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マスターと助手  作者: 佐久サク
導かれし者たち
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第六話

 ゴーレムは跡形も無く消え去り、天井から新たな者が落ちてくる事も泣く、静まりかえった空間でオレ達は疲弊した身体を抱えて深く息を付く。


「あれは……」


 最初に周囲の変化に気づいたのはアルマさんだった。

 彼女が指差した部屋の奥、そこに四角い枠の中に黒い歪みが見える空間が出来上がっていた。

 やはりあのゴーレムがボスで、倒した事により次の場所への道が開かれたという事か。

 体育館の時のように誰かの声が届いてはこない。

 けれど、確かにこちらを誘うように存在しているそれに三人で近付く。 


「中に入っていきなり強敵が出てこないとも限らないからな。一回ここで休むか」


 コッドの提案には賛成だと、身体を休めながら手持ちの道具を確認し、足らない物は一度戻って補給する考えを固めて、三人で壁際の休息を取り易そうな場に座り込む。

 水飲み場の休憩では道具の確認を二人に任せてしまったので、今度はそれをオレが受け持つ。

 さっきの戦いでも二人の方が圧倒的に動いて疲れているだろうし、そう役割分担するのが最適だろう。

 そうして道具を弄り、補充する回復札の量などを考え終えて二人の所へと行く。


「道具の確認は終わったよ。もう少し回復札を増やしてもいいかもしれない」

「奥に進む程に現れる者達も手強くなっているものね、戻った場所で貨幣集めもしましょうか。でも、戻る前に聞かせてもらえないかしら、ユーリ君はどうしてあの時に衝撃を再び与えるべきだと思ったの?」


 それはオレも問われるとは覚悟していた。

 しかし、ステータスを見たと言っても伝わらないだろうし、この異様な空間に放り込まれた中でオレの異様な真実を話すのは適切ではないと思う。

 だからと黙っているのは共に戦う相手に悪いと、思いついていた理由を述べていく。


「あいつが時々同じ格好を取っていたのが気になっていたんだ」

「確かにその傾向はあったわね。立ち止まって腕を動かすと傷が回復して……」

「オレも最初はそう思っていた。でも、あれ自体が傷を回復させているんじゃない……気がしたんだ。あれはあいつの性質を変化させるもので、その後にオレ達の攻撃を吸収する事で身体を治していたんじゃないかって」

「あいつがああ動いた後には特に攻撃を強めていたが、それが逆効果になっていたわけか」


 二人もあの格好には引っ掛かる物を覚えていたようで、オレの言葉に異論無く乗ってくれる。


「あの時に衝撃が最も有効であると分かったのは、そこに法則性があったという事かしら。離れて何かをしているようだったけれど、これまでの傾向からその答えを導き出していたの?」

「ま、まあ、そんな所かな」


 実際に決まった法則があったかは分からない。

 オレは見たままのステータスを伝えただけだ。

 けれど、今はこのくらいの言葉で濁すしかない。


「そうだったのね。ありがとう、私を止めてくれて」

 

 アルマさんのその言葉から思い出すのはあの時の事だ。

 オレだけではアルマさんを止められそうになく、コッドが何かをアルマさんに伝えた姿がそこにあった。


「そういえば、コッドはアルマさんに何て言ってたんだ?」

「ああ、あれは「ユーリの事、信じてやってくれ」って言っただけだ。あれだけ鬼気迫って叫んでいたんだ。乗るだけの意味があるって思ったんだよ。今の話を聞いたら何もかも納得いったし、さすがユーリだな、あれだけの物語を書くだけあって流石の観察眼だ」

「私もまた校内新聞でじっくりと読んでみたいわ」


 戦闘を経て掠り傷を負い土埃で服を汚した姿でコッドがいつものように笑う。 

 アルマさんも疲労は残しながらも緊迫感を薄めた顔で笑いかけてくれて、オレの能力が役立った事に純粋な喜びが湧く。

 けれど一方で真実を隠している後ろめたさも抱え、二人に対してオレが浮かべる笑顔は少しぎこちないものとなっていた。

 



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