第8話 銀髪の美少女②「見慣れぬ美少女」
「よう、ガリオのおっさん。今日も薬草拾いのバイト、大変だな。おっさんは王都の凱旋パレードに行かないのか?」
馴れ馴れしく自分に話しかけてくる聞きなれた若い青年の声を聞いて、ガリオは内心「またか」とため息をついた。
◇◆◇◆◇◆◇◆
今日も薬草採取のクエストを受けに冒険者協会を訪れたガリオに、3人組の若い冒険者たちが近づいてきた。
彼らの頭上には、契約精霊をすぐに召喚できることを示す小さな燐光がフワフワ浮いている。
そして彼らの表情には共通して、ガリオに対する侮蔑の色が見られた。
「おいおいアーノルド、無理言うなって。契約精霊もいない、冒険者レベルも2しかないガリオさんが、一人で王都に行けるわけないだろう?」
「そう言えばそうか。おっさんは王都に行くのも命がけなんだな」
ギャハハと下品な笑い声が協会内に響く。
協会のロビー内には、アーノルドたちの態度を怪訝そうな表情で見る者がいるが、彼らを諫めようとする者はいない。
アーノルドたちは3人組パーティーで、全員が20歳前後と若いにも関わらず、冒険者レベルは4とこの町の冒険者としては高位だからだ。
冒険者レベルは、基本的にその冒険者が契約している精霊の精霊界における位階の高さによって決められている。
冒険者協会が認定する冒険者レベルの最高位はレベル9なのだが、現在その冒険者レベル9の席に誰も座っていない。
精霊界の階級の中で、最も位階の高い四大精霊と契約している冒険者がいないからだ。
いつもの調子で絡んでくるアーノルドたちの態度に、冒険者レベル2のガリオはため息をついて、彼らを無視して受付に向かおうとすると───
バタンッ!
冒険者協会の大きな扉が勢いよく開いて、ロビーの中を一陣の風が吹き抜けた。
掲示板に貼り付けられた多くのクエストの依頼票が、バサバサと音を立てる。
ロビー内にいたすべて人が入り口に目を向けると、そこには10代前半ほどに見える銀髪の美少女が立っていた。
───ザワザワ ザワザワ
ロビーの中が急に騒がしくなる。その銀髪の美少女があまりに綺麗で、誰も目が離せないでいた。
多くの人間に注目されていてもその美少女は臆することなく、堂々とロビー内に歩みを進めた。
短いスカートから伸びる白い肌が眩しいその足は、数人の冒険者が並ぶ受付に向かっている。
美少女の進行方向に立っていたガリオは、彼女の歩みの邪魔にならないよう、少し道を開けた。
すると、彼女がガリオの前を通り過ぎる瞬間───
「あイタッ!」
いきなりガリオのつま先に痛みが走る。ガリオが驚いて声を上げるが、目の前にいた美少女はすました顔で受付に近づいていった。
(???)
ぶつかるような距離ではなかったが、目の前を通り過ぎていった美少女から足を踏まれたガリオ。
痛みは大したことなかったが、彼は訳が分からず困惑するばかりだった。
受付に並んでいた冒険者たちは、美少女の堂々とした雰囲気に押されて、列を開けて受付の順番を彼女に譲り始める。
「おい、あいつ知っているか?」
「いや、見たことないぞ。魔法使いみたいな恰好をしているが」
ロビー内の誰もが、美少女の正体を探ろうとする。白を基調とした軽装とマントを着た彼女の後姿に、誰もが興味津々だった。
ガリオに絡んだ3人組の冒険者も、ボーっと惚けた表情で美少女のほうを見ている。
このブングラスの町にも若い女性は多くいるが、彼女ほど容姿が整った女性はいないからだ。
腰まで届くサラサラした銀髪、大きくて印象的な紅い瞳、色白の小さな顔、細くて長い健康的な手足。
「ちょっと、鼻の下伸ばしてるんじゃないわよ!」
「べ、別にそんなんじゃないって」
「どうだか。あの子を見て、ボーッとしてたじゃない!」
ロビー内にいた女性冒険者たちは、美少女に見惚れる仲間の男性冒険者と口論を始めるのだった。
次話は、明日の夕方5時に投稿します。
第9話 銀髪の美少女③「ティフォーネ」
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