第13話 ガリオの実力②「大人の責任」
バチバチと激しい火花を散らすティフォーネとアーノルドたち。
到着した早々にお互いに口撃する彼らを見て、ガリオはもう苦笑するしかなかった。
◇◆◇◆◇◆◇◆
───ピューピュー!
───姉ちゃん、カッコいいぞ!
銀色の長い髪を風になびかせる清楚な美少女と、この町で有名な3人組の冒険者が壮絶な舌戦を繰り広げている光景に、大勢のギャラリーが口笛を吹いてはやし立てる。
これから誰と誰が勝負するのか、傍目から見ただけではまったく分からない状態だった。
「よーし、皆揃ったな。そろそろ始めるぞ。この勝負では賭けている物が物だから、冒険者協会が正式な立会人を務めるからな」
冒険者協会のスタッフと打ち合わせをしていたグラドス支部長が、ガリオたちのそばに近づいてきた。
ここに来る前は不機嫌そうにしていたグラドス支部長だったが、今はとても上機嫌な顔をしてニコニコ笑っている。
「ここのところ、ずっと協会でつまらない仕事ばかりしていたからな。久しぶりにこんなに血が騒ぐイベントを持って来てくれたお嬢ちゃんには感謝するぜ」
グラドス支部長の後ろに控えている二人のスタッフが、そろって大きなため息を吐いた。
多くのやり残した仕事がある中、彼らはグラドス支部長の命令で、ガリオたちが勝負できる環境を急いで整えたのである。
そんなスタッフの苦労を知ってか知らでか、ご機嫌のグラドス支部長がアーノルドたち3人組のほうを見る。
「この勝負はガリオとの一騎打ちだ。お前らの中で、誰が戦うんだ?」
「もちろん、俺だ」
3人組の中で、アーノルドが前に進み出た。片手には訓練用の木剣を持っている。
ガリオのほうも、同じような木剣を持って前に出た。
「この勝負の基本的なルールは、冒険者協会の訓練でやっているものと同じだから、契約精霊を召喚したり魔法を使っていいのは、勝負が始まってからだ。あと分かっていると思うが、今回はギャラリーが多いから大規模な魔法は厳禁だからな」
グラドス支部長がルールを説明するなか、ガリオは真面目な表情で説明を聞いていたが、一方のアーノルドは欠伸をしたり髪型を気にしたりと、まともに話を聞いている様子がなかった。
そんなアーノルドの態度を見ても、グラドス支部長はフンッと大きな鼻息を鳴らしただけで、特に何も言わなかった。そして、ガリオのほうに顔を向ける。
「即死さえしなかったら、あとは俺たちのほうでどうにかする。だから、全力でやれ」
「はい」
力強く頷くガリオを見て、グラドス支部長も大きく頷き返した。
その様子を横目で見ていたアーノルドは、ニヤニヤと笑っているのだった。
「勝敗の決め方は、どちらかが戦闘不能になった場合、俺が勝負がついたと判断した場合、それと降参したら負けになるからな」
「分かりました」
「はいはい」
グラドス支部長が話し終えると、ガリオとアーノルドの二人は勝負の開始位置に向かって歩き始めた。
そんなガリオの背中に、土手の上にいるティフォーネから明るい声援が届く。
「ガリオ様ぁー! 頑張ってぇー!」
───ブーブーブー! ブーブーブー!
目の覚めるような美少女の声援を一身に受けるガリオを羨ましく思うギャラリーの男性陣から、嫉妬と憎しみのこもった激しいブーイングが飛んだ。
「おっさん、よく逃げなかったな」
「ん?」
訓練場の中央にある開始位置に向かっている途中、アーノルドがガリオに話しかけてきた。
「ティフォーネちゃんといい、おっさんといい、冒険者レベル4の俺に本気で勝てると思っているのかよ」
そう言ってアーノルドは、忌々しそうに舌打ちをする。
この国に冒険者は数えきれないほどいるが、冒険者レベル4まで到達できる者は半数以下だ。
また、彼のような若さでレベル4になれる冒険者は、さらに限られてくる。
それがアーノルドたちの自信の源になっているのだ。
「俺がこの勝負から逃げなかった理由か。そうだな……」
ガリオは土手の上にいるティフォーネに、ググッと力強く握った拳を向けて見せた。
彼女も両手を口に当てて、懸命にガリオに声援を送っている。
そして彼は、先ほどティフォーネを前にして言えなかった、この勝負から逃げない本当の理由を口にした。
「ティフォーネさんが───俺の半分も生きていないような若いあの子が、俺の代わりに真剣に怒ってくれた。戦ってくれた。だったら今度は───大人の俺が頑張る番じゃないか」
次話は、明日の夕方5時に投稿します。
第14話 ガリオの実力③「ガリオの切り札」
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