※ヤマシタ_サイド
「あんな軌道じゃ読まれるぞ」
おじいさんの言っているのが伍式のことだとすぐにわかった。地表の何かが光ったように見えた刹那、零式と伍式からそう遠くない位置でそれらの何倍もありそうなサイズの爆煙が上がった。おじいさんは無線を繋ぐやいなや怒鳴った。
『狙い撃ちにされるぞ!低空飛行するな!』
零式が滑走路上で破壊する予定だった二機の戦闘機もすでに飛び発ってしまったのが目視で確認できた。対空砲も撃ってきている。
「時間を掛け過ぎちまった。イースタシア軍の邪魔が入らなけりゃあな」
「きっちり迎撃されていますが、大丈夫でしょうか?」
まだ稼働していない対空砲でも、敵の戦闘員が準備している様子が見える。
「わからねえ。……いや、正直言えば危険だと思う。零式はそのまま戦闘機二機とやりあっているが、旧式のレシプロ機がジェット戦闘機を相手にどこまでやれるか……。一基残っている速射砲が撃ち始めたら、伍式もかなり不利だ」
「……俺、行きます」
あの鈍色の『船』への到達を少しでも早めるべく、俺はスロットルを最大限に開いた。敵が想定以上に素早く迎撃しているならば、こちらも当初の作戦を繰り上げる必要があるように思えた。
「焦ってもどうにもならん!せめて対空砲と戦闘機が片付かねえと俺たちは近付けねえ。あいつらを信じて待つんだ。それから機銃である程度地上部隊を掃討して、お前の出番はその後だ」
「俺は心配要りません。あの対空砲の準備が整ったらピンチでしょう?」
速度を上げた弐式の正面、『船』の中心よりも向こう側で、今にも射撃を開始しそうな速射式の対空砲がある。
「俺は信じています。零式も、伍式も、弐式も、おじいさんも、おじいさんの作ってくれたこのドラゴンプレートも。だからおじいさんも俺を信じてください」
少しの沈黙の間に、俺は握っていた操縦桿をおじいさんに任せるために立ち上がった。おじいさんはさらに少しだけ逡巡した後に頷いて、僕から操縦桿を引き受けた。
トカゲの鱗のようにしなやかで継ぎ目なく繋がれた防具の、特に可動部について俺は念入りに確認した。ドラゴンプレートは僕の全身を覆い、わずかな隙間も無かった。
「ちょっとやそっとじゃ壊れねえが、同じ場所に何発も貰うとやはり心配だ。盾も忘れずに持てよ」
俺は立て掛けてある高強度チタンの大きな盾を握った。腕に重さが伝わる。
「最高速度で突入するぞ!」