第20話
お久しぶりの作者です。
一週間‥早いですね。
受付に向かい早速依頼の手続きをしてもらうことにした。
「えっと‥これを受けたいんだけど」
「突然変異のワーウルフの捕獲依頼ですね?こちらはもし失敗しても違約金は発生しないクエストになってます。ただ、他の冒険者の方も重複してこの依頼を受けることができますので争奪戦になるかもしれないですけど大丈夫ですか?」
なるほどね‥私達以外の他の冒険者も同時にこのクエストを受けることができる代わりに違約金は一切無し。でも最終的には彼女の言うとおりその他の冒険者達と目標の奪い合いになる可能性もあるか‥
「今って何組この依頼を受けてるの?」
「アリシアさん達以外に三組のゴールドランクの冒険者の方のパーティーがこの依頼を受けてますね。」
ってことはだいぶ出遅れちゃってるわね。でもまぁ‥ミラにもいい経験になるだろうし勉強がてら受けてみてもいいかも。他の金級の冒険者の戦いとかも見れるかもしれないしね。
「どうしますか?」
「うん、私達もこの依頼受けるわ。」
「わかりました。ではこちらにサインをお願いします。」
依頼書にサインをして依頼の受注が完了する。
「それではお気をつけて行ってらっしゃいませ。」
ペコリと一礼する受付嬢に見送られ私達はギルドを後にする。すると外に出るなり焦った様子でミラが私に問いかけてくる。
「お、お姉様良かったんですか?」
「なにが?」
「あ、こ、この依頼‥もしかしたら報酬が貰えないかも知れないんですよね?」
「あぁ~‥それを心配してたの?別に報酬が出なくてもいいのよこの依頼はね。」
そうミラに教えると彼女はなにがなんだかわからないといった感じで首をかしげた。
「あくまでもこの依頼の目的は勉強よ、私とミラのね。報酬なんて二の次、せっかく違約金もないんだし‥他の冒険者の人がどんな風に依頼をこなすのか見に行きましょ?」
私とミラはゴールドランクの冒険者とはいえまだまだ経験不足。何せただの偶然で飛び級でゴールドになっただけだからね。そういった面も踏まえて今回の依頼は私達の勉強のために受けた。
「で、でも‥できるなら私っ‥そのワーウルフ捕獲したいですっ!!」
まさかミラがこんなことを言い出すとは思ってもいなかった。突然の出来事に心から驚いていると‥
「だ、だめですか‥?」
さらに少し目がしらに涙をため、うるうるとしたまなざしで私のことを見つめてくるミラ。
「‥‥わかったわ、それじゃあしっかりと準備しなきゃね?」
ミラの気持ちは十分に伝わった。まぁ、捕獲できたらラッキーぐらいで今回の依頼を受けたけれど‥ちょっと本気で狙いに行ってみようかしらね。
「準備って何をするんですか?」
「そうね、まずは情報収集から始めましょ?」
何よりもまず私たちには情報が足りない。ほかのパーティーはもうすでに情報をかき集めて捕獲に臨んでいるに違いない。それでもまだ捕まえられてないってことは‥よっぽどそのワーウルフが臆病でめったに人前に姿を現さない、もしくはただ単に強すぎて手も足も出ないのか‥恐らく後者の方はあり得ない。
まぁそういったのを確かめるためにまずは‥
「まずはそのワーウルフが目撃されたとこの近くの村に行ってみない?そこで一回聞き込みしてみましょ?」
「そうですねっ!!」
突然変異のワーウルフが目撃されたのはここから少し離れたところにある廃鉱山だったわね。
「ちょっと待って‥そういえばあの廃鉱山の近くに村ってあったかしら?」
「ありますあります~、確か馬車も通ってますよ?」
「あ、ホント?なら少し準備してから行きましょっか。」
馬車が通っているのなら移動に関しては考えなくて良さそう。後は数日分の食料とかを買ってしっかり準備して向かうとしましょ。
そうして私とミラは市場に向かい数日分の食料を買いだめし、アイテムボックスへと収納した。アイテムボックスの中に入れておけば食料が腐ることもないし運搬も楽チン。
そしてしっかりと準備を整えた私達は現在馬車の停留所の前で廃鉱山の付近の村へと向かう馬車を待っていた。その最中‥
「そういえばどうやってワーウルフを捕獲するんですか?」
「簡単よ。私達にはスラちゃんがいるじゃない?」
私はミラが抱えているスラちゃんをチラリと見て言う。
「スラちゃんは水魔法を全部使えるらしいから、セイレーンの子守唄で眠らせちゃえば万事解決よ。」
セイレーンの子守唄は水魔法の上位魔法。効果はいたって単純、ただ対象を眠らせるだけ‥今のスラちゃんなら件のワーウルフの魔法防御力がよっぽど高くないかぎり完全に眠らせることができるはず。
「ふぇ~‥スラちゃんそんな魔法も使えるの?」
「もっとすごいのもつかえるっ!!」
ミラの腕の中でスラちゃんが言う。恐らくそのもっと凄いの‥っていうのは水魔法最上位魔法のアレ‥でしょうね。
「それは使わなくていいからね?今回は捕まえるのが依頼だから、眠らせてくれればいいのよ?」
「わかった!!」
念のためしっかりと言い聞かせておく。本番でアレを使われたら困るものね。
そうこうしている間に私達の前に例の村へと向かう馬車が停まった。
「お嬢ちゃん達はどこまでだい?」
「えっと‥‥廃鉱山の近くの村までお願いしたいんだけど」
「あぁ、ムール村までだね?二人合わせて大銀貨二枚で乗せてくよ。」
私は運転手に大銀貨二枚を手渡し、ミラと二人で馬車へと乗り込んだ。意外にも私達以外に乗客はいないようで馬車の中は貸しきりの状態だった。
「お嬢ちゃん達ももしかして冒険者なのかい?」
乗り込んだ私達に運転手が話しかけてくる。
「私達も‥ってことは他にも何人かそのムール村ってところに行く冒険者を見たの?」
「あぁとも、ここ最近この馬車に乗るのは名のある冒険者の人ばっかだよ。あの辺は何か変わったワーウルフが出るって話だから一般の人は誰も近寄らなくなってるんだ。」
「そういうこと‥‥」
こういう馬車の運転手にもそういう情報が伝わっているということは、ムール村に行けば更に詳しい情報を得ることができそうね。それが捕獲の足掛かりになればいいけれど‥‥
そして運転手と会話を終えるとピシッと鞭を打つ音が聞こえ馬車はがらがらと動きだし、ムール村へと向かい進み始めた。
さてさてムール村では何が待ち受けているんでしょうね?
次回をお楽しみにお待ち下さい。




