表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
77/125

第77話 ガリオたちの選択①「レオンと彼の素性」

「自分を、そして自分の精霊を信じてください。ほら」


 レオンの中にある鼓動(こどう)が、彼女を勇気(ゆうき)づけるようにひと(きわ)大きく高鳴(たかな)った。

 その力強い鼓動(こどう)に、レオンの不安は段々(だんだん)と消え去っていく。


「……おいで」


 レオンの脳裏(のうり)に、一つの精霊の名前が思い浮かんでいた。それは、彼女が知る伝説(でんせつ)の───


「───精霊(せいれい)カラリスート」


◇◆◇◆◇◆◇◆


 ガリオたち3人がダンジョンから出てくると、広場には大勢(おおぜい)の人たちが集まっていた。

 実技訓練に参加していた若者たちと、冒険者協会のスタッフや講師陣(こうしじん)、そして協会に(やと)われた冒険者が、ほぼ全員(そろ)っている。

 そんな中、ガリオが初めて見る初老(しょろう)紳士(しんし)が、3人のほうへ近寄ってきた。


「レオンティーヌ様。ご無事でしたか」

「う、ウォルターさんッ! どうしてここに?」


 レオンはその人物を見て驚きの声を上げる。

 ウォルターと呼ばれたその老紳士は、立派な執事服(しつじふく)に身を包み、ガリオから見ても(すき)の無い歩き方をしていた。

 その白髪(はくはつ)はオールバックに固めていて、よく整えられた口ひげが印象的(いんしょうてき)である。


「先日レオンティーヌ様の母君(ははぎみ)に、貴女様(あなたさま)がいよいよ冒険者登録(ぼうけんしゃとうろく)に行ったという話を聞きまして、様子を見に来たところなんですが……」


 そして彼は、協会スタッフと打ち合わせをしている一人の冒険者のほうを見て、キリリとした(まゆ)(ひそ)める。


「あの冒険者の話では、地下2階で何かトラブルがあったそうで、一時的(いちじてき)に訓練を中止して全員をここに集めたようですね。レオンティーヌ様のほうは……」


 顔見知(かおみし)りのウォルターに目を向けられると、レオンは()ずかしそうに自分の肩を抱いて(うつむ)いた。

 彼女は胸元(むなもと)から上の素肌(すはだ)がむき出しになっており、マント1枚を体に巻いただけのあられもない姿をしているのである。


 ウォルターは無言でジャケットを()ぐと、それを彼女の肩にかけようと近づこうとした。しかし───


何故(なぜ)君は邪魔(じゃま)をされるんですかな?」


 ガリオが下を向くレオンの前に立ち(ふさ)がったのだった。

 彼は、目の前に立つウォルターに鋭い視線を向け、すぐ動けるように体を緊張(きんちょう)させている。

 そんなガリオの威圧感(いあつかん)のある背中を見上げ、レオンが不安そうに胸の前でギュッと両手を(にぎ)った。


「俺は協会に(やと)われた冒険者のガリオと言います。あなたは?」

「……私はレオンティーヌ様の母君の古くからの知り合いで、ウォルターと申します。君は、後ろにいるレオンティーヌ様がどんな御方(おかた)なのか、分かっているんですか?」

「ええ。さっきレオンから聞きましたよ。彼女はこの城塞都市(じょうさいとし)オルソを(おさ)めるオルソ侯爵(こうしゃく)ロバート閣下(かっか)の長女、レオンティーヌ・オルソ様ですよね」


 ガリオの言葉を聞いて、ウォルターはフンッと鼻を鳴らす。そして、(どろ)で汚れたガリオの全身をジロジロと(なが)めた。


「ご存知(ぞんじ)でしたか。それなら、素性(すじょう)の知れない君にレオンティーヌ様を(まか)せてはおけない、私の気持ちも分かってくださいますよね。私は、彼女が赤ん坊の頃からの顔見知りなのですよ」


 ガリオが(だま)ったのを確認したウォルターは、ガリオの右側から後ろに回りこもうとするが、その足はすぐに止まる。

 再びガリオが彼の前に立ったからだ。


「……まだ何か?」


 ガリオが口を開こうとしたとき、突然ダンジョンの入口から明るい男性の声が上がった。


「俺は───」

「あれあれ? (めずら)しい人がいるじゃないですか」


 ダンジョンから出てきたのは、王国軍の(よろい)に身を固めたルシア隊長と付き人のジョシュアだった。

 彼は晴れやかな表情をしてガリオの隣に立つが、一方のジョシュアの「ハァーハァー」と(あら)い息を吐いている。


「これはこれは、ローグライト(きょう)。お久しぶりでございます」


 ウォルターが(うやうや)しく頭を下げるのを見て、ルシア隊長は軽く(うなず)くと、周りをキョロキョロ見回した。


「今日も暇つぶしにダンジョンの最下層(さいかそう)に向かっていたんですが、上のほうで何か異常(いじょう)があったみたいだから、急いで戻ってきたんですよ。ガリオ君、一体何が起こったんですか?」

「実は、ここにいるレオンが自分のパーティメンバーだった二人と、協会が雇っていた冒険者の二人に共謀(きょうぼう)されて殺されそうになったんです」

「へぇー」


 ルシア隊長は少し驚いた様子で、ガリオの後ろにいるレオンに目を向ける。

 そこには、以前とは異なる女性の姿をしたレオンが恐縮(きょうしゅく)した様子で立っていたが、彼は何も言わずに視線を戻した。


「そのレオンティーヌ(じょう)のピンチを、ガリオ君とティフォーネさんの二人で助けた、というところでしょうか」

「そのとおりですが……ルシア隊長、レオンのこと知っていたんですか?」


 ガリオが唖然(あぜん)とした表情をしているのを見て、ルシア隊長は肩をすくめてみせる。


「当り前じゃないですか。私も情報(じょうほう)収集(しゅうしゅう)くらいするんですよ。しかし、それで納得(なっとく)しました。だから、オルソ侯爵家(こうしゃくけ)筆頭執事(ひっとうしつじ)であるウォルター氏が、ここにいるわけなんですね」

「えッ!」


 ガリオとレオンから、同時に驚きの声が上がる。ガリオはもとより、レオンのほうもウォルターの素性(すじょう)をずっと知らなかったのだ。

 ガリオの背後からレオンが顔を出し、ウォルターに大きく見開いた青い瞳を向ける。


「ウォルターさん……本当に、お父様の筆頭執事をしているの?」

「ええ。母君と静かに暮らすレオンティーヌ様には、私の素性は(かく)しておこうと思っておりました」

「……お母様は知っているの?」

「レオンティーヌ様の母君は、元は私の部下の一人として、オルソ(じょう)で働いておられました。それをオルソ侯爵閣下が見初(みそ)められたのです」

「……そうだったんだ」

「はい。そういった背景(はいけい)もあって、時々私がレオンティーヌ様と母君の様子を見に行っておりました」


 呆然(ぼうぜん)としているレオンをよそに、ルシア隊長が面白そうなものを見つけた子どものように、ニヤニヤ笑ってウォルターの肩を(たた)いた。


「だとしたら、おかしいですね。オルソ侯爵閣下の『懐刀(ふところがたな)』と呼ばれるウォルター氏が、このオルソ城のお膝元(ひざもと)で起こっている異変(いへん)に気付かなかったのですか? レオンティーヌ嬢の暗殺未遂事件(あんさつみすいじけん)だというのに」

※「面白かった」「続きが気になる」と思って頂けましたら、評価するボタン(☆☆☆☆☆)を押してもらえると嬉しいです。レビュー、感想もお待ちしております。

※作者の連載を書き続けるモチベーションが上がります!

※こまめに更新していますので、ブックマークをすると便利です!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ