エピローグ(3)
沙希も優理の説得に了承してくれたことを確認した頼人は、
「アミナ、また厄介事を増やして申し訳ないが頼めるか?」
と、まだ姿を隠しているアミナに尋ねると、
「仲間が増えることはありがたいですから、何とかして見せます。ただ、優理さんから離れるわけにはいかいので、優理さんが沙希さんの家に行かれるか、沙希さんが家に来てもらうことになりますが……」
そのアミナの回答に対し、優理と沙希を見る。
二人ともお互いの顔を見た後、
「それはなんとかなると思うよ」
「うん、友達だから普通に行ったり来たりしますから。それにお兄さんにお勉強を教えて貰うって理由で、土日には泊まりに来ることもできると思います!」
答えを見合わせたように返事を頼人へ返した。
沙希の回答に関しては、『自分に会いにくるため』という名目があるのかもしれない、と思わされてしまった頼人だったが、この際それに関しては目を瞑ることにした。巻き込んでしまったことで、それぐらいの見返りはあった方がいいのかもしれないと思ったからだ。
「ま、話がまとまったところで学校に――」
話し合いが終わったところで頼人が改めて言おうとした時、
「あ、お兄ちゃんに対する脅しはなんて言うつもりだったの?」
興味本位で優理が、今更なことを尋ねてしまう。
それは頼人自身も気になっていたが、嫌な予感しかしなかったのであえて聞こうとは思っていなかったこと。その危険を回避したつもりだったにも関わらず、そのスイッチを踏んでしまった優理を、思わず頼人は睨み付けた。
沙希は頼人を見つめながら、にっこりと笑い、
「『私の告白に対する返事の延期』との交換条件だよ」
悪魔のような条件をあっさりと口にした。
優理さえも「うわー」と引いた後、頼人へとアイコンタクトで「やっぱり聞きたいと思ってるじゃん」と非難する視線を頼人へと向ける。
しかし、沙希は「――でも」と言葉を続け、
「今回は特殊だからお兄さんの返事は期待してないんだよね。状況が状況で、お兄さんも反応に困ってるのは分かってるから。だから、あくまで交換条件に使おうと思っただけで。あ、でもこれからお兄さんのハートは掴んでいくつもりなので覚悟しておいてくださいね!」
指で鉄砲を作り、頼人の胸に狙いを定めて打ち抜く仕草を行った。
沙希の表情は少しだけ悲しさが混ざってる気がしたが、頼人はそこに対する追及を行うつもりはなかった。自分の立場が悪くなるだけということを気付いていたから。
さっきと同じようにまた優理が地雷を踏む可能性がないわけではなかったが、今回だけは優理はそんなつもりはないらしく、同じように悲しい顔をしていた。それが、沙希のことを思っての表情なのか、それとも自分を盗られてしまうという想いからの表情なのか、内容自体は頼人にも分からなかったが……。
そんな二人に対するフォローの言葉を思いつくことができなかった頼人に出来ることは、一つしかなかった
「ほら、遅刻してるんだから学校へ急ぐぞ! これ以上の無駄話は禁止だ! アミナも余計なこと言うなよ! 全部、家に帰ってからだ!」
そう言って、頼人は玄関を出た。
「あ、そうだね!」
優理のハッとした返事、
「帰ったら、お婆ちゃんに怒られるかも……」
沙希の少しだけ嫌そうな返事、
「あたしは何も言ってませんよ!」
アミナの不満そうな声がそれぞれ頼人の耳に入ってくるが、それ以上反応することはなかった。
なぜなら、これ以上無駄話をしていたら、学校に行く気をなくしてしまい、サボりたくなってしまうからだ。




