ブランコDAY
初作品になります。 頑張って書かせていただきます。
上を見上げ手を伸ばす。ギューっと背伸びをし手首をぶんぶん動かす。そんな彼女の動作を公園前の信号の対岸で見ている。信号が青になると彼女のもとへと走る。近くまで来ているのに彼女は気づかない。
「……さくらっ、桜、」
手をパタパタし、ぴょんぴょん飛び続ける。頭上の桜を手に入れようと懸命な彼女。子供っぽくて。手元の桜の枝をポキッと折って彼女の前に差し出す。「うぇっ、」っと驚いたような声を出しくるっと振り向く。桜を俺から受け取ると桜の枝を静かに撫で痛かったね、と呟くからどうしようもない気がしてごめんと呟いた。彼女は背負ってたリュックを前に回し静かに桜をしまう。やっぱり、この時間が幸せなんだ。彼女はどたどたっとブランコまで走って行く。ブランコに飛び乗るとキーコーキーコーと漕ぎ出す。騒がしい奴だ。彼女の隣に座り、俺もゆらゆらしてみる。
「あのね、圭ちゃんはメロンパンだと思うっ」
何を言い出したんだ、この子は。それでも嬉しそうな彼女を見てると何か嬉しかった。
「ねぇねぇ、私は。私はなーに」と目を輝かせながら言って来るから、俺は「クリームパンかな」と答えた。やわらかい感じが、あの、クリーム感が彼女に似ていた。
「なぁ、ずっと一緒に居てくれよな。クリームパン。」
彼女はなんでクリームパンなんだよーとむすぅっとしているが可愛かった。
「あたりまえでしょ、メロンパン」
彼女は言った。
この日が最後の幸せだったのかもしれない。
彼女は、クリームパンは、梓は、俺の前から居なくなった。この世界からも。
なぁ、クリームパン。なんで言ってくれなかったんだ。あの、高校で居場所がなかったことを。いじめを受けていたことを。なぁ、クリームパン。日記見せてくれたよ、おばさんが。俺、お前の敵取るから。
こうして、クリームパンの反撃が始まった。