第26話
26話まできました。ブクマも少しずつ増えて嬉しい限りです。
いつもありがとうございます。
村へと帰った私たちは村長の家を訪れたのだが‥あいにくすでに眠りについてしまっていたようで声をかけても反応はなかった。
「うーん、仕方がないわね。置き手紙と一緒にここに置いていきましょっか」
本当は会って感謝の言葉を言いたいところだったけどなるべく今日中にここを立ち去りたいからね。
村長の家の前に感謝の言葉を書き綴った置き手紙とピカピカに洗った鍋を置いて私は村長の家を後にする。
「あっお姉様もういいんですか?」
「えぇ、もう村長はもう寝ちゃってたみたいだから置き手紙を一緒に置いてきたわ。」
さて、これでこの村に用事はないわね。さっさとナチャーロに戻りましょ。
「さっじゃあナチャーロに帰りましょ?」
「でも今って馬車走ってないですけど‥歩いて帰るんですか?」
「そんなわけないでしょ?こうやるのよ。」
首をかしげるミラの前で私は右手を前に突き出して魔法を発動する。
「ゲート」
そう唱えた私の前にナチャーロへとつながるゲートが現れた。
「うえっ!?えぇっ!?これなんですか?」
「ゲートっていう魔法よ。簡単に言っちゃえばアイテムボックスの上位魔法ね。」
ゲートは一度鮮明に記憶した場所ならどこでも移動できるという便利な魔法だ。ただかなり魔力の消費が大きい上に空間魔法の上位の魔法だから使える人は少ないけど‥今の私なら全然問題ないわね。
「この中に入ればナチャーロまでひとっ飛び~っていう便利な魔法なのよ?さっ入った入った~」
ミラの背中を押してゲートの中へと押しやる。そしてミラをゲートの中へと押しやった後私はエルへと手を差し伸べた。
「さっエル行きましょ?」
「う、うんっ!!」
そしてエルの手を引き、二人でゲートをくぐると次の瞬間には私達はナチャーロの街の近くへと辿り着いていた。
「ねっ?便利な魔法でしょ?」
「すごい便利ですけど‥‥どうしてムール村に行くときにこれ使わなかったんですか?」
「この魔法はね一回行ったことがある所じゃないと使えないのよ。だから最初はわざわざお金を払って馬車で行ったのよ。」
まぁ明確に座標がわかってれば行ったことがなくてもその周辺には飛べるんだけどね。あんまり確実じゃないし、変なところに飛ばされても困るからやらないけど‥‥
「そういうことだったんですね~納得ですっ」
納得するミラの傍らでエルがキラキラとした眼差しを私に向けているのに気が付いた。
「や、やっぱりアリシアお姉さんは凄いよ!!僕あんな魔法見たことないもん」
「大丈夫よ~このぐらいエルもすぐに使えるようになるわ?」
ポンポンとエルの頭を撫でながら私達はナチャーロへと歩く、そして真っ先に私達はギルドへと向かった。依頼のキャンセルをしないといけないからね。それに‥‥エルの冒険者登録もしたい。
そしてギルドに着くとエルがギルドを見て首をかしげていた。
「アリシアお姉さん‥ここどこ?」
「ここは冒険者ギルドよ。」
「冒険者‥‥ギルド?僕も冒険者になれるの?」
「もちろん、そのつもりよ?嫌だったかしら?」
エルにそう問いかけるとブンブンと激しく首を横に振った。
「うぅん!!」
しっかりとしたエルの意思を聞き、満足した私は首を振って乱れていたエルの髪を手櫛で整えギルドの中へと入る。そして受付へと向かうとお馴染みの受付嬢が私達の担当をしてくれた。
「お帰りなさいませアリシアさん、ミラさん。‥‥とあれっ?その子は‥‥」
「新しい私達のパーティーメンバーよ。この子の冒険者登録をしてもらいたいんだけど‥いいかしら?」
「もっ‥もしかしてですけど‥‥その子も凄く強かったり‥‥します?」
おずおずといった感じで受付嬢は私の顔とエルのことを交互に見ながら問いかけてきた。
「さ~てね?どうかしら?まぁ明日にでもナジルに見定めてもらいましょ?一先ず今日はもう遅いし冒険者登録だけお願い。」
「わ、わかりました。ではこちらの書類の記入をお願いします。」
「はいはいっと‥‥あ~ミラ、あっちでエルと一緒にこの書類書いててくれる?」
「わっかりました~!!エルちゃんあっち行きましょ?」
「う、うんっ!!」
そしてミラはスラちゃんとエルと共に酒場のテーブルの方へと向かった。それを見送った私はもう一つの用件を受付嬢に切り出す。
「あと、今回受けた依頼キャンセルしたいんだけど‥いいかしら?」
「あっ‥突然変異のワーウルフの依頼ですね?わかりました。違約金等は発生しませんのでご安心ください。」
依頼のキャンセル手続きが終わる頃書類に必要事項を書き終えたミラ達が受付へと戻ってきた。そしてエルの書類を受付嬢に手渡した。
「はい、確かに受け取りました。名前は‥エルちゃんで間違いないですね?」
受付嬢の問いかけにエルはコクコクと頷く。
「他に記入漏れも無さそうですね。では少々お待ち下さい。」
書類を手にした受付嬢は奥の部屋へと入り、そして少しすると鈍く銅色に輝くカードを持って戻ってきた。
「はい、こちらがエルちゃんのギルドカードになります。」
鈍く銅色に輝くギルドカードにはしっかりとエルの名前が彫ってある。多分明日にはコレが金色に輝いていることだろう。ナジルの驚く顔が楽しみね。
エルは受け取った自分のギルドカードに吸い込まれるように見入っている。
「さてと用件もすんだし‥明日また来るわ。ナジルにも伝えておいてくれる?」
「わかりました。しっかりと伝えておきますっ」
そうしてギルドを後にした私達は宿屋へと戻ってきていた。今から始めるのはもちろん‥‥アレだ。
「さっエル?準備は良い?」
「ふえっ?じゅ、準備‥ってこれから何かするの?」
「エルの願い‥叶えてあげるって言ったでしょ?ほら、ここに頭のせて?」
「う、うん‥‥」
なにがなんだかわからない様子のエルだったが私の言葉に従って私の太ももの上に頭を預けた。
「良い子ね、そのまま動いちゃダメよ?スラちゃん、ミラージュを解除してもらえる?」
「まかせるっ!!」
スラちゃんがミラージュを解除すると今まで隠れていたエルの耳や尻尾が現れる。
「これでよしっ‥じゃいくわよ~?」
右手で耳掻き棒を持ち、それをゆっくりとエルの獣耳へと挿し込んだ。
「ふわ‥‥」
「大丈夫?痛くない?」
「うん‥なんか変な感じだけど‥痛くはない‥かな?」
「そう、じゃあ続けるわね。」
挿し込んだ後カリカリとエルの耳の中を擦る。
「わぅ‥んぅ‥」
耳掻き棒で優しく擦る度にエルの口から自然に声が漏れる。顔も蕩けてきているし、気持ちよくなってくれているみたいね。
そうして片方の耳を耳掻きし終える頃にはエルは太ももの上でスヤスヤと寝息をたてていた。
「エルちゃん気持ち良さそうに寝てますねっ」
「そうね、きっと疲れてたのよ。」
周りには自分を狙うワーウルフや冒険者がいた中で満足に眠れた日はないだろうからよっぽど疲れがたまってたんでしょうね。私の力で少しでも癒されてくれればいいけど‥
残った方の耳も耳掻きをすると、エルの体が緑色の光に包まれた。しっかりと私の力が発動したことを確認してエルを起こさないようにベッドの上に移動させる。
「ふふふっ♪エルちゃん起きたらビックリですねっ」
「えぇ、喜んでくれるといいけど‥‥ね。」
スヤスヤと気持ち良さそうに寝ているエルの寝顔を眺めていると私の頭にいつものあの声が響いた。
『熟練度が1上昇したためボーナスステータスを付与します。』
そろそろこっちの作品もアルファポリスに投稿したいと考えてます。
あくまでもメインはこちらなので更新が止まることはありませんのでご安心ください。




