第23話
一週間ぶりの作者です。学生の時にもっとよく国語を勉強しておけばよかった‥‥と日々の執筆や改稿で後悔してます。
「っ!?」
茂みががさりと音を立てた瞬間ミラの体がビクッと跳ねる。
「も、もしかしてもう一人のお客さんって‥」
私が言った言葉の意味を理解した様子のミラは音のした茂みへとゆっくりと目を向けた。するとそこから飛び出してきたのは‥‥
「きゅっ?」
「ふえっ?」
私たちの前に飛び出してきたのは赤く大きなクリクリの目をした白兎だった。予想とは違った来訪者にミラは思わず素っ頓狂な声を上げて固まってしまった。
「はぁ~‥もうびっくりしちゃいました。」
「思わぬ来訪人ね。この辺に生息してるのかしら?」
ひょいっとそのウサギを抱き上げるとスラちゃんが突然プルプルと体を震わせながら私の前で飛び跳ね抗議し始めた。
「ずるいっ!!ずるいっ!!ごしゅじんそこすらちゃんのっ!!」
「えっと‥‥もしかしてスラちゃん嫉妬してるの?」
そうスラちゃんに問いかけるとスラちゃんは激しくうなずいて肯定した。まさかスラちゃんがこのウサギに嫉妬を覚えるなんて‥想像もしていなかった。意外と人の感情というものも芽生えてきているのかもしれないわね。予想だにしていなかったスラちゃんの嫉妬に驚いていると‥
「スラちゃん?嫉妬はだめですよ~」
ミラがスラちゃんを抱き上げ、めっ‥と諭すように言った。
「でもっ‥でも‥‥」
しかしスラちゃんは納得がいかない様子。
「そんなに心配しなくても大丈夫よ?誰もスラちゃんの居場所を奪ったりなんかしないわ。それにほら‥」
納得がいっていないスラちゃんの前で私は抱きかかえていたウサギを地面にそっと戻した。するとまさに脱兎のごとくどこかへと逃げ去ってしまう。
「ねっ?すぐいなくなっちゃったでしょ?あの子も私の腕の中を居場所になんかする気もなかったの。だから安心して?」
私の言葉でようやく納得がいったらしいスラちゃんはぴょんとミラの腕を飛び出し私の元へと飛び付いてくる。
「えへ、えへへ‥‥あんしん」
すりすりと体を擦り付けてくるスラちゃんを撫でながら、私は一つ呟くように言った。
「で‥‥あなたはいつまでそこにいるつもりなの?」
「‥‥ッ!!」
私がそう呟くと同時に再び茂みががさりと音をたてる。
実はさっき白兎が飛び出してきたときから気配は感じていた。ただこれだけ隙をさらけ出していたのに一向に出てくる気配がなかったから、こちらからコンタクトをとることにしたのだ。
「お腹、減ってるんでしょ?」
「‥‥‥‥」
問いかけるが茂みの中にいる者は答えない。
昔から沈黙は肯定の意っていうけれど‥あながちそれも間違いじゃなさそうね。
「毒とかは入ってないわ。第一これは私達も食べるしね。」
できた料理を器に盛り付け私はミラとスラちゃんの前に置く。
そしてもう一つ空の器に料理を盛り付けて私は立ち上がり、茂みの近くに歩み寄った。
「はいこれ、あなたの分。もし食べるなら熱いから気を付けてね?」
茂みの前に料理が盛られた器とスプーンを置いて私はミラ達の元へと戻り、自分の分の料理を盛り付ける。
「え‥あ、お、お姉様?」
「ほらミラ?早く食べないと冷めちゃうわよ?」
何が起こっているのかわからない様子のミラ、今はその方が好都合だからあえて私は説明をはぐらかす。
変に理解されて余計な行動を起こされても困るからね。私は自分の料理をスプーンで掬い口へと運ぶ。
「んっ‥おいしい。我ながら良い味だわ。」
私が食べている姿を見てミラは首をかしげながらも料理を一口口に運ぶ。
「ふわ‥‥お姉様っ!!これ美味しいですっ!!」
一口食べたミラは目を大きく見開き私の方を向いて言った。
「でしょ?」
「これ、何て言う料理なんですか?私こんな料理見たことないですっ」
「これはね‥カレーって言う料理なの。」
「かれぇですか?」
「そう、カレーよ。凄い香りが良いでしょ?これには何十種類もの香辛料を使ってるの。」
私の言葉にミラはスプーンを口にしたまま固まった。
「え‥‥ええっ!?香辛料を何十種類もですかっ!?」
「そうよ?」
そうと聞くなりミラは少しずつカレーを掬いゆっくりと時間をかけて味わい始めた。
「あら?何でそんなに遠慮しながら食べてるのよ?」
「だ、だってこれ‥‥超高級料理じゃないですかっ!!」
この世界では香辛料の類いは高級品として市場で取引されている。肉などの下味に欠かせない黒胡椒だってたった100gで金貨一枚ほどの値段がつく。それほど香辛料は貴重で高価なの。
「別に遠慮しなくても良いのよ?カレーの素はまだまだ一杯あるから。それにおかわりだってたくさんあるし‥」
「あう‥でも~」
「遠慮して食べるならこの残ってるカレー全部スラちゃんに食べてもらうわよ?」
「~~っ!?たっ‥食べますっ!!いっぱい食べますからおかわりくださいぃ~!!」
慌てたようにミラは最初と同じペースで食べ始める。それを見て満足した私は一つ頷き茂みの方へと目を向けた。
すると先ほど置いたはずの器がなくなっている。そして茂みの中からはふ~‥ふ~‥と熱いものに息を吹き掛けて冷ましているような息づかいを感じる。
‥‥どうやら食べてくれたみたいね。
食べてくれていることに一安心しながら私は茂みへ再び一声かける。
「おかわり‥‥欲しかったらお皿さっきの場所に置いてくれる?」
「‥‥‥‥!!」
そう声をかけると茂みから空っぽで綺麗に縁まで舐めとられたお皿が出てきた。
それを確認した私は一度立ち上がりその器を回収して再びミラ達の元へと戻ろうとしたその時‥‥
「わぅ‥‥ま、まって!!」
後ろから呼び止められたかと思うと次の瞬間には後ろから腰をがっしりと掴まれていた。
ゆっくりと後ろを振り返るとそこには純白の耳と尻尾を生やした可憐な少女が宝石のように真っ赤な目から涙を流しながら佇んでいた。
新キャラ登場の予感!?
次回をお楽しみに‥‥




