巨乳と美尻と美女とエロと色々すごくて・・・夏
ある夏の日。
とあるアパートの一室に、男二人が話をしていた。
「小説を投稿しよう」
「急に何だよ」
投稿しようと言ったのは、藤田。大学2年生である。
その隣にいるのは友達の森。同じく大学2年生だ。
「いや、ほらね? 最近流行ってるじゃん。なりたい系作品のアニメ」
「まぁ・・・うん」
藤田が言っているのは、誰でも小説を投稿できるサイト。”小説家になりたい”のことだ。
そして、そのサイト出身の小説、アニメは、なりたい系と言われている。
「俺たちも流行りに乗っかって、作品を投稿しようって思ってさ」
「一人でやれば?」
「一人でやりたくないから言ってるんだよ」
その後、10分ほど揉めたが、結局、森が折れて一緒に作品を作ることになった。
***
藤田はパソコンを開き、なりたいのサイトを開く。
「早速連載・・・と言いたいところだが、まだ慣れていない時に続きものを書くのは危険だ。
短編から始めて、だんだんと小説を書くのに慣れていこう」
「おぉ、ちゃんと考えているんだな」
「あぁ。それで失敗した男が作者だからな」
「・・・え?」
「いや、こっちの話」
話がズレてしまった。
兎にも角にも一個きちんとした作品を作ろうということだ。
「まずはどんなのを書くかだな」
「なにか決めてるのか?」
「エロいやつ」
「・・・え?」
「エロいやつ」
どうやら森の聞き間違いではなかったようだ。
「いきなりエロいやつってどうよ?」
「まったくお前は・・・何もわかってないな?」
「なんだ腹たつなコノヤロー」
「いいか? こう言うのは読者が何を求めているかを考えるんだ」
「読者が求めているもの?」
「そう。読者が求めているもの・・・エロだ」
「いや決めつけてんじゃねーよ」
「決めつけじゃない。分析の結果だよ」
「分析?」
「そうだ。なぁ森よ、今のなりたい系で一番多い作品の種類はどんなんだ?」
「えっと・・・ "俺TUEEEE" みたいなヤツ?」
「そう! なりたい系で人気の作品は、主人公が最強で、ハーレムになる話だ。
では、なぜそんなような設定が横行し、なおかつ人気を取っていくのだと思う?」
なぜ? と言われると理由はすぐに思いつかない。
さぁ、みんなも一緒に考えてみよう!
少し考えた後、森は閃いた。
「多くの人たちは小説の書くのは素人だ。文章を書く技術が不足してるから、最強設定にすれば、一撃で終わるし、そっちの方が書きやすい・・・とか?」
「あーもう全然違う。読みが甘過ぎる!」
えぇー・・・。
「じゃあ何なのさ」
「それは読者が主人公とヒロインのイチャイチャを求めているからだ!」
「・・・は?」
「主人公がハーレム築いて、キスしたりおっぱい揉んだりすることが読者の求めていることなんだよ」
「それと主人公最強がどう関係してるんだよ」
「いいか。エロを求めてんだよ。あとはぶっちゃけどうでもいいんだ。」
「何が言いたんだよ」
「一撃でバトルシーンがすぐに終わる → 圧倒することでヒロインが主人公の強さに惚れる → ハーレムの仲間入り→ おっぱい揉める
このサイクルさえきっちりやれば、大体人気が取れる」
「えぇー・・・そんな簡単にいくか?」
「いや、こんなもんだって。読者なんてみんなヒロインと主人公のエッチなシーンしか期待してないからね? 作者も主人公と自分を重ねて、ヒロインを自分好みにしてイチャイチャさせて、さも自分がイチャイチャしてるかのような気分に浸りたいだけだからね?」
「偏見がエグいわ!」
「とにかくこんなので大丈夫なんだよ! なんならおっぱいとかお尻とか書いておくだけで人気なんて取れるから!」
「絶対ウソだって!」
「マジだって。 なんなら実際に試してみるか?」
「あ、言ったな! じゃあ中身はてきとうに書いて、タイトルに胸だのお尻だの書いて投稿しようぜ!
それで、アクセス数が多かったら合ってるってことでどうだ!?」
「上等だやってやろうじゃねぇか。
じゃあタイトルどうする? エロって書いとくか?」
「いや、もっと具体的に書こう。
”巨乳”とか”美尻”とか」
「じゃあ美人とかも書いとくか。
あとは・・・てきとうに加えとくか」
「あ、待って! 最後に ”・・・夏” って付け加えといてくれ・・・・」
「え、なんで?」
「今夏だし・・・」
このタイトルだけ見て読んだ人・・・正直に手を挙げなさい