第5話
お久しぶりです。
クリスマスは皆さんはいかがお過ごしでしたか?
作者は独りショートケーキを食べてクリボッチを満喫してました。
例のワンピースに袖を通した私はミラが待つ自室へと向かった。
「ちょっと待たせちゃったかしらね~」
だいぶ衣装選びに時間がかかってしまったから、きっと退屈しているだろう。
そして自室の前の廊下を歩いているとミラの声が聞こえた。
「や、やめてください!!近づかないでください!!」
‥っ!!
まさか‥
一気に廊下を走り抜け自室の扉を開け放った。
そこには今にもミラのことを手にかけようとする実の兄がいた。
「ッチィ‥もう戻って来やがったかアリシアァ」
「お姉様ッ!!」
「‥‥自分が何をしているのかわかってるんでしょうね?」
静かに怒りつつ壁に立て掛けられていた自分の剣を手に取り鞘から抜き放つ。
そしてアッシュに突きつけた。
「へっ‥やる気かぁ?」
「えぇ、殺る気です。」
殺気を剣先に込めて一歩ずつ近付く。
私が一歩詰める度にアッシュが一歩下がる。
そしていよいよ壁際に追い詰められると‥
「ッチ!!それ以上近づいたらこの女がどうなるか‥わかってんだろォなァ!?」
ミラのことを人質に取り壁に背中をつけた。
そこで私の怒りは頂点に達する。
「どこまでも下衆な‥」
私は剣を一度鞘に戻し全身の力を脱力させた。
そして私が剣を鞘に収めたことで油断しているアッシュに向けて日頃の剣術の稽古で身につけた剣技を撃ち放つ。
『剣技 音切り』
この技は日頃の剣術の稽古をしているときにたまたま身につけた技。
納刀からの抜刀‥やることはそれだけ。
でもどんな剣にも負けない速さで斬り込むことができる。
「はぁッ!!」
「ッぐ‥」
アッシュが動くよりも速く正確に私の剣は峰でアッシュの腕をとらえた。
そしてミラを奪還する。
「ごめんなさい‥怖い思いさせちゃったわね」
「ふっ‥ぐすっ‥お姉様ぁ」
余程怖かったのかミラは私に抱かれると泣き出してしまった。
この埋め合わせは後でちゃんとしないとね
「さてさて?人質はいなくなってしまいましたけど‥もう抵抗はしないのですか?」
「ッテメェ調子付くんじゃねぇ!!」
「うるさいですよ‥」
吠えるアッシュに向けて私は更に剣を振り下ろした。
部屋のなかに肉と剣がぶつかる鈍い音が響く。
アッシュの打たれる度に発する短い悲鳴が聞こえなくなったところで私は手を止めた。
「生きてるかしら?アッシュ」
「~ッ!!デメェッ!!」
「私はもうあなたの事を兄とは思わない。」
そう言い放ち私は剣を逆手に持った。
そしてアッシュの股の上で静止させる。
「やっぱり生半可にやるのはダメね‥やるならしっかりとやらないと」
動けないアッシュの股に少しずつ剣先を近づける。
何をされるのか察した様子のアッシュは顔が真っ青になり首を振って懇願し始めた。
「ま、まさかだよなぁ?お、オイ‥その剣を止めろォ!!」
「もう子孫は十分に作ったでしょ?なら‥思い残すことはないわよね?」
私はミラの目を片手で覆い隠し、もう片方の手で握っていた剣を手放した。
そしてストン‥と剣先が床に刺さる音がした。
それと同時にアッシュの絶叫が部屋に響く。
「ギャアァァァァ!!」
白眼を向きブクブクと口から泡を吹いてピクピクと痙攣するアッシュ。
どうやらあまりの痛みとショックで気絶してしまったらしい。
そしてアッシュの股には深々と私の剣が刺さりズボンが血で赤く染まり始めていた。
「お、お姉さ‥」
「‥ごめんなさいね。せっかく来てくれたのにこんなに怖い思いさせちゃって‥本当にごめんなさい。」
ミラのことをギュッと抱きしめながら私はひたすらに謝った。
もっと警戒しておくべきだった‥こういうことになるのは容易に予想ができたはずなのに。
ミラと一緒に屋敷にいれることで浮かれて配慮が足らなかった。
こんなことじゃ友達失格ね‥
そんなことを思いながらミラを抱きしめていたら先程のアッシュの悲鳴を聞き付けたニーナが部屋に入ってきた。
「お、お嬢様!!先程悲鳴が聞こえましたが何かございましたか!?」
「あそこに転がってるのを介抱してあげて‥」
「は?あ、アッシュ様!?い、いったい何があったのですか!?」
「ミラのことを襲おうとしてたから‥怒りに任せてやったわ。」
「事情はわかりました‥が、これは流石にクライム様が黙ってはおりませんよ?」
「わかってるわ。お父様にはちゃんと私から説明する。」
そして何人かメイド達が部屋に入ってきてアッシュを連れていった。
メイド達が出ていった後お父様がいつもと変わらない無表情で私の部屋に入ってくる。
どうやら騒ぎを聞き付けてやって来たらしい。
行く手間が省けたわね。
「アリシアよ‥話がある。ついてこい。」
「はいお父様。」
私はお父様の後に続き部屋を出た。
そして長い廊下を歩き、ある部屋の前に連れてこられた。
「この部屋を覚えているか‥アリシア。」
「‥はい。」
今まで入ることが禁じられていた部屋‥
ミシェルお姉様の部屋だったところだ。
「中に入れ、そこで少し話をしよう。」
「はい。」
促されるがままその部屋の中へと入る。
この部屋だけ時が止まっているかのように、昔とまったく変わっていない。
家具にホコリが積もっているところを見るにメイド達もこの部屋に入るのは禁じられていたようだ。
「そこに座れ‥」
指差された椅子に私は腰かける。
そしてテーブルを挟んで目の前にお父様が座った。
「アッシュの生殖器を断ち切ったらしいな?なぜそんなことをした。」
「あいつがミラを襲ったからです。」
「‥そうか。あやつならやりかねんな‥それに対するお前の怒りもわかる。だが、今回は明らかにやりすぎだ。」
「わかってます。」
やりすぎなのはわかってる。
そして今からお父様が言いたいことも‥
「過剰な防衛は罪だ。私は屋敷の当主としてそれを罰する義務がある。」
「はい‥如何様な罰でも謹んでお受けします。」
「そうか覚悟はできているようだな、では聖職の儀で職を授かった後‥お前から家名を剥奪する。二度とこの家の敷地を跨ぐことも許さん。」
「わかりました。」
予想していたより遥かに軽い罰だ。
それに私にとっても都合がいい。
「以上だ。では荷造りを進めておけ‥部屋のものは全て持っていって構わん。」
それだけ言うとお父様は部屋から出ていった。
部屋のものを持っていっていいなんて‥最後の情けかしらね。
まぁ、でも剣を持っていってもいいってのはありがたいわ。
自衛ができるからね。
「さて‥っと、じゃあ部屋に戻って荷造りを始めようかしらね。」
このこと‥ミラに話すべきかしら。
自分のせいで‥って背負い込んじゃったりしちゃわないかしら。
ん~‥まぁでも結局荷造りをしてるとこを見られたらわかっちゃうわよね。
「はぁ‥気は進まないけれど、ちゃんとミラにもこのことを話す必要がありそうね。」
ミラにもこのことを話さないといけないということに少し頭を悩ませつつも私はイスから立ち上がった。
「それにしても‥この部屋懐かしいわね。」
今はいないミシェルお姉様の部屋‥
最後に入ったのはいつだったかしら。
部屋から出る寸前、私は本棚のある本に目が止まった。
「この本‥私が子供の頃よくミシェルお姉様が読んでくれてたっけ。」
ホコリを被っているその本を手に取りパラパラとページを捲っていると‥
「あら?これは‥」
開いたページから一枚の紙がヒラヒラと私の足元に落ちてきた。
その紙を拾い上げ目を通すと、そこには衝撃的な事が書いてあった。
軽く匂わせぎみな終わり方でごめんなさい。
次回が気になるように書いてみたつもりです。
次回‥紙に書いてあった内容とは‥
お楽しみに。
それでは来週のこの時間にまたお会いしましょう。