第21話
お久しぶりの作者です。この作品が外出を自粛している皆さんの暇潰しになれば幸いです。
馬車に揺られること数時間ほどで件のムール村へとつくことができた。結局この村まで馬車の乗客は私とミラしかいなかった。
「ん~っ‥‥ようやく着いたわね。」
馬車を降りた私はずっと座っていたせいで縮まっていた背筋を伸ばし、大きく息を吐き出す。
「あっ!!お姉様あそこに鉱山が見えますっ」
そう言ってミラが指した方向にはごつごつとした岩肌が露出した鉱山があった。恐らくあそこが突然変異したワーウルフが目撃された場所ね。
「あそこに多分依頼のワーウルフが隠れてるのね。今頃私達より先に来た冒険者達が血眼になって探してるんじゃないかしら?」
「わ、私達も早く行った方が良いんじゃないですか?」
「焦らない焦らない、まずはここの人達にワーウルフについて聞いて回ってみましょ?」
焦りの色がにじみ出ているミラを落ち着かせ、まず私達がやるべきことを伝える。
「わっかりました!!じゃあ早速私スラちゃんと一緒に聞きに行ってきますね!!」
「あ、ちょっとミラ‥‥もうせっかちなんだから」
最後まで私の話を聞かずにミラはスラちゃんと共に村の中へと駆けて行ってしまった。まぁ手分けして聞いて回った方が早くいろんな情報を集めれるからこれでもいっか。
そう割りきった私も村の中へと入る。
「‥‥ずいぶん作物が荒らされてるわね。」
村の中へと入り目に入った畑の作物は見るも無惨なほどに荒らされていた。これも件のワーウルフの仕業かしら?
荒らされたらしい畑を見渡していると畑の中心で茫然と立ち尽くす一人の青年が目に入った。彼に話を聞いてみようかな。
「ちょっといい?」
「‥‥え、あ‥は、はい何でしょうか?」
私は青年に近付き声をかける。すると少し間をおいてから彼は返事をした。
「この畑‥魔物に荒らされたの?」
「はい‥‥」
少し下をうつむきながら彼は答える。やっぱり魔物に荒らされたのには間違いなさそう。
「その魔物ってワーウルフかしら?」
「そ、そうです。あの‥もしかしてあなたも冒険者の方ですか?」
「そういうこと、今ここに着いたばっかりだから情報収集から始めてるの。」
「そ、それなら僕の父の家に案内しますよ。僕の父はここの村長なんです。」
偶然ね‥村長なら今回のワーウルフに関していろいろ知ってるかもしれないし、せっかくだから案内してもらおうかしら。
「じゃあお願いするわ。」
「わかりました、こっちです。」
その青年に案内され、私は村の中を進む。村を進んでいる中、あることに気がついた。
「全然‥‥人が外に出てないわね。」
「今この村に住んでいるのは村長一家の僕達とほんの数家族だけですよ。他に住んでいた皆は安全なところに避難してます。」
まぁ、いつワーウルフに襲われるかわからないところに留まりたいと思う人のほうが少ないだろう。安全なところに避難するのは妥当な判断ね。
「なるほど‥ね。あなた達は何で逃げないの?」
「僕たちはこの村を守らないといけませんから‥」
「村長という家系に生まれたことによる使命感かしら?」
「はは‥そういう感じです。」
私がそう聞くと彼は苦笑いしながら答えた。まぁ私も一時期同じような状態になったことがあるから、彼の気持ちはわかる。そしてこのまま進んでしまったらどうなるのかも‥
まっ、彼の人生だし私が口出しすることじゃないわね。
そんなことを思いながら歩いていると
「着きました。ここです」
彼に連れてこられた家は明らかにこの村のどの家よりも大きい家だった。ここが村長の家というのも納得できる。
「どうぞ中へ入ってください。」
「それじゃ、お邪魔するわ。」
家の中へと入り彼の後に続く、そして私はある部屋へと通された。
「ここが父の部屋です。それでは先に父に話をつけてきますね。」
そう言って彼は私を残してその部屋の中へと入って行ってしまった。それから少しすると‥
「父が会ってくれるそうです。どうぞ中へ‥」
私は促されるがままその部屋の中へと足を踏み入れた。
「失礼するわ。」
「あぁ‥よく来てくださった冒険者の方。どうぞそこにおかけになってくだされ。」
初老の男性の言う通り彼の間の前にある椅子に私は腰かける。そして私は座ったのを見て彼は話し始めた。
「わしはこの村の長を務めておりますダムと申しますじゃ。この度は村の一大事に駆けつけてくださって誠に感謝しております。」
「私はアリシア、さっそくだけど件のワーウルフについて何かわかっていることを聞かせてもらえないかしら?」
「もちろんですじゃ、とはいってもわしらがわかっていることなんてたかが知れておりますが‥それでもよろしいですかな?」
「えぇ、今は少しでも情報が欲しいの。」
「ほっほ、わかりました。ではわしらがわかっていることについてお話いたしましょう。」
そしてダムはワーウルフに関して話し始めた。その中で捜索の手掛かりになりそうな情報がいくつかあった。
それはまず一つ、定期的にワーウルフは山を下りてこの村の作物や貯蓄している食料を食べに来ていること。
二つ、日が明るいうちは絶対に姿を現さないこと。
最後に、この村の作物がなくなってから一度も姿を現していないこと。
「わしらが知ってることはこのぐらいですじゃ。」
「ありがとう、これだけ情報が聞ければ十分よ。あと、その情報も踏まえて一つお願いがあるんだけどいいかしら?」
「何なりと言ってくだされ、なんでも協力いたしますぞ。」
「じゃあ、いくつか調理器具を貸りたいんだけど‥大き目の鍋があればいいわね。」
「鍋ですかな?いったい何に使うおつもりで?」
「ちょっとした作戦を思いついてね‥後で絶対に返すから貸してくれない?」
何とか貸してくれないかと頼み込むと彼は快く承諾し、私に大きな鉄の鍋を貸してくれた。
「ありがとう、助かるわ。」
さてさて、後はミラと合流してあの廃鉱山に向かおうかしらね。
暖かく迎え入れてくれた村長一家に礼を告げた私はミラを探すため村へと戻るのだった。
それではまた来週のこの時間にお会いしましょ~
お体にはお気をつけてお過ごし下さいね。




