表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
51/125

第51話 冒険者登録の講義①「孤立したティフォーネ」

「……私はガリオさんのためなら、何でもしますからね」


 そう言ってカルマは、ガリオの(ほほ)にチュッとキスをした。


「お、おやすみなさいッ!」


 顔を真っ赤にしたカルマは、二人に頭を下げてお店の中に戻っていく。

 あとには、左頬(ひだりほほ)に手を当てて呆然(ぼうぜん)と立ち尽くすガリオと、目を大きく開けて口元(くちもと)を両手で(かく)すティフォーネが残されていたのだった。


◇◆◇◆◇◆◇◆


 翌朝、ティフォーネは冒険者(ぼうけんしゃ)協会(きょうかい)の中にある体育館にいた。

 周りには、彼女と同じように冒険者になりたい若者たちが大勢(おおぜい)いて、それぞれ色分けされたクラスメイト同士で、少し緊張した様子で談笑(だんしょう)している。


 ティフォーネも同じクラスになった二人の女の子たちと雑談(ざつだん)しながら、ガリオと協会に来てからのことを思い出していた。


 早朝に二人が協会のロビーを訪れると、昨日まで無かった臨時(りんじ)の受付窓口が設置(せっち)されていた。

 そこにはすでに何人かの若者が、(れつ)を作って順番を待っている。

 ティフォーネもその窓口で自分の名前を伝えると、(うす)っぺらい教本(きょうほん)1冊と黄色の簡素(かんそ)なリボンが手渡された。


「受付を済ませた人は、体育館でリボンの色ごとの列に並んで、そのまま待機(たいき)してください。渡したリボンは、服の目立つ所に付けておくように」


 受付スタッフの説明を聞いたティフォーネは、クエスト掲示板(けいじばん)の前で待つガリオの所に戻った。

 彼の(かた)くなった表情から、いつになく緊張している雰囲気(ふんいき)が伝わってくる。


「ガリオ様。私はこれから体育館に行ってきますけど、ガリオ様も今日はずっと協会の中にいるんですよね?」

「あ、ああ、多分(たぶん)ね。ルシア隊長たちと一緒にいないといけないからな」


 恩人(おんじん)であるジョンの頼みで剣術(けんじゅつ)講師(こうし)を引き受けたものの、ガリオは100人を()えるという新人たちの前に立つというプレッシャーに、押し(つぶ)されそうになっていた。

 これまで見たことのないギクシャクしたガリオの姿に、ティフォーネはクスッと微笑(ほほえ)んだ。


「じゃあ、ガリオ様。お仕事頑張(がんば)ってくださいね」

「て、ティフォーネも、頑張るんだぞ」


 ガリオと別れたティフォーネは、ひとり体育館に向かう。その足取(あしど)りは堂々としていて、少しの(まよ)いもなかった。

 すると彼女は、心臓の鼓動(こどう)がドキドキと高鳴(たかな)っているのを感じ、右手を自分の左胸にそっと当てる。

 これから冒険者になった後、どんな未来が()っているのか、想像するだけで楽しかった。


 自然と()みがこぼれているティフォーネを見て、こっそりと彼女のことを見ていた周りの若者たちは、ボーッと見惚(みと)れて顔を赤くするのだった。


 ティフォーネが体育館に入ると、すでに多くの若者たちがリボンの色ごとのクラスに別れて座っていた。

 そして、入口に立つ彼女の姿を見て、若者たちの中にどよめきが起こる。


 ───お、おい、見ろよッ! すげー可愛いじゃん!

 ───ねえねえ、めちゃめちゃ綺麗(きれい)な子が来たよ!

 ───ちぇー、黄色かよ。俺の精霊(せいれい)風属性(かぜぞくせい)なら良かったのに!


 サラサラと流れる長い銀色の髪、印象的な(あか)い瞳、可憐(かれん)な花のように(あい)らしい顔。

 貴族たちの舞踏会(ぶとうかい)にでも行かなければ出会えないような美少女の出現(しゅつげん)に、若者たちの胸は高まった。


 ティフォーネは自分と同じ黄色のリボンを付けた若者の列を見つけると、ゆっくり歩き出した。

 一方の黄色のクラスの若者たちは、どんどん近づいてくる彼女から目が離せないでいる。

 そして、ティフォーネは黄色の列の最後尾(さいこうび)到着(とうちゃく)すると、目の前に座っている青年にニッコリと笑顔を向けた。


「ここ、黄色だよね。よろしくね」

「は、ひゃいッ! よろしくお願いしましゅ!」


 顔を真っ赤にした青年は、緊張(きんちょう)のあまりハッキリとしゃべることが出来なかった。

 すると、彼の挨拶(あいさつ)皮切(かわき)りに、近くにいた他のクラスの若者たちまで加わって、ティフォーネを中心に大きな人の()ができた。


「ねえねえ、名前はなんて言うの? どっから来たの?」

「あなた、すっごく綺麗ねッ! もしかして貴族の御令嬢(ごれいじょう)?」

「良かったらお友達にならない?」


 彼らは目を(かがや)かせて、ティフォーネとお近づきになろうと積極的(せっきょくてき)に話しかけている。

 また、他の色のクラスの若者の中には、彼女と同じ黄色のクラスに()われないか、スタッフに交渉(こうしょう)する者まで(あらわ)れていた。


 しばらく時間が()つと、体育館の中は冒険者登録に来た人たちで一杯(いっぱい)になってきた。

 ティフォーネの周りには相変(あいか)わらず若者が集まっているが、体育館全体が(さわ)がしくなっているので、彼女も大分(だいぶ)目立たなくなっている。すると───


 ───キャーキャーッ!

 ───だれだれだれッ!

 ───やばいかっこいい人きたあッ!


 体育館の入口に近い後方の女の子たちから、甲高(かんだか)嬌声(きょうせい)が上がった。

 その声に、皆が入口のほうに注目すると、昨日ティフォーネたちが見かけた金髪(きんぱつ)のイケメンの青年が立っていた。

 その青年を初めて見た女の子たちは、その青年の美貌(びぼう)にうっとりしている。しかし、それも長くは続かなかった。


 彼のジャケットの胸には、契約精霊がいないことを(しめ)す白色のリボンが付けられていたからだ。


 ───見て、あの人のリボンの色……

 ───白色のリボン……

 ───うそッ! マジ最悪(さいあく)ぅー……


 若者たちは徐々(じょじょ)に声のトーンを落とし始め、金髪の青年のほうをチラチラと横目(よこめ)で見ている。

 体育館中に広がる空気の悪い雰囲気(ふんいき)を感じ取った彼は、唇を少し()むと、白色のクラスに向かって歩き始めた。

 彼の向かう白色のクラスは、他のクラスよりも圧倒的(あっとうてき)に人数が少なく、すでに5人の若者が並んでいたが、皆一様(いちよう)に顔を赤くして(うつむ)いている。


「ねえ、ティフォーネさん。あの人どうして契約精霊がいないのかしらね」


 ティフォーネの隣にいた女の子が(まゆ)(ひそ)めて話しかけてきたが、彼女は微笑(ほほえ)みを()やさずに頭を少しだけ(かたむ)ける。


「さあ、どうしてでしょうね。あの人に契約精霊がいないことが、そんなに不思議(ふしぎ)?」

「えッ。でも普通いるわよね。いない人のほうが少なくない?」

「確かに契約精霊がいない人のほうが少ないよね。でもそれが、今のあなたと何か関係あるかな」

「そ、それはないけど……」


 ティフォーネの予想外(よそうがい)の反応に、女の子はばつの悪い顔をして、他の子と話し始める。

 遠巻(とおま)きに二人の会話を聞いていた若者たちも、ティフォーネの反応を気にして、少し慎重(しんちょう)な目で彼女を見るようになっていた。


 人ごみの中で、急にぽつんと一人取り残されてしまったかのようなティフォーネ。

 すると、大人しそうな雰囲気(ふんいき)をした二人の女の子が、(おそ)る恐る彼女に近寄ってきた。


「て、ティフォーネさん。隣、いいですか?」

「白色のクラスの一人が、私たちの友達なんです。あの子、魔力回路(まりょくかいろ)がもう使えなくなっちゃって……」

「それは大変だね。ここ空いてるから、座っても大丈夫だよ」


 ティフォーネは少し体を横にズラすと、二人が座れるスペースを空ける。

 簡単に自己紹介をした彼女たちは、何気(なにげ)ない会話を楽しんでいた。

 

 その時、ティフォーネたちの後ろにいた男の子たちのグループから、金髪の青年の話題(わだい)が聞こえてきた。


「───俺、昨日ちらっと聞いちゃったんだよね。金髪のあいつ、(のろ)われてるんだってよ」

次話は、明日の夕方5時に投稿します。

第52話 冒険者登録の講義②「精霊教会の儀式の秘密」


※「面白かった」「続きが気になる」と思って頂けましたら、評価するボタン(☆☆☆☆☆)を押してもらえると嬉しいです。レビュー、感想もお待ちしております。

※作者の連載を書き続けるモチベーションが上がります!

※毎日投稿していますので、ブックマークすると便利です

※活動報告もチェックしてもらえると嬉しいです

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ