事件発展
牢屋の中でぐっすりと寝た僕は、辺りを見渡す。
「あれ、何時だろう今。あれ、そういえば僕の家鍵締めたっけ? あれ、大丈夫かなぁ……、いや心配だ。今すぐ早く帰らないと。……出られないじゃあないか。なんだよ、この状況は何なのさ。僕はちょっとどうしたものかと考える。」
「何を一人でブツブツ言ってんだい?」
「いやあ、何でこんな事になっているのかと思いましてね。」
するとその看守はクスリと笑い、こちらを向く。
「なんだあそれ、お前が悪い事をしたからじゃないのかよ。」
「ああ、悪いことをしたと言えば、そうだなぁ、あの日に女性の家に勝手に入ってしまった事くらいだと思うけれど。」
「あはは、捕まるだろう。不法侵入したら。」
「そうか、じゃあ仕方ないのか。そうかそうか。」
「というかお前は人殺しで捕まったんだろ?」
「……人殺し? 何の事?」
僕はまるで人の話を聞いていなくて、弁解をしていなかった。
看守の彼は僕の話に思い切りに食いついた。
「そりゃあどういう事なんだい。免罪じゃあねぇか。おりゃあ昔っから名探偵にあこがれててよお、名探偵コ○ン全巻持ってるぜ。」
彼は何だか面白い性格をしているのだろうか、いや、ふざけているんだろうか。ケタケタ笑いながら僕の話を聞く。こういう話が好きなのかもしれない。僕はここまでの話をそのまま彼に伝え、最後に言った。彼女の最後の言葉を。
「そういえば、その女性が、最後に「厚揚げ」って言ってましたよ。」
「厚揚げ? 最後に食いたかったのかもなあ……あっそれ、もしかしてダイイングメッセージなんじゃないか? もしそうだったら犯人は厚揚げ? いやいや、じゃああれか? これはアナグラムで、入れ替えると犯人の名前になるとか?」
「そうなんですかねぇ……。」
「あつあげ……。つあ、げあ? げつああ? だめだあこりゃあアナグラムじゃねぇよ。そもそもこれあってんのかい?」
ここで僕は思い出した。厚揚げに固執していた僕に与えた思考の光。看守さんのお手柄です。
「そうだ、何とか市っていう町の名前だった気がするよ!」
「なんだってぇ。てこたぁお前、厚揚げ関係ねぇじゃねえかよ。」
本当だ。厚揚げ関係ない。何で厚揚げだと思ったんだろう。
「厚揚げ市って言う町ってありますか?」
結果。そんな市はなかった。
看守の人はその大きく四角い顔と名前が相まってか、かなりの人望があり、意外と警察の中で顔が聞く人物だったようで、看守の監視の元、僕は釈放された。初めての友達が出来たみたいで嬉しかった僕である。
「解決したはずだったこの事件は再び動き出したってぇ訳だ。くぅぅ、痺れるねぇ。」
「でも良かったんですか? 僕を釈放なんて簡単じゃなかったでしょうに。」
「馬鹿野郎。捕まってんのに家の鍵心配するような奴が人なんて殺せるかよ。俺はそもそもお前の動機が分からねえって所からこの事件は怪しいと思ってたんだよ。だから俺は看守の仕事を少しして、お前を見てたって訳だ。」
この人その為にいたのか。必然だった訳だ。あれ、でも……。
「動機がない事件なんて、他にもあるでしょう?」
「ああ、だからそういうのは全部見てんだよ。俺はな。いやあでもホントにこういうのは初めてだな。俺もついに名探偵と呼ばれる日が来たか。」
ああ、この人は暇なのかな? と僕は彼の顔を見ながら思った。顔は楽しそうで何よりだ。
「お、そういや自己紹介がまだだったな。俺は「銭姿安文」だ。よろしく。」
「あ、はい僕は「主流川流石」です。銭姿さん。」
そしてまずは僕の家へ帰った。
「あぁーやっぱり鍵が開いてる。」
「何だって、そいつはすまねぇ。警察のせいで。」
「あ、いえ大丈夫です。取られて困るもので溢れてるんで、全部無くなるなんてことは……。」
部屋に入ると、如何やら家の中には、もう何もなかった。跡形もなかった。埃くらいしかなかったという現状である。
「おー。ああこれが現実かぁ……。厳しいな。」
「ま、待て。ここが空き部屋になると思って中身を移したのかもしれない。と、考える。」
「そうか。そうだね。そうだといいな。」
ちなみにこの三つの台詞は全て僕である。
ああ、何て事だ。あのゲームやらパソコンやらが全部か。あ、でもゲームをしなければいいのか。じゃあ大丈夫だな。問題ないな。うん。
ガチャ……。
僕と看守さんが入っている部屋へ。一人の男が入ってきた。その男は、何やら犯人のような覆面をしていた。……ううむ、どこかで見たことあるな、この人。




