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コウノトリの迷える小説集

ヒモが逆転。

 俺は好きな女の子がいた。

 その子はいつも気だるそうで、力が抜けていて、見ているこっちまで力が抜けてくる。


 ――そんな所が好きになった。


 俺は彼女に告白することに決めた。



 彼女が大学から帰るとき、勇気をもって声をかけた。


 「服部 友美さん、少しお時間もらえますか?」


 「えっ、なに?

 私家に早く帰りたいのだけど」


 彼女はズバズバ物を言う。


 「大切な話なんですけど」

 

 「あっ、もしかして告白とか?

 それなら今、この場でしてくれる?」


 彼女が話を伸ばすことを嫌っているのをわかっているので、素早く発言した。


 「好きです付き合ってください」


 「嫌だよ、めんどくさいもん」


 俺は彼女用に考えてきた口説き文句を披露する。


 「君が、一緒にいて良かったと必ず思わせてやる。

 俺が家事するし、死ぬ気で働くし、

 好きなもの何でも買ってやる。

 君は何もしなくても良い。

 ただ俺のとなりで、ゆっくりと、共に時を過ごしてくれるだけで、俺は満足できる。

 どうだろうか、それでもダメかな?」



 彼女はフフっと笑って、


 「それって、付き合うって言うか、結婚じゃん。

 めっちゃ本気感溢れてて、キモいわ

 でも、伝わったし、好条件だし、良いよ」


 彼女は顔を赤くして


 「まあ……あんたのことは、嫌いじゃないしね――」


 ――ぶっきらぼうに言葉を紡いだ。





 彼女と大学を卒業してすぐ結婚、

 三年の時が過ぎた。


 彼女は基本なにもしない。


 俺は告白の際の言葉を忠実に守った。

 

 働き、家事をして、一緒に時間を過ごして寝る。


 仕事で疲れて家事がきついと思ったとき彼女は、


 「久しぶりに家事やりたい気分になったわー」


 そう言って家事をしてくれる。


 何も言ってないのに、彼女は俺が疲れているのかが、わかるのだ。


 俺がリビングで寝てしまうと、

 朝には布団がかけてあり、頭には枕が引いてある。


 俺はそんな、彼女の優しさが嬉しくて、張り切って働いた。




 その日は、あまり眠れていなかった、

 不幸が重なって

 事故に会い――


 ――歩けない体になってしまった。




 彼女は、俺の状態を見て、悲しそうな顔をしたが、

 泣かなかった。


 俺は覚悟を決めて話した。


 「君との約束は、守れそうにない、

 今の俺では、もう無理なんだ。

 別れよう」


 彼女は、大きなため息をついて、


 「私、働きたい気分になったわー

 だから、これからは私が働いて、

 何でも好きなもの買ってあげる、

 家事も私がやる、

 私はあんたみたいに優しくないから、

 あんたに仕事を与えるよ。

 私のサポートを、出来る限りすること。

 だからこれからも私と共に時を刻もう!!」


 俺は泣いた、涙腺が焼けつくほど泣いた。


 「良いのか?」


 「良いも悪いも、私が求めているんだ。

 あと、あんたは、もっと乙女心を理解する努力をしなさい」


 彼女は胸で息を吸って、


 「あんたが、思ってるより、私は貴方のことが好きだよ」


 少し恥ずかしそうに、だけど、はっきりとそう言った。

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