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第33話

元魔王様のお話~


「そ、それで?私たちをどうするつもりかしら?」


アイテムボックスから取り出した剣に手をかけながら、私は目の前にいる元魔王のレイラに問いかけた。


「そんなに警戒しなくてもいいわ~。別にアリシアちゃん達を殺そうなんて考えてないから。」


「その保証がどこにあるの?」


「保証‥‥ね、私がもし‥‥その気になれば、もうあなた達み~んなここにはいないわよ。」


その言葉を発したと同時にレイラからとてつもなく強い殺気が放たれた。その殺気は強すぎて私たちの目にはっきりと見えるほど可視化されている。

その殺気にさらされ私もエルも、スラちゃんも一歩も動くことができなかった。一歩でも動いたら死ぬ‥‥と体が理解してしまい動こうとしなかった。


「どう?これでわかってくれた?」


殺気を解いてにっこりとこちらに笑いかけてくるレイラ。私はそれにただただ頷くことしかできなかった。


「ふふっ♪結構、物分かりがいい娘は好きよ?」


「‥‥あなたが私たちのことをどうにもしないことはわかったわ。でも、ならどうして元魔王のあなたがここにいるのよ。」


「それにはね~深~い訳があるのよ。まぁそこのお友達が起きたらゆっくり話してあげるわ。」


そしてミラが復帰するのを待ってからレイラは話し始めた。


「まずは私が現役で魔王だった時の話をしないといけないわね。」


あれは私が魔王として勇者と戦っていた時のこと‥‥





「どうしたの勇者、それで終わり?」


ボロボロになり目の前で膝をつく勇者に私は問いかけた。彼の仲間はすでに戦闘不能になり床にぼろ雑巾のように転がっている。そのため勇者のスキルである仲間の力を吸収して強くなるアレももう使うことはできない。


「はぁ~先代魔王はとんでもない強さの勇者一人にやられたって聞いてたのに拍子抜け。仲間の力を借りてもそんなものか‥‥。」


はぁ~‥‥と一つ大きくため息を吐き出していると、目の前で跪く勇者がギリリと悔しそうに歯を食いしばりながらこちらを睨み付けてきた。


「くっ‥‥そが」


「口は動いても体は動いてないわよ?」


こちらを睨み付けてくる勇者の前に私は手をかざし、言う。


「それじゃあこれでお終い。今回は私たち魔族の勝ちよ。」


手のひらの先に魔力を凝縮させ勇者へとむけて魔力波を放ち消し飛ばす。すると辺りで虫の息だった勇者の仲間たちも光となって消えた。

その瞬間私の頭に声が響いた。


「第5回聖魔戦は魔王の勝利が決定しました。」


「神の声‥‥ね。久しぶりに聞いた気がするわ。」


久しぶりに聞いた神の声に懐かしさを感じていると、目の前にピロンと音を立ててある画面が現れた。


「えっと~?何々‥‥このまま魔王として勇者を倒し続けますか?それとも第6代魔王に引き継ぎますか?」


こんなの決まってるじゃない。


「次の魔王に引き継いで頂戴。私はもう自由に生きたいわ、勇者の相手も面倒だしね。」


そういった直後私の中で枷になっていた何かが外れた気がした。そして新たに画面に文字が書かれる。


「第6代魔王への引継ぎが完了しました‥‥ね。」


次の魔王は誰が選ばれるのかしら、まぁ私には関係ないわね。これで私は自由の身‥‥これから今までできなかったことをたっくさんやってやるわ~。

と、そう息巻いていた時だった。


「ま、魔王様ッた、大変です!!」


「騒々しいわよ。いったい何があったの?」


「四天王の皆様方が謀反、何者かに引き連れられ魔王様を討伐するために動き出しています!!」


‥‥ふぅんなるほど。とうとう私が邪魔になったってわけね。まぁ四天王全員を相手取っても負ける気はしないけど、それを率いてるやつが少し気にかかるわ。

試しに戦ってもいいけど面倒だし、魔王の時にはできなかったあれをやってみようかしら。


「じゃ、面倒だから私逃げるわ。多分もう戻ってこないと思うから、そのつもりで‥‥それじゃ今までご苦労様ジャック。」


「えっあ!?ま、魔王様どちらへッ!!」


今までずっと尽くしてくれたジャックに別れをつげ、私は魔法で魔族領を離れ人間界へとやってきた。そして人間に扮し、ひっそりと喫茶店を始めた。





一通り話し終えたレイラに確認のため問いかける。


「つまりあんたは配下に命を狙われたからここに逃げてきたってわけ?」


「そういうこと~、それにお菓子を作るってことをやってみたかったからこうして喫茶店を営んでるってわけ。」


「理解したわ。それにあなたはもう魔王じゃないから人間を如何こうするつもりもないんでしょ?なら私は別に何も言わないわ。」


私たちが如何こうできる相手でもないし、下手に刺激するよりかはこのまま放っていた方がいい。その方がよっぽど安全。


「わかってくれてうれしいわ。もしわかってくれなかったら‥‥消しちゃうとこだった♪」


にっこりと笑いながら軽く言うレイラ。もし私が間違った選択をしていたら本当に消されていたかもしれない。そう思うと背筋にゾクリと悪寒が走る。


「まぁ、私はここでこうやってひっそりと喫茶店をやってるからまた気が向いたら来てちょうだい?というか絶対来てねっ?もし来なかったらアリシアちゃんのベッドに忍び込んで襲っちゃうぞ~?」


手をワキワキとさせながら危ない目でこちらを見てくるレイラ。レイラなら本当にやりかねない。そうなってしまえば安心して眠れる夜なんてなくなってしまう。


うん、また絶対来よう。ベッドに忍び込まれたら何をされるかわかんないしね。


私はそう心に決めて出された美味しい紅茶を飲みほした。

それではまた来週のこの時間にお会いしましょ~

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