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第10話 銀髪の美少女④「グラドス支部長」

 そこには、50代の恰幅(かっぷく)のいい男性が仁王立(におうだ)ちしていた。そして、なぜかその顔は真っ赤に染まり、ブルブルと(いか)りに(ふる)えているようだった。


「グラドス支部長?」


◇◆◇◆◇◆◇◆


「こっちはコエ=ガス討伐遠征(とうばつえんせい)後始末(あとしまつ)で、ただでさえ(いそが)しいんだ! くだらねえ事で呼び出すんじゃねえ!」


 この町の冒険者協会のグラドス支部長が、静まり返ったロビー内を充血(じゅうけつ)した目で見渡す。

 ティフォーネの周りで喧嘩(けんか)していた冒険者たちは、顔を真っ赤にしたグラドス支部長にギロッと(にら)まれて、途端(とたん)大人(おとな)しくなった。


「ここで冒険者登録をしたいっていう新人はどいつだ」


 ロビー内にいた冒険者たちの視線(しせん)が、すべてティフォーネのほうに集中する。

 一方、全員の視線を一身(いっしん)に集めたティフォーネは、(いか)れるグラドス支部長に輝くような笑顔を送った。


 片眉(かたまゆ)をピクリと上げたグラドス支部長は、床をドンドン()み鳴らしてティフォーネに近づいて行った。

 鬼のような形相(ぎょうそう)をしたグラドス支部長に睨まれても、ティフォーネが浮かべるその笑みはまったく(くず)れる様子がない。


 グラドス支部長はティフォーネの目の前に来ると、彼女の全身をざっと観察し、フンッと大きく鼻息(はないき)を鳴らした。


「冒険者になりたいらしいな」

「はい。でも受付の人が、城塞都市(じょうさいとし)オルソまで行く必要があるって言ってました」

「そうだ。駅馬車(えきばしゃ)を使えば、翌日には着く距離(きょり)だがな」

「そうなんですね。でも一人じゃ不安なので、ガリオ様に護衛(ごえい)をお願いするところだったんです」

「『ガリオ()』?」

「支部長、お久しぶりで───」


 グラドス支部長に視線を向けられたガリオだったが、またしてもアーノルドたち3人組が彼の前に立ちふさがった。


「だから俺たちが護衛するって、ティフォーネちゃん!」

「ガリオのおっさんよりも強い僕たちが、オルソまで安全に護衛するよ。立派な馬車を最近買ったばかりなんだ」


 意見を曲げないティフォーネに対し、これでもかと自分たちをアピールする3人組。

 ガリオとの会話に割りこまれて顔をしかめるグラドス支部長が、ティフォーネのほうを見る。


「……こいつらはこう言ってるが?」

「お気持ちは(うれ)しいんですけど、まずはガリオ様に私の話を聞いて欲しくて」


 胸の前で両手を組み、上目遣(うわめづか)いでガリオを見つめるティフォーネ。

 そんな彼女のガリオへの一途(いちず)な態度に、周りにいた冒険者たちから「おおー」とどよめきが起こった。


「ガリオ。この子と知り合いなのか?」

「……いえ。初対面(しょたいめん)のはずなんですが」


 両腕を組んで首をかしげるガリオ。

 そんなガリオの答えにグラドス支部長は怪訝(けげん)そうな顔をしたが、深く追求(ついきゅう)することなくそのままアーノルドたち3人組に向かって言う。


「この話はガリオに対する護衛クエストの指名依頼(しめいいらい)みたいなもんだ。お前らがとやかく言ってもしょうがないだろ」


 しかし、アーノルドたちはまったく引き下がらなかった。それどころか、今度はグラドス支部長に()みついていった。


「ティフォーネちゃんみたいな可愛い子に何かあったら、どうするんだ!」

「そうだよ。将来有望(しょうらいゆうぼう)な女の子の護衛を、ガリオのおっさんみたいな弱い冒険者に任せるんですか?」

「協会として、腕の立つ冒険者を護衛に付けるべきだ!」


 この町の冒険者協会のトップであるグラドス支部長の対応を批判(ひはん)し始めた3人組。

 彼らの話を(だま)って聞いていたグラドス支部長の表情が、だんだんと(けわ)しくなっていった。そして、とうとう我慢(がまん)の限界に(たっ)した彼が口を開きかけた瞬間───


「お前らいい加減(かげん)に───」

「いい加減にしてください」


 小さかったが、しかし圧倒的(あっとうてき)存在感(そんざいかん)のある(りん)とした声を、協会のロビー内にいる全員が確かに聞いた。

 しかし誰がその声を発したのか、とっさに全員が分からなかった───ガリオを(のぞ)いて。

次話は、明日の夕方5時に投稿します。

第11話 銀髪の美少女⑤「彼女の信頼」


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