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マスターと助手  作者: 佐久サク
魔法使いの助手の弟子
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第八話

 迎えた翌日に、一つの案を実行に移す。

 

「掃除は沢山してもらったから、今日はお菓子を作ってみよう」


 その言葉に対してメルは一度大きく瞬きをして、興味から決意といったものに表情を変化させる。


「分かりました、師匠!お菓子作りといえば分量に時間にと細かな気遣いが大事なもの!これも修行ですね!」


 これまでの日々においてメルは察しの良い娘だった。

 昨日の話もあって、俺がその提案をしたとの理解を即座にしたのだろう。

 そして、性格も真っ直ぐな娘であり、苦手な物を提示されても嫌な顔一つせず受け入れる。

 ここまでの流れは俺も考えにあった事だった。


「じゃあ、早速だ。今日は焼き菓子を作ることにしよう」

「分かりました!」


 台所には既に今日の材料を量を量って置いてあり、残りの手順を二人で行っていく。

 まずはメルに小麦粉を振るってもらい、その隣で俺は室温に戻しておいたバターに砂糖を入れて混ぜていく。


「綺麗ですねえ」


 メルは魅入ったように粉振いに入れた小麦粉をボウルに降らせていく。

 俺はそちらを気にしながら、手はグリグリと回して抱えたボウルの中身を混ぜていく。

 それを終えたら取り出したのは卵白だ。


「次はこれを混ぜて固くしていくよ」

「メレンゲを作るのですね!」

「よく分かってる。それで作る時の注意点は知ってる?」

「水分が入らないように角が立つまで泡だて器でじっくりと、そう聞きますね!」

「そう。だから、これは時間が掛かる」


 その言葉にメルが息を呑む。


「それこそが私が乗り越えなければならないもの。大事な修行!」


 そこにある待ち構えていたものがやってきたというような表情。

 それに対して俺は軽く首を横に振る。


「いや、俺も面倒だから短縮したいなと思って」

「なんとっ」

 

 意外だと大きな反応を見せるメルを横目に用意していた器具を取り出す。

 それは以前マスターが仕事先で貰った物品で、銃の形をしているが、引き金を引いても弾も何も出ない。

 その代わり先端の尖った金属の部分が勢いよく回り、これにより固い岩に穴を空ける工事作業で役立つという物。

 それをマスターは「面白いなあ」と仕事の報酬代わりに一つ貰って来た。

 しかし、貰ってから「岩に穴を空ける事は滅多にないものなあ」と使い道に困っていた。

 

 そこから考えを続け辿り着いたのは、銃身の部分だけを残し先端は全く別の物に変える事だった。

 それは泡だて器を小さく固くしたような形の物で、それを銃身に付けて引き金を引き続ければ、そいつがグルグルと勢いよく回り撹拌なんてお手の物となる。

 その動きは実際に見て貰うのが一番だと、早速この撹拌機と透明な白身の入ったボウルとを手に持つ。

 

 まずはボウルの外で撹拌機の引き金を引く。

 カタカタカタカタと音を出して先端が回転しだすと、メルはこれまた真剣な眼差しでそれを見つめる。

 そこからボウルの中にその先端を入れれば白身は器具に巻かれグルグル回り、程なく透明な白身はまさに名前の通りに白くなっていく。

 そこに白砂糖を加えては混ぜてを二回ほど繰り返せば、あっという間にまさに角がピンと立つメレンゲが出来上がる。

 続いてバターの煉ったボウルにメレンゲを半分入れて振るった小麦粉を軽く混ぜ、そこに残りのメレンゲを加えて出来た生地を金口を先端に付けた絞り袋に入れた。

 

「それじゃあ、次の事はメルにやってもらおうかな」


 天板に薄い耐熱シートを乗せて絞り袋をメルへと差し出すと、彼女は緊張の面持ちにと変わる。

 それでも与えられた使命だというように大事そうに受け取り鉄板へと目を向ける。


「それで、これはどのくらいの大きさにしていけば良いのでしょうか」

「そうだな。3cmの円状にしてもらえれば」

「3cmですね、3cm……」

 

 メルはこのくらいかと絞り出すべき大きさを指で測る。

 そんな様子も彼女らしさであり予想もついていたので、俺も考えていた事をここで示す。


「まあ、全部そのくらいって事でいいんだけどね。ちょっとくらい小さくても大きくてもいいから、メルが思うようにやっていってよ」

「本当に良いのですか。お菓子作りは特にそうした事を守ると聞いておりますが……」

「それもそうだけど、そこを気にしないのが今回の方針というかな」

「な、ならば、私もそれを守り頑張りますので、見ていてくださいませ!」


 


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