第18話 ガリオの実力⑦「秘策」
「もう一度勝負しようじゃないか。なんだったら、今度は最初から契約精霊を召喚しててもいいぞ」
「はああああああ?」
───ザワザワ ザワザワ
ガリオからのまさかの再戦の提案に、アーノルドもそして多くのギャラリーが驚いた表情でガリオのほうを見ていた。
◇◆◇◆◇◆◇◆
ガリオから信じられない条件での再戦の申し出に、アーノルドはしばらくの間言葉を失った。
アーノルドが絶句しているのも構わず、ガリオはさらにたたみかけるように新たな条件を付け加える。
「その代わりに、俺も白魔法『身体強化』を最初から使わせてもらうが、それでいいな」
次から次へガリオから出される条件に、アーノルドの頭はすぐに追いつけなかった。
彼は状況を整理するために、ガリオのほうに右手の手の平を向けて、待ったをかける。
「ちょ、ちょっと待ってくれッ! そ、そう! 少しだけ仲間の二人と話し合う時間をくれッ!」
「待つのはいいが、あまり時間はやれないぞ」
「分かってるッ!」
ガリオとアーノルドは、いったんティフォーネたちがいる土手のほうに戻った。
そして、アーノルドは仲間の二人を呼ぶと、注目するギャラリーから離れて3人だけで話し合いを始める。
大勢のギャラリーは、二人が再び勝負するらしいという話を聞いて、ワクワクしながら話し合いの行方を見守っていた。
「おい、アーノルド。どうなってるんだッ! どうして契約精霊をさっさと召喚しなかったんだよ!」
「手加減なんかしてる場合か? 僕たちの馬車がガリオのおっさんに取られるんだぞッ!」
アーノルドの仲間たちは、冒険者レベル2のガリオにあっさりと負けて戻って来たアーノルドに、激しく詰め寄った。
「お、俺も訳が分からないんだって! おっさんが『精霊殺し』っていう能力を使ったらしいけど……」
「は、はあ? なんだよ、それ。聞いたことないぞ」
「そういえば、さっきグラドス支部長がそんなこと言ってたな」
アーノルドから詳しい説明を聞いて、仲間の二人も『精霊殺し』がどんな能力なのか正体が分からず、困惑するばかりだった。
一体どうすれば他人の魔法陣を消すことができるのか、3人組には想像もできない。
「な、なんとかしろよ、アーノルド。このまま馬車が取られるのを黙って見過ごすのか?」
「それが、おっさんのほうから再戦しようって言ってきているんだ。しかも、最初から契約精霊を召喚してていいらしい」
「マジか! 自分から言い出すなんてラッキーじゃないかッ! おっさんもアーノルドの契約精霊を舐めすぎだろ」
「そうそう。最初から契約精霊を召喚していれば、『精霊殺し』の能力も意味がないし、勝ったも同然だな!」
もう勝負に勝った気でいる仲間の様子を見て、アーノルドが慌ててなだめる。
彼にはどうしても拭いきれない不安があった。
「ちょ、ちょっと落ち着けって! よく考えてみろよ。明らかに俺に有利すぎる条件を出してくるんだから、これは絶対何か裏があるに決まってるだろ!」
アーノルドの言葉に、仲間の二人はハッと我に返った。
冷静に考えれば、彼の言うとおり怪しすぎる条件だ。
「魔法陣を消せる以外に、まだ何か隠してるかもしれないってことか……」
「……すまん。アーノルドが慎重になるのも当然だな」
「いや、いいんだ。お前らは、おっさんが次に何をしてくるか分かるか?」
ガリオの持つ自信の裏に何があるのか、3人はしばらく考えたものの、結局何も思いつくことができなかった。
刻一刻と時間だけが過ぎていく。
アーノルドが苛立たしげに地面を蹴った。その顔には、この訓練場に来た当初の余裕など一欠片も残っていなかった。
「くそッ! このままじゃ埒が明かねえ」
「どうするんだ、アーノルド」
「……俺のファイア・リザードで、おっさんを遠くから焼き尽くすしかねー」
アーノルドの契約精霊である能火精ファイア・リザードは、精霊界の階級で6番目の位階に属する、かなり強い精霊だ。
彼が20歳という若い年齢にも関わらず冒険者レベル4になれたのも、ファイア・リザードの強さによるところが大きい。
「確かに契約精霊もいない冒険者レベル2のおっさんに、アーノルドのファイア・リザードをどうにかできると思えないな」
「けどよ。アーノルドがそんな作戦でくることは、当然ガリオのおっさんも想定してるだろ」
「……ああ。だから、お前らにやって欲しいことがある」
アーノルドは暗い笑みを浮かべると、自分の考えた作戦を他の二人に伝えた。
次話は、明日の夕方5時に投稿します。
第19話 ガリオの実力⑧「能火精ファイア・リザード」
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