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デート中に現れる勇者(3)

「いつまでもこんな話をしてるわけにはいかないな。そういうわけで、俺も頼人に伝えないといけないことがある」


 勇者はハッとしたようにそう言って、頼人を真剣な顔で見つめる。

 その真面目な顔に頼人は生唾を飲み込んでしまう。何を言ってくるのか、不安になっていたのか、


「おいおい、そんな怯えた顔するなよ」


 その場の空気を和ませるかのように普通の顔へ戻る勇者。


「いきなり真面目な顔をするからいけないんだろ?」

「真面目な顔をしないと言えないこともあるだろ?」

「それはそうだけどさー」

「言いたいのは、今回巻き込んでしまったことに対する謝罪だ。すまん、こんなつもりはなかったんだ」


 勇者は勢いよく頼人に頭を下げる。

 下手をすれば、土下座までしてしまいそうな勢いだった。


「気にしなくていいよ。それよりもアミナをこっちに寄越してくれたことを感謝してる。危ない目には合うのはどうしようもできないことだけど、アミナがいるだけでもちょっとは違うからさ」


 頼人はこの言葉を躊躇うことなく言い切る。

 ずっと前からこの言葉は用意していたためだった。

 いつかはこうやって勇者と話せるタイミングが来るような気がしていたからだ。その理由も根拠なかったが、直感がそう言っていたに過ぎない。

 その言葉に勇者は安心した表情を見せる。


「そう言ってくれると思ってた。ま、そのお礼にいろいろとご褒美をやろう。それでも、俺が伝えられることは少ないんだけどな。またジッとしててくれ」


 勇者の言う通りに従い、また頼人はその場で大人しく立ち、今度はなんとなく目を閉じる。

 瞬間、さっきと同じように頼人の頭の中にいろいろな知識が流れ込んでくる。得られる知識の中で過半数を占めるものは勇者の剣についてのものだった。基本的には『剣として振るう』以外の使用方法もあり、頼人は思わず「へー」と言葉を漏らしてしまうほど。


「おいおい、なんだこりゃ」


 ふと漏らす勇者の驚きの声。

 頼人は目を開けて、勇者を見つめる。


「どうした?」

「んー、ちょっとした発見があっただけ。興味本位で頼人の中にある隠された能力でもあるなら引き出してやろうかな、って思って探ってたら、予想以上の物があったんだ。家族の中に不思議な力持った人がいたか?」

「お婆ちゃんが持ってたな。俺もいつか目覚める、とか言ってたけど?」

「そっか。これはまだ呼び起こさない方がいいな」

「は? 使える能力なら、それも呼び起こしてくれても――」

「いや、やめとく」


 勇者は頼人の頭から手を離し、首を横に振る。

 気持ち的には、呼び起こしたいという気持ちが伝わってくるが、無理はしたくない。そんな感じの雰囲気。

 そのことは頼人にも分かっていたが、とりあえず尋ねてみることにした。


「なんでだよ?」

「脳に負担がかかるからだ。目覚めるタイミングっていうのはタイミングとそれに耐えられるだけの脳の成長が関わってくる。だから、やめとくだけの話だ。それに近いうちに目覚めるみたいだから、俺が無理矢理目覚めさせる必要もないしな。そんなことよりももっと大事なことがあるだろう?」

「え?」

「早く起きないと優理が心配するぞ」

「それもそうだった」


 忘れそうになっていたことを誤魔化すために頼人は自分の髪を掻く。

 しかし、勇者はそのことに気付いていたらしく、


「ま、これは忘れかけようとしていたお仕置き。ってことで少し痛いぞ」


 と、指を構えて、頼人のおでこへデコピンを食らわす。

 予想以上の痛さに頼人の身体はいきなりふらつき始め、意識も闇へと沈んでいく。反論すらも許さない速さで意識は闇へと落ちた。


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