※サハラ_サイド
俺たちはそれぞれに違うターゲットを設定して、暮れ始めた空を東に飛んでいる。東へ向かうと、その分日の傾くのが余計に早くなる。
「でも、どうします?」
俺たちはひとりだって死ぬわけにはいかない。この航空兵力、この対空砲に撃ち落とされるわけにはいかない。言葉を変えれば、ほとんど一発だって当たってはいけない。だがすべてを避け切れるとは到底思えず、俺は尋ねた。
「よく見ろ。たしかに数は多いが、ほとんどが民間のヘリで、戦闘機は確認できる範囲ではたった二機だ。それに対空砲だが、中心の『船』に六基見えるが、型式はバラバラでやはりどこかから盗んできた物のようだ。そういう場合、弱点は練度だ。奴らは弾を惜しんでほとんど訓練ができていないはずだから、向こうが慣れてくる前に一気にカタを付けろ。本来の使い方じゃないが、榴弾を積んでいる伍式が対空砲の破壊には向いているから、お前がやるんだ」
「やはりこの口径の大きい対空砲から狙うべきですか?」
俺はとりわけ大口径の二基の対空砲の電磁写真を示した。
「そいつが撃つのはおそらく炸裂弾で、空中で破裂して広範囲に攻撃できる。たしかに脅威だ。相手が軍ならばそれを真っ先に狙うべきだが、炸裂弾は弾速が遅い。こいつは旧式で、連射できない型のようだから、後に回しても問題ない」
『天の火教』の『船団』が近付いたので、俺は編隊飛行を解除する手信号を送った。伍式と零式は高度を上げ、弐式は『船団』にほとんど真っ直ぐに突入する高度を保った。
日は傾いているので、さっきのように隠れ続けることはできないだろうが、最初のターゲットに真上から攻撃するための位置取りだ。
向かう東の、さらにずっと東の空は、もう藍色に染まっていて、いくつか見える雲は遥か下の海面に沿うように丸みを帯びている。後方を確認すると、西の空はまだ白く照っていて、大きめの雲がまだ陰を作っている。その雲の縁が金色に輝いて、光が回折して透き通るように見える。
『船団』が近付いて、並んで飛んでいた零式もまた分かれた。零式が狙うのは空港だ。俺は耐Gスーツの作動を確認して、さらに高度を上げた。