第6話
こちらでも明けましておめでとうございます。
新年最初の投稿です。
お楽しみください。
その本の中に挟まれていた手紙に書いてあったもの‥
それは‥
「アリシアへ‥私は魔族領へ行きます。決して追ってきてはいけませんよ?あなたはきっと‥いつか家を出るでしょうけど、その時はしっかりと自分の道を歩きなさい。決して私のようにはなってはいけません。 ミシェル」
「‥‥お姉様らしい手紙。しかも私が家を出ることをこの時にはもう分かっていたのね。」
もしかしたらもっと前に‥感づいていたのかも。
流石だわ。
「でも、お姉様‥ごめんなさい。この手紙に書かれていることは守れそうにないわ。」
だって‥私の目標はお姉様だもの。
それに、今お姉様が魔族領で何をしているのか気になるし‥
「そんなこともお見通しだと思うけど‥ね」
きっと私が会いに来ることを見越してこれも書いたに決まってる。
もし、本当に会いに来てほしくないなら自分が行く場所なんて書かないはずだし‥
「さて‥っと、これは私がしまっておこうかしらね」
お父様なんかに見つかったら困るしね‥
「これからの予定は決まったわね‥ただ、問題はどうやって魔族領へ渡るかね。」
現在魔族領への渡航は禁止されている。
理由は簡単、魔族領に魔王のジョブを持つ者が現れたから。
それと同時にこの国にも勇者という魔王と対をなすジョブを与えられた人も現れた。
確か女の人だったような‥気がするわね。
この国が建国して以来初の女勇者だって国をあげて祝っていたから‥
どんな人なのかしら、一回会ってみたいわね。
「‥そうよ!!勇者のパーティーに入れてもらえば合法的に魔族領へ行けるじゃない。」
勇者は基本何人かパーティーを作って魔族領へ魔王を倒しに向かう。
そのパーティーに入れてもらえば‥
「決まりね。」
でも、勇者のパーティーってどうやったら入れるのかしらね?
う~ん‥まぁ後で少し情報を集めましょっと。
今悩んでも解決する問題じゃないしね。
「今は取りあえず部屋に戻ろうかしら‥ここを出る準備もしないといけないしね」
ミシェルお姉様の部屋を出て自室へと向かう。
部屋の前に着くとニーナが待っていた。
「お嬢様‥」
「なにかしら?」
「お館様からお話はお聞きしました。」
「そう‥」
悲しそうな顔をしてニーナは言った。
「ミシェルお嬢様だけでなくアリシアお嬢様までもこの屋敷を去ってしまわれるなんて‥ニーナめは悲しゅうございます‥」
「大げさね~‥そんなに泣かなくても大丈夫よ?そのうちまたどこかで会えるわ。」
「うぅ‥失礼しました。お見苦しいところをお見せしてしまいました。」
「気にすることなんてないわ。それじゃ聖職の儀が始まる前に荷物まとめてくるわね。」
涙を拭いていつも通りの姿に戻ったニーナを背に私は部屋の中へと入った。
「あ‥お姉様‥大丈夫でしたか?」
「ミラが心配することなんてないわ?ただ、ちょっとやり過ぎちゃって罰を受けなきゃいけないけど‥」
「そ、そんなっ!!い、いったいどんな罰を受けたんですか!?」
「聖職の儀が終わったらこの家から出ていくことが私への罰よ。」
私は包み隠さずミラに伝えた。
どうせ隠したってバレるもの‥そんなことを隠したって意味がない。
「そんな‥お姉様は悪くないのにっ!!私がっ‥私がもっと‥」
「ミラ‥ダメよ?今回に関してはあなたは被害者、自分を責めるのは筋違いよ。それに私は別にこの罰を嫌とは思ってないわ?」
「でも‥でも」
「大丈夫、もう一度言うけれどあなたが心配する必要なんてな~いの。ほら、そんなに気にしてる暇があったら荷物まとめるの手伝ってくれない?」
自分を責め続けているミラをなだめながら、荷物をまとめるのを手伝ってもらうように促した。
「わ‥わがりまじだぁ~」
「ちょ‥ちょっと、ミラ?そんなに泣かなくても良いのよ!?」
大粒の涙を流しながらも私を手伝い始めたミラ。
一回思いっきり泣いた方がミラの気も少し楽になるかしら‥
そう思った私は少し見守ってみることにした。
そして数分後‥
「お姉様、こっちの衣服はまとめましたけど‥」
たくさん泣いて少し気が楽になった様子のミラはてきぱきと私の服をたたんでくれていた。
「ありがと、服はそれで最後ね。それじゃここに入れてくれる?」
私は右手を空中にかざしてアイテムボックスの魔法を使った。
「ふわぁ‥お姉様アイテムボックスが使えるんですね~羨ましいなぁ」
「ミラも覚えればいいじゃない?簡単よ?」
「お姉様ぁ‥私に空間魔法は難しすぎますよ~」
「私にできたんだもの、ミラにもできるわ。」
アイテムボックスは空間魔法の類いに分類される魔法だ。
覚えることができれば次元の違う空間に大量の物をしまっておける。
とても便利な魔法。
私の部屋にあるものを次々にアイテムボックスに放り込み、準備を進めていると、ミラが何かを思い付いたらしく私に話しかけてきた。
「あ、あの‥お姉様?ちょっとお話が‥あるんですけど」
「なにかしら?」
「わ、私‥お姉様と一緒に行きたいです。ダメ‥ですか?」
「そうね‥私はあなたにそれを答えることはできないわ。」
私がそう言うとミラの表情が重く沈んだ。
「そう‥ですよね‥私なんか着いていっても‥」
「話は最後まで聞くものよミラ?」
「えっ?」
「私があなたに答えられない理由はね、それを決めるのは私じゃないからなのよ?」
そして私はミラの肩に手を置いて言った。
「あなたが‥それを決めるの。」
「‥ッ!!なら私っお姉様に着いていきます!!」
「ふふっ‥そう‥本当にあなたはそれでいいのね?」
「はいっ!!お姉様と一緒にいるときが私にとって一番幸せですから!!」
さっきの重く沈んだ表情とはうって代わりいつもの明るい表情に戻ったミラ。
やっぱりミラに暗い表情は似合わないわね。
「わかったわ。それじゃ‥これからもよろしくね?」
「はいっお姉様!!」
「さて、それじゃあ早く荷支度しちゃいましょ?聖職の儀の時間が迫ってきてるわ。」
そこからの私とミラの作業は速かった。
あっという間に部屋の中にあるものを全て片付けながらアイテムボックスの中にしまってしまい、聖職の儀の時間までこれからの予定について話し合うことにした。
「まず今日ジョブを授かったらすぐにここを出て町に向かうわ。」
「町ってこの近くだと‥ナチャーロですよね?」
「そうね、街道に沿って歩いていけば30分位で着けるかしら。それで今日はひとまずナチャーロに着いたら宿をとってそこで休みましょ?」
しばらく宿屋に泊まれるぐらいのお金は貯金してあるから当分はお金には困らないと思っていたけど‥
ミラと一緒ってなると話は別ね。
早いとこお金を稼ぐ方法も見付けないといけなさそうね。
「お姉様‥私相部屋がいいです!!その方がお金も浮きますし‥そうしませんか!?」
「別に無理しなくてもいいのよ?当分一人一部屋借りられるだけのお金はあるから‥」
「だ、ダメ‥ですか?」
上目遣いでミラが私を見てくる。
その目遣い‥絶対男になんてやっちゃダメなんだからね?
速お持ち帰りされちゃうかも知れないんだから‥
「はぁ‥わかったわ。部屋は相部屋ね?」
「ありがとうございますっ♪‥‥ふふっ♪お姉様と一緒‥」
ミラと予定を話し合っていると私の部屋が誰かによってノックされた。
次回から作者の都合により投稿時間を夜の20時に変更いたします。
毎週日曜日投稿というのは変わりませんのでお間違えのないようにお願いします。
それでは今年もよろしくお願いします。
また来週お会いしましょう。