬間に剣が最高温度に達したのか、水蒸気爆発が発生して融解した剣と巨人が結界に叩きつけられた。剣ごと吹っ飛ばされてしまったらしい。水の結界と仙気で自分を守りつつ、土魔を召喚して巨人を観察する。


 一瞬だけ気を失ったかもしれないが、直ぐに態勢を整えて相手を見やる。更に黄金の闘気鎧が巨大になる。どうなってんだあの鎧。防御力高すぎでしょ。


 結界の外でハイネさんが「化け物・・・」と呟いてるが気にしない。仙気を使うと五感が強化されるせいで良く聞こえてしまう。


 土魔を結界内の地上から壁そして天井に張り巡らし同化させ、水を中心に再び集めて風獣を送還。これで土と水の二重結界になった。更にアダマンタイトソードを再生成。


 流れる濁流と、私の剣戟と、土魔が操作する金属槍、三重の攻撃でどうだろう。

 どう考えても特A級の化け物相手ならこれで相手になるでしょ。


 周囲の土は最早オリハルコンとアダマンタイトの合金となり、超硬質な刃をグネグネと動かす多数の槍へと変貌していた。


 黄金巨人の体術は凄まじく、流れるようにそれら全てを粉々に打ち砕き、次第に周囲の土結界が薄くなって魔力に還っていく。濁流で動きは抑えているものの、小手先の技術だけで全方位を破壊しているようだ。それ自体がもはや意味不明なのだが、防御に回す集中力を分散させられるならそれで充分。


 金属の槍より早く動ける私ならば、決定打を入れられる。

 そう思って背後からの一撃を入れるべく、人魚のような素早さで全力の一撃を見舞った。


「甘いわぁ!!!」


 ゴォ!!と周囲の水ごと蒸発しそうな裏拳が私の脇の下を抉り取り、そのまま胴体を上下に分断した。二つに分かれた体は水に溶けていく。同時にギルマスの呻き声が聞こえる。


「ぐっ」


 しかし振り返った黄金巨人の左脇には、超合金アダマンタイトソードが突き刺さっている。青いオーラを纏った、仙気強化状態の剣が。


「それは水の分身」


 ゴボリと水中にギルマスの血が水中に広がっていく。追い打ちを掛けたいが金属精錬された槍は土不足で打ち止めになってくる。視界も悪いしそろそろかな?


 土が消えて周囲からは赤い水の水球が渦を巻いているように見えている筈。それならば、巨人には内部で水と戦ってもらっておこう。


 ザパリと水から出て斜め下の地面に降りると、周囲が騒然とする。あの血がギルマスの物だと証明されたからだろうか。というか音量は小さいけれど外の声が聞こえるのは妙な結界だね。


 再び火龍召喚を行い、水球を燃え盛る巨体で圧縮していく、水の水圧を上げて倒せるように祈る。魔力を使い過ぎて頭痛がしてきた。


「火炎牢獄」


 火龍が一瞬で網目状の球体監獄となり、水球内部に向けて縮小していく。水の中から叫び声が聞こえたと思った瞬間に、再度の水蒸気爆発が発生して周囲の結界が撓んだ。


 中心を見つめるが、深い霧の中で気配は無い。風魔法で散らすと、中心には闘気鎧も衣服もボロボロになったギルマスが黒焦げになって横たわっていた。チリチリと闘気鎧が空気中に砕けていく。


 直後にギルマスの肉体が消えて、ハイネさんの隣の場所が緑色の光であふれていく。光が消えたギルマスは既に巨人ではなく、疲れた顔のお爺ちゃんになっていた。結界内で死ぬと決まった場所に転移するようだ。


 むくりと体をおこしたお爺ちゃんがツルペタの頭をペチペチ叩いている。


「負けだ。参った」


 いや、参ったも何も死んでますがな。


「ごめん、ちょっとやりすぎた」


「いや・・・いいぜ。謝るな」


「うん」


 巨体の手を引っ張って起こすと、周囲から拍手が鳴り響いていた。


「すげえもん見たぜ!」

「バケモンが負けやがった!ありえねぇ!」

「どっちもバケモンだ!」

「見た目詐欺だろそりゃ!」

「幼女最強!」


 うん、最後のはぶっとばす。もう幼女じゃねーし! 初潮きたし! 身長130弱だし!

 暫く歓声が終わるのを待ってからハイネリアさんが出てきた。


「合格?」


「あー・・・これ、不合格にしたら俺がギルマス首だろうが」


「あははっ、私はやらないからね?」


「老い先みじけえやつにいつまでやらせとくんだよ・・・合格だ」


 最後のやり取りは良く分からなかったけど、大勝利なので何でもいいわ!

 ぐっと両手を腰のところで握ってしまった。予想以上に嬉しかったかも。


 ◇◇


「はい、これがギルドカードね」


「あ、ありがとうござ・・・」


 ---------------------------------------------------

 ユリアネージュ(素人)

 ランク:特A

 登録地:バンドラール

 本拠地:ユリア

 ---------------------------------------------------


 あぁん? ちょっとまって? 何で?


「あの、特Aっていうのは?」


「人材の無駄になるからギルド総長権限で暫定的にそうしたらしいわ。後々試験を受けていけば問題無いって事だけど・・・流石に前例が無いわね」


 つまり、暫定的に特Aランクだけど、暇なときにEから始まる昇格試験は受けておけよ?って事らしい。 


「試験は何処でも受けられるんですか?」


「カードの裏に事情を書いてあるわ。戦闘能力は特Aだけど、実績を積ませる意味で無理矢理にでも試験を受けさせろって」


 うわマジだ。人材活用とは言っても、中々に横暴なやり方だ。

 そこでハイネさんが顔を入れてカードを一緒に読み込み始めた。


「ふ~ん。良かったじゃんか。それがあれば貴族から妙な手は出されなくて済むよ」


「えっ? どれってどういう・・・」


「特Aランクは侯爵級の特権があるんだよ。あのハゲも一応法衣侯爵だからね。あんなでも貴族なのさ」


 あんなでもって・・・。


「だから、これから王城で行われる魔導士認定試験でも、褒められこそすれ、文句は言われないだろう。まぁ、馬鹿の嫉妬はあるかもしれないが、手は出せない。セーフティカードみたいなものだな」


「・・・ハイネさんも貴族なの?」


 A級だもんな、なんかありそう。


「私は法衣子爵だよ」


 ミスリルカードを見せてもらうと裏面に国王の認可状が彫ってあった。へぇ・・・。

 所でこのカードなんの金属で出来てるんだろう?表面は黒いけど側面から見える内部は透明だ。


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 オレイカルコス合金(特A級)

 オレイカルコスとオリハルコンの合金物質

 破壊不能と言われる程の強度を持ち、下手な剣よりも切れ味が鋭い


 特性:超硬質化、再生

 品質:最高品質

 性能:不変不朽

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 うぉぉぉ!? どういうこと!? 加工できない物が加工されている!?

 あ、ちがうわ、これ表面だけがアダマンタイトだ。内部の透明部分がオレカルだ。


「へぇ~。特A級は中身が透明なんだね。表面に何か塗ってるのかい?」


「オレイカルコスにアダマンタイトを塗ってる」


 カードをじっと見ながら観察を続けていると、自然体で答えてしまった。

 受付嬢とハイネさんが思わず目を見合わせて、教えた? いや? みたいな無言のやり取りをしている。


「あー・・・見た事があったから、知ってただけだよ」


「あ、ああ、そうかい」


 気まずい。やっちまったなぁ。話題を変えねば。


「それより、魔導士認定試験っていつ開催されるのかな?」


「えっと、四日後だった筈ですね。この辺にパンフレットが・・・ありました。どうぞ」


「今日が・・・で、四日後だと、うん、そうみたい。申請は此処でも出来ますか?」


「ええ。この紙に必要事項を書いて頂戴」


「ありがとう」


 これで試験を受けられるぜよ。


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