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第71話 魔界編6

はぁ〜とため息をつき、メルゼは言った。


「・・・訓練、してみるか?」


「・・・? どういうことだ」


「あまりにも必死そうだったんでな。行かないといけないんだろう?」


「・・・あぁ」


「だが、お前はまだ弱い。一番貫禄ありそうなお前が弱いんじゃ、どうせ刹那だって強ぇはずがねぇ。

残りの譲ちゃん2人は戦闘能力なんぞ持ち合わせちゃいねぇしな」


「あれ〜? それ、お話ししたっけぇ〜?」


きょとん、といった様子で風花がメルゼに尋ねる。風花とリリアの2人は自分たちのことを何1つ語っていない。戦闘能力を持ち合わせていないことも、もちろん喋ってなどいない。ならばなぜ?


「のほほんとした嬢ちゃん、お前は魔力がほとんど感じられない。戦闘能力どころか、身体能力さえもあげられねぇんじゃねぇのか?」


「ん〜・・・・・その通り〜」


「そんでもって、そっちの髪の長い譲ちゃん。

お前からは魔力が感じられるが、荒々しさが全然ねぇ。たぶん、治療系の魔術くらいしか使えねぇだろ」


「は、はい。その通り、です」


驚いたことに、メルゼは魔力を感じただけで2人の特徴を見破ってしまった。多少なら刹那やレオも感じることができるが、相手の能力を読み取るほど敏感に感じることはできない。


「んで、レオ・・・でいいよな。レオはさっき戦ったからわかるとして、刹那。

お前は攻撃型だろ? なんか魔力が尖がってる感じがするし・・・何か、ざわざわする。

禍々しいっていうか、毒々しいっていうか、暗い感じがするからな」


「・・合ってる」


後の禍々しいと毒々しいというのは少し納得できなかったが、攻撃型ということは紛れもない事実だ。現に、刹那は魔術こそ使えないものの、結晶を形成して攻撃するのだから。


「かなり戦闘の訓練をすりゃ魔力を感じる力が自然についてくる。ま、言ってみれば魔力の訓練をするわけだからな」


ということはだ。それができなかった刹那とレオは、まだまだ魔力の訓練不足ということになる。ただひたすらに戦闘を重ねてきただけで、特に魔力を意識して戦ってきたわけではないのだから当然ではあるが・・・訓練不足という事実は大きな衝撃だった。


「知らなかったか?」


「・・・あぁ。まったくな」


「ならよかった」


「? 何がだ?」


「知っててできないよりは、知らないでできないほうがいいだろ? 努力して会得できる可能性が出てくるわけだからな。

もちろん、やるだろ? 訓練。天界に行くんだから、かなり鍛えねぇとならねぇが・・・」


刹那とレオは顔を見合わせて、そして頷いて見せた。

力不足など、あってはならない。戦う力がなければ罠だって外せないし、運悪く『神の使い』と鉢合わせになってしまったときに、抵抗もできずあっけなく殺されてしまうかもしれない。

戦闘能力を持たない風花やリリアを守ってやることもできないだろうし、自分の身だって当然のことながら守ることなどできやしない。

行き過ぎた力は破滅をもたらすが、最低限度の力は身につけなければならない。

そう、今ここで。


「そうと決まったら・・・おい! 衛兵! 出てこい! いるんだろ?」


「はっ!! ここに!!」


扉の影から出てくる衛兵。メルゼとレオの戦いに巻き込まれるかもしれないというのに、この衛兵は扉の近くに待機していたのだ。・・・敬意に値する忠誠心だった。


「宴会中止! んでもって、兵士たちの練習所を空けてくれ! すぐだ!」


「はっ!! ただいま!!」


衛兵は敬礼をし、すぐさま扉を出て行ってしまった。


「さて、刹那とレオは俺についてこい。マリア、譲ちゃん2人頼むな」


「任せておいてください」


「よし。んじゃ行くか!」


気合の声と共に、刹那とレオはメルゼのあとをついていったのだった。





+++++





兵士の練習場は、訓練所というよりも闘技場というほうが似合っているような雰囲気があった。

周りはまるで、選手が逃げ出さないようにと言わんばかりの高い壁で覆われており、それを楽しむために用意されてある観客席も無数に存在していた。

当然ながら観客は1人もおらず、居るのはメルゼに刹那、そしてレオの3人だけだった。


「んじゃ、始めっか」


ぐっと背伸びをした後に、メルゼは言う。


「まずレオ。正直言って、お前の体術のほうはかなりのもんだ。教えることはねぇ」


「なら、俺は何をすればいい?」


「魔力を鋭敏に感じ取れるようにすればいい。お前ならそれができるだけでかなり強くなるはずだ。

魔力がうまく感じ取れるようになってくれば、例え相手が物陰に隠れようがはっきり動きをとらえることができる」


確かに、銃を使うレオにとって相手の動きがはっきりわかるようになるということは、戦略の幅がかなり広くなることを意味する。

物影から出てくる方向を予測してあらかじめ弾を撃っておいたり、何より敵を見失うということがない。メルゼの言うとおり、賢いレオはそれだけでも強くなれてしまう。


「具体的には、どうすればいいんだ?」


「そうだな。・・・ほれ」


懐を探り、メルゼは1つの小さな玉を取り出してレオに手渡す。


「それに魔力込めてみろよ」


「? あぁ」


言われた通りに、手渡された玉に魔力を込めてみる。

ガラス玉のように透明なそれは、魔力を込めた瞬間白く濁り、ゆっくりと空中へと浮かんだ。


「・・・これは?」


「まぁ、町で売ってるおもちゃさ。込めた魔力の属性ごとに色が変わって、さらに自分の周りをぷかぷか浮かぶ機能付きだ。面白ぇだろ、これ」


「・・・面白いかどうかは別として、こんなものが何の役に立つんだ?」


はっきり言って、訓練中にこんなものが目の前にぷかぷか浮かんでいたら目障りで仕方がない。

メルゼはこんなものを出して、一体どうしようというのだろう。


「ほんの少しだが、こいつは魔力を放出している。・・・わかるか?」


「・・・いや、わからない。本当に出てるのか?」


「確かに出てる。こいつの魔力を感じ取るんだ。『眼』はもちろん使うなよ、意味がなくなるからな。・・・まぁ、座って落ち着きながらやってみろ」


「わかった」


言い残し、レオは宙に浮いているおもちゃと共に端の方へと移動した。

これから始まるであろう、刹那とメルゼの訓練の邪魔になるまいという、レオの配慮からだった。


「さて、次は刹那、お前だな」


メルゼの言葉に、刹那はゆっくりと頷く。


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