1 鉱山大反乱
元居た世界と違ってこの世界の夜空はとても綺麗で壮大だった。
だが、俺は今上を見上げても見えるのは土の天井だ。いくら目を凝らしても神秘的に神々しく広がっていた夜空は見えない。
残念ながら女神に貰った特典は透視能力じゃない。
天井も壁も地面も全部固い石と土で構成されていて、染み込んだ汗と血、死臭が鼻をひどく刺激する。周りを見ると自分と同じ境遇の労働者たちが監察官に鞭打たれている。
またその奥には息絶えた労働者がゴミのように押し車に乗せられている。ここに来てもう二週間だ。短そうで長い。
何人の同志の死体を運んだのだろう。何人の同志の死に目を見たのだろうか。
何人の同志の遺言を聞いただろうか。
何人の同志の名前と顔を覚えて意味を失ったのだろうか。
絶望の中で今自分を動かしているのは”生きたい”と言う至極全うな望みだ。
この世界に来て最初に感じた風は清らかで頬を撫でられた時、自分の第二の人生の始まりを感じて心の底から感動した。
でもこの鉱山地下では風は吹かない。風の吹かないこの鉱山では全部が止まっている。太陽が見えないから時間すら止まってしまっている感じだ。
「キョウスケ。順番が回ってきたぞ、行けるな?」
筋骨隆々のルームメイト(ちょっとした横穴をルームと呼ぶのなら)が話しかけてきた。
「ああ、大丈夫だ。ラルフ」
地上にいる俺の三人の仲間達。すぐに戻るからちょっとだけ待っててくれるか?
「スーッ……」
キョウスケは息を吸い込み方に力を込めてスコップを構えた。
「”自由を取り戻せ”えええ!」
ラルフが叫びそれに応えるように波紋状に坑道の至る所で労働者たちの怒声が上がる。
キョウスケとラルフ達を起こしに来た不幸な監察官は振り返る間もなくスコップで頭を殴られた。
ちょっとだけ待っていてくれ。俺たち今日、このクソッタレ鉱山潰して帰るから。
「”自由を取り戻せ”!」
合言葉を体の奥底から喉が裂けるほど大声で叫び武器を振るう。