第一話
今回の話は、気持ち良さよりも気持ち悪さが勝ってしまうかもしれませんのでご注意を。
「助手君。明日は昼休憩が終わったら第二研究室に来てよ。僕は今から寝るから、それまでもこちらの事は気にせずに」
「分かりました」
「頼むよ。それじゃ、おやすみ……」
今日は早めに寝るかと、最後に小さな片づけ仕事をしていた夜の事。
ここ最近は地下の特別研究室に籠りっきりでいた”マスター”は疲労がくっきりという顔で伝えてくると、久々に自室へと向かうべく身体を翻すその動きもふらりとさせて去って行った。
そんな昨日の出来事を、今は使われる準備は万端といった可動式寝台を見ながら考える。
さて、今から何が行われるのだろう、と。
”助手君”と呼ばれたからには仕事。
この寝台を使う作業は”耳掃除”。
マスターが籠っていた日数分、俺の耳は弄られてはおらず痒くもなっているが、それが目的ならば仕事外だと名前で呼んでくるはず。
それでは他の誰かを呼んでの耳の手入れの手伝いかと言えば、昨日の時点でその事までも伝えてくるはずだと、いずれの考えも早くに否定される。
そこに薬瓶が幾つか入った木箱を両手で抱えたマスターがやってきた。
ぐっすりと寝た成果かその顔色は元通りとなっていて、それには良かったと胸を撫で下ろした所で本題に。
「それで、今日は何なんです?」
「僕の好きなものが揃った事だね、耳ではないけれど」
「じゃあ、どこです?」
木箱を寝台近くの棚に置き終えたマスターは、その問に対してこちらを「そこ」と指差す。
そこ?どこ?と出揃っている条件と合わせて考えを進め、その指先を見……る……と理解は完了した。
「…………”目”ですか」
「そうそう、頼まれ事でね。じゃあ、そこに寝てみて」
何をするかは分かったが、続けて細かな状況までも想像してしまい嫌な汗も流れた。
が、この人のやる事でおかしな事になった経験は無いしな……と、言われた通りに寝台へと寝る事にした。