第24話 勝負の後始末②「不審な影」
護衛する冒険者のレベルや人数によってまちまちだが、護衛クエストにかかる費用は、薬草採取や魔物討伐などの他のクエストに比べて高い傾向にあった。
「あ、実はそのことでガリオ様に相談があって……」
◇◆◇◆◇◆◇◆
そう言ってティフォーネは、ピンク色をした可愛いリュックの中をガサゴソと漁り始めた。
ガリオはそれを見ながら、心の中で「成功報酬を安くしたい相談かな」と考えていた。
彼女はまだ15歳くらいに見えるので、護衛クエストの費用のことをよく知らなくて当然だ。
「ありました! 実は現金の持ち合わせが少なくて、これをどこかで換金できないかなって」
「ん? どれどれ?」
ティフォーネの手の平に乗るほどの小さな白い袋の中には、何かがぎっしりと詰まっているようだった。
ジャラジャラと小石がぶつかるような音がするその袋の中を、ガリオが覗き込んだ。
「ぶっ!」
袋の中を見たガリオが、思わず吹き出した。
ガリオはてっきり、彼女が頑張って倒した魔物の小さな魔石あたりが入っているのだろうと思っていた。
しかしそこには、色とりどりの見るからに高価な宝石がギッシリ詰まっていたのである。
「ど、ど、ど、どうしたの、これッ!」
「え、えーっと……」
目を丸くしながら聞いてくるガリオに、ティフォーネは少し目を泳がせながら言葉を考えている。
その様子は、まるで何かの言い訳をするかのようだった。
「そうそう! この宝石は、両親が私のために残してくれたものなんです」
「残してくれた? ティフォーネさんのご両親って……」
ティフォーネは顔を下に向けると、ガリオから見えないように目元を手で隠した。
一方のガリオには、まるで彼女が泣いているように見えた。
「両親は二人とも冒険者だったんですけど、ずっと帰ってこないんです。これは、何かあったときにって……」
「……そうか。一人で大変だっただろうに。ごめんね」
ガリオはティフォーネの境遇を聞いて、彼女に同情していた。ガリオの両親も冒険者だったが、すでに亡くなっているからだ。
彼は鼻をズズっとすすると、右手で自分の胸をドンッと力強く叩いた。
「話は分かった! 今回の護衛クエストを引き受けさせてもらうよ。ティフォーネさんが冒険者になるところを、ご両親に代わって俺が見守らせてもらうから!」
「は、はい。よろしくお願いします……」
ティフォーネは目元を拭う仕草をして、ガリオにお礼を言った。
しかし彼女は、なぜか少し申し訳なさそうな表情をしていたのだった。
ガリオは気を取り直すと、今回の護衛クエストのことでティフォーネに相談しなければならないことがあった。
今回の護衛クエストでは、長期間この町を離れることになるため、いろいろ準備しておかなければならないからだ。
「ティフォーネさん、お願いがあるんだ」
「はい、なんですか?」
「オルソに出発するのは、明日以降にしてもらえないか? 自分の畑の世話を近所の人にお願いしたくてね」
「分かりました。じゃあ、さっそく準備に取りかかりましょう!」
そう言ってティフォーネは、スルスルと器用に御者台に上がり、ガリオが上がってくるのを待っていた。
彼女の紅い大きな瞳は、一段とキラキラ輝いている。どうやら、ガリオに早くこの馬車を動かして欲しいらしい。
そんな彼女の様子を見てガリオは苦笑すると、彼もサッと御者台に上がった。
そこは馬の背中よりもさらに高く、とても見晴らしが良かった。
「ガリオ様、早く早く!」
ティフォーネに催促され、ガリオは手綱を握ってゆっくり馬車を動かし始めた。
屈強な2頭の馬に引かれ、馬車が力強くガラガラと進んでいく。
「それではお姫様。どちらへ参りますか?」
ガリオが茶化して行き先を尋ねると、ティフォーネは立ち上がって慎ましい胸を反らしながら答えた。
「まずは、ガリオ様のおうちに向かいましょう!」
「えッ? 俺の家?」
「はい。今日はガリオ様の家に泊まるんですよね?」
「……」
ガリオは無言で馬車を道の端に寄せると、そのまま停車させた。そしてティフォーネと真面目な顔をして向き合う。
「え?」
「ティフォーネさん、君はまだ若いから知らないんだろうけど───」
その後、ガリオのお説教が小一時間続いた。女の子が男性の家に一人で行くことの危険性を、こんこんと説明している。
ティフォーネも最初はいろんな意見を言おうと頑張った。
しかし、ガリオの頑固な意見を曲げることができず、最後には「はい」「すみません」を繰り返すのみになった。
「じゃあ、冒険者協会の前で降ろすから、あとはいいね?」
「……はい、すみませんでした」
冒険者協会の前に到着すると、ガリオは明日の早朝にここで待ち合わせることをティフォーネと約束し、彼女を馬車から降ろした。
そして、そのままブングラスの町から少し離れた村にある自宅に急いで戻り、旅の準備を始める。
新規に冒険者に登録する方法は2種類ある。
冒険者協会が行う講義や訓練などを受けて登録する方法と、冒険者レベル5以上の者からの推薦の2つだ。
今回ティフォーネは前者の方法で登録を行うが、登録までには最短でも6日、往復の時間まで含めると10日以上かかるのではないかと、ガリオは予想していた。
もしティフォーネにずっと付き添うことになれば、しばらく自宅に戻ってくることができない。
そのため、保存の効かない食料を処分したり、家の中をざっと掃除しておく必要があった。
さらに、ガリオは自分の畑の世話を友人に頼んだり、近所の家を急いで挨拶して回る。
旅の準備をすべて終えて彼がベッドに入ったのは、夜遅くになってからだった。
そして、真夜中を過ぎたころ───
真っ暗な村の中を、ガリオの家に向かう3つの人影があった。
次話は、明日の夕方5時に投稿します。
第25話 勝負の後始末③「真夜中の衝突」
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