022
出産前の弟を見てからという物、様々な物が見えるようになった。それは羽虫であったり、動物であったり、物体であったりと、これまで人間以外は詳細に見えなかったものが見えるようになっている。そうなると胎児はモノ扱いされているという事なのだが・・・この世界の胎児に魂は無いのかもしれないね。
それはそうと、この力によって土魔法で精製した金属の詳細を調べられるようになった。
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ミスリル(A級)
魔法金属。魔法の触媒や、魔力の蓄積に使われる。
金属としては柔らかいが、他の金属との合金で硬くもなり、しなやかにもなる。
主に魔獣の体内から採取される。
特性:魔力保持、魔力増殖
品質:最高品質
性能:柔らかい
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見た目通りと言えばそうなのだけれど、魔力増殖ってのはなんだろう。確かにミスリルゴーレムは魔力の増幅効果と自動回復機能があったけれど、ゴーレムの特性というよりは、ミスリルの特性だったわけだ。
「なるほどねぇ・・・」
他にも精製した金属たちを見ていくと色々と特性が判明していった。
アダマンタイトは最高硬質。
ヒヒイロカネは完全腐食耐性。
オリハルコンは完全形状記憶。
鋼鉄は高耐熱性。
「オレイカルコスは・・・これって何に使うべきか良く分かんないのよね」
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オレイカルコス(特A級)
魔法金属。永久に再生を続け、永久に成長せず、存在を保ち続ける金属。
柔らかく、腐食しやすく、形状は一定ではない。
命を宿した際にのみ、その形状を適応した形に変化させる。
特性:生体金属
品質:低品質
性能:柔らかい
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やっべえのが出てきた。命を宿すってどういうこと?これでゴーレムを造れば良いって事なのだろうか。いやでも・・・過去にオレイカルコスで作った事はあるし、その時は魔力を完全に消費した途端に塵になって消えた。
だからこそ、材料として不適格と考えたのだが、この説明内では永久に存在を保つと書いてあるし、事実との乖離がある。
「魔力がある限り?って事なのかな、生物は魔力を取り込み続けるけれど・・・」
人間も植物も魔物と呼ばれない動物ですら、微弱な魔力を取り込んで生きている。オレイカルコスは命を宿さない限りそのプロセスが存在しないのではないか?
「ってことは命を宿すって意味が何を指し示しているか、って事よね」
何を以て命としている?
アンデッドは死体だが活動は出来ている。動いている事を生きているとは言わないのならば、岩だって金属だって生きている事になる。自然に生まれて・・・。
だが、そこで、ハッとした。
「私が魔法で生み出したから命が無い?」
ということなら、オレイカルコスは存在自体出来ないのではないか?
「魔法金属なのに魔法で生み出してはいけない存在ってこと? 何よそれ・・・自然界で生まれない物なんじゃないの?」
でもミスリルは岩竜の胆嚢だってブランが言ってたっけ。それなら魔物の体内で作られるって事よね。オレイカルコスは何の魔物が作るんだ・・・?
「あー、わからーん」
地下研究室の椅子の背もたれに倒れ掛かると、ギシィっと木製のやわらか背もたれが軋んだ。子供の背中にフィットする、背中とお尻の形状に合わせたステキチェアだ。
「・・・アイデア不足、かな」
はぁぁぁ、と深い溜息を付いていると、台所の地下室側から扉が開いた。おやどうしたのママン。
「ユーリ? あんたにお客さんが来てるよ。あたしも相席するからリビングに来なさいね」
「はーい」
客? また他所の商業ギルドかな。まぁ行ってみるか。
◇◇
客と言えば客なんですが、領主様がいらっしゃいました。
「やぁ、会うのは二度目だね。改めて自己紹介しておこう。私はフリューゲル=マインズオール。マインズオール領の領主だ。君の商会にはいつも世話になっている」
相変わらずの気さくなオジサンが現れた。まぁ、今回は子供らしく話さない方が良いな。今日は商会長のユリアネージュに会いに来たのだろうし。
「お久しぶりです。ユリアネージュと申します。母がいつもお世話になっております」
「ご丁寧にどうも。前回も思ったが年相応の女性と喋っている気がしないね。18歳くらいだと言われても信じそうだよ。うん、以前よりずっと大人になったね」
女性に年齢の話は、ってこの場合は誉め言葉かな。
「ありがとうございます。マインズオール卿も明るい性格の方で少し安堵しております。女性に好かれやすいのではないでしょうか?」
「ははっ、流石に騎士をやってると、そういう事もあったんだがね、妻子持ちの田舎領主だと瘤付き扱いされる事も多い。そういうのは若い騎士の特権だね」
まぁ、ド田舎の領主? いやよそんなの!ってなるよね。冗談か本気か知らんけど。
「御冗談を・・・それで、本日ご来訪いただいた要件はどういった物でしょうか?」
「ああ、実は領都を移そうかと思ってね。この町に遷都するから、君の商会に屋敷と必要施設を立ててもらいたい。今日はその依頼と契約に来た」
ま、そんな気もしてましたよねー。これだけ大きな町になったらねー。
「その・・・私個人としては賛成いたしますが、王都から大きく離れる事になりますが、中央として問題無いのでしょうか? 叛意と取られる方も居るのでは?」
「辺境の地域の中をちょっと動いたくらいじゃ、彼らにとっては変化が無いのと同じだよ。どうぞ勝手にやってくれ、ってなもんさ。森の危険はあるが、ここは街として栄えているし、いい加減家族にも明るい暮らしをさせたくてね・・・夫として不甲斐ない話ではあるが、君の発展させたこの町に便乗させてもらいに来たよ!はははは!」
ぶっちゃけたなぁ。意図がそういうものだとは予測してたけど、おそらく冒険者ギルドの救済の意味もあるよね、この遷都計画は。
「フリューゲルさん。相変わらずだね。そんなんじゃ他の貴族からいろいろ言われるんじゃないの?」
不意にブランママが声を上げた。相変わらず親しげだ。
「いやぁ、言われたところでこんな僻地では何するものぞって話だからね。田舎の蛮族扱いされようが、このマインズオール領が平和ならそれで充分って話だよ」
「その平和が脅かされようとしてるのは、冒険者ギルドと商業ギルドの諍い、でしょうか?」
ニヤリと爽やかオジサンが笑みを浮かべた。
「聡いねぇ。そうだ、君が深く関わっていると言われているから、それもあって今日は訪問させてもらった。相談なんだが、ブランちゃんの名で冒険者ギルドにも素材を卸してもらえないだろうか? 商業7割、冒険者3割で良い。あとはこっちで双方のギルドを説得させてもらう。どうかな?」
「値段が変わらなければどちらでも構いませんが、手間が増える分は鎮火料金といったところでしょうか?」
面倒だけど双方のギルドに卸せば、つまらないギルドの問題を解消してあげるよって事かな。だけど、それは辺境騎士爵に解決可能な問題か?
ユリア支部の冒険者ギルドは喜ぶ。
ユリア支部の商業ギルドは残念。
他所の冒険者ギルドは留飲を下げるかもしれない。
他所の商業ギルドは更に不満が爆発するんじゃないか?
「商業ギルドを念入りに抑えて頂けるのでしょうか? これまで、卸売り先として利用させてもらってましたから、それを逆手に私が脅されると面倒ですね」
「別に冒険者ギルドの販売ルートも、各方面へ輸送されて小売りになる点は変わらないさ。王都の商業ギルドが脅してきたなら、商業ギルドには一切売らない事にすればいい」
それはちょっと横暴かなぁ。
「色々と融通して頂いている事もありますので、そう言った事をすると、今度は卸売りをする利点が無くなるんですよね・・・冒険者ギルドはこんな辺境に輸入販売などしてくれないでしょう?」
実は私が商業ギルドに大量の素材を流す代わりに、各地から大量の食材や品物を取り寄せてもらっている。それは冒険者ギルドには出来ない事だ。
「ん~~~~・・・そうなると私の権限では難しいな」
「代案ですが、文句を言ってきている王都の商業ギルドから、何らかの定期的な取引を約束させて、物品を購入してみては如何でしょうか。今後、足元を見られる可能性は高いですが、それでギルドとしての収入低下の埋め合わせとしてみては如何でしょう」
「貧乏領主の私にかい?」
「相応の税金は払っているつもりですが?」
私の商会から出ていく税金は、この領地にとって馬鹿にならない金額になっている筈だ。一匹金貨1000枚相当の青麟蜘蛛を始めとして、毎日数匹は同等以上の獲物が運ばれてきている。
一匹一割と考えても、日に金貨500枚と考えて毎月30日分=金貨15000枚分の税金は入っている筈だが?
「まぁ・・・そうだよね。知ってるよね。ウチの財源の半分以上が君のところの税収だからね・・・」
「・・・」
大丈夫かなこの領地。
「解った!やろう、君の案で考えてみるよ。幸いな事に氾濫で滅んだ村の復興もしなければいけないからね。その辺りの必要物品の購入先として考えさせてもらう」
「では、そのように私も口裏を合わせさせていただきます」
「よろしく頼む」
要件が済んだのか、爽やかオジサンはそのまま去っていった。帰り際に「いやぁ・・・こんな屋敷に住んでみてぇな・・・」とさり気ない要望を出す辺りは、やっぱり貴族なんだなと思った。




