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マスターと助手  作者: 佐久サク
体験学習
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二日目─その二

 その後は現実に戻され、遺物掃除の手伝いをしてからの休憩時間。

 キッチンで水分補給をしつつ明らかにこの世界では異質のテクノロジーを観察すれば、やはりそれらは複雑な機械で出来ているようにしか見えなかった。

 これはどういうことなのか。

 

 まず助手さんに関しては何のおかしさもない、どこにでも居る人に思える。

 食事を作っているのは彼のようで、その手によって思い出深い食事が出てきたけれど、それはこの世界にも似た物があるという事に過ぎないのだろう。

 しかし、もう一人の人物には、オレと同じ事実を有しているのでは?との思いは増すばかりだ。

 だが、一気に問いただせる程の勇気は今は持てはしない、何か決め手が欲しいと考え込む。


「使い方が分からない?」


 そこでキッチンへ入ってきた助手さんに、”電子レンジ”の前で突っ立っていたせいか勘違いされてしまった。

 「そうなんです」と誤魔化すのも良かったが、まずは彼相手にそれとなく攻めよう。


「いえ、こういう物はどうやって手に入れているのかと思って……」

「ああ、そういう事。こういうのは古代遺物が殆どだよ。壊れた物を直して復元した物もあれば、魔術理論を合わせて再現した物もある。この辺のは復元より再現の物が多いな……って、これ以上は俺に詳しく聞かないでくれよ?仕組みとか俺には全然分からなくて、説明するのは無理なんだ」


 隣の彼は軽やかに話す。

 実際そうなのだろう。

 彼は知らない、多くを知らない。魔術も技術もオレが知るような事も。

 古代文明についての知識はオレにだって少ない。

 しかし、これら全ての物を生み出せる程の技術がかつて在ったとは思えない。

 オレをこの世界に送った”女神”は「転生者にはそれぞれに合った能力が与えられる」と言った。

 もしかしたらオレの他にも異なる世界を知る者がいて、これはその人に与えられた能力からの産物なのではないだろうか、それを怪しまれないように古代遺物と関連付けているのではないか、そう考えた方が不思議はない。

 

「何か大丈夫?」


 そこで助手さんが気遣う目でオレを見ているのに気付く。


「平気です。知らない物が色々あって目移りしてしまって……」

「それは俺も通った道だな。来たばかりの頃は操作を覚えるのにも一苦労でさ。それでもユーリ君は昨日風呂の事とか説明しても一度で理解できるし、優等生はやっぱり違うなってなったよ」

「いやいや、オレなんてそんな……」

「そうやって謙遜するところがまた俺が子供の頃と違うなぁ」


 助手さんはそうは言うけれど、謙遜やら自分の心を隠したわけではなかった。

 夏休み明けから他人から褒められる事は増えたとはいえ、それはオレが賢いわけじゃない。

 与えられた能力を使い要領良く生きられるようになっただけ、以前に得た知識があるだけの話だった。

 

「と、実はユーリ君に聞きたい事があったんだ。後少し付き合ってくれない?」

「先生にも「すぐ戻ってきて」とは言われていないんで大丈夫ですよ」

「それならいいか。それでだけど朝のスープを改良したいと思ってるんだ。で、今から使えそうな調味料を見せるから、どれが合いそうか言ってみてくれないかな?」

「いいですよ」

 

 機械を見ながら二つの世界の文化について考えるのは疲れも強く感じてくる。

 けれど、今の話になら自分に力が入ることはなく、気持ちを切り替えるにも丁度良い提案だと、間を置く事もなく了承した。




 ◇




 ダイニングテーブルに置かれた小皿に数々の調味料が乗せられ順番に味見していく。

 醤油っぽい物やウスターソースらしき物もあって驚いたが、それらは遠くの地では珍しい物では無いとの説明をされる。

 仕事で世界各地に行ってはこれらの珍しい調味料を持って帰ってくるのが、助手さんの楽しみなのだとの話だった。

 その中で俺がこれだと思ったのは茶色い粉だ。

 甘みと酸味があり、味噌に合わせるとコクが増すように思えた。


「これなんてどうでしょうね」

「おー、それか。南方の果実をカラカラに干した物を細かくしたやつだ。それと、もう一つせっかくだからいいかな」

「なんです」

「あのスープさ、俺としては麺を入れてみたいんだよ。でも、一度小麦粉で作った細い麺を入れてみたんだけど、それだけで食べるのは「なーんか違うよな~」ってなってしまって……」


 味噌なら麺は合う。

 味噌汁の具材として素麺を入れるのも分かるけど、どかんとメインにされたらオレも「なーんか違う」となる。

 そういう場合なら味噌ラーメンなんて麺と味噌のベストマッチなんだけど。

 と、もう長年舌で味わっていない料理の図が浮かんで喉が鳴る。 


「あ、なんか思いついた?」

「そうですね。小麦粉の麺なのは良いと思いますけど、それならモチモチっとした感じの太い方が合うんじゃないですかね。あ、あと、スープも豆ペーストだけじゃなくて出汁も濃くして……」


 そう思いつく限りの味噌ラーメンについて話していくと、助手さんは興味深そうに聞いてくれて、彼がメモに記し満足するまで付き合う事になった。




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