表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
41/125

第41話 城塞都市オルソ②「金髪の王子様と錬金術師」

 周りの女の子たちも同じ気持ちらしく、ガリオの答えをウズウズしながら待っている。


「あいにく、俺のレベルは低いんだ。冒険者レベル2だよ」

「えッ……」


 ガリオの冒険者レベルを知った女の子たちは、彼のあまりのレベルの低さに、一様(いちよう)絶句(ぜっく)してしまった。


◇◆◇◆◇◆◇◆


 信じられないものを見たかのような表情をする女の子たち。彼女たちはお互い顔を見合わせると、コソコソと内緒話(ないしょばなし)を始めた。

 そんな光景を白い目で見ていたティフォーネは、軽くため息をつくと、ガリオのほうに向き直る。


「冒険者登録の講義(こうぎ)は明日の朝から始まるそうです。今日は受付で名簿(めいぼ)に名前とか、契約精霊(けいやくせいれい)のことを書くだけでした」

「そうか。ティフォーネはこれからどうする?」

「えっと……ガリオ様のほうはどうするんですか?」


 ティフォーネは、後ろのほうでコソコソと話している女の子たちから、一緒にオルソの街を観光(かんこう)しないかと誘われていたのだが、すでに()り気ではなくなっていた。

 一方のガリオのほうは、掲示板(けいじばん)に張られたクエストの中に、いくつか興味を引いたクエストがあったものの、先に済ませておきたい用事があった。


「この街に知り合いの錬金術師(れんきんじゅつし)がお店を出しててね。その人に売りたい物があるから、この後行ってみようと思っているんだ。ブングラスの町で売るよりも、いつも高値(たかね)で引き取ってもらえるからね」

「私も行ってみたいです!」


 サッと挙手(きょしゅ)するティフォーネに、ガリオは反対する理由もなかった。

 冒険者を目指す彼女の、今後の勉強にもなるだろうと考えたからだ。


「じゃあ、皆さん。さようならッ!」

「え、ええ……」

「さ、さようなら……」


 ティフォーネと一緒にいた女の子たちは、彼女がこの後の観光にも付き合ってくれると信じ切っていたため、オロオロと戸惑(とまど)っていた。

 彼女たちは、冒険者レベルが低いうえにすごく年上でパッとしないガリオに、ティフォーネのような美少女がなぜ護衛(ごえい)を依頼しているのか、まったく理解できなかった。


「……ティフォーネのほうは、彼女たちと一緒にいなくて良かったの?」


 ガリオは、呆然(ぼうぜん)とした表情でティフォーネのことを見送る、一緒にいた女の子たちのことが気になっていた。

 その言葉を聞いたティフォーネは、一瞬キョトンとするが、すぐにいつもの笑顔に戻った。


「大丈夫ですよ。人のことを冒険者レベルで判断(はんだん)するような人たちとは、お友達にはなれません!」


 胸を()って自信満々に断言(だんげん)するティフォーネ。

 そんな15歳とは思えない彼女の言葉に、ガリオは心の中で感心(かんしん)していたのだった。

 二人が協会の出入口に向かって歩いていると、その出入口近くにいる人たちが、にわかに(さわ)ぎ始めた。


 ───わあ、素敵(すてき)

 ───ねえねえ! すごいカッコいいんだけど!


 騒ぎの中心にいたのは、一人の青年だった。

 後ろのほうで結ばれた長い金髪、細い(まゆ)にキリッとした碧眼(へきがん)知性(ちせい)を感じさせる整った顔立ち。

 羽織(はお)っているジャケットのデザインもお洒落(しゃれ)で、傍目(はため)から見て上等な布を使っていることが分かった。

 まるで、どこかの国の王子様が現れたかのようだった。


「ん? どうかしたのか、ティフォーネ」

「いえ……あの人……」


 ロビーの中にいる多くの女性がその青年にボーッと見惚(みと)れている中、ティフォーネも足を止めてその青年のほうを見ていた。

 しかし、その表情は真剣な面持(おもも)ちで、他の女性のように浮かれている(わけ)ではなさそうだった。 


 一方の女性たちの注目の(まと)になっている青年のほうは、先ほどからキョロキョロと何かを探すようにロビーの中を見回している。

 すると、さっきまでティフォーネと一緒にいた女の子たちが、素早(すばや)い動きで青年に近づいていった。


「あ、あのー。どうかされたんですか?」

「お困りでしたら、わ、私たちに出来ることなら協力しますよ」


 話しかけてくる女の子たちに、その青年はニコリと魅力的(みりょくてき)微笑(ほほえ)みを向ける。

 その様子を遠目(とおめ)から見ていた他の女性たちは、青年と(した)しげに話す女の子たちに、(はげ)しい嫉妬(しっと)の炎を燃やしていた。


「ありがとう。冒険者登録に来たんだけど、どこに行ったらいいのかな」


 青年のセクシーなハスキーボイスに、女の子たちはすっかりメロメロになっていた。

 彼女たちは一様(いちよう)に顔を真っ赤にして、受付の窓口のほうを指差(ゆびさ)す。


偶然(ぐうぜん)ッ! 私たちも登録に来たんですぅー」

「こっちですぅー! 私たちが案内しますね!」


 女の子たちは青年の両脇(りょうわき)に立つと、彼の腕を取って受付に案内し始めた。

 青年のほうは苦笑(くしょう)しているものの、特に抵抗(ていこう)することもなく、彼女たちのやりたいようにさせていた。


 青年と女の子たちがガリオの横を通り過ぎようとしたとき、(なん)となしに周りを見ていた青年とガリオの目が合った。


「───えッ!」


 青年はガリオを見てなぜか驚いた顔をして、急に立ち止まった。そして彼の綺麗(きれい)な白い肌が、みるみるうちに赤く()まっていく。

 すると青年の周りにいる女の子たちが、彼がティフォーネに見惚(みと)れていると思い込み、彼の視線を(さえぎ)るように回り込んだ。


「どうしたんですか? 早くいきましょう!」

「そうそう。人が増えてきたから、早く列に並ばないとッ!」

「あ、ああ……」


 青年は女の子たちに引きずられるように、ガリオたちから離れていった。

 目の前で青年を見ていたティフォーネは、「ふーん」と一人で何かに納得(なっとく)したかのように(うなず)いている。


「ティフォーネ、彼と知り合いなのか?」

「いいえ。あの人、ガリオ様のほうを見ていたみたいですけど」

「……いや、あんな青年を見るのは初めてだ」


 ガリオは、何となくあの金髪と青色の瞳に見覚えがあるような気がしたが、あんなイケメンの青年は一度見たら忘れないはずなので、ティフォーネにそう答えたのだった。


 冒険者協会を後にしたガリオとティフォーネは、街の中心部から離れるようにしばらく歩くと、用水路(ようすいろ)が流れる静かな街の一角(いっかく)に到着した。


「ここのお店だよ」


 ガリオが立ち止まったのは、フラスコの絵が描かれた小さな看板のあるお店だった。

 窓から見える店内は、薄暗(うすぐら)くて人がいるかどうかも分からない。

 しかしガリオは(おく)することなく、扉を開けて中に入っていった。


「こんにちはー」


 カランカランと扉についたベルの音が、静かな店内に(ひび)く。中に足を踏み入れると、ムワッとした薬草の(にお)いが鼻についた。

 店内には商品らしい商品はなく、受付のカウンターの上を除けば、木箱(きばこ)や大きな袋がいたるところに積み上げられており、あたかも荷物置き場のようになっている。


「ガリオか。よく来たな」


 男性の声が聞こえたかと思うと、お店の奥から白衣(はくい)を着た小柄(こがら)な男性が出てきた。

 しかし、その男性は(つか)れているのか、少しやつれて元気がなさそうに見える。


「ジョンさん、お久しぶりです。なんだか元気がありませんね。マリアさんはどうしたんですか?」


 ガリオが心配そうに声をかける。前回この店を訪れたときは、彼は普通に元気そうにしていたからだ。

 また、いつもなら彼の奥さんであるマリアが店番(みせばん)をしているのだが、今日はまだ姿を見せていない。


「今日は娘のカルマが、久しぶりに王都(おうと)から帰って来ててね。今は二人で買い物に行ってるよ。ガリオ、その子は?」

「この子はブングラスの町から冒険者登録に来た、ティフォーネと言います。彼女から護衛の依頼を受けて、付き()ってきました」

「初めまして、ジョンさん。ティフォーネです」

「ああ。私は錬金術師のジョンだ。ガリオの父親とは、昔からの知り合いなんだ」


 すると、ガリオの腰に下がった『虹切(にじきり)』を見たジョンが、急に何かを思い出したかのようにハッとした顔をした。

 そして、彼はなぜか申し訳なさそうな様子で、話を切り出した。


「ガリオ、実はお前に相談があるんだ。冒険者協会で剣術担当(けんじゅつたんとう)講師(こうし)が不足しているらしくてな。急な話で申し訳ないが、やってみる気はないか?」

次話は、明日の夕方5時に投稿します。

第42話 城塞都市オルソ③「ガリオのテストとルシア隊長」


※「面白かった」「続きが気になる」と思って頂けましたら、評価するボタン(☆☆☆☆☆)を押してもらえると嬉しいです。レビュー、感想もお待ちしております。

※作者の連載を書き続けるモチベーションが上がります!

※毎日投稿していますので、ブックマークすると便利です

※活動報告もチェックしてもらえると嬉しいです

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ