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8.夜明け、戦闘、提案

誤字脱字、誤用などありましたら申し訳ありません。

宜しくお願い致します。



「……来ねえな」


「来ないね……」


 この世界に来てから一日が経過した。


 ハイテ村でアンデットの襲撃を警戒していたが、結局日が昇るまでこの村に近づくものは見つけられなかった。


 アンデットの性質上、襲撃があるとしたら夜以外にない。


 微々たるものだが日中は動きが鈍るし、何より暗闇の中でも戦えるのは相当なアドバンテージだ。

 事実、光源を潰されるだけでこの村は詰みかねない。


 敵側にも何か策があるのか、攻められない理由があるのか。


「一度戻って状況を確認してくる」


「おう、見張りは任せろ。つーかあんたも少しは休んだ方がいいぜ? 疲れは見えねえが一睡もしてねえんだろ?」


「心配してくれてありがとう。お言葉に甘えて休憩もしてくるよ」


 見張りは村の出入り口を含めた東西南北の四か所に置かれている。


 私は四か所の内一番森から近い南の方面を夜通し警戒していた。


 一度だけクロウ少年が見張りをしに来たときには、父親であるクダリの安否について話した。


 死んでいることが確定していないため伝えるか迷ったが、もし既に死亡していてアンデットとして現れた時に少年が動揺してしまわないように、そしてアンデットを倒すことを躊躇わないように事実を隠さず伝えておいた。


 私が先にクダリさんを発見し、《封緘》で封じ込めてそのまま浄化できるのが最善だが、万が一もある。

 これまでのやり取りから見ても、クロウ少年はヤケを起こして行動するタイプではないだろう。


 そんなことを考えているとクロウ少年本人が此方に歩いてきていた。


「おはよう少年。少しは眠れたかい?」


「はい、何とか」


 そう言った少年の目の下には隈が見て取れた。

 いつ敵が襲ってくるか不明な上、父親が死んだかもしれないという現実が眠りを遠ざけていたのだろう。


「ところで此方に向かっていたようだけど、もしかして私に何か用があったのかな」


「ああ、そうでした。さっき村の西側で魔物の存在が確認されたので、ブラックドッグさんに倒してもらおうかと。村の皆でも倒せる猪の魔物なんですが、まだブラックドッグさんの実力を信じていない人もいるので。お願いできますか?」


「もちろん、協力は惜しまないよ。そういうことなら急いで向かおう」


「わかりました!」


 私たちは村の西側の、魔物が現れた場所へ向かう。


「ところで、一つ聞いても?」


「なんでしょう?」


「魔物……とはどんな生き物なんだい?」


「ブラックドッグさん魔物見たことないんですか!?」


 私の世界では迷者、この世界でいうアンデットはいたが、魔物という存在は聞いたことが無い。目の前にいたアンデット達を屠った時よりも驚いているクロウ少年に、再び魔物について尋ねる。


「詳細は省くけど、私の住んでいた所では魔物と呼ばれる存在はいなかったんだ。比喩表現で使用されることはあったけどね。だから一般的に魔物という単語が何を指しているのか聞きたい」


「そうですね……私たちは大地から滲み出す魔力が形を成したものを魔物と呼んでいます。基本的に黒っぽくて人に害をなすものが多いです」


「魔力保持、黒色、形を成していることが条件なら実体を持っていなくとも魔物となる訳か」


「多分そうだと思います……。すいません、俺たちもそこまで詳しいわけでは無いので」


 なかなか面白い生態をしている。もしこの世界に精霊が存在しているのなら魔物に分類されるのだろうか。


 アンデットは魔物なのか?という疑問も湧いて出る。

 魔物ではない人間や動物がアンデットに変質するメカニズムは一体どうなっているのか。

 分からないことが多いが、そうこうしているうちに村の西側、森が見える辺りに到着した。


「あれかな」


「はい、猪の魔物、それも大物です」


 草原に巨大な影一つ。目測で正確な数値ではないが、その全長は約十メートル程。


「……大きすぎやしないか」


「……これほど大きいのは珍しいです」


「アンデット五百体を無傷で倒したんだろ? 確かにデカいが、嘘じゃねえなら倒せるはずだぜ?」


 年齢は四十を超えているように見える男が、此方に近づき話しかけてきた。

 どこかけだるげな男は疑いの眼差しを隠そうともせずに私を見ていた。


「サラクのおじさん!」


「大丈夫だよ少年。こんな子供が戦えると言っても信じられないのが当然だろう」


「正直に言えば俺らが手伝ってやるが、どうする?」


「問題ない。戦いにすらならないよ」


 「何を言って、」と言いかけた男が言い終わる前に、私は魔力で脚力を強化し、一瞬で魔物との距離をゼロにする。


 魔物が気づき戦闘態勢に入る前に、体に触れて能力を発動させる。


「《封緘》」


 触れた瞬間にはもうすでに魔物の姿は消え、後には私と小さなキューブだけが残る。


 私はクロウ少年とサラクの元へ歩いて戻った。


「……お前……今何したんだ……?」


「簡単に言うと魔物は封印した。触れれば終わり、そういう能力なんだ」


「それ以前に速すぎだ……目で追えなかったぞ……、いや、そうじゃねえな。まずは謝る、疑って掛かって悪かった」


「何度も言うが、立場が逆なら私も疑っていたさ。気にしなくていいよ」


 「それに」、と男は言葉を区切り、クロウ少年の方に向き直る。


「クロウ、お前にも謝罪しなきゃな。正直クダリが死んだってのはまだ信じられねえが、嬢ちゃんの実力を疑って悪かった。今回魔物の周りを固めてたやつらもさっきの動きを見りゃ納得せざるを得ないだろうし、他のやつらにも嬢ちゃんの強さは伝わるだろう」


「いや、頭上げてくれよ。そもそも俺はまだ若造で頼りないし、さっきブラックドッグさんが言った通り信じられない気持ちも分かるんだ。それにいくらブラックドッグさんが強いと言っても、村全体を守るのは不可能だし、皆の協力が必要なんだ」


「あ、それに関してだが一ついいかい?」


「? はい、なんでしょう」


「村に損害を出さず、誰も怪我を負わずに奴らを撃退できる方法がある」


 驚愕を顔に張り付けた二人が此方を凝視する。

 私は夜の見張り番中に思い付いた策を二人に伝えるのだった。

ここまでお読みいただき、有難うございました。

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