第37話
37話目二章開幕です。追記タイトルが新しくなりました。お間違えの無いようお願いします。
それ以降この馬車を魔物が襲ってくることはなかった。そして少し予定より遅れはしたものの私達はついに王都へとたどり着くことができた。
騎手から王都に着いたとの報告を受け、私は優しくエルを起こす。
「エル、エル?」
「う~ん、ふぁ‥‥んん‥‥もう着いたの?」
私の太ももからゆっくりと体を起こし、大きなあくびをしながらエルは問いかけてくる。
「着いたわよ、さっ降りましょ?」
「うん!!」
エルの手を引いて馬車を降りると目の前には長い人の行列と、王都の大きな関所が見えていた。
今からこの人の列に並んで検問を通らないといけない。っとその前にここまで運んでもらったお金を払わないとね。
馬車を引いていた騎手の元へと向かい、お金を払おうとすると‥‥
「あの、お金は‥‥」
「あぁ!!代金は要りませんよ?先ほど魔物を倒していただいたので‥‥それで構いません。」
「あれぐらいどうってことないんだけど‥‥ホントにいいの?」
「構いません!!」
騎手は代金は貰えないとひたすらに断る。別にあれぐらいの魔物程度なんてホントに片手間で倒せるんだけど‥‥でもこの人は代金は要らないって頑なに言っていて折れそうにない。
なら、ここはこの人の厚意に甘えようかしらね。
「なら、そういうことにしておくわ。それじゃありがとね?」
「いえいえ!!こちらこそ‥‥王都を楽しんでください。」
礼を言って別れ、私達は人の列の最後尾に並ぶ。そして自分達の番が来るのを待っているとレイラが飽き飽きしたようにぼやく。
「長い~‥‥もぅどんだけ厳重なの~?」
「仕方ないでしょ?ここは人の王がいる場所なんだから厳重にもなるわよ。」
「それでもまだまだたっくさん並んでますよぉ~」
確かにミラの言うとおりさっきから全然人の列が動いていないように感じる。余程今検問が厳しいのかしら?
王都へと続く長い行列に並び、ひたすらに待つこと2時間ほどでようやく私達の番がやって来た。
「はい、次の人身分を証明できるものを見せてください。」
「冒険者カードでもいいかしら?」
「大丈夫です。」
私とミラ、そしてエルは自分の冒険者カードを衛兵に差し出した。一方のレイラはというと‥‥
「それじゃ私もこれで」
そう言ってレイラが差し出したのは何と私達と同じ冒険者カードだった。しかも金色に輝いている。
「はい、4人分の冒険者カードを確認しました。そちらのスライムは‥‥使い魔という事でよろしいですか?」
「間違いないわ。ここに紋章があるでしょ?」
スラちゃんを抱いて小さく刻まれている紋章を衛兵に見せる。
「確認しました。こちらはお返しします。それではお通りください。」
あっさりと通ることを許してくれた衛兵に思わず私は‥‥。
「あら、意外とあっさり通してくれるのね?」
「あなた方は特別ですよ。なにせゴールドランクの冒険者パーティーですからね。他の人はこうはいきませんよ。それに今は勇者様のパーティー選抜大会が行われるので‥‥更に厳戒体制で検問をやらせてもらってますから。」
「そういうこと、理解したわ。それじゃ遠慮なく私達は行くわね。」
納得できた私はみんなと王都の中へと入る。王都の街並みを歩き、泊まれる宿を探す。その最中私はさっき気になったことをレイラに問いかけることにした。
「そういえばレイラ‥‥あなたゴールドランクの冒険者だったの?」
「ん~?違うわよ?」
キョトンとした表情でレイラは答える。
「じゃあなんであのカードを持ってるのよ。冒険者にならないとあれは手に入れられないでしょ?」
「答えを先に言うのであれば‥‥あれは私があなた達とあの兵士の人に見せた幻覚よ。こんな感じでねっ。」
レイラがこちらに出した掌の上に突然さっきの冒険者カードが現れた。
「あなた達のを見て真似してみたの。よくできてるでしょ?ちゃんと触った感じもするのよ?」
それはもう幻覚といっていいのかしら?触った感じまで相手に幻覚として見せることができるなんて‥‥ってかそんなスキルを持ってるレイラがやばすぎるのよね。さすがは元魔王。
まぁ結果的にあの衛兵の人をだましたことにはなるけれど、レイラのことは私たちが見張っておくし彼女も国王に手を出したりすることはないだろうから問題ない‥‥はず。だけど一応レイラに念を押しておいた方がよさそうね
「はぁ、まぁ何とか一緒に入れたから良しとはしておくけど‥‥くれぐれも問題なんか起こさないようにね?」
「ふふふっわかってるわよ~。さすがの私もこんなところで問題を起こしたりなんてしないわ。噂の勇者ちゃんとは戦いたくないからね。なんなら仲良くしたいもの。」
流石のレイラも問題を起こすつもりはないらしい。本心かはわからないけれど、まぁ意思確認ができただけ良しとしましょうか。
一先ずレイラの意志を聞いて安心した私はまた宿探しを始めるのだった。
それではまた来週のこの時間にお会いしましょ~。




