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第31話

皆さんは甘味‥‥といったら何を思い浮かべますか?

エルとの稽古を終えて、街へと戻ってきた私たちは甘味を求めてさ迷っていた。


「ギルドでオススメのお店とか聞いとけばよかったわね~」


こうもたくさんお菓子の店や喫茶店があるとなかなか、ここっ!!という店を見つけるのが難しい。ギルドでオススメのお店を聞いていれば迷うこともなかったのに‥‥。


「でも、こういう風にお店を探すのって楽しくないですか?こう‥‥何て言うか凄いワクワクするんですよね。」


「まぁそうね~、こういうのもたまにはありかもね。」


ミラと話しているとひっきりなしに手を繋いでいるエルが鼻をならし、ずっとある方向を見つめていた。


「エル?どうかした?」


「アリシアお姉さん、あっちにすっ‥‥ごく良い匂いがするお店がある。」


そう言ってエルが指差した方向は私たちが今歩いている大通りから逸れ、裏通りへと入る道だった。


「裏通り‥‥か。」


「隠れた名店があるんですかねっ!!」


エルの嗅覚は獣人ということもあり相当発達しているはず、そんなエルが言うのだから間違いない‥‥はずっ。

その店がミラの言うとおり隠れた名店とかかもしれないし、行ってみる価値は十二分にありそう。


「わかった。じゃあエル?そこまで案内してくれるかしら?」


「うん任せてっ!!こっちだよ!!」


道案内を頼むと、迷わず小走りでエルは裏通りの奥へと走っていく。


「さっ、ミラ行くわよ。」


「はいっ!!」


私達もエルを見失わないようにその後を追う。そしてエルが止まった場所には間違いなく一件の喫茶店があった。


「アリシアお姉さんここだよ!!ここから凄い良い匂いがするっ!!」


「‥‥こんな裏通りで分かりにくいとこに喫茶店なんて。」


「まさに隠れた名店っぽいです!!入ってみましょうよお姉様~。」


確かに雰囲気はミラの言う隠れた名店ってやつにピッタリだけど‥‥う~ん、入ってみるべきかしら?あ、でも‥‥。

なやんでいると、待ちきれなくなったのかミラがその店の扉をガチャリと開けて中へと入ってしまう。


「ごめんくださ~い!!」


「あ、ちょっとミラっ!!」


先に入ってしまったミラの後ろを追いかけるように私も中へと入ると‥‥一人の女性が店の奥から現れ私達を出迎えた。


「あら‥‥お客さん?ずいぶん久し振り、さぁさお好きな席に座って?今メニューを盛ってくるわ。」


久し振りの客‥‥って、まぁこんなに分かりにくいところにお店を構えてれば人もなかなか来ないわよね。

そんなことを思いながら空いているテーブル席に座り、さっきの女性を待っていると‥‥。


「お・ま・た・せっ♪」


「ひぅっ!?」


急に後ろにから声が聞こえ、肩にポン‥‥と手を置かれる。あまりに驚き思わず変な声が出てしまった。


「ふふっ、驚かせてごめんなさい?久し振りのお客さんだから舞い上がっちゃって‥‥あぁ、これメニューね。その中に書いてあるものなか何でも作るわ。」


イタズラにクスリと笑いながら私たちの前にメニューと水を並べるその女性。

兎に角不気味だわ‥‥気配も音もなく急に私の後ろをとれるなんて、いったいどんなスキルを使ったのかしら。

警戒心を強めつつその女性から目を離さずにいると私の視線に気が付いたのか、少し頬を赤く染めながらくねくねとし始めた。


「そんなに見つめられると‥‥照れちゃうわ~。ふふっ♪」


「うっ‥‥。」


ダメだ、この手の人は私は苦手らしい。今まで人に嫌悪感を抱いたことはあっても、苦手意識を持ったことはなかったけれど‥‥今ハッキリとわかった。私はこの人が苦手だ。

私が苦手意識を抱いている間にもミラとエルは早々に何を頼むのか決めたしまったらしく、残るは私のみ‥‥となった。


「ほらお友達はもう決めちゃったわよ?残るは~あ・な・ただけ‥‥。」


なぜかこの女性は私の後ろから離れず、しかも喋るときはずっと耳元で囁くように喋ってくる。

一刻も早く離れてもらいたいという思いから私もミラと同じものを注文した。


「じゃあ注文を確認するわね。えっと‥‥しっとりふわふわパンケーキを2つと濃厚プルプルプリン・ア・ラ・モードを一つで良いのね?」


「大丈夫ですっ!!」


「わかったわ。すぐに作ってくるからくつろいで待っててくれる?」


そしてチュッ‥‥と投げキッスを私にぶつけるような仕草をしてその女性は店の奥へと消えた。


「うぅっ!!寒気がする‥‥。だ、ダメだわ私、あの人苦手。」


「えぇ~?そうですか?私は面白くていい人だと思いますけど‥‥。」


そんな噂をしていると‥‥


「ふふっ♪私の話?」


「ッ!?な、い、今さっき入っていったばっかりじゃない!!」


再び私の後ろで声が聞こえ、思わず立ち上がって振り返ると先程奥へと入っていったはずの女性がそこに居た。


「私ぐらいの腕になるとこのぐらい一瞬よ~♪ふふっ、ねぇ驚いたかしら?」


クスクスと笑うその仕草に、私のなかで何かがプツンと音を立てて切れた。


「あ~ッ!!もう許さな‥‥あむっぐ!?」


怒ろうとして口を開いた所に、間髪入れずフォークに刺さったパンケーキが放り込まれる。


「ほらほら怒らない怒らない、ごめんなさいね?ちょっとからかいすぎちゃった。それで、どう?このパンケーキ美味しいでしょ?」


「‥‥‥‥美味‥‥しい。」


口の中に放り込まれたパンケーキはしっとりとしていて尚且つふわふわでバターの香りがとても香ばしい、今まで食べたことがないぐらい美味しいパンケーキだった。


「それは結構、ほらもう一口‥‥あ~ん?」


にっこりと笑いながらもう一切れフォークで刺し、こちらへと差し出してくる。


「じ、自分で食べれるわよ!!‥‥もぅ調子狂うわね。」


「あら残念。もっと甘えても良いのよ?」


クスクスと笑う彼女から自分の分のパンケーキを受け取り席につく。

すると何食わぬ顔で私のとなりに彼女が座った。


「‥‥何で私のとなりに座るのよ。」


どこまでも付きまとってくる彼女に少しムッとしながら問いかける。


「久し振りのお客様だもの?こうやって~間近で接客しなきゃ、それに他にお客さんなんて来ないし~‥‥ねぇ?ほらほらお友達はもう食べ始めちゃってるわよ?」


ミラとエルは既に自分のお菓子を楽しんでいる。二人ともほっぺたが落ちそうな表情を浮かべている。


「お~いしぃ~です!!こんな美味しいパンケーキ初めて食べましたっ!!」


「えへへ‥‥幸せ。」


「それはよかったわ~。パンケーキにもっと蜂蜜かける?そっちのお嬢ちゃんは生クリーム増し増しにする?」


「「お願いしますっ!!」」


すっかりミラとエルは彼女が作るお菓子の虜‥‥まぁ美味しい‥‥美味しいけどっ!!

きゃっきゃっとはしゃぐミラ達を眺めながら美味しいパンケーキを少しずつ食べ進めるのだった。

それではまた来週のこの時間にお会いしましょ~

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